300  影裏

 従兄の葬儀で雫石に行ってきました。こまち9号で大宮から雫石駅まで2時間5分、ナント!雫石駅に降り立ったのはたった二人でした。改札を出たら、妹と弟が迎えに来てくれていました。葬儀式場まで車で行きました。弔辞は元雫石町長の川口民一さんでした。鶯宿温泉『川長山荘』の当主、鶯宿温泉開発株式会社社長です。その後、やがて入る雫石町七ツ森墓地公園の墓参、折角来たので名物のお風呂に入ろうということで、これまで何度も紹介しているつなぎ温泉ホテル紫苑で入浴しました。


つなぎ温泉紫苑の外観

つなぎ温泉紫苑のひとりじめの湯(左:檜の露天風呂、右:大浴場、サウナもあり)

■ 大友啓史監督の映画「億男」

               試写会総出演のキャストたち、大友啓史監督は左後方
 「るろうに剣心」「3月のライオン」の大友啓史監督については、たびたび紹介しています。2018年、これまで以上に精力的な活躍を見せた佐藤健が、出世作である『るろうに剣心』シリーズの大友啓史監督と約4年ぶりにタッグを組んだ『億男』で主演を務めました。累計発行部数76万部を突破した川村元気による同名小説が原作で、3億円の宝くじを当てて人生一変する男のコメディです。佐藤健のキャリアの中で「一番ダサい男」にトライしたそうです。
 失踪した兄が残した借金の返済に追われ、妻子に見捨てられた図書館司書の一男(佐藤健)は、ある日突然宝くじで3億円が当たります。狂喜するも、待てよ、高額当選者たちが悲惨な人生を送っているという記事を読み不安になった彼は、億万長者になった大学時代の親友の九十九(高橋一生)に相談します。久々の再会に浮かれ酔いつぶれた一男が目覚めると、3億円と共に九十九の姿も消えていました...
 出演は佐藤健、高橋一生、黒木華、沢尻エリカ、池田エライザ、北村一輝、藤原竜也という美女、イケメンです。

■ 綾野剛と松田龍平を撮りたかった大友啓史監督
 その大友啓史監督が、第157回芥川賞を受賞した沼田真佑さんの同名小説を、綾野剛と松田龍平の共演で映画化したとフェイスブックで紹介していました。このヒューマンミステリー「影裏」は、2020年に全国公開されるそうですが、その撮影をすでにおおむね終了したのに、どうして2020年公開かというと何か事情があるのでしょう。
 「静かな文章と行間に宿る巨大なエモーション」という原作の魅力に惹きつけられたという大友啓史監督、以前にもたびたび紹介していますが、我が高校の後輩です。「震災以前、震災以降。変わらないものと変わりゆくもの。東京オリンピックの熱狂と喧騒に追いやられる前に、寡黙な東北人の身体の奥底に潜む感情に、真正面から触れておきたい。熱烈に『撮りたかった』2人の俳優、綾野剛、松田龍平両氏との地元・盛岡での濃密な撮影は、まるで東北の短い夏のお祭りのように、強烈に脳裏にしみついています。良い作品に仕上げたいと思います」と大友啓史監督はコメントしています。

■ 「影裏」ロケは岩手で
 人間の心の裏側や、現代社会における繊細なテーマを描いた「影裏」・・・転勤で岩手に移り住んだ今野(綾野剛)は、慣れない土地で出会った同僚の日浅(松田龍平)に心を許し、次第に距離を縮めて行きます。2人で酒を酌み交わし、釣りをし、遅れてやってきたかのような“成熟した青春の日々”に心地よさを感じていました。しかし、ある日突然、日浅は何も言わずに会社を辞めてしまいます。しばらくして再会を果たした二人ですが、一度開いた距離は再び縮まることはなく、その後は顔をあわせることなく時が流れて行きます。そしてある時、日浅が行方不明になっていることを知った今野は、日浅を捜す過程で日浅の数々の影の顔、裏の顔を知ってしまいます。
 物語の舞台は、大友監督の出身地の岩手県、撮影も岩手県でオールロケを敢行、雫石での釣り、一関市の喫茶店で二人が語り合うシーン...。台本は日々改良が加えられていたようで、綾野は厳しくも充実した撮影を「監督とスタッフと心の壁を探す日々だった」と振り返っています。
 主演を務める綾野は「これほど愛おしく苦しく刹那な人を生きたことがありません。私の中で静かに生きていた感情を、今野秋一は呼び覚ましてくれました。そして日浅は、今野の中で生きる微かな影裏を見つけてくれて照らしてくれました。私はあなたを忘れません」と胸中を吐露。「影裏で生きる全ての人々に出会えた事、大友監督の眼差し、各部署の愛、松田龍平さんが日浅であったからこそ、私は私で居られた。心から感謝します」と思いの丈を述べました。
 一方松田龍平は「表があればもちろん裏もあって・・・。大抵の人は裏は見せないもので・・・。人によっては裏表なんてものは大して差がないのかもしれません。まだワンシーンだけ撮影が残っていて、終わってないのですが、どんな映画になるのか、とても楽しみです」と仕上がりに期待を寄せました。

■ 沼田真佑さんの紹介
 第157回芥川賞受賞作「影裏」は、その前に第122回文學界新人賞も受賞しました。『影裏』は「電光影裏斬春風」(でんこうえいりしゅんぷうをきる)という禅語から採ったそうです。この言葉の「影」と「裏」という2文字は、小説全体の雰囲気に合っていると思ったので採用したのだそうです。
 大きな崩壊を前に、目に映るものは何か。北緯39度。会社の出向で移り住んだ岩手の地で、ただひとり心を許したのが、同僚の日浅でした。ともに釣りをした日々に募る追憶と寂しさ。いつしか疎遠になった男のもう一つの顔に、「あの日」以後、触れることになるのだが・・・・。樹々と川の彩りの中に、崩壊の予兆と人知れぬ思いを繊細に描き出した作品です。
著者・沼田真佑さんは・・・・
 1978年北海道小樽市生まれ、お父さんの仕事の関係で横浜や千葉に住み、やがて福岡市の有名な福岡大学附属大濠高等学校に進学、さらに西南学院大学卒業後、福岡市で塾講師を務めます。2011年東日本大震災勃発、そのときも博多でした。映像を見ながら「大変なことが起きた」と思ったそうです。

■ 芥川賞作家は岩手初
 盛岡市出身のお父さんが家を建てて、両親の住む盛岡市に転居、2012年のことです。進学塾作人舘に就職して講師を勤めました。盛岡駅から岩手大学へ歩いて行く途中、梨木町に「白ゆりビル」というちょっと異様な建物があります。これが進学塾作人舘の盛岡教室です。進学塾作人舘は、岩手県内に6教室を運営する「株式会社白ゆり」が経営しています。沼田真佑さんの初めての作品が文芸春秋社の第122回文學界新人賞を受賞し、作家デビューしましたが、これが第157回芥川賞も受賞してビックリ仰天。ナント、岩手県在住者では初めてのことでした。岩手県に直木賞受賞作家は5人居るのですが、純文学の芥川賞は7人候補者が出ながらも疎遠でした。虐げられてきた岩手県人の歴史から、これに反発して著名な政治家や軍人は出ても、文学者は宮沢賢治のような死後に認められる人は出ましたが、現実の厳しさよりロマンやファンタジーを書く作家が多く、どうしても直木賞に偏る傾向でした。沼田真佑さんは岩手生まれでないからこそ、盛岡に移り住んで岩手の風土や優しさに気付き、作品に表現できたのではないかと言われています。

■ 岩手から連続芥川賞作家が
 そんなこと言っていたら、第158回芥川賞は遠野出身;若竹千佐子さんの「おらおらでひとりいぐも」が選ばれました。筆者は岩手大学教育学部卒業で、同大学農学部の前身である盛岡高等農林学校を卒業した宮沢賢治の詩「永訣の朝」の一節をタイトルとした作品で、第54回文藝賞も受賞されました。これについては254『大寒』(2018年1月21日)で触れました。
 おらおらでひとりいぐも(河出書房新社ホームページ)
 芥川龍之介賞最新情報(日本文学振興会ホームページ)
第158回芥川賞候補作には他に、盛岡市に実家のある木村紅美(くみ)さんの「雪子さんの足音」も挙げられていました。第158回直木賞は門井慶喜さんの「 銀河鉄道の父」が選ばれました。宮沢賢治の父政次郎から見た賢治が主題です。宮沢賢治人気は高まる一方で、つれて岩手が文学づいているのでしょうね。門井慶喜さんは直木賞受賞後、岩手大学農学部を表敬訪問されました。

■ 湯河原
 湯河原温泉に行って来ました。「ニューウェルシティ湯河原」です。湯河原駅からシャトルバスで送迎してくれます。なかなか豪華な宿です。中でも3階にある「いずみの湯」という露天風呂は、広くて、サウナも有り、掛け流しの湯がジョージョーと豊富に流れています。泉質はナトリウムー塩化物・硫酸塩泉 (弱アルカリ性 低張性 高温泉)で、無色透明・無臭ですが、ちょっとしょっぱい湯です。湯河原温泉観光協会のホームページをご覧下さい。サラサラとした柔らかい肌あたりの湯で、万葉集にも歌われた名湯だそうです。いろいろなところに足跡を残している与謝野鉄幹、晶子夫妻はじめ、国木田独歩、芥川龍之介、志賀直哉、島崎藤村、夏目漱石など、文豪たちもしばしば訪れ、創作の疲れを癒していたと言われます。全く癖がないので、ちょっと物足りない感じもしました。道に親子連れの猿が出て、宿の人が言うには、昔は街には出てこなかったが、今は駅近辺でも良く見かけるとのこと。猿は四万温泉にはいっぱいいますよ。野生の猿が、人目もはばからず堂々と草をついばんだりしています。111『火山』(2015年4月19日)をご覧下さい。

■ 紀平梨花さんフィギュアスケート:グランプリ(GP)ファイナル優勝!
 これまで296『』(2018年11月13日)、289『ふるさと納税』(2018年9月24日)と2回も紹介してきた紀平梨花さん(16=関大KFSC)がまたまたやってくれました。
 2018年12月8日、カナダ・バンクーバーで行われたフィギュアスケート:グランプリ(GP)ファイナルで、ショートプログラム(SP)首位の紀平梨花さんがフリーでも平常心を保ち、会心の滑りをみせて、合計233.12点で初優勝を飾りました。2005年浅田真央さん以来となるGPデビューシーズンでのファイナル制覇の快挙です。SP2位で平昌(ピョンチャン)オリンピック(五輪)金メダルのザギトワ(ロシア)は226.53点で2位に終わりました。
 紀平梨花さんと言えば、トリプルアクセル(3回転半ジャンプ)です。世界でもあまり跳べる人のいないトリプルアクセルを軽々と決められる選手ですから、もしかして?とは思っていました。しかしやっとシニアに登場して、いきなり2大会優勝して、グランプリファイナルに出場して、いくら心臓が強くても緊張して失敗するかもと不安でした。やはり冒頭、代名詞のトリプルアクセルは着氷時に両手をついてしまいましたが、ここで焦らなかったのが驚きでした。続く3回転半からの連続ジャンプを成功させ、その後もリズミカルで切れある演技を続け、7本中6本のジャンプを決めたのです!なんという精神力、なんという切れ!演技後のインタビューでは「ファイナル優勝は思ってもみなかった。今年はどんな大きい試合でも気持ちをコントロールできた。今やっていることを出せたので、全然プレッシャーにならず、これから頑張ろうと思いました。優勝はプレッシャーでなく自信になります」というコメントもすごいですね。
 いま4回転トーループやサルコーも練習中だそうです。紀平梨花さんのすごさは筋肉です。可愛くて女の子らしいのに、筋肉モリモリなのです。平昌五輪出場は年齢制限でかなわず、ザギトワにさらわれましたが、2022年北京五輪を目指して、新星登場、ニッポンの期待の星です。

紀平梨花さん

■ 四国ツアーへ
 13日から15日まで四国一周の旅に行って来ます。早朝発なので12日(水)羽田空港近くのホテルに前泊、1日目7:05羽田空港発JAL453便→8:25徳島空港→白砂の景勝地・大浜海岸→宍喰温泉→灯台と深層水の室戸岬→坂本龍馬の桂浜→光の祭りの高知城→高知市のホテル(泊)「鰹のタタキ」等の夕食、2日目ホテル→清流四万十川→みかんの名所・真珠の街宇和島→白壁の町並み内子→伊予灘を望む絶景の無人駅下灘駅→愛媛松山道後温泉のホテル(泊)「鯛会席」の夕食、3日目ホテル→四国を代表する名城;松山城→海の神様金比羅さん→鳴門公園海峡眺望「渦の道」→徳島空港発20:35JAL464便→21:45羽田空港着、自宅に帰って来るのは16日(日)ですね。
(2018年12月9日)


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