301  インバウンド
 四国一周の旅については改めて報告します。出発前の2018年12月11日は久し振りの雨でした。12日朝まで雨は残りました。東北などは随分と雪が降り、盛岡でも十数cmとのことでした。雪国でも、本格的な雪が降った初日などはまだ慣れていないので、スタッドレスタイヤでも運転が慎重になるため道路は大渋滞になるものです。
 室戸岬は暖かく、植物も亜熱帯性で、草もまだ青々、山にも紅葉がありません。海はオーシャンブルーに輝き、アロエの花が咲き、ハイビスカスが椿と一緒に咲いています。同じ日本で、盛岡は石割桜に雪が降り、樹氷みたいだと言うのに...
 しかし本日青森県黒石市から届いた友人の「あずましの里通信」・・・なんとまあ、スゴイこと。「12月としてはこんな豪雪記憶にない」そうです。一週間ずっと降雪が続いてうんざり、毎日朝5時から数時間、延々と雪かきの作業に追われて筋肉痛とのこと、雪国育ちの筆者には理解できますが、古希を迎えた人がそんなに労働して大丈夫か?と言いたくなります。やっぱり日本は広い!

青森県黒石市の中野もみじ山、モノクロでないのは橋の色でわかります

■ 秘境でがっかり
 「山深い温泉旅館に泊まったのに、マグロやイカの刺身ばかりだった」とか、「ツイッターで秘境と紹介されていたのに、人が多くて想像と違った」など、秘境がっかり体験をされた方居られませんか?
 「インバウンドの獲得」を目指して外国人旅行客の誘致に積極的な自治体は多いですね。確かにニッポンへの海外からの旅行客は2千万人を越えてグングン伸びています。世界的に見れば2017年で12位です・・・日本政府観光局。前年が16位ですから随分躍進ですね。為替レートが一時期より円安になったので風が吹いたと言えそうですが、訪日客は中国、韓国、台湾、香港、アメリカの順です。「インバウンドの獲得」のために、トイレを改修したり、案内板やパンフに英語、中国語、韓国語を併記したり、相手国へ行って観光PRしたりする努力が奏功していると思われます。

■ 減る日本人の旅行客
 ところが日本旅行業協会のホームページをご覧下さい。日本人は海外旅行も国内旅行も減っています→JTAニュースリリース。国民1人当たりの国内宿泊観光旅行の回数、宿泊数は2008年以降、ほぼ横ばいないし漸減なのです。日本の観光地はまだまだ努力が足りないと言えるでしょう。少子高齢化で日本人旅行客はますます減って行く、手をこまねいていたら自滅です。「インバウンドの獲得」ないし「日本人が行きたい観光地」を目指して手を打たなければなりません。

■ インバウンドとは
 そもそも「インバウンド」とは何か?「inbound」は「in」と「bound」という英単語の組み合わせです。「bound」とは、飛行機や電車などの交通機関の「○○行きの」という意味になります。よく新幹線の車内放送などで、”bound for Tokyo”とアナウンスされますね。「東京行きの」ということです。それが「bound」に「内へ」という意味の接頭語「in」が付くと「本国行きの」という意味になります。船や飛行機ならば帰航という意味です。「本国行きの」"inbound"と「旅行・観光」を意味する"touring"で"inbound touring"という言葉、すなわち「本国旅行」という旅行・観光用語であり、日本語の「インバウンド」は一般的には、「外国人が日本を訪れる旅行」のことを指しています。省略されて「訪日外国人旅行」=「インバウンド」と言われるようになりました。

■ ありのままで
 先日都内で会議があり、懇親会を終えて帰る山手線内で驚いた光景、21時ごろですが、車内は圧倒的にガイジンです。欧米人とアジア人主体です。何を観光してきたのでしょう?それは都内を歩いてみれば分かります。特に上野・秋葉原界隈とその東側の地域です。いわゆる東京の下町ですね。上野界隈は特にガイジンが多いですが、ここには絶妙なアンバランスがあります。国立博物館に代表される高雅な文化施設とアメ横が象徴する「庶民的猥雑さ」があふれる商店街が同居しています。前々回『国会見学』で紹介した湯島もかつては受験生の聖地でしたが、最近は外国人観光客の姿をよく見かけます。更に宝石のまち御徒町のとんかつ屋なども外国人に大人気です。何故ガイジンが来るのかよく分からない店長も、それならと英語メニューを作りましたが、別に英会話のできる店員を雇ったりなど特別なことは何もしていません。どうやら地域住民がいつも手軽に食べられるものを味わえるのが何よりの魅力のようで、ラーメンもそうですが、インスタグラムなどで「あそこが美味しい」と紹介されたためのようです。日本に行ったらやはりご当地でしか食べられないものを食べたいという動機です。「ありのまま」でいること、この簡単なことが好まれているようです。

■ 外国人観光客が発見してくれた「面白さ」
 上野界隈は特別だと思われる方、そんなことはありません。上野と言えばかつては東北、北海道、上越、北陸の玄関口でした。いつぞや細川たかしが吉幾三と「ああ上野駅」を歌ったとき、感極まって涙したことがありました。♪就職列車に ゆられて着いた ♪遠いあの夜を 思い出す・・・苦労してここまで頑張って来た、我が人生の原点はここにあったと北国出身の多くの人がこの歌に心を揺さぶられたのです。石川啄木は「ふるさとの 訛なつかし停車場の 人ごみの中に そを聴きにゆく」と詠みました。しかしガイジンさんは、西郷さんの銅像はあるけれどそれを見るために日本に来たわけではありません。この一帯は、筆者にとっては昔も今も都内で一番行く場所ですが、20年前は都内でもひなびた観光地でした。浅草は昔から大人気でしたが、秋葉原は電気街、上野は公園とオートバイ街、御徒町は宝石街、湯島は坂と神社の街です。マニア、オタクの集まる場所でした。しかしその後、秋葉原のコスプレ少女、上野から御徒町のアメ横や不忍池、動物園、そして花見、湯島界隈の神社と坂道、その周辺に暮らす人々の寄り合った小さな家とデーンと聳えるマンションなど、アンバランスだけれど、外国人観光客がその「面白さ」を発見してくれたのです。日本人が日本人らしく暮らして楽しんで美味しいものを食べている、その異境体験こそが観光客が一番体験したいものなのです。

■ 北海道で秘湯の一軒宿の閉館相次ぐ
 Yahoo!ニュースで主題のニュースが載っていました。温泉ブームで都市近郊の入浴施設がにぎわう中、温泉通や地元住民などに親しまれてきた秘湯の一軒宿などが、北海道で今年相次いで閉館したそうです。100年以上の歴史を誇る「馬追温泉旅館」(北海道長沼町)や、蟠渓(ばんけい)温泉の「伊藤旅館ひかり温泉」(壮瞥町)、ニセコ昆布温泉郷の「鯉川(こいかわ)温泉」(蘭越町)など、少なくとも5軒です。施設の老朽化や後継者難などが理由で、温泉愛好家らからは惜しむ声が上がっているそうです。馬追温泉は1908年創業の一軒宿で10月末日に4代110年続いた歴史に幕を閉じました。春にはエゾヤマザクラが咲き誇り、札幌から車で約1時間という近さもあって多くの温泉ファンに愛されてきました。道内の2016年度の温泉宿利用者数は全国トップの1315万人で、5年前から2割も増えるなど、「温泉熱」は高まる一方、札幌市の豊平峡温泉が大手の旅行サイトのランキングで1位に輝いたほか、ススキノや狸小路の入浴施設が連日にぎわいをみせています。しかし1960年代に建てられた建物や施設が老朽化し、後継者もおらず、「近くに大きな日帰り入浴施設がいくつもできて、とても太刀打ちできない」と閉館を決めたそうです。

■ 道後温泉についてはそのうちに
 しかし道後温泉には驚きました。松山市と言う大都市にあり、奥座敷でもなんでもない、松山市そのものですが、繁栄しています。ひなびた温泉街がさびれて宿が廃業していくのが普通の日本温泉街で、ここは全くそんなことありません。でっかいホテルや宿が30数軒、収容能力はたっぷりあるのに、混んでいます。ソノワケは女にあり、と見ました。女性が行くから繁栄する、今や日本の温泉宿は、女性に好まれるようにしなければ未来はありません。女同士で行きたい温泉、女が男を連れてくるのです。企業の社内旅行は廃れました。老人会の旅行は安さが追求されます。しかし若い女性や、女連れだと老若問わずコスパよりもほかに求めるものがあります。それが何か分からないのなら、道後温泉に視察旅行に行くべきですね。泉質は別に大したことありません。じゃあ何だ?

■ またまた磐梯熱海
 このエッセイではたびたび磐梯熱海温泉を採り上げていますが、またまた行って来ました。293『秋のツアー』(2018年10月23日)でも紹介しましたが、今回は東北新幹線やまびこで1時間弱、郡山で磐越西線に乗り換えて新駅:郡山富田(奥羽大学あり)→喜久田(卸団地あり)→磐梯熱海(温泉あり)、16分で着くのですが、なにしろ1時間に1本しかありません。乗り換え時間考えて電車を選び日帰りです。そしてスニーカー履き、なぜなら今回は山歩きして、その後、「萩姫の湯」を楽しむ計画でした。
 磐梯熱海駅に降り立つと生憎の小雨でした。傘差して線路沿いの湯けむり緑地を歩き、踏切を渡ってすぐ越後街道(旧国道49号線)です。北西方向に歩くと、旅館一鳳館の先に「遊歩道」の看板があります。地図はコチラです。左折して蓬山(よもぎやま)遊歩道に入ります。磐梯熱海温泉街を流れる清流「五百川」に寄り添うように作られた遊歩道です。赤い欄干の橋を渡り、遊歩道を進むと、右手に五百川沿いの温泉街が見下ろせます。

蓬山遊歩道Map(郡山市のホームページから)

■ 遊歩道を進むと
 途中にはこの森に住む各種野鳥の絵があって、楽しめます。安子島の原生林と称され、樹齢300年のケヤキの森という看板があります。途中、左へ行って山登りしてぐるっと400m、直径2メートルを超えるケヤキの大木が30本程度群生するケヤキの森だよ、と書いてありますが、小雨とは言え、足元不如意なので止めました。看板によれば、散策路の両側に次々と現れるケヤキの大木に魅了されながら登って行くと、急に視界が広がって、そこで目にするものは・・・とありますが、この雨ではやめといたほうが無難です。君子危うきに近寄りません。
 更に上り下りしながら進んだら、左←四阿(あずまや)という標識が有りました。買ってきた弁当を食べるのに絶好と四阿を目指しますが、なにやら急角度の丸太の階段、グイグイ登ってそこから見下ろしたのが右の写真です。けっこう登りました。293『秋のツアー』(2018年10月23日)で紹介した、「伊東園ホテル磐梯向滝」が眼下に眺望されます。その右は「月の庭」ですね。更に進んで下り、清稜山倶楽部の裏に源泉神社があります。ここで右折して大きな道に出ると、磐梯熱海温泉の源泉管理している郡山市熱海温泉事業所が有り、足湯もありました。

蓬山遊歩道の四阿から磐梯向滝を見下ろす

■ 東北各地の温泉こけしが見られます
 越後街道に出て右折し、「伊東園ホテル磐梯向滝」の前を通って磐梯熱海駅のほうへ進み、太田総合病院という大きな病院前を通り、旅館一鳳館も過ぎて、踏切を渡り、栄楽館前に来ると「湯のまちギャラリー」というのがあってご自由にお入り下さいと書いてあります。どうやら栄楽館の施設みたいですが、中に入るといろいろな地域のこけし工人の作品がズラリと展示されていて見事でした。もちろん磐梯熱海こけしもありますが、栄楽館のご主人がこけし好きで、集めたもののようです。東北の温泉=こけしとも言えます。こけしと言えば鳴子が最も有名ですが、各地域のこけしの実物が展示されています。是非立ち寄りお薦めです→クリック
 その後は冷えた身体を湯に沈め、サウナに入り、「萩姫の湯」を楽しんで、あ〜極楽、ごくらく 郡山駅で蕎麦を食べてやまびこで帰って来ました。駅そばにしてはしっかり腰があって良いソバでした。

■ スーツケースキャスター交換
 先般、盛岡でスーツケースを引っ張って歩いていたら変な音がします。更に地面を擦るような音も...見たらキャスターの一つの車輪表面が剥がれています。これはイカンと思いながらもどうしようもなく、持ち上げ気味に歩きました。

従来のキャスター

古い車輪を切り取り、交換する

新しいキャスターになりました
 実は以前にも岩手県岩手郡岩手町で同じ経験をしました。ななめのつぶやき452『九戸城』(2011年9月11日)で紹介しました。それよりも、在京盛岡広域産業人会のホームページ『ARAGADA北緯40度 ご当地グルメ博 in いわてまち』のほうが詳しく書いてあります。2011年9月4日(日)のことです。「いわて沼宮内(ぬまくない)駅ではやてに乗り、大宮駅で下車したらキャスター付きスーツケースから変な音がするので見たら、片方のキャスターが無くなっていました。岩手県岩手郡岩手町の大町商店街でガラガラ引いて歩いているうちに、壊れてしまったのでしょう」という主旨のことが書いてあります。
これはグアムで買ったもので、キャスターが根元から無くなっているのですから修理もできないだろうということで不燃物ゴミに出して新しいものを買いました。したがってまだ7年ぐらいしか経っていませんが、車輪の表面にゴムが貼ってあり、それが剥がれています。本体はまだ古くなくてもったいないので直すことにしました。上左写真の車輪はまだご尊命ですが、表面ゴムに亀裂が入っているのでまもなくお陀仏です。壊れた車輪の車軸は6mmφ、これを糸ノコで切断、ホームセンターで部品購入、上中写真の通り50φ車輪¥148、六角レンチ用6φ半ネジ¥25、厚ワッシャー¥16×2、ナット¥8、皿ばね付きナット(ハードロックナット)4個入り¥108です。いずれも税別価格です。ハードロックナットを1個¥27とすれば、車輪一式合計¥240、税込¥259です。修理に出せば数千円取られるので安いものです。交換する上で一番時間かかるのは糸ノコ切断で、装着はあっと言う間です。ただ、もともとの車軸は上左写真のように車軸金属をかしめて取り付けてあり、突起部が少ないのですが、半ネジとナットだと上右写真の通り突起部が出ます。実用はともかく、みっともないのがイヤだという方は、右写真のように車軸長さに合った雌ネジ軸とボルト、両側ワッシャーのセットと車輪をDIY店やamazonで購入すれば良いでしょう。六角レンチで止められます。最近は車輪4個タイプのスーツケースが主流で車輪径は38mmが多いようです。4つ全部替えても大した金額にはなりません。

■ ヤバイ米中の対立
 米中の貿易戦争がハッキリ陰を落とし始めてきました。米国では中国からの輸入品値上がりで消費者に影響が出始めました。中国では成長が鈍化して、このままではヤバイと習主席も考えているでしょう。産油国は原油の減産を維持するそうですが、世界景気の後退を不安視して原油価格は一向に上がりません。景気の先行きを示す株価は乱高下しながらトレンドは下落です。そこへ中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)の孟晩舟・最高財務責任者(CFO)が米国の要請でカナダで逮捕されました。裁判所は2018年12月11日保釈を認める決定を下しましたが、猛反発している中国は、カナダに対して報復する構えを見せています。しかし中国としては米国と本格的に争うつもりは無く、それを見透かしているトランプ米大統領は、中国との貿易協議に資するならこの問題で介入する用意があると言ったり、孟晩舟氏をアメリカで裁判に掛けると述べて、中国を脅しています。

■ EU離脱を巡る英国の大ピンチ
 英国ではEU離脱を巡ってメイ首相が窮地に立たされています。昨週予定されていたEUとの離脱合意案の議会での採決を土壇場で延期しました。キング上院議員(元イングランド銀行総裁)など保守派は、「世界最悪の案」だとして、メイ政権を「高次の無能」だと酷評しており、メイ首相はなんとか保守党総裁としての立場は守りましたが、議会で採決にかけたら野党に加えて与党からも反対者が出て否決されるのは確実とされています。議会での採決を土壇場で延期し、EU首脳に対し、英議会の支持獲得のために、EU離脱合意案の最大の懸案事項であったアイルランド国境を巡るバックストップ条項(安全策)について、追加的「保証」を求めましたが、EU側は議会説得のために譲歩を引き出そうとする要求に逆に態度を硬化させ、メイ首相のこの要請を退けました。まさに「前門のトラ、後門のオオカミ」状態で進退極まりない状況に陥っています。このままでは@メイ内閣が倒れる、A離脱案の破棄、B2回目の国民投票、C合意なき離脱などが考えられます。Aの場合は、当面EUに残ることになります。大英帝国以降で最大の経済的危機の到来も考えられ、それはリーマンショックを超える凄まじいものになるかもしれません。

■ グローバル化がもたらした不気味な世界情勢
 ドイツではメルケル首相が党首を降ります。グローバル化を進め、難民を受け入れる寛容な姿勢を示してきたメルケル首相に対して、右翼的勢力が攻撃して国民の支持が首相から離反してきたことに気付いて、党首を降りて、首相も任期一杯で退任すると宣言しました。
 フランスではマクロン大統領が金持ちに優しく労働者に厳しいと批判され、大規模デモが勃発した結果、場当たり的な政策を打ち出してますます自分の首を絞めています。そもそも昨年電撃的にマクロンを大統領に押し上げたフランス世論は、グローバル化に伴う格差拡大に反発して、既存の政治家よりフレッシュなマクロンを選んだのに話が違うじゃないかと怒っているのです。その波はお隣のベルギーやオランダにも波及して、段々ヤバイことになってきました。まさしくピケティが『21世紀の資本』で指摘したとおりの状況に進行していることに民衆が怒っていると言えるでしょう。
 ロシアではプーチン大統領が年金改革で支持率急落しています。国民の目をそらすためにプーチンが何をしでかすかと考えると不気味です。それはウクライナか、EUか、中東か、または日本か、米国や中国と言うことは無いでしょうから、プーチンと最も親しい安倍首相との※※※※か?
 どこもかしこもとんでもないことになっているのは、「グローバル化」によって格差が拡大していることに民衆が怒っているからです。米国のトランプ大統領はまさに「アンチ・グローバル化」を訴えて当選しました。すなわち欧米先進国は「アンチ・グローバル化」に向かっていると言えるでしょう。

■ 世界に逆行して日本は?
 ところが日本では世界的な「アンチ・グローバル化」の波に逆行して入管法を変えて、どんどん海外から人を受け入れる方向です。これまで頑なに難民を拒絶してきた日本が180度面舵一杯?どちらかと言えば野党が前向きだったことにいきなり与党が身を乗り出して、実は一番戸惑っているのは安倍総理を支持してきた人たちではないでしょうか。心の中ではNOと思っていても、表立っては反対しない、そういう状況に今はなっているので、野党が「え〜っ、ウソでしょう、本音を言ってよ」と言ってもさっさと委員会を通し、本会議で可決してしまいました。海外では致命的なスキャンダルと思われるモリカケ問題があっても日本の首相は高い支持率を維持してやりたい放題です。しかし国民の4割が支持しているのですから、これはもうトランプさんと同じです。
 今の日本の政治では「丁寧に説明する」というのは「聞く耳を持たず何度も同じことを繰り返してやり過ごす」という意味です。「国民の皆さんに寄り添って」というのは「皆さんの言うことは分かるけれど国家百年の大計に鑑みて責任を果たすためにはやるべきことをやる必要がある」という信念の表現なのです。辺野古を見れば一目瞭然です。

■格差社会に転向した日本
 日本と言う国は八方美人で発展してきました。そういう意味では安倍首相は国際的に見ても頑張っています。国内的に見ても、国民のニーズを良く把握していると言えるでしょう。小泉元総理のような劇場的なところもありません。もうちょっと聞く耳と、やさしさと、言葉を大事にしてくれれば言うことはないのですが...歴代首相と違うところは「ウソ」ですね。本人は嘘だとは思っていないみたいですが、平然と、信念を持って、口から出る言葉は・・・信じられません。ピケティ教授は、「日本は典型的な格差社会だ」と断言しています。非正規雇用者の拡大や最低賃金の低さのためです。1990年に競争力世界一だった日本経済は、今や25、6位に落ちてしまいました。平均賃金もそうです。どうしてそうなったのか?格差が少なかった時代の日本は、皆一丸となって頑張って高度成長を遂げたけれど、バブル崩壊した後、一気に格差社会へと舵を切った、その結果が現在だ、とピケティ教授は言うのです。
 格差社会になれば子どもは減ります。子どもを産み、育てるのにはカネがかかるからです。今の大学の授業料では、金持ちでなければ子どもを進学させられません。みんなが貧しかった時代には、頑張って手を取り合って子どもを産んで、その成長を支えに頑張りました。いまそれが出来るのは正規雇用の人たちです。非正規の人たちはそれが出来ないがために独身で、やっと正規に成ることができて結婚できた人たちも、もはや子どもを産める年齢でなかったり、産めてもそれがもとで再び非正規に戻りたくないために子どもを作らないのです。夫婦共稼ぎで必死に頑張って生きているのです。昔は夫が働いて妻は専業主婦でも食べて行けたので子どもを産み育てられたのです。現状を変えられるのは政治ですが、「インバウンドの増加」や「海外人材の導入」などは場当たり対策で、本質を改善はしません。むしろますます格差を助長します。海外からやって来た人たちが社会の底辺となって、その怒りが爆発したら、日本も今のフランスみたいなことになるでしょう。

■ 日本と外国は違う
 金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の疑いで、日産自動車の前会長カルロス・ゴーン容疑者(64)と前代表取締役グレゴリー・ケリー容疑者(62)が逮捕され、拘留が長引いています。海外から見ると、あれくらいのことで日本の検察はなぜあんなに長く拘留するのだろうと不思議なようです。東京拘置所前には海外メディアがカメラを構えています。確かに高額報酬と言っても、ゴーンさんの実績なら米国ではあれくらいの報酬は当たり前だということでしょう。プロ野球やサッカーのスター選手ならもっと高額です。しかし、日本と外国は違う、ここがポイントで、日本の検察がこだわるワケはそこにあると思われます。
 産業革新投資機構の田中正明社長が経済産業省の約束違反に怒り、「日本は法治国家ではない」と過激なメッセージを残して民間出身の全役員と共に辞任しました。これは経済産業省の大失態です。これでは政府に従おうとする有力な経営者は余り居なくなるでしょう。ただ、経済産業省の味方をすれば、日本でそんなに高額な報酬を出すわけには行かないというので、前言を翻して待ったをかけたのだと思います。格差社会をこれ以上放置してはいけない、と日本の検察や経済産業省が考えているのであれば、それは真っ当です。日本と外国は違うのです。

■ 「次の質問どうぞ」
 北方四島問題での日ソ協議、難しい問題です。「次の質問どうぞ」を繰り返した河野外務大臣のマスコミ対応が批判されていますが、「言いたくても言えない」のです。心中お察し申し上げます。
(2018年12月16日)


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