100 日本の経済展望@
前々回予告しましたが、今回は日本の為替と今後の経済展望について触れます。この問題は簡単ではありません。そこで1回では語れません。日頃、日経平均株価を見ている方はお気付きだと思いますが、為替レートと日経平均株価は見事に連動してますね。円安になると株価が高くなり、円高になると安くなります。何故でしょうか?円安になれば、輸入品の価格が上がります。輸出競争力は上がりますが、日本で生産している自動車などは良いのですが、今や空洞化した大半の製造業は工場が海外に移ったので、円安の恩恵に預かれません。それなのに何故日経平均株価が上がるのでしょう? ■ 卑劣なテロリスト 民間軍事会社の湯川遥菜(はるな)氏に続き、ジャーナリストの後藤健二氏も「イスラム国」に殺害された模様です。前回触れたように、この件についてはマスコミが過剰反応だと思います。卑劣なテロリストに対し、日本国政府の対応も限られていました。批評も批判も無用です。日本人はひとつになって、こうしたテロ組織が生まれないように協力していくこと、それが後藤健二氏の願い、日本人に伝えたかったことでしょう。母親という石堂順子さんという方も、記者会見で反原発を訴えるなど、「何なんだ、このヒトは」と思いました。恐らく政府もそう思ったでしょう。 「イスラム国」のような過激派に対して、かつての米国ならば地上部隊を派遣して徹底的に攻撃しました。12『死』(2013年5月5日)で、アルカイダのビン・ラーディンを殺害する模様をオバマ大統領ほかがホワイトハウスの映像中継で見守った、ということを紹介しましたが、今や米軍は中東から引いています。シェールガス開発によって中東のオイル権益に踏み込む必要が無くなったからです。サウジアラビアは、米国のシェールガスを封じ込めるために原油価格下落を容認しました。これでロシア・ルーブルは暴落し、ベネズエラ、ナイジェリアなどはピンチです。ナイジェリアではテロ集団ボコハラムが台頭しています。「イスラム国」も原油に依存しているので、苦境に陥っていると見られます。このように、政治、軍事、経済は密接に関連して動いているのです。「イスラム国」が生まれる要因となったのが米国の中東介入でした。軍事力を持って対すれば、自爆やテロでの反撃を産む、力には力を、目には目を、となります。イスラム教は危険な宗教ではありません。仏教で言うところの慈悲の心をもって接すべきだと思います。 ■ 鴨川へ行こう 2015年1月27日は「大寒」でしたが、4月並みのぽかぽかと暖かい日でした。しかしこれは例外、それまでの寒さから一時的に暖かくなり、翌日からまた寒風吹きすさぶ冬に戻りました。1月30日には積雪もありました。2月1日は埼玉県東入間学童野球連盟の風の子駅伝でした。快晴でしたが、西高東低の気圧配置で、気温3℃、北風が吹きすさぶ中、子供たちの必死の頑張り、タスキを繋ごうとする姿に感動しました。寒い季節には暖かいところへ行こう、我が家より暖かいところと言えば南房総、会社の先輩が定年後は温暖の地で、と移住した鴨川に行こうと決めました。しかも折角行くならも、そしてシーワールドも楽しもう、というので、現在割引中のアクアラインを通って行くことにしました。昨週末の話です。 ■ アクアライン料金割引800円
■ ギリシャ総選挙で示された矛盾の行き着く先は? ギリシャで2015年1月25日に総選挙が実施され、反緊縮を主張する急進左派連合(SYRIZA)が第一党となり、右派「独立ギリシャ人」と連立を組み、SYRIZAのツィプラス党首が首相に就任しました。 今後、新政権はIMF(国際通貨基金)、EU(欧州連合)、ECB(欧州中央銀行)の通称トロイカと、国際支援プログラムについて交渉を開始します。ツィプラス首相は反緊縮を訴えて選挙戦を展開し、債務の減免や支払金利の引き下げ等を実現し、そこで確保した資金や税逃れへの対処により、リストラされた公務員の再雇用や最低賃金の引き上げ等を実施する考えを表明してきました。しかしながら、トロイカは緊縮路線の継続をギリシャに求めていますから、両者の溝は深く、プログラムの見直し交渉は難航が予想されます。 ギリシャの支援プログラムからの離脱は、ギリシャ国債の担保価値喪失、同国の金融機関の資金繰りへの深刻な影響などで、国内経済の大混乱をもたらすでしょう。国民の4分の3はEU残留を希望していますが、財政再建路線を転換して、もしEU離脱などということになると、エネルギーも食糧も輸入に頼る日本と同じ構造のギリシャですから、ハイパーインフレとなって大変なことになると予想します。ツィプラス首相は、総選挙で有権者の支持を得たこともあり、当面は反緊縮で強硬姿勢を示すでしょうが、最終的にはトロイカに妥協せざるを得なくなると思われます。EU離脱はいやだ、緊縮路線もいやだ、というのでは矛盾の回避はできません。緊縮路線の効果が顕れはじめて、トロイカも評価していた矢先の総選挙結果ですが、最終的には、双方が譲歩して、両者歩み寄りで現実的な落としどころを見出すしかないでしょう。 ■ ECB(欧州中央銀行)の量的金融緩和導入
■ ギリシャ危機を救えるのはドイツ ただ、ユーロ安が進むとEU各国は困るでしょうか?実はドイツにとっては好都合なのです。ユーロ安になれば、米国、中国、日本などに対して輸出競争力が上がります。ドイツの技術力は高いので、皆ドイツ製品を買いたいのです。上で触れたギリシャ危機を救えるのはドイツです。ユーロ安のお蔭で貯め込んだお金をギリシャに融資できるからです。ちなみにギリシャでは失業者が増えて労働者賃金も下がった結果、デフレとなってディスカウントスーパー(DS)が台頭していますが、それらDSはドイツの業者です。どちらに転んでもドイツが儲かる、それはドイツ人が勤勉で努力を惜しまない国民性だからです。そうしたゲルマン民族にとって、金儲けの上手いユダヤ民族は苦々しく映ります。今米国の金融を動かしているのもユダヤ人ですが、額に汗しないで金を稼ぐ連中は、彼らにとって最もイヤなヤツなのです。 EU諸国の中で財政危機に苦しんでいるのは、スペイン、ポルトガル、イタリア、ギリシャなど南欧各国です。大国フランスはさすがに入っていませんね。ドイツやオランダ、北欧諸国は厳しい自然の中で、頑張らなければ生きて行けません。だから無駄遣いしないし、助け合って生きる風土です。気候に恵まれているが故に南欧諸国は財政危機を迎えたのです。ドイツやオランダの国民の中には、「何故我々が怠け者を助けなければいけないんだ?」と公然と言い放つ人々も増えています。 ■ ドイツ車続々値上げ
日銀が追加緩和に踏み切ってから、円相場は7年4ヶ月ぶりの円安水準となり、日経平均株価は1万7,935円まで駆け上がりました。ただこれは追加緩和のためではないと見ます。黒田東彦総裁と安倍晋三首相の「決意」のほどを好感したためです。この信頼が切れた途端、大変なことになります。 ■ 「失われた20年」・・・停滞した日本、躍進した中国
■ 日本はもはや貿易立国に非ず 日本企業は、この対ドルレート、元レートでは、日本でものづくりしても競争力が無いので、工場を海外移転しました。特に中国人の人件費は日本よりはるかに低いので、労働集約型ものづくりは続々と中国へ向かいました。日本より先に欧米は中国でのものづくりと販売に進出し、利益を得ました。独フォルクスワーゲン(VW)が今やTOYOTAに迫る世界第2位の自動車メーカーになったのは、いち早く中国に進出したからです。海外へついていけない日本の中小企業は工場をたたみました。大田区の町工場の姿がしばしばテレビで採り上げられました。日本のものづくりを支えてきたピラミッド構造は、ガラガラポンと崩れて行きました。もはや日本は貿易立国とは言えません。これだけ円安になっても、貿易赤字が定着したということが、これをハッキリ示しています。今や我々の着ているものは日本製は稀少です。食べ物も買うときに「生産国」を見てしまいます。漬物だって、冷凍食品だって、中国産が増えています。百円ショップ、ほぼ中国です。家電製品さえ輸入する国になりました。秋葉原へ行って中国人が、Made in Chinaの日本ブランド家電製品を買う不思議、日本へ来て何故ツムラの漢方薬を買うのかの不思議、すべて理由があります。日本はかつての「アメリカ化」した、と言えます。違うところは資源の有無です。「失われた20年」を取り戻せるか、無理ですね。その理由は次回以降で詳述します。 ■ 円安・ドル高へのV字回帰はあるか?
■ 景気は良いのか悪いのか 日本の景気は現在良いのか、悪いのか。少なくとも株高になって「資産デフレ」が解消されたことで、企業経営者も個人も気持ちが明るくなっています。ただし国民の暮らしは?というと、増税、物価上昇、社会保険料アップに賃金上昇が追い着いていないので、実質所得は減っています。したがって国民はディスカウントストアに走り、なかなかインフレになりません。ただし、住宅や高級消費財は上がっています。 一般に国家経済政策というのは@金融A財政B為替(通貨)の3点です。基本的にはこれらは財務省の所管です。金融の中の「金利政策」は日銀の所管です。アベノミクスでは、なぜか麻生財務大臣ではなく黒田日銀総裁ばかりが登場します。為替介入も財務省の仕事です。野田総理の頃はしばしば為替介入していましたが円安にはなりませんでした。ところが安倍総理になったら為替介入しないのに円安になりました、何故でしょう? ■ 経済原則に適合しない日本円の為替レート
■ 農協改革?その前にやることがある そんな景気の悪いデフレの国の通貨は当然安くなるのが経済原則です。ところが安くなりませんでした。しかし株安で、地価は下落し、金利は下がりました。景気が悪いことの証明です。円安になれば、海外製品は高くなり、日本製品は海外で安くなるので競争力が増し、日本の景気は好転したはずです。この当たり前の経済原則が機能しなかった原因が円高の持続だったわけです。更にこの原因を深堀りすると、為替で米国金融界から頭を押え付けられたことと、外貨に向かわずマネーを日本国債に塩漬けした日本政財界の姿勢です。海外投資して円を売ってドルを買えば、円安ドル高になったはずです。この超円高ドル安では、当然ながら日本の農産物は海外では高過ぎて競争力はありません。そこで関税や補助金で保護します。補助金が出る業界には、できるだけ補助金をもらおうと、政治の圧力団体が生まれます。今安倍内閣は農協改革を言っています。確かに全中は要らないかもしれません。ただし、間違っていけないのは、円高が日本農業の競争力を殺いだということです。円高のままのTPPなんて自殺行為です。まずは為替を正常化させることが第一です。それは日銀の役割ではありません。 まだまだ言いたいことがたくさんありますが、長くなるので、また別の機会とします。 ■ 東芝過去最高益、SKハイニックスからの和解金も寄与 東芝が2015年1月29日発表した2014年4〜12月期の連結営業利益は前年比6.2%増の1,648億円となり、9ヶ月累計として過去最高となりました。NAND型フラッシュメモリーがスマートフォン向けなどで好調が続き、半導体事業(電子デバイス)がけん引したものです。一方で、赤字が続くテレビは、海外の開発・販売から撤退する抜本改革に踏み切るそうです。以前紹介しましたが、NAND型フラッシュメモリー技術に関する機密情報を不正に取得したとして、韓国SKハイニックスを訴えていた民事訴訟で、同社と和解し、ハイニックスから2億7,800万ドルの和解金を貰うそうです・・・54『技術流出』(2014年3月16日)参照 ■ スカイマーク民事再生適用申請 国内航空3位のスカイマークは、自力再建を断念し、民事再生法の適用を申請しました。格安航空会社(LCC)などとの競争で、従来機である米ボーイングB737(177席)より大型の欧州エアバスA330(271席)を導入したものの、利用者が伸びない上に燃料費がかさみ、さらなる業績悪化を招きました。また国際線への参入を目指し、年間売上高の約2倍に相当する1,900億円をかけて、エアバスの巨大旅客機「A380」6機の購入を計画しましたが、断念して、エアバスから7億ドル(約830億円)の違約金を求められる事態に発展しました。分不相応の経営判断でした。三菱リージョナルジェット(MRJ)など、コンパクトで燃費の良い航空機が求められている中で、時代に逆行していると懸念しましたが案の定でした。 スカイマークはパイロットの給与が安く、LCCへの流出が続き、養成費用を返せと退職パイロットを訴えており、最近の経営姿勢に疑念が持たれていました。 ■ クロネコメール便;3月末で廃止
1980年代から続いた「信書論争」に、「メール便の廃止」という形で問題提起するヤマト運輸。どう見てもヤマト運輸の言い分に理がありますから、農協改革、TPPを進めようとする安倍晋三ならば、問題点を浮上させれば正しい判断をしてくれるだろうとの期待でしょう。どんな田舎にも届けなければならないので、個人利用のクロネコメール便は正直赤字でしょう。したがって経営的に考えればメール便の廃止は順当な判断です。しかしヤマト運輸には中興の祖、故・小倉昌男氏が「規制の壁」と戦い続けた伝統があります。この先はどのように対峙するのか、最後の小倉チルドレン山内雅喜社長の戦いに注目です。 (2015年2月1日) |