
54 技術流出
| 恐ろしい事件が、絶え間なく起きてきます。おぞましい、怖い、恐ろしい、何故こんな世の中になったのでしょう?柏通り魔のT容疑者は、酒鬼薔薇聖斗を崇拝していました。ハムスターをスタンガンで殺したり、ウサギをナイフでなぶり殺ししたりしていたようで、少年院にも2回入っています。周りはみんな“危険”を察知していたのに、なぜ、ひとり暮らしをさせていたのでしょうか。 ネット上ではガセネタが横行していますが、T容疑者は家族も扱いに窮し、ひとり暮らしをさせる他に道がなかったのでしょう。悲しい話でもあり、怖い話です。自らはヤフーチャットにはまり込み、セレブニートと名乗っていましたが、実態は程遠かったわけで、揚げ句、孤立を深め、サバイバルナイフで連続殺傷という凶行に走りました。ニートを抱える親にとっては他人事とは言い切れない、恐ろしい事件です。 ■ アンネの日記などユダヤ人迫害関連本が相次いで破られた器物損壊事件 東京都内の図書館や書店で「アンネの日記」などユダヤ人迫害関連本が相次いで破られた器物損壊事件で、被害にあった南池袋のジュンク堂書店に不法侵入したとして建造物侵入容疑で警視庁捜査1課に逮捕された小平市に住む36歳男が「破った本の紙片は捨てた」と供述し、その供述通りの場所から紙片の一部が見つかっており、捜査1課は男が関連本を破った疑いが強まったとして、器物損壊容疑で2014年3月14日男を再逮捕しました。ただ、精神科通院歴があり、言動も意味不明のため、慎重に捜査しているそうです。 ■ ソニーはどうした
■ 東芝の技術を韓国企業へ不正提供 東芝の主力製品「NAND型フラッシュメモリー」の研究データを韓国の半導体メーカーに不正提供したとして、警視庁捜査2課は北九州市在住の52歳の男を逮捕しました。この男はフラッシュメモリーメーカー「サンディスク」の元社員で、提携先の東芝のフラッシュメモリー製造拠点である三重県四日市市の工場で、秘密情報として管理されていた研究データをUSBメモリーなどにコピーした上、転職先の韓国の半導体メーカーに提供した容疑です。2008年の話、ずいぶん古いですね。この容疑者は「すべて間違いありません」と容疑を認めているそうです。この男は2011年6月に同社を退職して以降は無職でした。 日本の技術が韓国や中国へ流出していることは公知です。金曜日の夕方成田発、日曜の夜成田着など昔の話です。21世紀に入ると、筆者の知り合い(他社の人)でも韓国のトップメーカーへ転職した人もいました。正々堂々と日本のトップレベル技術者をスカウトするのです。年収2千万円台から3千万円台を提示されたら心が動くのでしょう。あるベンチャー企業の社長は「売国奴だ」と怒っていました。しかし、労働者である以上、転職は自由です。上記の容疑者は不正に研究データを渡したので罪に問われたのですが、技術者の頭の中身までは規制できません。技術者が韓国人に技術教育をしたとしても、それは罪には問えません。こうして韓国のトップ企業は技術を蓄え、折からの円高ウォン安の波に乗って、一気に日本の大手メーカーを淘汰して行きました。円高ウォン安も李明博(イ・ミョンバク)の手腕と筆者は見ています。 ■ 東芝が韓国メーカーを提訴
■ どうやって防ぐ?技術流出 高額報酬で釣られたから「売国奴だ」とか、「非国民」とか言われても、どうでしょうか?一時期韓国企業に転職した人も、その後は辞めています。シュンの技術を手に入れたら、後は用無しです。一時的に高額報酬を払ったとしても、技術の価値に比べたら安いものです。日本ではまだ転職して待遇が上がって行く企業文化はなかなか育っていません。外資系企業のトップなどにはありますが、高級技術者でも待遇は高くありません。 一方で、企業では今「グローバル化」と言っています。米国などでは、高額報酬でスカウトするのは当たり前です。マー君の例でわかります。161億円ですよ。まあこれはプロ野球だから、と言うのであれば、技術者の例を出しましょう。もちろん米国では普通にスカウト合戦が行われています。企業とすれば、いかに自社の大事な技術者を囲い込むかに必死です。日本の、高輝度青色発光ダイオードや青紫色半導体レーザーの製造方法などの発明・開発者として知られる中村修二博士はどうでしょう?徳島大学工学部を卒業後、同大学大学院工学研究科修士課程を修了し、京セラに面接に行ったら、なんとあの稲盛和夫氏に面接を受け、内定を貰いましたが、既に学生結婚し、娘も居て、家族の関係から、地元の日亜化学工業に就職し、商品開発に携わりました。 ■ 日亜化学・中村修二博士の転身 その後20年間の在職中にいろいろな特許を取り、賞をたくさん頂き、会社もグングン売り上げを伸ばして有名な会社になりました。徳島のローカル企業が、いまや連結8400人の社員を擁する大企業です。徳島大学工学部は日亜化学工業のためにある、と言われるほど、卒業生は日亜化学工業に進みます。しかし、中村は「日本の企業にこれ以上しがみついていても、何もいいことはない。プロ野球選手に習ってFA(フリー・エージェント)宣言しよう」と、 転職を決意しました。それはかねての持論であった、「日本企業は優秀な開発技術者や研究者を正当に評価しない」という理由でした。技術開発で名声を博すぐらいの人は、それなりに鼻の高いところがあります。ある程度の高みを極めたら、更にもうひと花咲かせたい、という気になるのでしょう。米国には、アメリカンドリームというものがあります。こうしてアメリカ合衆国のカリフォルニア大学サンタバーバラ校(UCSB)の教授となりました。 ■ 成果評価はカネによって表現される
■ 中村氏と日亜化学工業との裁判 1999年に中村氏が会社を辞めた後、裁判沙汰になります。これは中村氏が2000年5月に米Cree社と契約を結び(コンサル契約?)、Cree社が同年9月に日亜化学工業を訴えました。同年12月日亜化学工業はCree社を反訴するとともに中村氏も訴えて、翌年8月に中村氏は日亜化学工業を訴えるという訴訟合戦に突入しました。
■ 日亜化学は中村修二氏に8億4千万円を支払え 日亜化学は、今となっては特許は価値が無い、としてこれを放棄しました。価値が無いものにカネなんか払えるか、というわけです。東京高裁は、2005年1月、特許などの対価等として、日亜化学工業側が約8億4千万円を中村氏に支払うことで和解を勧め、成立しました。日亜化学が特許の価値が無いとして放棄したのは後の話で、青色LEDでたんまりもうけたのは中村氏とその部下たちの功績であることは間違いありません。先行者利得を日亜化学は得たのです。中村氏とすれば、巨額のおカネが欲しかったわけではなく、正当な対価報酬を認めさせるのが目的であり、不満ではあるが研究生活に戻りたいと和解を承諾しました。一方で弁護団とは別に記者会見して「米国ならこんなこと有り得ない、日本の司法は腐っている」と吐き捨てました。 ■ 中村修二なくして今日の日亜化学無し おカネが欲しかったわけじゃない、と言っても8億4千万円は巨額ですね。でもマー君に比べたら中村氏の言い分はもっともです。世界中から賞を頂いて、会社に巨額の利益をもたらしたことに対する生涯報酬が、野球の投手の1年分よりずっと下なのです。7年161億円のマー君は年棒23億円です。 日亜化学工業の世論に訴える作戦とは、日本の他の企業と比べて日亜化学がそんなにひどい扱いをしたわけじゃない、ということです。1999年に中村氏が会社を辞めた45歳のときの年収が2千万円弱、決して他社に比べて低いとは言えない、とか、11年間で同輩に比べて賞与などで6千万円以上多く支給したとかいうものです。また中村氏が常に論文でひとり目立って、功績を独り占めしたが、実はたくさんの研究スタッフがサポートしてこの成果が得られたことが世間的に評価されていない、というものです。案の定、世論は中村氏を金の亡者というように受け止め、冷たい視線を向けました。しかし中村修二という人が居なかったら、もし京セラに行っていたら、日亜化学はどうなっていたでしょう?若い人にも権限を与える京セラでは、中村氏は間違いなく成功しました。日亜化学の今日の隆盛は無かったと思われます。それほどにカリスマ研究者、技術者の存在というのは、この世界では大きいのです。 日亜化学工業はこの件以来、法務部門を強化し、今や裁判で闘うのが得意な会社になりました。米国などは民間企業だけでなく、お役所も裁判で争う社会ですから、日亜化学工業のようにグローバルにビジネスする会社にとっては、災い転じて福と成す、中村修二サマサマだったかもしれませんよ。 ■ 正当な対価報酬を与えること、リストラは間違い
■ 優秀な研究者を抱え込めない日本企業 前述の赤崎勇教授もパナソニックでそれなりの地位は与えられましたが、やはり満足行く研究は大学で、ということで名古屋大学に転じました。日本の企業は中村教授の例もそうですが、優秀な研究者を囲い込むだけの度量は無いのでしょうか?東芝でフラッシュメモリーを発明したのは舛岡富士雄氏です。東北大学で西澤潤一先生の教え子です。日本全国で西澤潤一先生の教え子は大活躍しました。東芝で技監という、研究費も部下も付かない役職を提示された舛岡氏は、研究を継続させて下さいという懇願も受け入れられないために退職して東北大学教授になりました。これってスゴイ話ですよね?東北大学教授になれるような人財を何故窓際に追いやろうとしたのでしょう?2004年1月中村氏に200億円を支払うよう日亜化学工業に命じた東京地裁判決の後、2004年3月舛岡氏は東芝に発明への貢献対価として10億円の支払いを求めて東京地裁に提訴しました。これも2006年7月、東芝が舛岡氏に8700万円を支払うことで和解しました。でも、東芝の現在のフラッシュメモリー事業の隆盛を見ると、いかにも少ないですね。 ■ 「光通信の父」と言われる西澤潤一先生 西澤潤一先生はLED(発光ダイオード)や半導体レーザー、光ファイバーの草分けで、「光通信の父」と言われており、世界中の科学者や技術者が西澤先生の理論に基づいて研究し、開発して、ノーベル賞を頂いた人が何人もいます。日本全国に散らばった西澤潤一先生の教え子は、それぞれの企業や大学で大活躍して、日本はこの分野でいまだに世界一です。東北大学の総長、岩手県立大学の学長、首都大学東京の学長を歴任し、今は上智大学にいらっしゃいます。すなわち、単に優れた研究者であっただけではなく、優れた教育者としてたくさんの教え子を世に送り出した方です。本来であれば、これまでの日本のノーベル賞受賞者と比べても、最右翼に居て良い方、極端に言えばこの方が貰えない賞など権威が無いと言えるぐらいにスゴイ方なのです。電気電子技術の学会であるIEEEは、電気電子に関する標準化活動で有名であり、ここに認められないと、ISOすなわち国際規格にはなれないという、電気電子の最高権威機関ですが、ここにはJun-ichi Nishizawa Medalという賞があって、電子デバイスとその材料科学の分野で顕著な貢献をした個人、団体を顕彰しています。これでお分かりのように、国際的に西澤潤一先生は最高権威と認められた方なのです。 ■ 西澤潤一先生がノーベル賞を貰えないワケ それなのに何故ノーベル賞を受賞できないのか?それはこの賞が極めて政治的なものだからです。選考委員会があって世界中の学者が選抜されて推薦します。どうしても欧米の学者に偏向します。欧米の学者にあげようとしたら、日本の学者が同程度以上の業績を上げていた、仕方ない、日本の学者にもあげるか、ということで日本人が受賞する、といった具合です。ところが、西澤潤一先生は、どうしても草分けで他に比類なき業績なので、一番にもらっても良いような気がしますが、実はノーベル賞選考委員会から推薦人として指名された日本の学者が候補を推挙しないのだそうです。選考委員会が再考を求めてくるほど極端に少ないのだそうです。それは根底に派閥や嫉妬があるからと言われています。特に医学界でその傾向が顕著だと言われています。この偏狭さ、情けない。西澤潤一先生が受賞しないなら赤崎勇教授も中村修二教授も難しいですね。 iPs細胞の京都大学山中伸弥教授のように、国民的世論が盛り上がってノーベル賞が期待されれば、医学界といえどもこれは話が別なのでしょう。日本で物理学分野で受賞者が多いのは、湯川秀樹博士の受賞をうけ、この分野の学者たちが偏狭でないのだと思われます。日本のノーベル賞候補は東京理科大学学長の藤嶋昭先生他いらっしゃいますが、西澤潤一先生は偉大過ぎるので、今更候補に上がらないほうが良いかもしれません。政治的圧力が働く賞なので過去ロシアの学者などは明らかに冷遇されてきました。 ■ 日本技術の中韓移転
■ 競合となったPOSCO、今も協力関係の宝山鋼鉄 中国の宝山鋼鉄も新日鉄が手取り足取り育てた企業です。こちらは今も合弁などで協力関係にあります。というより、宝山鋼鉄のほうが今や旧新日鉄より粗鋼生産量が上回りました。それほどに中国市場は巨大で、伸びています。新日鉄とすれば日本企業が中国に進出していますから、その需要に応えるには中国にやはり進出しなければいけません。特に自動車用鋼板は高級技術で、日中の利害が一致するわけです。 ところが国内市場が小さい韓国では、力を付けたPOSCOには不足です。そこでインドネシアで、現地の国営鉄鋼メーカーと合弁を組み、高炉を備えた製鉄所を建設しました。インドでも高炉建設に乗り出しました。すなわち新日鉄の向こうを張って、商売敵となったわけです。そこでかつては世界一だった新日鉄は、住金と合併して、アルセロール・ミタルに次ぐ世界2位となり、資金力を増やしてポスコに対抗することにしました。タイでは冷延鋼板メーカー、サイアム・ユナイティッド・スティールの筆頭株主として過半数の株を持ち、インドでは現地最大手のタタ・スチールと冷延鋼板の合弁会社を設立しました。中国、インド、アセアン、すべて狙いは自動車です。 ■ STAP論文で崖っぷち 小保方晴子さん、どうしちゃったの?余りにお粗末過ぎます、なおかつ、日本の研究そのものが疑いの眼で見られるという意味では、大変に罪深い事件です。2011年に博士号を取得した早稲田大学の博士論文まで取り下げる意向のようですが、そういう問題じゃない、という気がします。日本の一流大学で、教授でさえも「剽窃」で辞任が相次ぐ現状は、たいへん憂慮すべきです。それにしても、日本の首相までもが喜んだのに、一転天国から地獄とは・・・・ ■ あけぼのラストラン
■ 宇津井健さん逝去
(2014年3月16日)
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