101  日本の経済展望A

 2月3日は節分でした。節分は、文字通り季節を分ける日であり、立春・立夏・立秋・立冬という、季節の始まりの日の前日のことです。江戸時代以降からは「節分」といえば立春(毎年2月4日ごろ)の前日を指す場合が多く、これは節分のなかでも、旧暦の新年の始まりに相当する「立春」の前日にあたる節分がもっとも重要視されたためだと考えられています。したがって、寒い冬が終わり、いよいよ春だという意味で心浮き立つ日ですから、節分のさまざまな行事が行われるようになったようです。

■ 豆まき
 節分といえば豆まきが定番ですね。豆をまき、豆を自分の年齢(数え年)の数だけ食べます。また、自分の年の数+1つの豆を食べると、体が丈夫になり、風邪をひかないという言い伝えがあるところもあります。豆は「魔滅」に通じ、鬼に豆をぶつけることにより、邪気を追い払い、一年の無病息災を願うという意味合いがあります。豆をまく時は「鬼は外、福は内」が一般的ですが、地域や地方によってその掛け声もさまざまあるようです。ちなみに新潟の佐渡一番の街、両津では昔、田植えが暴風雨に遭った時、鬼が助けてくれたという伝説があるため「福は内、鬼も内」というようです。卑近で有名なのは、埼玉県嵐山町の川島地区にある鬼鎮神社で、その名の通り「鬼」を祭った神社ですから、「鬼は外」は困ります。節分祭には「福は内、鬼は内、悪魔外」といい、福豆やみかん、団子などをまくそうです。

■ 節分いわし
 「鰯(いわし)の頭を柊(ひいらぎ)の枝に刺したものを玄関に飾る」という節分いわしの風習は近年になってからのもののようです。主に西日本では鰯を食べる習慣があるそうですが、これは節分いわしに由来しています。鰯を焼くと出る激しい煙と臭いで邪気を追い払い、そして柊の針で鬼の眼を刺すという魔よけの意味があります。また鰯は青物魚で、DHAやカルシウムなど栄養が豊富なので、その鰯を節分に食べることで健康や無病を願うという意味合いもあるのかもしれません。

■ 恵方巻き
 節分の行事として近年有名になったのは恵方巻き。バレンタインのチョコレート、クリスマスのケーキ同様、どうもお店の策略に乗せられている気もします。近畿地方で始まったとされている巻き寿司ですが、最近ではスーパーやコンビニでも売っていて、予約するほど人気の商品もあるようです。その年の「恵方」を向いて願い事を思い浮かべながら、包丁を入れずにそのまま食べることで「縁を切らない」という意味が込められています。また、七福神にちなんでかんぴょうやきゅうり、伊達巻など7種類の具材が入れられていて「福を巻き込む」という意味も込められています。ちなみに今年の恵方は「南南東」だそうです。

■ トヨタ最高益
 トヨタ自動車は2月4日、2015年3月期の連結営業利益(米国会計基準)見通しを前期比18%増の2兆7千億円に上方修正すると発表しました。売上ではありません、営業利益です。最高益を見込んでいた従来予想をさらに2千億円上回ります。1円円安になれば350億円の利益が出ると言われるTOYOTAですから、円安を追い風に輸出採算が上向き、北米では原油安で利幅の厚い大型車が伸びているそうです。さらに燃料電池車も発売し、環境対策でもトップを走り、笑いが止まらない状況のようです。

■ シャープ300億円の最終赤字
 シャープの2015年3月期連結決算は、300億円の最終赤字に転落する見通しとなりました。従来予想は300億円の黒字でした。同社は14年3月期の連結決算で最終損益を2期連続の赤字から黒字(116億円)に転換。「経営再建が軌道に乗った」と株式市場から評価されましたが、それも束の間、今期は再び最終赤字の見通しとなり、経営再建が迷走していることを示しています。円安で競争力が着いて良いはずですが、液晶のユーザーである中国メーカーから買い叩かれている模様です。IGZOのような良い製品があってもダメなんですかね、ハイテク産業の難しさです。

■ 2014年経常黒字過去最少、電子部品の輸入急増
 財務省が2015年2月9日発表した2014年の国際収支速報によりますと、日本の経常収支の黒字額は前年より6,077億円少ない2兆6,266億円となり、比較できる統計となった1985年以降では最少の黒字額となりました。景気が良くなって、不動産プチバブルと言われた2007年には25兆円ぐらいあったはずですから隔世の感がありますね。エネルギーを中心に、円安で輸入額が膨らんだようです。このうち貿易収支は10兆3,637億円の赤字で、前年より1兆5,903億円拡大しました。輸出が9.3%増に対し、輸入は10.3%増で、輸出の伸びを上回りました。それよりも半導体など電子部品の輸入が17.4%も増えたことが大きいようですが、つい先頃まで日本はこれらの輸出で稼いでいた国だったのに様変わりです。それだけ工場が海外へ出て行って、前回書いたように、もはや日本は貿易立国ではなくなったということです。それどころか、今のままでは経常赤字の国になって、どんどん国民が貧しくなっていくでしょう。
 いまアベノミクスで景気が良くなったと言われていますが、貿易赤字が定着し、経常赤字も目前となって、ドンドン日本の金融資産が減っていく現状で、何故景気が良いと言えるのでしょう。直近2007年の景気が良いというときには庶民には全く実感がありませんでした。確かに不動産プチバブルではありましたが、デフレが底堅く続いていたからです。ところが翌年のリーマンショックで日本の好況は打ち消され、ドーンと奈落の底に落とされました。日本だけでなく、全世界が不況に陥りました。その引き金は住宅に対するサブプライムローンという”ウソ”でした。冷静に考えれば、ウソだと分かるものでも、欲に目がくらんだヒトにはそれが見えません。ネズミ講もそうです。現在の景況感は株価の上昇によるものです。

■ 中国の1月輸入は前年比2割減、5年8ヶ月ぶりの落ち幅
 中国の税関総署が2015年2月8日発表した1月の貿易統計によると、輸入が前年同月より19.9%少ない1,402億ドル(約16.7兆円)で大幅な減少となり、その幅は5年8ヶ月ぶりの大きさです。中国の需要の弱さが、中国向けの輸出に期待する他の新興国などの経済に深刻な影響を及ぼす懸念があります。日本からの輸入も14%減ですから、日本にとっても大変困る事態です。更に中国をお得意様にしているEU諸国にとっても事は深刻です。輸入車が18%減ですから、特にドイツは痛いでしょう。輸出も前年同月比3.3%減の2,002億ドル(23.8兆円)で、10ヶ月ぶりに減りました。輸出減も続くことになれば、中国の景気減速がさらに深まる可能性があります。

■ 豪ドルの長期保有は危険?
 ところで「5年8ヶ月ぶり」ということの意味は大変ですよ。そう、リーマンショックの影響で、全世界の経済が大混乱に陥った時以来ということです。あの頃を思い出すと、日本も大変でした。赤字企業が続出し、リストラの嵐が吹き荒れました。思い出したくも無い、最悪の経済状況でした。つまり、中国経済は今、あの頃並みの大変な事態になっているということです。最近「豪ドルの長期保有は危険」とインターネットで囃しているヒトがいます。維新の介とかいうトレーダーらしいですが、それがその通りかどうかは分かりません。ただ、過去豪ドル預金をしてきた日本人は大変な利益を上げています。正しく言えば「利益を上げている」のではなく、「金融資産が増えている」と言うべきでしょう。利益や損失は処分しなければ確定しないからです。オーストラリアは資源の豊かな国で、その地理的優位性から、中国や日本への輸出で安定成長してきました。世界の金融危機の中でも成長し続けた数少ない国です。金利が高いので、オーストラリアの銀行に預金すると、かつての日本みたいに順調に元利合計が増えていきました。しかもこの5年で日本円に対して為替が3割も高くなっていますから、例えばリーマンショック後に100万円豪ドル預金した日本人が今下ろしたら150万円になっているでしょう。1千万円の人は1千5百万円です。笑いが止まらないですね。ただ、USドルに対する豪ドルは2011〜2012年頃は同じく3割高くなっていましたが、今急落して5年前より更にUSドル高豪ドル安になっています。だから恐らく豪ドルから米ドルに乗り換えたほうが安全というのではないでしょうか。この豪ドル安の理由は中国経済の不振でしょう。中国が鉄鉱石や石炭の輸入を減らしているからです。

■ G20開幕
 日米欧と新興国による20ヶ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議が2015年2月9日、トルコのイスタンブールで開幕します。原油安や欧州経済の低迷など世界経済を中心に議論されるようですが、フランス連続テロ事件や日本人人質事件を受けてテロリストの資金を封じ込める対策も議題に上るとみられます。日本から麻生太郎副総理兼財務・金融相と黒田東彦日銀総裁が出席します。

■ 日本の経済展望…続き
 前回の内容は、見出しで見ると
  ■ ギリシャ総選挙で示された矛盾の行き着く先は?
  ■ ECB(欧州中央銀行)の量的金融緩和導入
  ■ ギリシャ危機を救えるのはドイツ
  ■ ドイツ車続々値上げ
  ■ “黒田バズーカ第3弾”発射はあるか
  ■ 「失われた20年」・・・停滞した日本、躍進した中国    
  ■ 日本はもはや貿易立国に非ず
  ■ 円安・ドル高へのV字回帰はあるか?
  ■ 景気は良いのか悪いのか
  ■ 経済原則に適合しない日本円の為替レート
  ■ 農協改革?その前にやることがある

でした。

1950年以降2011年末までの円・ドルレートの変遷
 世界的に見ると現在は米国のひとり勝ち状態ですが、日本は「失われた20年」の間、GDPが低迷し、この間米国は2.6倍、中国や韓国はもっと飛躍的に伸びて、今や日本は一人当たりGDPで世界第24位まで落ち込みました。シンガポールが8位ですよ。購買力平価GDPでは世界第27位です。「国民の幸せはGDPじゃないよ」とおっしゃる貴方、いえいえ国民から幸福度アンケートを取った結果でも、日本はだいぶ下なんですよ。この「失われた20年」は「プラザ合意」から始まりました。日本は高度成長で、為替が変動相場制になって円高になっても、何するものぞと好調でした。このままでは日本にやられてしまうと焦った米国が主導して国際会議を開いて、日本円をもっと円高誘導しようということになりました。240円/ドル、150円/元が一気に円高になり、2011年には80円/ドル、12円/元ですから、USドルに対しては3倍、中国元に対しては10倍以上です。日本の製品は高くなり、輸入する外国製品は安くなりました。
 これはもはや競争できる差ではありませんよね。そこで日本は高価格高品質路線に転換し、労働集約型製造業は中国に任せて、必死に頑張りました。輸入する外国産品が安いので、物価は上がりません。それなら給料も上げなくても良いよね、ということで賃金も上がりません。典型的デフレです。日本が勢いを失ったことで競争力を得た諸外国はグングン成長しました。一番は中国です。新興国も台頭しました。すなわち、「失われた20年」の低迷は、円高・デフレのせいでした。じゃあ、円安・インフレにしようじゃないか、というのがアベノミクスです。

■ 長期金利が上下動しつつ長期低落
 2015年2月3日の債券市場で長期金利が急上昇しました。新発10年物国債利回りは前日よりも0.075%高い0.360%と、昨年12月18日以来の水準を付けました。財務省が2月3日に実施した10年物国債入札で、長期金利が低過ぎることへの警戒感から、証券会社などの応札が十分に集まらなかったのです。それはそうですね、この金利ではお金の塩漬けみたいなものです。これまで長期金利は日銀の大量購入を背景に低下が続いており、10年債は1月20日に0.195%と過去最低水準を更新していました。ただ「日銀が一段の追加金融緩和に慎重」との見方から、証券会社などが国債の購入を手控えて、日銀に揺さぶりをかけたのでは?というのが筆者の推測です。右グラフを見ればわかりますが、短期的に乱高下を繰り返しても、長期的には長期金利はまっしぐらに下がっています。それはそうですね、日銀がジャブジャブお金を印刷して、金融機関にお金を貸しますから、低金利であれ、国債を買えば黙っていても儲かるのです。
出典:http://jp.ecodb.net/finance/trans/fnc_rate_gby10.html

■ 政府の思惑とは裏腹に、個人投資家の株離れは進む一方
 アベノミクスで株価がグングン上昇しています。アベノミクスでの上昇速度は朝鮮戦争のとき以来と言った人がいました。しかしその実態はどうなのか?右のグラフをご覧下さい。急上昇していると言っても、この35年間の中では低迷の中で高いほう、ぐらいの感覚です。従来であれば今が天井でまた下がっていくのでは?というグラフですね。明らかに飽和状態に見えます。下のグラフはどうでしょうか。米国のダウ・ジョーンズです。スゴイですね。グングン上がっています。しかし、やはり頭打ちかな?というようにも見えます。
 ここで分かったことは、日米の株価の基本的な違いです。日本は底這いですが、制御されているから振動しているのです。上下しながら、平均軸は上がっていません。むしろ緩やかに下がり気味です。一方米国は上下動はありますが、平均軸はグイグイ上がっています。ただ、日本でも過去にはこの制御が出来なくて、すなわち歯止めが効かず暴走したことがありました。金融バブルです。平成に入ったばかりのときですから、「平成バブル」とでも言いましょうか。上昇も下落もすさまじく、槍ヶ岳どころじゃありません、刀の刃のような鋭利な動きです。これによって、日本人には「株は怖い」というトラウマが根付きました。
 マスコミの報道をみると、いかにも株高で全国的に投資マインドが高まっているような報道がなされているのですが、実は事実はそれと全く逆であり、基本的に日本人の預金志向、個人投資家の株離れは不変で、株式市場がこれだけ話題になっていても個人投資家の株売却は進む一方のようです。2014年3月末における日本の個人投資家の日本株の保有比率は18.7%となり、前年比で1.5%減少しました。この間、株式市場は倍近く上昇していたわけですから、この上げは外人投資家によるもので、これを好機とみて株売却を積極的に進めた日本の個人投資家の姿勢がうかがわれます。

出典:http://ecodb.net/stock/nikkei.html

出典:http://ecodb.net/stock/dow.html
 日本では株の上昇によって個人投資家の間で強力な「株売却ブーム」が生じています。NISAで多くの人達が証券会社や銀行にNISAの口座を開き、いかにも日本全体で投資熱が高まっているように錯覚します。800万近い口座が設定されて、そのうちかなりの投資家がNISAを通じて株や投資信託を購入したことは事実です。しかし統計を見る限り日本の個人投資家全体としてみると、NISAの口座による株式の買い付けを遥かに上回る日本株の売却が行われているという驚くべき事実に突き当たるのです。

■ 日本株売却ブームへの対抗策は年金基金
 安倍政権が発足してから円相場は80円から120円、日経平均は8千円から18千円にまで大きく上昇しました。政府は、投資に対しての無税特権、NISAを導入、無税枠を100万円から120万円と年々更新し、さらに贈与の対象として年80万円の子供名義に対してのNISAの枠を設けるなど、必死に「貯蓄から投資へ」と呼びかけ続けています。
 日本では終戦後、財閥解体時は個人投資家の株式の保有比率は日本株全体の70%を超えていました。1989年平成バブル時は日本の個人の金融資産の33%までも株や投資信託、債券など預金以外の投資に向かっていました。バブル崩壊後、25年間にわたって、日本の個人投資家は株式の保有を減らし続けてきました。日本政府がNISAの導入をはじめとしてこれだけ力を入れて「貯蓄から投資へ」との流れを作っても、かえって株が高騰したことによって今こそ「売りのチャンス」と多くの日本の個人投資家が株売却にわれ先にと走っています。2012〜2013年には、日本株については外国人投資家以外、日本の投資家は個人投資家も生損保も年金基金も銀行もすべての投資主体が売り越しでした。それが2014年になって、日本政府の方針で、年金基金は今までの方針を180度転換して株購入に舵を切りました。年金基金であるGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が、リスク資産である株式購入に走って良いのか?と、大きな議論となっていたのは記憶に新しいところです。しかし、年金基金の巨額の資金が日本株に向かうのですから、もはや日本株は安泰と思って良いでしょう。

■ 日本人はなぜ投資より預金が好きなのか?
 バブル崩壊後25年の間、日本の個人の金融資産に占める預金の割合は一貫して上昇し続けています。これは欧米に比べて格段に多い比率なのです。現在、預金金利はほとんど金利がない状態です。それにもかかわらず、なぜ多くの日本人は自分の資産を預金や現金に滞留させているのでしょうか?バブル崩壊のトラウマであることは明らかですが、日本国の1千兆円を越える天文学的な借金の返済のほうが余程心配になるのが本来当たり前の感覚です。
 「株は怖い」「株なんてやるものではない」「株なんて損するに決まっている」というのが日本人の感覚です。世の中に100%安全というものはありません。今何より怖いのは日本国の政府と自治体の債務です。国が借金を返せないと多くの人が思うようになれば、日本人は外貨に走ったり不動産に向かいます。すると円という通貨の価値は地に落ち、大幅な円安、ハイパーインフレとなって、現金も預金もあっという間に実質価値を失うでしょう。それでも日本の多くの企業が倒れることはあり得ません。海外でしっかりビジネスを行っており、海外に資産を持っています。蓄積された技術がなくなることもありません。国内の売り上げが一時的に落ちてもインフレには対応できるはずです。株は元々インフレに最も強い資産です。インフレになれば株価も上がるのです。借金で首が回らない日本国の発行する円紙幣よりも、世界にしっかり根を張った日本の優良企業の株式の方が安全です。日本の上場企業は実質無借金の会社が半数に及んでいます。優良株はその上、預金金利を大幅に上回る配当もくれるのです。それなのになぜ、日本国民は株式投資を嫌い、いつまでも金利ゼロの世界に安住しているのか、バランス感覚が狂っているとしか思えません。それが「失われた20年」を形成してきた日本人の感覚であり、これを覆そうと政府はアベノミクスで株式投資を必死になって煽っているわけです。

■ インフレに向かう日本、株でヘッジする年金基金
 「国のやることは絶対安全」「株は恐ろしいもの」このような今までの常識は考え直す必要があります。1千兆円を越える膨大な借金は返せるはずがないのです。消費税を上げ続けるわけにもいきません。結局インフレにして借金を返すしか道はありません。国はそれがわかっているから一生懸命インフレに誘導しようとしている?それはうがった見方ですが、将来的にはそうするでしょう。いざインフレがきた時にマネーの価値がなくなって年金も支払えないような状態になってはまずい、という深刻な判断の下、国は年金基金で株式を大量に購入することにした、と考えられます。年金基金の半分は株式に投資されることはすでに決まりました。これはインフレに対するヘッジなのです。そして日本国は際限もなく日本円を印刷することでインフレとなり、株が恒常的に上昇し続けるのです。日本国は現実に円紙幣を印刷し続けることで、必ずやインフレを引き起こすことができるのです。マネーを際限なく印刷し続ければマネーの価値がなくなっていくのは当然のことです。それを一生懸命やっているのが今の日銀で、だからこそ円安になって株高となっているのです。国の覚悟と方針を甘く見てはなりません。マネーを際限なく印刷できる国の力を見くびってはならないのです。本格的な大規模な株高、インフレが訪れてからでは遅い、今ここで将来を見据えて来るべき怒涛のインフレに備える必要があります。

■ 思わぬ原油安で、インフレは免れたが・・・・
 基本的に、経済が過熱するまでは、このような異様な円印刷があっても本格的なインフレは生じてきません。また現在は、世界的な原油安が余計に物価上昇を抑える形となっています。日銀がいくら円を印刷して円がいくら安くなっても、直近の原油価格の下げの方が急激で大きく、物価が上がりづらくなっているのです。仮に世界的な原油価格が上昇していれば、アベノミクス後の50%にも上る円安によって日本ではかなりの物価高が起こっていたでしょう。それが原油安というありがたい風が吹いてきたために、物価の上昇が抑えられ、かえって再び物価安のデフレ懸念さえ浮上しています。かような環境下なので、いくら円を印刷しても、いくら日銀が常軌を逸した国債買い付けを行っても、物価上昇がまだ起きてこないので人々には全く危機感が生じてこないのです。もし原油が再び価格上昇してきたら?本格的なインフレの扉が開くでしょう。

■ アベノミクスに対する見方もいろいろあり
 ある本に書いてありました。著名な投資家ジム・ロジャーズは「今の景気浮揚は、日本や米国、欧州などがお金を大量に刷ったことによる人為的なもの、一部の人達は良い思いをしているが、政府債務の大きさゆえ、いったん破たんが起きると、通常より大規模なものになる」と言っているそうです。そして将来のこの破たんを防ぐ手立ては「今のところない」として、「何をしても非常に悪い状態となるか、少しましなものになるかの違い程度でしょう」と述べているそうです。ロジャーズは、日本のハイパーインフレを予感しているのです。
 またアベノミクスによる円安誘導策についても「最悪です。短期的には一部の人が恩恵を受けますが、自国通貨の価値を破壊させることで地位が上がった国はありません。この2〜3年で円は対ドルで50%も安くなりました。このことが日本にとって良いはずがありません。しばらくは好景気が続くでしょうが、アベノミクスによっていずれ大きなつけが回ってきます」と述べているそうです。
 今年の外国人観光客は1300万人を超えて史上最高となりました。円安によって東南アジアや中国からの観光客が爆発的に増えています。一方で日本人の海外旅行は円安によるコスト高で低調です。日本人が貧乏になり、外国人が豊かになっているからこのような状態が起こっているのです。それが為替というものです。円の価値が下がっているということは、国際的に見れば我々日本人の資産価値は確実に目減りしているのです。景気は良くなっているように感じますが、経常黒字の激減、円安の進行にはこういう見方もできるのです。ロジャーズの指摘した「自国の通貨価値を破壊させて繁栄した国など存在しない」というのも一面真実ですが、逆に日本からすると、プラザ合意以降、日本の通貨価値が必要以上に高くさせられて、日本の製造業がとんでもないことになり、「失われた20年」で日本国民は貧しくなったのです。だから円安にして再び日本をリストラするのも間違った選択ではありません。

■ 不動産価格は今後どうなるか?
 森トラストは9日、老舗結婚式場・ホテルの目黒雅叙園(東京都目黒区)と付近の土地建物を、米国の不動産投資顧問会社ラサールインベストメントマネジメント(本社イリノイ州)に売却したと発表しました。売却は1月30日付で、金額は明らかにしていません。森トラストは2014年8月末に同じ土地建物を米投資会社ローンスターから取得したばかり。所有期間はわずか5ヶ月でした。このように、日本の不動産は外資にも狙われています。都心の建物を御覧なさい。随分外資に買い占められました。
 2020年東京オリンピック開催決定の影響で、一番影響を受けているのは湾岸エリアのマンション価格でしょう。湾岸エリアにおける大型新築マンションのプロジェクトも続々と公開され、何と言っても選手村の設置が決まっている晴海や勝どき、競技会場となる予定の有明、辰巳地区が圧倒的に注目を集めています。勝どきの三井不動産の高層マンションの前で開かれたマルシェに行った時の様子を在京盛岡広域産業人会のホームページで紹介しました。月島駅から歩いて行きましたが、もんじゃで有名な月島も今や高層マンション群でスゴイことになっていますよ。隣の豊洲はもっとすごいです。前回紹介した鴨川からの帰途、ベイブリッジを走っている時に見えた東京の夜景の美しさ、オレンジ色に光るトウキョウタワーが埋もれるほどの高層ビルの数、数、数・・・・。そこに燈る明かり、スゴイ、昔の上海みたいだ、と思いました。
太陽のマルシェ in 月島(住所は勝どき1丁目)
 こうしたウォーターフロントマンションの価格は5千万円から6千万円ぐらいでしょうか。東日本大震災で液状化やエレベータストップの心配があって、高層マンションの売れ行きが危惧されましたが、なんのそのです。確かに浦安の戸建て住宅などは傾いて被害を受けましたが、高層マンションを施工する大手ゼネコンは地盤深く杭打ちし、しかも地震の振動対策をして施工していますから、心配しないのでしょう。確かに東日本大震災で、その安全性が立証された、と考えれば、なるほどと思いますね。今後も東京湾岸地域の地価の上昇傾向は続くでしょう。一方地方は過疎化が進み、価格は上がりません。安倍政権が必死になって地方創生を進めようとしているのはこのためです。政府が必死になるということは、現実はその裏返しだと考えるべきです。

■ 安全資産の不動産に向かう団塊の世代
 ただ、心配な面もあります。安倍政権誕生後の金融緩和政策を受けた円安トレンドによる輸入建築資材の高騰、建築業界の働き手の多くが定年退職したことと、オリンピック開催を受けた建築需要の増加、震災復興に伴う職人不足による人件費の高騰などです。建設業界はいまや注文が受けられない状態です。公共工事の入札も、従来評価の予定価格ではもう無理です。また空き家がどんどん増えて、新築もドンドン増えています。住宅価格は明らかに上がっています。
 土地建物は動かせないもので、日本の不動産のほとんどは日本国内で取引されるため、価格が変動しにくい面があります。過去、超円高になって株価が半額になっても、不動産価格は半額にはなりませんでしたよね。流動性が低く、また増えたりも減ったりもしないために価格の変動幅も株式よりもずっと小さく、安定している、それが日本の不動産です。また、日本の銀行は担保と言えば不動産、これは日本独特です。したがって究極の安全資産は日本では不動産なのです。
 退職して年金生活に入った団塊の世代は、持っているお金を不動産に換えています。今後年金は先細りになるでしょう。物価スライド制で安心できたものがマクロ経済スライド制に移行して、間違いなく今後支給額は減っていきます。いま後期高齢者の方たちは、支払った保険料よりずっと多くの年金を頂いて、豊かな老後を過ごしてきた方たちも多く(勿論貧困層もいましたが)、したがって長生きできました。しかしこれからの老人はそうは行きません。いま年金を支えている若い世代は、自分たちが年金をもらう頃には支給開始年齢が上がり、よくぞ生きていた、とご褒美の年金になるでしょう。退職から年金支給の間をどうやって暮らすかも課題になります。また少子化によって、支給額は減り、年金だけでは生きて行けなくなるでしょう。したがって老後の蓄えとしてはゼロ金利の預金以外に不動産を持つことで備えるわけです。しかしソレもできない借家生活の人が増えると予想します。無年金の人も増えるでしょう。格差社会は避けられません。

■ バブル再燃も?
 資産としては安全でも、投資対象としてはどうでしょうか。市場が過熱し過ぎると最後にはお金が土地に集中し始め、株式を超える急騰をしてしまうのもまた不動産の特徴で、そういう場面では株式以上にハイリスクになります。中国や韓国の近年の不動産価格の推移を見ても明らかです。中国は不動産バブルが崩壊しつつあるところ、韓国に至っては既に崩壊しています。アメリカでも不動産バブル崩壊はありました。そこを起点にサブプライムローン問題が浮かび上がり、リーマンショックに繋がったのは記憶に新しいところです。人間はいつまで経ってもどこまで行っても人間であり、同じ過ちを繰り返そうとしてしまいます。今後1、2年で賃金の上昇傾向がある程度安定化し、デフレからインフレへと脱却された時、金融機関は不動産に対する融資の姿勢を更に緩和してきます。すると不動産の流動性が高まり、価格の上昇が始まります。放っておけば、東京を中心にまた不動産バブルが発生、それも今度は外資まで巻き込んでの事態ですから、どこまでいくか分かりません。

(2015年2月10日)


次回へ    前回へ    最新ページへ つぶやき最終回