92 老人
衆議院議員選挙が12月2日(火)公示され、12月14日(日)投票に向けての選挙戦中盤です。自民党が300議席を越すだろうという圧勝予想の世論調査の結果が、新聞大手各紙から出ました。これを受けて与野党党首の論調が変わりました。自公はアベノミクスを争点化したい、野党は争点を拡げたいというのが序盤戦でしたが、アベノミクス批判や原発廃止では国民の本音の支持は得られないことが示されました。与野党は一転、自民党は争点を拡げ、野党は一強批判、自党への支持を訴える作戦、お上に弱く、強いものに巻かれたい日本国民の本質を認識してきたようです。水戸黄門や忠臣蔵が何故人気があったか、考えれば分かる気がしますが…。 ■ 老人の怒りを恐れ・・・ 前回は年金問題に触れました。景気が良いとか悪いとか、見る側によって違います。例えば株を持っている人/いない人、正社員/契約社員、大企業/中小企業、都市/地方、現役世代/年金世代、若者/老人、妻帯者/独身者、・・・等々。アベノミクスを選挙の争点にすべきでない、と前に書いたのは、アベノミクスの狙いは「デフレ脱却」ですから、国民の多くは賛同していると思われるからです。デフレが望ましいのはたっぷり資産を持っていて、もはや増やす必要もない人、その多くは老人です。一方株を持っていて配当や資産価値を当てにするのは、金融を筆頭に多くの企業や、これまた老人です。老人の中でも明と暗が分かれます。貧しい老人は生活保護に頼らざるを得なくなっています。老人を狙った詐欺が社会問題となっています。国家は、途方もない世界一の借金を抱えて、将来世代にツケ回ししています。そもそも、毎年収入の倍以上の支出をする国家、全く是正する気の無い政治、選挙しか頭にないから、歪是正は先送りするのです。選挙に行く人、これまた老人が多いのです。老人の怒りを恐れて、これまでの政治は老人に厳しい政策を先送りしてきました。今回は老人について触れましょう。 ■ 「デフレ脱却」は日本の悲願 為替レートがドンドン円高になっていたとき、筆者はたびたび書きました。東日本大震災直後に1ドル76円25銭の史上最高値を記録して以降、つぶやき429『頑張ろう!日本』(2011年4月4日)→438『日本は立ち直れるか』(2011年6月6日)→448『大丈夫か?日本』(2011年8月14日)と、段々トーンが落ちましたが、一貫して日本のデフレ脱却へのエールを送り続けました。日銀のインフレ誘導で円高を脱却した兆しについては、476『何もかも上昇』(2012年2月26日)で、1ドル70円台の超円高から脱却し、日経平均株価も上昇を始めたことについて書いています。それだけではなく石油、天然ガス、金、穀物、コーヒー、砂糖、果物、肉、何もかも値上がりしていることを紹介しました。すなわち民主党・野田総理の時に既に白川総裁の日銀はデフレ脱却への手を打ち、効果が出始めていました。その前の野田財務大臣時代に為替介入して円高を阻止しようとした政治姿勢は批判して、財務省の役人が何かするのではなく、日銀にデフレ脱却への手を打ってもらうように主張しました。 ■ 「自滅したい」かのような前回解散 このとき筆者は日本の貿易赤字が定着することを避け、かつ地球温暖化防止のために、再生可能エネルギー発電は必死に追求するとしても、安定した電力供給に至るまでには長い年月を要するので、原発を再稼動せよと主張していました。火力発電は地球温暖化の二酸化炭素排出を伴うものですから、人類の生存を危うくします。だから中国や米国は風力発電など再生可能エネルギー利用に注力しつつ、安定的熱源として原発にも注力しているのです。日本が原発NOと言って火力発電するのは、日本以外の国から見るとエゴとしか見えません。ドイツは脱原発を掲げながらもいまだに原発を稼動しています。何故か?火力発電のほうがもっと悪だからです。再生可能エネルギーでまかなえる日まで、原発やむなしとしています。日本を取り巻く韓国、中国、東南アジア諸国からインドまで、皆原発依存を高めると言っている時に、日本だけが脱原発と言ったところで、それは日本の利己主義にしか写りません。二酸化炭素排出量を下げようとしない日本は自己中心の国としか見えないのです。 民主党政権は、消費増税反対/TPP阻止/環境対策のための原発推進を訴えて2009年総選挙で圧勝したにもかかわらず、野田総理は尖閣列島を国営化して中国の態度を硬化させた上に、消費増税する/TPP推進/脱原発と、公約と正反対のことを唱えて「民意を問う」と国会解散、2012年師走に総選挙が行われました。これはもはや、「自滅したい」と言っているようなもので、信じ難い解散に見えました。518『総選挙』(2012年12月16日)で、自民、公明両党が圧勝、この結果は筆者の予想通りだと書きました。公約違反のうそつき民主党の解散理由=増税の決断やTPP推進、脱原発に対して大マスコミは拍手しましたが、この野田総理の裏切りに国民が怒った結果だ、と書きました。 ■ 安倍自民党も手のひら返し このとき自民党は「ブレない。ウソつかない。TPP断固反対」というキャッチフレーズで「日本を取り戻す」と安倍晋三のポスターを前面に押し出して勝ちました。このときの自民党は大敗した2009年総選挙より得票数は384万票減っています。有権者数全体から見た得票率は20.3%で、現行の制度が始まった1996年以来、勝利した政党として最低の数字でした。この時の投票率は10%低下し、日本維新の会やみんなの党という「第三極」の躍進によって、自民党が票を減らしても圧勝できたのです。死に票が多い小選挙区制度の特徴です。勝って安倍総理はどうしたか?前回も書きましたが、手のひら返しでTPP推進と、公約と反対のことをしました。日本の政党というのは、公約なんて有って無いようなもの、今回の総選挙では「マニフェスト」なんて聞きますか?出したところで、「どうせウソでしょう?」と言われるのがオチです。安倍総理は、日銀がデフレ脱却への手を打って効果が出始めたことに注目し、まだまだ手ぬるい、もっともっと過激にやれ、とアベノミクスを唱えて、日銀のトップを挿げ替えて「異次元の金融緩和」でアクセル全開、今日に至りました。1『再開』(2013年2月10日)で、アベノミクスに触れました。更に4『円安株高、景気は意志によって作られる』(2013年3月10日)で、アベノミクス応援歌を書いています。 ■ 日本の未来には近隣諸国との友好が必須 「デフレ脱却」は日本経済の悲願でした。日本が低迷している間に米国やBRIC’s諸国は急成長し、お隣韓国も成長しました。45『自動車と中国の躍進』(2014年1月16日)をご覧下さい。日本国政府内閣府が作成し、公表した「世界経済の潮流2010」から、2030年の世界経済予測を紹介しています。名目GDPでは2030年の中国が世界の23.9%、米国17.0%、日本5.8%の順ですが、購買力平価ベースでは中国が世界の30.2%、米国11.7%、インド7.9%、日本3.3%の順で、なんと中国は日本の9倍に拡大し、日本はインドの4割になるそうです。日本が威張っていられる時間はもうほとんど残されていない、ということを紹介しました。別に中国政府が言っているのではなく、ほかならぬ日本国政府の予測ですよ。習近平と安倍晋三がやっと握手しましたが、日本の官僚や経済界からすると、これまで散々ヤキモキしてきたので、ひとまず一安心というところです。お隣の国が急成長するのですから、日本にとってはこれ以上のビジネスチャンスはありません。実際、習近平と安倍晋三の睨み合いの結果、日中貿易が2年間縮小してきた間に、欧米は漁夫の利で、中国市場でたんまり儲けてきました。ドイツなどウハウハでした。円安となった結果、もともと日本文化への興味や、製品の品質に信頼感を持つ中国人がドドドドッと押し寄せて来ました。これがいま、デフレで遊ばなくなって廃れてきた日本の観光地の救世主となっています。
■ 「2025年問題」・・・”介護ショック”が日本襲来 49『2025年問題』(2014年2月10日)で、老人問題に触れました。「PPKとNNK」や、「健康寿命と平均寿命」、「血管年齢/骨年齢/腸年齢」、「市町村によって違う介護保険料」、「有老/サ高住/特養/老健/養護」などです。2012年における後期高齢者(75歳以上)数は1511万人、これが2025年には2179万人まで膨らむと予測されています。全人口に占める比率も18%! 5人に1人ですよ。ヨボヨボした人ばっかりという世界があと10年ちょっとで到来するのです。 ■ 「シルバー川柳」・・・笑エマセン
■ 「キレる老人」急増中 「キレる若者」という言葉は昔からよく聞きますが、最近では「キレる老人」が急増中だとか。高齢化社会が進んでいるから?年代別での殺人発生率でも20〜40代の検挙者は減っているのに60代は増えているそうです。若年者の犯罪は人口比を下回るペースで減少しているのに、高齢者の犯罪は人口比を上回るペースで増加しているのだそうです。このような高齢者の犯罪増加の背景には、「高齢者のほうが実は貧富の格差が大きい」等の事情もあるでしょう。しかし、そのことを差し引いても、若者よりも長い歳月を生き、若者ほどエネルギーや衝動を持て余しているわけではないはずの世代の犯罪増加には驚かざるを得ません。 昔は、長幼の序で、老人は若者の手本でした。今は、あちらこちらで「キレる老人」や「ごねる老人」を見かけます。老人が多くなったから、そのような老人を見かける頻度が増えるのは自然といえば自然ですが、それでも、公共スペースやショッピングモールで店員にクレームをつける人物、横着な振る舞いや横柄な振る舞いをみせる人物の相当部分が高齢者なのは不思議な話です。素行不良といえば、一昔前は年端も行かない不良やツッパリでした。そういう若者を諭すのが高齢者の役割だったはずです。 ■ 成熟の不明瞭なシニア 人間は、生物学的にも社会的にも歳を取り続けていく存在で、何歳になっても社会的役割を引き受け、社会を構成する一員であり続けます。20歳は成人、40歳は不惑、60歳は還暦、と節目があります。人生経験豊富な60歳以上の人たちは、かつては老人でしたが、今は65歳以上です。「敬老」となると70歳以上、地域によっては75歳以上になっています。旧来のお年寄りとは、品行の面でも廉恥心の面でも若者が見習うべき模範となり、老い衰えても年の功を感じさせてくれる存在でした。そうした社会的役割を引き受けていたからこそ、お年寄りは尊敬もされ、畏敬される存在だったわけです。 歳を取ると段々脳組織が萎縮して、赤ちゃん帰りして行くと言います。アルツハイマーや認知症のような病気はともかく、健康な人でも、被害妄想になったり、わがままになって行くそうです。しかし、今や60代、70代の人たちは、情報機器を操り、インターネットにいそしんでいる人が多くなっています。「生涯現役」と銘打たれた商品をもてはやし、往時の青春ソングをリピートしているシニアの今日的状況をみていると、年齢相応の成熟に達することなく、若い世代に留まろうとあがいているのではないかとさえ思えます。年の功を発揮する場も無い、成熟の不明瞭なシニアが、それでも細胞組織の衰えによる影響でわがままになり、自己抑制できずにキレたりするのだと思われます。 ■ 昔はあった世代間コミュニケーション どうしてこうなってしまったのでしょうか。 現代のシニア世代、特に退職した後の人達は、自分より年長の人間や年少の人間とコミュニケーションをとる機会があまりありません。子どもや孫がいる場合はこの限りではありませんが、それでも、身内という少ないサンプル以外には、年少者と接点を持ち続けたり、年長者としての振る舞いを期待されるような目線に曝されるようなことがあまりありません。 昔の地域社会では、お年寄りと年少世代は顔見知りで、地域の店や銭湯やお祭りといった機会を介して、頻繁にコミュニケートしていました。農村であれば、田畑で働く姿を目撃し、手伝うと褒められたり、ご褒美を貰ったりして、他人であっても知り合いでした。子どもには子どもの、成人には成人の、お年寄りにはお年寄りの役割があって、年齢それぞれに引き受け、引き受けざるを得ない境遇のなかで生活していました。自分とは年の違う人々との繋がりのなかで、自分自身の年齢を意識させられたのです。 ■ 年少者との接点喪失 現代社会ではどうでしょう。今の居住環境は、マンション的なものであれ、新興住宅地的なものであれ、個人の自由を最大限に尊重し、他人との摩擦やしがらみを最小限にするような志向にあります。先般の白馬村のような地域の助け合いは、このような辺境の地で、助け合いながら生きて行く人々の昔ながらの残像のように見えました。都会では、公共交通機関や街のなかで年少者にすれ違うことこそありますが、お互いの接点が欠如していて、「どんなに年齢不相応なことをやっていても、誰も注意しないし、誰からも注意されない」――それが現代社会の不文律になっています。今日、おばさんやおばあさんならいざ知らず、おじさんやおじいさんがショッピングモールで知らない子どもに声をかけようものなら、気持ち悪がられ、下手をすれば通報されてしまいかねません。シニアは、「年少者と接点を持つことによって、自分自身のエイジングに思いを馳せる機会を喪失」しているのです。 ■ 情けない!日本サッカー 2014年12月6日に行われたJ1最終節。前々節勝てば優勝間違いなしの浦和レッズがガンバ大阪に負け、前節はサガン鳥栖に勝利目前、終了間際にコーナーキック、決められてまさかのドロー、日本一のレッズファンの歯軋りがギリギリギリと聞こえるような埼玉県南部の今日この頃、空恐ろしくてサッカーの話は出来ません。一方、敵地ポカリスエットスタジアムで徳島ヴォルティスを下せば、得失点差の関係でほぼ100%の確率でガンバ大阪の優勝が決まる試合、しかし、最下位のチームが形成する強固なブロックを崩せないまま時間だけが過ぎて行きます。スコアレスドローを告げる主審のホイッスルが鳴り響いた瞬間、ガンバ大阪の選手たちがグラウンドに崩れ落ちました。自らの力で優勝を勝ち取れなかった無念さの故です。 しかし、キックオフ前の時点でガンバと勝ち点62で並んでいた浦和レッズは名古屋グランパスに逆転負けを喫し、優勝の可能性を残していた鹿島アントラーズもサガン鳥栖に苦杯をなめました。言えば怒られそうですが、日本のサッカーチームはなんて情けないのか!こんなことだから、ジャパンも世界でもずっと下で這い回っているのです。野球やソフトボールの強さと比べて、余りにも情けない(>_<) ■ 屈辱から這い上がったガンバ大阪 ガンバ大阪にとって2005年以来、9シーズンぶり2度目となるリーグ優勝です。スッキリした優勝ではなかったけれど、中断明けの20試合で、ガンバは15勝3分け2敗と驚異的なV字回復でした。そもそも遠藤と今野という、往時の日本を背負った凄い選手が中心のチームです。それがまさかのJ2落ち、何ヤッテマンネン、という感じでした。ところが今期は、宇佐美貴史とパトリックの2トップにけん引され、20試合で45得点を叩き出した伝統の攻撃力が爆発しました。それはともかく、20試合で失点を「12」に抑えている守備力が素晴らしい!結局、遠藤と今野ですよ。彼らが、チームの守備を固めたのだと思います。彼らには、シーズンはまだ残っています。今週13日(土)にはJ2のモンテディオ山形との天皇杯決勝が日産スタジアムで行われます。J2から昇格して即リーグ優勝を果たしたケースは2011年シーズンの柏レイソルに次ぐ2チーム目ですが、昇格したシーズンで国内三大タイトルを独占したチームは現時点で存在しません。しかし、ガンバ大阪は屈辱をなめ、地に這いつくばって、そこから這い上がったので、多分頂点に立つでしょう。 ■ 男がいないね 浦和はなぜ負けたのか。なぜ優勝を逃したのか。今期、レッズサポーターは盛り上がって盛り上がって、最後に脱力感で、地に這いつくばりました。筆者の周りにはレッズサポーターがいっぱい居ます。みんな真っ赤な服を着て、埼玉スタジアムへ行き、地元で試合が無いときは、サポーターが集まる居酒屋で、スクリーンの前で声援を送っています。口惜しかろう、残念です。浦和レッズを破った名古屋グランパスの田中マルクス闘莉王、レッズ黄金時代を支えた男は、言いました。2006年の浦和レッズ優勝に中心選手の一人として貢献した男です。「男がいないね」と言いました。 ■ 野球少年に感謝する日々 話を戻しましょう。年少者と接点を持つことは、サッカーだろうがなんだろうが、スポーツが一番手っ取り早いですね。年の取り方がわかりにくい社会になったとは言え、スポーツは世代を超えて心を結ぶものです。筆者は23年間少年野球に携わっています。少年はいつも少年です。コーチは毎年トシ取ります。今やもう孫世代です。子供は可愛いものです。あの子が卒業するまで、と思いながら、また新しい子が入ってくると、情が移ります。子供の素晴らしいところは「お言葉ですが」なんて言わないで、一生懸命言われたとおりに頑張ろうとするところです。そういう一生懸命な子供たちに導かれてトシとっています。ありがたいことです。子供たちに感謝です。 ■ はやぶさ2
「はやぶさ」に関しては165『JAXA』(2006年3月12日)、378『はやぶさ』(2010年4月11日)、387『2010 FIFA WC』(2010年6月13日)をご覧下さい。我が先輩がH2Aロケットの信頼性向上のためにJAXAに招かれて品質管理の責任者に就任して以降、H2Aロケットは一度も打ち上げに失敗していません。もう大丈夫だ、というので退任されましたが、これは誇らしいエピソードです。また我が後輩が、人工衛星の技術者として日本の宇宙開発に携わっていることも誇らしいことです。頑張れ!我らが電気電子情報システム工学の輩(トモガラ)よ! ■ きつい少女のセリフ
■ ロータリーエアーサービス破産
■ 借金時計
■ 訃報
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