472  戦争の悲劇

 世界はウクライナ問題で大揺れです。この前までコロナで大騒ぎしていましたが、いきなり大規模破壊の戦争が始まって、我が世の春どころではない、「防衛」というものに本気で取り組むことを考えなければならない事態になりました。もはやニュースはウクライナ一色、コロナも霞んでいます。

■ 桜の季節です
 河津桜の花は終わり、ソメイヨシノが咲き出しました。今週満開となるでしょう。我が家の陽光桜は鉢植えで、今年は陽当りのやや少ないところに置いたので満開とはなりましたが例年よりやや開花は遅い感じでした。陽光桜は下向きに咲くので、下から見上げるように見ると、その花びらの形の美しさに感動します。ソメイヨシノと違ってピンク色が濃くて綺麗です。


我が家の陽光桜

■ ウクライナ情勢
 ロシア軍参謀本部は「作戦の第1段階の任務は総じて達成された」とし、ウクライナ東部ドネツク、ルガンスク両州の「解放に集中することが可能になった」との考えを表明しました。ロシア国防省は3月25日、ウクライナ侵攻に伴うロシア軍の死者が1351人、負傷者が3825人に上ったと発表しましたが、北大西洋条約機構(NATO)はロシア軍の死者を7000〜1万5000人と推定していて、大きな差です。ロシア軍の将官は5人死亡とされていましたが、今や7人になったとのこと、少将5人、中将2人です。更に戦闘が長引き、多大な損失と戦略ミスの責任を取らされて、1人が司令官を解任されたそうです。他にプーチンの要請でチェチェン共和国から呼ばれた特殊部隊の将軍も戦死した模様です。自衛隊の幹部OBがテレビで語っていましたが、少将や中将といった偉い人は普通は前線には出て来ないので、これは異常事態とのことです。それだけ将官が死ぬということは、その部下の兵士の犠牲者はかなり多いことが推計できます。士気の上がらないロシア軍を鼓舞するために将官が前線に出て来ているわけです。どうやら士気の高いウクライナ軍が盛り返しているため、ロシア軍としては北部戦線は諦めて、東部と南部に集中しようと作戦転換したようです。

ロイターのワールドニュースより転載

■ 発音と表記;ロシア語からウクライナ語へ
 ただいずれにせよ、戦争の映像は見たくないものです。バイデン大統領がブリュッセルのG7に出て、NATOの会議に出て、その後ポーランドに向かいました。駐留する米軍兵士の激励と、難民を受け入れるポーランドの現状把握、そしてウクライナ避難民とポーランド国民への支援表明のためです。NATOを日本では「ナトー」と言いますが、バイデン大統領の記者会見を見ていたら、「ネイトゥ」なんですね。3月23日、日本の国会議員を前にしてウクライナのゼレンスキー大統領がオンライン演説を行いました。これを受け、同国の都市の呼称をロシア語呼称からウクライナ語呼称に変更すべきだという声が高まっています。首都を「キエフ」からウクライナ語の「キーウ」にするのが一例です。日本政府が2015年、旧ソ連のグルジアからの要請で同国の呼称を英語表記の「ジョージア」に変更した事例があります。日本テレビは早速3月24日、「キエフ」を「キーウ」に改めると発表しました。

■ コメンテーターには難しい局面
 ロシアのウクライナ侵攻に対し日本でも様々な報道を目にします。これまで知らなかった軍事評論家とか、ロシア研究の専門家が続々出て来て、中には女性の先生たちも登場してきます。笹川財団とか防衛省の専門家も出て来ます。情報番組では最近お笑い芸人のコメンテータが定番化しました。玉川徹さんや橋下徹さんのような芸人ではないコメンテータも居ますが、以前書いたようにテリー伊藤さんを含め、有事の際に喋ったことがブーイングを浴びる事例が散見されます。特に橋下徹さんはガクンと評価が下がったようです。コメンテータは喋ることが仕事なだけに、難しい局面ですね。

歩いてすぐ、「コスモガーデンズ七彩の街」の一角にある公園のシダレ桜やソメイヨシノ、まさに「乱舞」の表現がふさわしい

■ 有事にタレントコメンテーターは不要
 3月18日放送の『タモリステーション』(テレビ朝日系)は事前に大々的に番宣していたので観たら、メインMCのタモリさんがさっぱり喋りません。タモリさんと言えばNHKの『ブラタモリ』ではその博識で学者もうならせている人、この沈黙は何故でしょう?この番組は、「欧州とロシアの狭間で ウクライナ戦争の真実」と題した緊急生放送でした。アシスタントの大下容子アナウンサー進行のもと、ポーランドに居る『報道ステーション』(同系)の大越健介キャスターと中継を繋ぎながら、専門家の皆さんが情勢について詳しく解説して進行して行きました。タモリさんは番組開始直後に番組の案内を一言述べた後は何も喋ることなく、終始彼らの話を聞いているのみです。最後に「こうしている間も、大勢の人がウクライナで亡くなってるわけですね? というより殺されてるわけですから。まぁいろいろありますけど、一日も早く、平和な日々がウクライナにくることを祈るだけですよね」と述べて番組は終了しました。
 「ダウンタウン」の松本人志さんが3月20日放送の『ワイドナショー』(フジテレビ系)の司会をする中で、ウクライナのゼレンスキー大統領が米国議会のオンライン演説で、「真珠湾攻撃や9.11を思い出して欲しい」と訴えたことに対して、「真珠湾攻撃を出してきたのは引っかかる。日本人として受け入れがたいところはある」とか、「奇襲攻撃だったのは間違いないけど、民間人を巻き込んだわけではない。今回のケースと同じように語られるのはちょっと嫌だったですね」などとコメントしました。
 今やテレビで見てネットで語る時代、ネットでは「タモリさん、さすが」と称賛の声の一方で松本人志さんの評価がダダ下がり、「沈黙は金」を見て松本人志さんは深く反省したそうです。

我が家ではテーブル上が真紅

■ 戦争犯罪
 ウクライナの惨状は目に余ります。ただ、今から77年ほど前までは、こうした大量殺りく、無差別爆撃は世界各地で行われていました。日本も各地で空襲や艦砲射撃を受けました。東京大空襲では東京が焼け野原になり、1晩で27万戸被災、10万人死んで、全国各地への爆撃で50万人死亡、挙句の果てに広島、長崎に原爆が投下されました。ななめのつぶやき171『東京大空襲』(2006年4月22日)をご覧下さい。
 終戦1週間前にソ連が日ソ不可侵条約を破って侵攻し、関東軍将兵ら60万人がシベリアなどに連れて行かれ、うち6万人が強制労働で死亡、満州や朝鮮半島から引き揚げる途中、ソ連兵の暴行などで死亡した日本人は20万人超、挙句の果てに北方領土を不法占拠されました。戦争は常に悲惨です。

■ ワルシャワの悲劇
 141『歴史に学ぼう』(2015年11月21日)をご覧ください。映画『リベリオン ワルシャワ大攻防戦』(2014)を見たことを書いています。第二次世界大戦下、ポーランド・ワルシャワ、1944年8月のナチスドイツの侵攻に対しポーランド国民がワルシャワで蜂起、しかし頼みのソ連軍には見捨てられ、大勢の市民が殺され、街は破壊しつくされました。ポーランドの悲劇はソ連に頼ったことでした。結局、その後45年ほど、ソビエトの影響下に置かれて自由のない社会体制になったポーランド、可哀そう過ぎます。ポーランドの第二次世界大戦での犠牲者数は562万人から582万人、軍人は24万人と言われています。日本と比べてどうですか?国民に占める割合を考えれば、日本とは比較にならない悲惨さです。ポーランドの人々がウクライナ避難民に暖かい手を差し伸べるのは、こうした体験があるからです。
 ちなみにユダヤ人はナチスドイツのホロコーストによって、どれくらい犠牲になったか?ある機関は730万人中570万人(78%)と言い、他は906万人中490万人から590万人と言っています。いずれにせよ信じられない数ですね。

■ 有明海諫早湾潮受け堤防開門無効化判決
 国営諫早湾干拓事業(諫干、長崎県)を巡り、国が潮受け堤防排水門の開門を強制しないよう漁業者側に求めた請求異議訴訟の差し戻し審で、福岡高裁は3月25日、国に開門を命じた福岡高裁判決(2010年確定)を事実上無効化する判決を言い渡しました。差し戻し前の高裁判決(2018年)に続き、確定判決に従わない国の姿勢を容認したものです。

潮受け堤防
 国営諫早湾干拓事業とは、全長約7キロの潮受け堤防で有明海の諫早湾を閉め切り、大規模な農地を造成した事業です。農地(約670ヘクタール)と農業用水を供給する調整池(約2600ヘクタール)を整備し、総事業費は約2530億円。1997年4月の閉め切り後、漁業者が漁業不振を理由に潮受け堤防排水門の開門を求める一方、営農者らは農地への塩害などを訴え反対して対立しているものです。

潮受け堤防の水門
 諫早湾潮受け堤防排水門の開門を巡る司法判断は開門、非開門の相反する判決がそれぞれ確定しています。67『裁判所と政権』(2014年6月17日)をご覧ください。漁業者と営農者がそれぞれ国を相手取って訴訟を起こし、共に勝訴したため、開け/閉じろという判決が共に確定して国は身動きできません。もともと国は開門したくないので、民主党政権下で確定した開門判決を無視しているわけで、そのために漁業者側にたっぷりお金を払ったし、漁獲量も回復してるじゃないかと言いたいようです。

左側が有明海、右側が諫早湾干拓地、正面に見えるのが雲仙普賢岳
 今回の判決が確定すれば、開門を強制する司法判断が失われます。開門を求める漁業者側は上告するとみられ、審理は再び最高裁に移る見込みです。裁判所としては、もういい加減にしてくれという感じで、双方に和解協議を勧めるでしょう。それでも応じなければ開門無効化判決が再び言い渡されるのではないでしょうか。

諫早湾を閉め切る潮受け堤防。中央の調整池の奥に干拓地が見える。堤防の左側が有明海=2022年3月16日、長崎県諫早市、朝日新聞社ヘリから

■ SMBC日興証券の相場操縦事件
 SMBC日興証券の副社長が東京地検特捜部に逮捕されました。相場操縦の疑いです。本人は容疑を否認しているそうです。投資家はSMBC日興証券から距離を取る人が増えているみたいです。

■ 大阪地検特捜部の検事2人を最高検察庁に刑事告発
 大阪地検特捜部が捜査した横領事件で逮捕・起訴され、裁判で無罪が確定した東証1部上場の「プレサンスコーポレーション」の創業者で前社長の山岸忍さんが、捜査にあたった検事2人について、最高検察庁に刑事告発することを明らかにしました。取り調べで関係者を脅すなどして検察の描いたストーリーに沿う供述を引き出した疑いです。また、捜査を指揮した主任検察官などを罷免するよう、法務省の検察官適格審査会に審査を申し立てるほか、逮捕・起訴で社長の辞任を余儀なくされたなどとして7億円余りの賠償を国に求めることにしています。この事件は、不動産会社が、学校法人の土地を実質的に買い取った際、山岸さんと会社の部下、それに法人の元理事長らが共謀して、会社から法人に支払われた21億円の手付金を還流させて着服したというものでした。この事件で部下や元理事長らは有罪が確定しています。山岸さんは、2019年12月に逮捕され、8ヶ月間大阪拘置所に勾留されましたが、「部下から受けた説明では問題のない取引だと認識していた」と述べ、一貫して無罪を主張しました。そして、大阪地方裁判所は昨年10月、「部下の供述は変遷していて信用できず、客観的な証拠とも整合しない」などと判断して、山岸さんに無罪を言い渡しました。検察は、控訴を断念し、山岸さんの無罪が確定しました。山岸さんの代理人の中村和洋弁護士は、この事件について、大阪地検特捜部が逮捕・起訴し、厚生労働省の局長だった村木厚子さんが無罪になったえん罪事件と同じ構図だと指摘、同じ法曹に携わる者として許し難い事件だとしています。
(2022年3月28日)


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