319  給料
 4月19日は平成最後の満月でしたが、残念ながら厚い雲で見えず、19日に綺麗に見えたからマッいいか。20日には二十四節気の「穀雨」に入りました。田んぼや畑の準備が整い、それに合わせるように、柔らかな春の雨が降る頃...この頃より変りやすい春の天気も安定し、日差しも強まってきます。

■ やることは簡単だ、給料を上げろ
 前回、前々回とデービッド・アトキンソン氏の『日本人の勝算』(東洋経済新報社)について触れました。今回またもその続きです。
 筆者はかつて企業経営者でした。トップに立つと経営判断は自分に全責任がかかるためどうしても保守的になりがちです。思い返してみると、あのときああすれば良かった、こうすれば良かったと反省の念がつのります。それだけにデービッドさんの言われることには忸怩たる思いがあります。企業経営は入るを計り出るを制するにあることは当然ですが、入るを計るための一番の要素は従業員のヤル気と高効率の設備です。ヤル気すなわちモチベーションを高めるためにはなんと言っても給料が高いことです。他社より給料が高ければヤル気のある人間が集まってきます。そういう社員をバンバン教育して、他社へ移ろうとしないような給与を維持していれば良いのです。設備投資をして、研究開発投資をして、大学との共同研究をして、使うところにカネを使えば良いのです。経費を適切に使わなければ効果は現れません。出るを制することが人件費を抑えることだったり、経費を節減することであれば業績は上がりません。

■ リストラは企業経営者の責任放棄
 ましてやリストラなんて企業経営者の責任放棄です。近年の日本では、リストラで企業再興してきた経営者が讃えられる傾向にありますが、これは最大の過ちです。これによって、リストラを恐れる労働者はモノを言わなくなりました。労働組合は骨抜きになり、政治的行動もしなくなりました。リストラというのは首切りではなく、プレミア付き退職勧奨ですが、これが合法的に行われるなら労働者の立場は極めて弱くなります。カルロス・ゴーンをいまだに良く言うひとが居ますが、彼がやったことは何だったか、知る人ぞ知るところです。リストラが横行する社会では、公務員がうらやましがられます。この30年、公務員志向が高まったのはそのためです。筆者は「リストラは経営責任放棄だ」とか、「口に入るものは自分の財布から払え、でないと口が卑しくなる」と経営者から言われて育ちました。今考えても偉い人たちだったなと思いますし、そういう企業の一員であったことを誇りに思います。

■ 給料が下がる、就職できない時代
 筆者と同期で大学を卒業して、定年まで同じ企業に居た人はほとんど居ません。大企業ほどそうです。リストラで転職したり子会社に移ったりです。日本は米国などと違い、転職して給与が上がることはほとんどありません。最近でこそ、同じ会社で一生勤務など有り得ないと分かってから、転職が当たり前になって、自分を高く売り込む米国型の人も出てきましたが、我々の時代は転職しても子会社に行っても給与は下がりました。ただそのまま会社に残れても、子育てが終わった50代半ば以降は給料が下がるのが大企業ほど顕著でした。
 また団塊の世代の子どもはちょうど就職氷河期に当たり、非正規となったり、ニートになったり、そのまま今40歳前後です。結婚なんか出来ないという人が多かったので必然的に少子化となりました。就職することが困難となれば非正規でもなんでも仕事にありつきたい、若者たちはそう考えるようになりました。

東大・安田講堂
高度成長期は売り手市場ですから、若者は学生運動でも声高で、自分たちの主張を叫びました。幸せな時代ですから怒りを発露できたのです。東大の安田講堂事件、赤軍の浅間山荘事件なんて信じられないことが起こりました。寒い中、機動隊員たちが白い息を吐きながらふ〜ふ〜カップヌードルを食べるテレビ中継を見て、全国でこれがバカ売れするようになりました。
 その後デフレ低迷期になって、買い手市場になると若者たちは卑屈にならざるを得ませんでした。怒れなくなったのです。可哀そうでした。若者いじめみたいでした。今安倍政権の支持率は若者ほど高く、高齢になるほど低くなり、戦争経験者の80代、90代が最低ですが、彼らはもはや元気がありません。人間は特別幸せな人と不幸な人が身を守るために保守になります。革新なんて言ってる人はそこそこ幸せだが不満もある中間層で、しかも前途に希望があるから革新なんて言えるのです。ただ少子高齢化がハッキリして人口減少がどんどん進んできた今は、若者が少ないので再び売り手市場になりましたから、若者たちはそのうち声を上げるかもしれません。

浅間山荘
現在は若者の不足分を女性や高齢者で補って低賃金で働かせようとしていますし、それでも足りない部分は外国から呼ぶように法改定しましたので、昔と違って若者たちは女性や高齢者、そしてガイジンに足を引っ張られる形になっています。

■ 筆者の身の上話
 高度経済成長期にサラリーマンになった筆者はカネに釣られて入社しました。電気工学を学んだのでその方面の企業で、就職担当の教授から示された三社の中から選べと言われました。当時は先生が就職先をあてがう時代でした。二社は知らぬ人の居ない大企業でしたが、筆者が選んだのは中小企業で、ほぼ誰も知らないであろう会社でした。しかし筆者は知っていました。それは卒業研究に当たり、研究室の教授から「恒温槽を購入するから良いものを選べ」と言われ、いろいろカタログを調べた結果、日立を始めとする有名企業の製品ではなく、大阪の「田葉井製作所」のものが良いという結論に達したことに始まります。教授にはダメと言われるかもと恐る恐る選定結果を申告したら「いいだろう」と仰います。気の変わらぬうちに早速発注しました。当時高級車が何台も買えるようなすごく高価な代物でした。木枠梱包された製品が届いて、学生みんなで梱包を解いて、さて取扱説明書を探しましたが、「田葉井製作所」の取扱説明書はどこにもありません。当時大阪へ長距離電話をかける料金は高かったので、教授の許可を頂いて電話しました。当時の「田葉井製作所」は、大阪の町工場でした。電話に出た担当者は言いました・・・「恒温槽は中にモノを入れて扉を閉めて、電源を入れたら、後は温度調節計しか操作するところはありません。ですから温度調節計メーカーの取扱説明書を見てください」・・・ウーム、なるほど、そういうことか。「田葉井製作所」は今やエスペック株式会社(東証1部【6859】)、温度・湿度等の環境変化の影響を分析する環境試験器のトップメーカーです。石田社長が品質保証の責任者だった頃に会いました。今のエスペックは立派な取扱説明書を発行しています。信じられませんね。当時の「田葉井製作所」は、その程度だったということです。そしてその温度調節計メーカーの取扱説明書を一生懸命読んで勉強しました。就職担当の教授から示された三社の中の一社がその中小企業の温度調節計メーカー、「知ってる、知ってる」嬉しくなりました。

■ 給料に釣られて入社
 しかし筆者がその中小企業を選んだ理由は、「知ってる」からではありません。卒論テーマが精密温度制御で、温度調節計メーカーですからもちろん知っていますが、当時研究室に有った計器は”YEW”横河電機製作所のものが多く、海外メーカーのものも結構あったのですが、恒温槽の温度調節計の取扱説明書を深読みしたので親しみを感じていました。
 でも選んだ理由は「親しみ」でもありません。大企業の日立製作所や松下電器産業より月給が高かったからです。ボーナスは10ヶ月とのことでした。しかも残業代はバンバンくれるし、週休二日制なんて珍しい時代に他社に先駆けて実施しました。タイムカードを廃止して自己申告制にしました。これは労働基準監督署から見れば苦々しいことだったかもしれません。労働組合は経営者と丁々発止やり合っていて、労使協議など見ていると「オイオイ大丈夫か?」と思ったものです。しかし給料が高いし、残業代もくれるので、当然ながらみんなよく働きます。会社はドンドン大きくなって東証一部上場企業になり、海外にも子会社を持つまでに発展しました。町工場の「田葉井製作所」もエスペック株式会社という上場企業になったくらいですから、当時の日本は他社に負けない良い製品なら高くても売れたのです。技術がある中小企業はドンドン大きくなりました。
 この時代の経営者は偉かったですね。戦後なにもかも失ったところから、なにくそと闘志を燃やして頑張ったのです。しかし他社より技術で勝るためには優秀な大卒の技術者を獲得しなければなりません。そのためにはカネで釣るしかありません。我が同期入社の社員は有名な国立大学や私立大学の出身者たちで、皆優秀でした。しかも一人だけ途中退職して税理士になっただけで、他は全員定年まで勤め上げました。税理士になった人はいまでも税理士事務所を経営していますが、我が勤務先企業の子会社数社の税務会計を見てくれています。こう考えると良い会社だったんですね。リストラをやらないし、家族的でした。経営的には、ほとんどがデービッドさんが言っていることをやっていたのです。だから高度成長できたのです。

■ 利益を上げて給料上げれば税収は増えて社会保障財源と成る
 いま政府がやろうとしていること・・・@社会保障費(年金や医療費)のカット、A消費増税、の2点は、デービッドさんいわく「いかにも日本的な現実論」で対症療法だと言います。アベノミクスは株価を上げて賃金を上げて、金融緩和とインフレ誘導で結果円安政策ですが、インフレ誘導はうまく行っていません。株価が上がって、企業はヤル気が出て利益も出て、税収も増えたので消費増税を二度も延期しました。デービッドさんが言うように、政府がその気になれば消費税を上げなくても税収は増えるということをアベノミクスははからずも証明したのです。しかし企業は儲けを従業員に正当に還付せず蓄えています。儲かったから給料も上げるよとなれば、所得税も増えて、もっと景気は良くなったはずです。筆者が勤めていた会社にはかつて「利益分配金」と言う制度がありました。今の時代では利益は株主配当に回せということになりますが、古き良き日本型経営では株主より従業員が大事だったので、利益を社員で山分けしたのです。そうなると、利益追求は企業経営者だけの目標ではなく、従業員全体の目標になります。まあ株主が取引先や従業員、銀行など身内ばかりだったから出来たことでしょう。米国に習った今の日本企業は株主のために利益追求するようになりました。投資会社などが増えたいまの株主のご機嫌をとらなければ経営者はクビになるからです。

■ 規制緩和の是非
 安倍政権はよく「規制緩和」と言いますね。規制するのは国家です。放任すると誰も幸せにならないと思うから規制するのです。これは官僚が悪いと内閣府は言って、官僚の規制を打破するために特区を作って、などと言うと、もう水戸黄門ドラマよろしく国民は拍手喝采、今の政権は国民の味方だとなります。しかし官僚は国民のためを思うから規制しているという面を忘れてはなりません。かつてタクシー業界を規制緩和した結果どうなりましたか?過当競争で車が増えて渋滞が増えて、仙台駅や京都駅前の客待ちタクシーの車列が話題となり、今やタクシードライバーと言えば安賃金の典型となりました。そこで再び規制強化です。歯医者が足りないからと歯学部の定員を増やしたり、法科大学院を作った結果どうなりましたか?廃業が増え、イソベンが増えて、入学定員割れ続出です。魅力が無くなったのです。
 獣医が足りないからと、加計学園に特別な計らいをして国家戦略特区に指定した愛媛県今治市で岡山理科大学獣医学部を開設させました。国内では北里大学以来52年ぶり、四国では初の獣医学部で、開学の2018年4月には獣医学科147人、獣医保健看護学科39人の計186人が入学し、ほらみろ、ニーズがあったじゃないかと加計孝太郎理事長は胸を張りました。不足しているのは公務員獣医や産業医です。ペット医は飼い主の高齢化や人口減少で犬猫が減ってきていますから、先行き過当競争になるのは目に見えています。結果は常に先にならないと出ません。頭の良い官僚の皆さんは先が見えるから規制しているのです。学生は自分は他人とは違うと思っています。

■ 結局収入が増えず子どもは産めない
 アベノミクスで賃金を上げろと政府は財界に言いますが、一方で規制緩和して非正規労働者が増えていて、大企業の社員は上がっても非正規は上がらない、女性や高齢者にも雇用機会を増やしましたが安い賃金です。労働者間格差を拡げるだけで、労働者全体の平均所得は変わりません。確かに雇用機会が増えて、失業率が下がりましたが、パイをややでかくしたものの分け合う人が増えたので結局平均すれば収入は増えないというマジックです。政府と財界はうまくタッグしているわけです。トーチャンカーチャン共稼ぎしないとやっていけない、子どもを産めば仕事が無くなる、公務員や大企業の社員なら産休や育児休暇はとれますが、そんな恵まれた人はホンの一部です。ましてや非正規のオトコは結婚も出来ません。政府はインフレ誘導しようとしているので消費者物価は27ヶ月連続で上昇中ですが、少子高齢化で需要が減りますからデフレにしかなりません。それでも人手不足で値上げが目立ってきました。スタグフレーションが懸念されます。

■ 「スマホ料金下げろ」は的外れ
 4月15日のニュースでNTTドコモの吉澤和弘社長が出てきました。我が後輩です。6月からの料金プランを発表し、端末代金と通信料金を分離して、料金は最大4割引き下げるというものです。
 313『スマホ料金』(2019年3月11日)で書きましたが、政府(総務省)がキャリア各社に携帯料金が高過ぎるから値下げしろと迫ったことに対する返答ですね。経営者としては政府から言われたら、そりゃ仕方ありません。しかし313をよく読んでください。諸外国に比べて日本の携帯料金は高くないのです。総務省が「携帯料金が家計支出に占める割合が増えているから値下げしろ」と言っているのですが、その影には菅官房長官が居ます。高くない携帯料金が高く見えるのは、総務省の言うところの家計支出が伸びないから高く見えるのです。外国は賃金が上がってるので家計支出も増える、携帯料金が気にならないのです。分母である家計支出が増えないほうが問題なのに、携帯料金を槍玉に挙げて下げろというのは本末転倒の対症療法です。しかもそれを歓迎する日本国民は、この値下げで分離されたスマホの部品や製造装置の主要メーカーである日本企業が不振に陥るであろうことを知りません。いま日本が製造業で強いのはこの分野とクルマなのです。
値下げを発表するNTTドコモの吉澤和弘社長
政府は自分で自分の首を絞めようとしているのです。このように日本国政府の政策は、一見国民に歓迎されるようでありながら、実はまことに的を射ていないと言わざるを得ないし、日本国民自身がそれを見極める眼を持ち合わせないのが悲しい現実です。

■ トヨタに学べ
 日本の労働者に今日本企業でもっともうらやましいのはというアンケートをとったら、断トツ、トヨタだそうです。筆者がかつて勤めていた会社でもトヨタの求めに応じて社員を派遣していました。派遣から帰って来た社員に聞いたら、トヨタの社員は給料も高いけれど良く働くのにビックリしたと言っていました。結局そういうことなのです。デービッドさんの言うとおり、トヨタは社員の給料を高めて高生産性・高所得モデルを実現しているのです。「トヨタだからできる」と言われるかもしれません。だったら見習ったらどうですか?給料が高くなったらモチベーションが上がって良く働くようになるのです。トランプ米大統領の政策に対してトヨタはすぐ米国の工場を増やし労働者を雇って米国経済に貢献すると発表してトランプさんを喜ばせました。これが企業経営というものです。東日本大震災でも、いち早く被災地支援を打ち出し、素早く実行に移したのは豊田章男社長と埼玉県の上田清司知事でした。時を読み、素早く実行する、尊敬しますね。
中央:豊田章男社長
達増岩手県知事   村井宮城県知事
 余談ですが、上田清司知事はもう4期も知事在職していますが、福岡県出身で、早稲田大学大学院政治学研究科在学中に埼玉県所沢市で学習塾「向陽塾」を開業し、政治の世界に入った人です。自民党過半数の県議会ですからもともと野党出身の上田知事にとっては苦しいはずですが、県内市町村の首長ほとんどの支持を得ていて、県民からも圧倒的支持があるため、自民党もあまりきついことは言えないという存在です。今は知事会長です。
 村井嘉浩宮城県知事も4期知事在職していますが、大阪府豊中市出身で、防衛大学校を卒業して陸上自衛隊に入隊し、ヘリコプターパイロットとなり、東北方面航空隊(仙台市霞目駐屯地)に配属されたという変り種です。空から見ると、関東や関西の都市部はもうすでに家や工場がぎっしりと立ち並んでおり、これ以上入る隙間がないと感じられましたが、東北地方には、まだまだこれから伸びしろがある、中でも宮城県は東北地方の牽引役としての役割を担うであろうと感じていたそうで、陸上自衛隊を退官後、松下政経塾に入塾し、県議会議員となり、3期目の任期途中で辞職して、自民党の推薦を受けて無所属で宮城県知事選挙に出馬し、当選したという人です。
 達増(たっそ)拓也岩手県知事は3期知事在職しており、我が後輩です。盛岡第一高等学校〜東大法学部卒で、外務省に入り、「小沢チルドレン」として衆議院議員になりました。小沢一郎の地盤ではなかった県北部の岩手県第1区で4回連続当選を飾るなど、「小沢学校の優等生」でした。岩手県知事はもともと建設省から小沢一郎に担ぎ出された増田寛也氏で、我が連れ合いのハトコですが、改革派知事として有名になってだんだん小沢一郎と距離を置くようになったので、増田寛也氏の4選を阻止するために、達増本人以外に増田に勝てる候補者が見当たらないということで小沢一郎が知事選に引っ張り出したのです。ところが増田寛也氏は、「多選は弊害を生む」と言って、これ以上知事を続ければ県庁内に権力構造が出来上がるからとカッコ良くさっさと引退してしまいました。ところがこんな人が放って置かれるはずがありません。4ヶ月後には第一次安倍内閣の総務相に民間から抜擢され、次の福田内閣でも引き続き総務大臣を務めました。その後の東京都知事選挙に自民党から担ぎ出されました。筆者も当然ながら応援に駆け付けましたが、相手が悪かった。小池百合子でした。
増田寛也氏

■ 政治はきな臭くなりそう
 自民党の萩生田光一幹事長代行は2019年4月18日のインターネットテレビ番組で、10月の消費税増税に関し、6月の日銀の企業短期経済観測調査(短観)が示す景況感次第で延期もあり得ると述べました。「景気はちょっと落ちている。6月の日銀短観で、この先は危ないと見えてきたら、崖に向かってみんなを連れて行くわけにはいかない。違う展開はある」と述べました。消費税増税の先送りは「まだ間に合う」と指摘した上で「その場合は国民の信を問うことになる」と明言しました。これまで二度も同じ事をしてきましたから、安倍首相や菅官房長官がいくらハッキリ否定しても、「二度あることは三度ある」と野党は衆参同日選の可能性もあると準備に入ったばかりでした。萩生田光一幹事長代行は衆参同日選の可能性を聞かれると、6月末に大阪で開く20ヶ国・地域(G20)首脳会合を挙げて「日程的に難しいと思う」と語ったそうです。
 自民党の二階幹事長は「そんなこと聞いてない」と即座に否定、菅官房長官は「リーマンショック級」事件が起きない限り有り得ないという従来説明不変と否定しました。麻生財務大臣も「企業にも協力をお願いしてるのにそんなこと無い」否定しました。しかし政治家の言うことはわかりません。「舌の根の乾かないうちに」などという言葉もありますが、「二枚舌」なんてお得意です。安倍首相はTPP断固反対と言っていた人ですよ(右参照)。
 米紙ウォールストリート・ジャーナルが先頃、日本の消費税率引き上げについて「安倍晋三首相は増税によって、景気を悪化させようと決心しているように見える」とやゆする社説を掲載し、安倍氏にとって「増税は自傷行為になろう」と皮肉る内容でした。日本でも現状の経済動向を見て、消費税増税によって一段と景気は悪化するとの見方が大勢で、財界は予定通り上げるべきだと言っていますが本音はどうなのでしょうか。
 いずれにせよ安倍首相の側近中の側近と言われる萩生田光一氏が無責任なことを言うとは思えません。上げて様子を見る観測気球でしょう。柳の下にどぜうは居るかな?その後余りの反響の大きさに、当の萩生田氏自身が「個人的見解だ」と釈明したり、安倍首相も否定するニュアンスの発言してますが、これこそが狙いだったのでしょう。

2012年の自民党のポスター

■ 「カップヌードル 味噌」発売するやすぐ中止
 日清食品が4月1日発売の新商品「カップヌードル 味噌」の販売を一時休止すると発表したのがいま話題となっています。無いと言われれば食べたくなるのが人情というものです。
 背景にはカップヌードル開発を題材にしたNHK朝ドラ「まんぷく」や、積極的な販促活動などの効果で販売計画を大きく上回り、ブランド全体の3〜4月の販売実績が前年比約3割増と急増し、増産体制を整えてきたものの、主力商品であるレギュラータイプなどの安定供給に支障が出ると判断したのだそうです。「味噌」の販売再開時期は未定とのこと。同時に、5月1日発売予定の「新元号記念パッケージ」についても、「カレー」と「シーフード」の発売を中止し、レギュラータイプのみとするそうです。
 1971年発売のカップヌードルは「国際性」をコンセプトに開発されました。きっかけは、創業者の安藤百福氏が1966年に米国を訪問したときのことです。チキンラーメンの売り込みでバイヤーに試食を勧めた安藤氏が、はしもどんぶりもなく、紙コップに入れてフォークでチキンラーメンを食べるバイヤーの姿を見てひらめいたそうです。「即席麺を世界食にするカギは食習慣の違い」に応えることだ。このエピソードをきっかけに開発されたカップヌードルは当初から世界を視野に入れて、商品名は世界共通語である英語の「ヌードル」。カップに書かれた「ヌードル」の「ド」の字だけ小さくして英語のnoodleの発音に近づけたのも、そんな思いの表れとのこと。スープも洋風、和風味ではありません。味噌は本来のカップヌードルとは相容れない商品だったのです。

カップヌー
ルみそ
 ただカップ麺の中では味噌味はしょうゆ味に次ぐ人気なので、カップヌードルも過去2回味噌味を発売しましたが、数年後に止めています。今回は3回目です。今回の「味噌」開発につながったのは高齢化対応だそうで、時代の変化がきっかけだったのは初代と同じです。増えるシニア層では小容量カップの支持が強く、シニア層にフィットする味といえば、味噌ではないか・・・。こうして昨年4月に発売されたのが「味噌」の小容量版「カップヌードル 味噌 ミニ」でした。商品名も限定商品を除けばカップヌードルでは使ったことがない漢字を採用しました。販売は好調で、消費者から通常サイズ化の要望が数多くあり、ミニを通常サイズ化した3代目「カップヌードル 味噌」が今年4月発売されたわけです。カップに「おむすびに合うランキング第1位」と表示し、購買のきっかけにしようという戦略でした。味噌汁代わりということです。しかし余りの売れ行きに、ダメダコリャ...

■ 外食産業の好不調・・・大戸屋は?
 このエッセイでは外食産業に触れることが多いですが、しかし筆者はそれほどファミレスに行くことも無く、スーパーやコンビニの弁当、すなわち中食するでもありません。それなのに何故外食産業のことを書くかと言うと、世の中の景気や日本人の動向を計るのにとてもよい材料だからです。
 311『外食店』(2019年2月24日)で我が家目の前の大戸屋のことを書きましたが、アルバイトによる不適切動画の投稿があった影響などで、3月の既存店の客数は前年に比べて1割近く減ったそうです。最近はまた賑わいを取り戻しているように見えますが、4月18日「大戸屋ごはん処」の定食メニューのうち、12品目を10〜70円値上げするというニュースが流れました。窪田健一社長は「値上げをしても、共働きの家庭が増え、ヘルシーな定食メニューの需要は高まる」ので、値上げによる客足の落ち込みは少ないと見ているそうですが、「しまほっけの炭火焼き定食」が970円から1,040円に、ロースかつ定食が910円から950円になるそうですよ。皆さんならどう思われますか?大戸屋はやよい軒に店舗数で抜かれました。これまで定食でやよい軒より100〜200円高かったのに、さらに高くなるわけです。それでも大戸屋がいいというお客様が多ければ良いのですが...味と雰囲気と価格、そして客層...ですね。
我が家は4階建ての茶色いビルの裏、その手前に安楽亭、三ツ矢堂製麺、大戸屋と並んでいます

■ 外食店の好不調・・・安楽亭と幸楽苑
 日経MJは3月末発売の紙面に「外食6割 20社が減収 35社2月既存店 客足なお鈍く」の記事を掲載しました。2月の外食35社の前年同月比売上高増減率を独自調査したものです。ベスト5は@日本ケンタッキーフライドチキン+19.3%A幸楽苑+15.8%Bスシロー+8.8%C元気寿司+8.4%D物語コーポレーション(焼肉キングや丸源ラーメンなど)+7.9%、ワースト5は@安楽亭▼9.3%Aカッパ・クリエイト▼5.8%Bモスフードサービス▼5.0%C吉野家▼4.7%Dロックフィールド(惣菜のRFIなど)▼4.0%でした。
 我が家の隣の安楽亭は最近客足が遠のいたなぁと思っていたらやっぱり、いつも行列の一指禅ラーメンを挟んで隣の焼肉キングの繁盛振りを見ると一目瞭然です。翔んで埼玉コラボキャンペーンは効果無かったか?頑張って欲しいものです。幸楽苑が好調2位にランクインしたのも驚きました。外食産業では数少ない“勝ち組”なわけですよ。つい最近まで危機説が報じられていた幸楽苑がなぜ復活したのか?ペッパーフードサービスとフランチャイズ契約を結んで、ラーメン店を『いきなり! ステーキ』に衣替えして、今16店舗経営しています。さらに幸楽苑は「焼肉ライク」ともフランチャイズ契約を締結、これにはまたまたビックリ!これがどれだけ珍しいことか、例えばハンバーガーのモスフードサービスが不採算店舗を整理する際、業績が好調なスシローと元気寿司とフランチャイズ契約を締結してハンバーガー店を寿司屋にしてしまうようなものだからです。それもライバル関係にある2社と“二股”をかけてしまうという、業界の掟破りのとんでもない“奇策”と言えるものです。おまえらもウカウカしてたらラーメン屋じゃなく焼き肉屋にしちゃうぞと言われて、既存店舗の従業員たちも奮起してラーメンのほうまで業績がアップしたのだそうです。こんなこと、凡庸な経営者では無理ですね。
我が家の隣の安楽亭

■ ノートルダム大聖堂火災
 フランス・パリ中心部にあるノートルダム大聖堂で2019年4月15日夕に発生した大規模な火災は、フランスのみならず、世界中に衝撃のニュースとして伝えられました。築850年になるゴシック様式の大聖堂は世界遺産に登録され、フランスでも有名な名所ですが、特にパリ市民にとっては心の拠りどころとさえ言える歴史的建造物でした。これから叡智を結集して再建にとりかかるでしょう。日本でも過去文化財建造物が度々消失しています。火事は怖いです。

■ 東池袋交通事故
 4月19日12時25分ごろ、東京都豊島区東池袋4丁目の都道で大変な交通事故が起きました。この辺りは筆者が勤めていたところにも近く、よく知っている地域です。308『十日町』(2019年2月3日)の中に護国寺の節分会の豆まきに行って、帰りは池袋まで歩いて帰ったという記述があります。そのまさに道沿いです。大勝軒本店で中華そばを食べたということも書いてあります。事故の様子が暴走車のドライブレコーダーに記録されており、車の左側面がガードパイプに接触した後、速度を上げて約70メートル先の交差点に進入して自転車で横断中の70代男性をはね、さらにその先の交差点で自転車で横断歩道を渡っていた松永真菜さん(31)=同区東池袋2丁目=と長女の莉子ちゃん(3)をはねて、二人は全身を強く打ち死亡しました。さらに左折で進入してきたごみ収集車に衝突し、ごみ収集車は横転。さらに横断歩道を渡っていた別の歩行者4人もはね、信号待ちをしていた対向車線のトラックにぶつかって止まったのだそうです。警視庁は、いずれも赤信号で進入したとみています。運転していたのは飯塚幸三さん(87)=東京都板橋区弥生町=で、「アクセルが戻らなくなった」と話しているそうです。飯塚さんに持病は確認されておらず、免許証は2017年に更新していたとのこと。最初の接触事故の直前、妻が「危ないよ、どうしたの?」と呼びかけ、飯塚さんが「あー、どうしたんだろう」と応じる声もドライブレコーダーに記録されていました。飯塚さんは事故後、息子に「アクセルが戻らなくなって人をいっぱいひいてしまった」と電話、警視庁の調べに対しても同じ説明をしているそうです。
 亡くなられた母子は本当に気の毒です。妻と3歳の可愛い盛りの女の子を一瞬にして失った旦那さんと親族の皆様には、気の毒で掛ける言葉もありません。もしこれが自分の娘と孫ならと考えただけで身の毛がよだちます。

■ よくあるブレーキとアクセル踏み違え
 車はこういう場合凶器になります。運転者が制御不能に陥ったものと思われます。修正しようとしてますます事態を悪化させてしまう、老人になるとこういうことが有り得るのです。
 ブレーキとアクセルを踏み間違えたというのはよくある話です。昔の話ですが筆者の隣の家の生垣を突き破った車が芝生の庭を横切って物置にぶつかって止まった事故がありました。運転していたのは向かいの家のご主人で会社を経営していた人、当時60代だったと思います。そのときの様子は見ていませんが、帰宅してあまりの凄まじい現場に慄然としました。聞いたらその直前に幼い姉妹が庭で遊んでいましたが、事故のときは家の中に入っていたとのこと、いや〜良かった、と近所の人たちで話しました。このように概ねブレーキとアクセルを踏み間違える事故は発進時に起きます。今回のように「アクセルが戻らなくなった」というのは何故でしょうか?今の車は電子制御ですから、制御基板の故障でそうしたことが起きる可能性はゼロではありません。10年ほど前に米国で車の欠陥だとして訴訟が頻発したことがありました。ただ確率的に言えば何らかの要因でハンドル操作を誤り、ブレーキを踏んだつもりがアクセルだったということが考えられます。そうなったらもう暴走になります。
若い頃の筆者と愛車:ケンとメリーのスカイライン2000GT(現金購入)

■ 免許返納も選択肢
 飯塚さんは元工業技術院長で、農機大手クボタの副社長も務めた方、立派な方ですが、免許証返納の考えはなかったのか?お住まいは東武東上線中板橋駅と川越街道の間、威容を誇る日大板橋病院が見えます。この辺りも筆者の庭みたいなもので詳しいです。大変交通便利な場所なので、車が無くても問題ありません。田舎に住んでる老人が車がないと買い物も出来ないと言って運転し続けるのは仕方無い面がありますが、我が家もそうですが、車をやめてもさほど困りません。余熱利用施設エコパの露天風呂で70代、80代の老人たちが、免許証更新の検査で後期高齢者は認知症検査が有る話や、免許証返納どうする?と言う話をしています。エコパ行きの無料の市のバスがありますが、夕方来ている老人たちは大概自家用車を運転してやってきます。中にはもう返納するつもりという人も居ました。
 筆者の元上司で、豊島園の近くに住んでいる90歳の方がいらっしゃいます。毎朝光ヶ丘公園まで車を運転して行き、長唄をひねり、ゴルフ練習場で打ちっ放しするのだそうです。同じ練馬区なのですぐ近くとは言え、大丈夫でしょうか?心配です。
(2019年4月21日)


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