4月19日は平成最後の満月でしたが、残念ながら厚い雲で見えず、19日に綺麗に見えたからマッいいか。20日には二十四節気の「穀雨」に入りました。田んぼや畑の準備が整い、それに合わせるように、柔らかな春の雨が降る頃...この頃より変りやすい春の天気も安定し、日差しも強まってきます。 ■ やることは簡単だ、給料を上げろ 前回、前々回とデービッド・アトキンソン氏の『日本人の勝算』(東洋経済新報社)について触れました。今回またもその続きです。 筆者はかつて企業経営者でした。トップに立つと経営判断は自分に全責任がかかるためどうしても保守的になりがちです。思い返してみると、あのときああすれば良かった、こうすれば良かったと反省の念がつのります。それだけにデービッドさんの言われることには忸怩たる思いがあります。企業経営は入るを計り出るを制するにあることは当然ですが、入るを計るための一番の要素は従業員のヤル気と高効率の設備です。ヤル気すなわちモチベーションを高めるためにはなんと言っても給料が高いことです。他社より給料が高ければヤル気のある人間が集まってきます。そういう社員をバンバン教育して、他社へ移ろうとしないような給与を維持していれば良いのです。設備投資をして、研究開発投資をして、大学との共同研究をして、使うところにカネを使えば良いのです。経費を適切に使わなければ効果は現れません。出るを制することが人件費を抑えることだったり、経費を節減することであれば業績は上がりません。 ■ リストラは企業経営者の責任放棄 ましてやリストラなんて企業経営者の責任放棄です。近年の日本では、リストラで企業再興してきた経営者が讃えられる傾向にありますが、これは最大の過ちです。これによって、リストラを恐れる労働者はモノを言わなくなりました。労働組合は骨抜きになり、政治的行動もしなくなりました。リストラというのは首切りではなく、プレミア付き退職勧奨ですが、これが合法的に行われるなら労働者の立場は極めて弱くなります。カルロス・ゴーンをいまだに良く言うひとが居ますが、彼がやったことは何だったか、知る人ぞ知るところです。リストラが横行する社会では、公務員がうらやましがられます。この30年、公務員志向が高まったのはそのためです。筆者は「リストラは経営責任放棄だ」とか、「口に入るものは自分の財布から払え、でないと口が卑しくなる」と経営者から言われて育ちました。今考えても偉い人たちだったなと思いますし、そういう企業の一員であったことを誇りに思います。 ■ 給料が下がる、就職できない時代
■ 筆者の身の上話 高度経済成長期にサラリーマンになった筆者はカネに釣られて入社しました。電気工学を学んだのでその方面の企業で、就職担当の教授から示された三社の中から選べと言われました。当時は先生が就職先をあてがう時代でした。二社は知らぬ人の居ない大企業でしたが、筆者が選んだのは中小企業で、ほぼ誰も知らないであろう会社でした。しかし筆者は知っていました。それは卒業研究に当たり、研究室の教授から「恒温槽を購入するから良いものを選べ」と言われ、いろいろカタログを調べた結果、日立を始めとする有名企業の製品ではなく、大阪の「田葉井製作所」のものが良いという結論に達したことに始まります。教授にはダメと言われるかもと恐る恐る選定結果を申告したら「いいだろう」と仰います。気の変わらぬうちに早速発注しました。当時高級車が何台も買えるようなすごく高価な代物でした。木枠梱包された製品が届いて、学生みんなで梱包を解いて、さて取扱説明書を探しましたが、「田葉井製作所」の取扱説明書はどこにもありません。当時大阪へ長距離電話をかける料金は高かったので、教授の許可を頂いて電話しました。当時の「田葉井製作所」は、大阪の町工場でした。電話に出た担当者は言いました・・・「恒温槽は中にモノを入れて扉を閉めて、電源を入れたら、後は温度調節計しか操作するところはありません。ですから温度調節計メーカーの取扱説明書を見てください」・・・ウーム、なるほど、そういうことか。「田葉井製作所」は今やエスペック株式会社(東証1部【6859】)、温度・湿度等の環境変化の影響を分析する環境試験器のトップメーカーです。石田社長が品質保証の責任者だった頃に会いました。今のエスペックは立派な取扱説明書を発行しています。信じられませんね。当時の「田葉井製作所」は、その程度だったということです。そしてその温度調節計メーカーの取扱説明書を一生懸命読んで勉強しました。就職担当の教授から示された三社の中の一社がその中小企業の温度調節計メーカー、「知ってる、知ってる」嬉しくなりました。 ■ 給料に釣られて入社 しかし筆者がその中小企業を選んだ理由は、「知ってる」からではありません。卒論テーマが精密温度制御で、温度調節計メーカーですからもちろん知っていますが、当時研究室に有った計器は”YEW”横河電機製作所のものが多く、海外メーカーのものも結構あったのですが、恒温槽の温度調節計の取扱説明書を深読みしたので親しみを感じていました。
■ 利益を上げて給料上げれば税収は増えて社会保障財源と成る いま政府がやろうとしていること・・・@社会保障費(年金や医療費)のカット、A消費増税、の2点は、デービッドさんいわく「いかにも日本的な現実論」で対症療法だと言います。アベノミクスは株価を上げて賃金を上げて、金融緩和とインフレ誘導で結果円安政策ですが、インフレ誘導はうまく行っていません。株価が上がって、企業はヤル気が出て利益も出て、税収も増えたので消費増税を二度も延期しました。デービッドさんが言うように、政府がその気になれば消費税を上げなくても税収は増えるということをアベノミクスははからずも証明したのです。しかし企業は儲けを従業員に正当に還付せず蓄えています。儲かったから給料も上げるよとなれば、所得税も増えて、もっと景気は良くなったはずです。筆者が勤めていた会社にはかつて「利益分配金」と言う制度がありました。今の時代では利益は株主配当に回せということになりますが、古き良き日本型経営では株主より従業員が大事だったので、利益を社員で山分けしたのです。そうなると、利益追求は企業経営者だけの目標ではなく、従業員全体の目標になります。まあ株主が取引先や従業員、銀行など身内ばかりだったから出来たことでしょう。米国に習った今の日本企業は株主のために利益追求するようになりました。投資会社などが増えたいまの株主のご機嫌をとらなければ経営者はクビになるからです。 ■ 規制緩和の是非 安倍政権はよく「規制緩和」と言いますね。規制するのは国家です。放任すると誰も幸せにならないと思うから規制するのです。これは官僚が悪いと内閣府は言って、官僚の規制を打破するために特区を作って、などと言うと、もう水戸黄門ドラマよろしく国民は拍手喝采、今の政権は国民の味方だとなります。しかし官僚は国民のためを思うから規制しているという面を忘れてはなりません。かつてタクシー業界を規制緩和した結果どうなりましたか?過当競争で車が増えて渋滞が増えて、仙台駅や京都駅前の客待ちタクシーの車列が話題となり、今やタクシードライバーと言えば安賃金の典型となりました。そこで再び規制強化です。歯医者が足りないからと歯学部の定員を増やしたり、法科大学院を作った結果どうなりましたか?廃業が増え、イソベンが増えて、入学定員割れ続出です。魅力が無くなったのです。
■ 結局収入が増えず子どもは産めない アベノミクスで賃金を上げろと政府は財界に言いますが、一方で規制緩和して非正規労働者が増えていて、大企業の社員は上がっても非正規は上がらない、女性や高齢者にも雇用機会を増やしましたが安い賃金です。労働者間格差を拡げるだけで、労働者全体の平均所得は変わりません。確かに雇用機会が増えて、失業率が下がりましたが、パイをややでかくしたものの分け合う人が増えたので結局平均すれば収入は増えないというマジックです。政府と財界はうまくタッグしているわけです。トーチャンカーチャン共稼ぎしないとやっていけない、子どもを産めば仕事が無くなる、公務員や大企業の社員なら産休や育児休暇はとれますが、そんな恵まれた人はホンの一部です。ましてや非正規のオトコは結婚も出来ません。政府はインフレ誘導しようとしているので消費者物価は27ヶ月連続で上昇中ですが、少子高齢化で需要が減りますからデフレにしかなりません。それでも人手不足で値上げが目立ってきました。スタグフレーションが懸念されます。 ■ 「スマホ料金下げろ」は的外れ 4月15日のニュースでNTTドコモの吉澤和弘社長が出てきました。我が後輩です。6月からの料金プランを発表し、端末代金と通信料金を分離して、料金は最大4割引き下げるというものです。
■ トヨタに学べ
村井嘉浩宮城県知事も4期知事在職していますが、大阪府豊中市出身で、防衛大学校を卒業して陸上自衛隊に入隊し、ヘリコプターパイロットとなり、東北方面航空隊(仙台市霞目駐屯地)に配属されたという変り種です。空から見ると、関東や関西の都市部はもうすでに家や工場がぎっしりと立ち並んでおり、これ以上入る隙間がないと感じられましたが、東北地方には、まだまだこれから伸びしろがある、中でも宮城県は東北地方の牽引役としての役割を担うであろうと感じていたそうで、陸上自衛隊を退官後、松下政経塾に入塾し、県議会議員となり、3期目の任期途中で辞職して、自民党の推薦を受けて無所属で宮城県知事選挙に出馬し、当選したという人です。
■ 政治はきな臭くなりそう 自民党の萩生田光一幹事長代行は2019年4月18日のインターネットテレビ番組で、10月の消費税増税に関し、6月の日銀の企業短期経済観測調査(短観)が示す景況感次第で延期もあり得ると述べました。「景気はちょっと落ちている。6月の日銀短観で、この先は危ないと見えてきたら、崖に向かってみんなを連れて行くわけにはいかない。違う展開はある」と述べました。消費税増税の先送りは「まだ間に合う」と指摘した上で「その場合は国民の信を問うことになる」と明言しました。これまで二度も同じ事をしてきましたから、安倍首相や菅官房長官がいくらハッキリ否定しても、「二度あることは三度ある」と野党は衆参同日選の可能性もあると準備に入ったばかりでした。萩生田光一幹事長代行は衆参同日選の可能性を聞かれると、6月末に大阪で開く20ヶ国・地域(G20)首脳会合を挙げて「日程的に難しいと思う」と語ったそうです。
■ 「カップヌードル 味噌」発売するやすぐ中止 日清食品が4月1日発売の新商品「カップヌードル 味噌」の販売を一時休止すると発表したのがいま話題となっています。無いと言われれば食べたくなるのが人情というものです。
■ 外食産業の好不調・・・大戸屋は? このエッセイでは外食産業に触れることが多いですが、しかし筆者はそれほどファミレスに行くことも無く、スーパーやコンビニの弁当、すなわち中食するでもありません。それなのに何故外食産業のことを書くかと言うと、世の中の景気や日本人の動向を計るのにとてもよい材料だからです。
■ 外食店の好不調・・・安楽亭と幸楽苑 日経MJは3月末発売の紙面に「外食6割 20社が減収 35社2月既存店 客足なお鈍く」の記事を掲載しました。2月の外食35社の前年同月比売上高増減率を独自調査したものです。ベスト5は@日本ケンタッキーフライドチキン+19.3%A幸楽苑+15.8%Bスシロー+8.8%C元気寿司+8.4%D物語コーポレーション(焼肉キングや丸源ラーメンなど)+7.9%、ワースト5は@安楽亭▼9.3%Aカッパ・クリエイト▼5.8%Bモスフードサービス▼5.0%C吉野家▼4.7%Dロックフィールド(惣菜のRFIなど)▼4.0%でした。
■ ノートルダム大聖堂火災 フランス・パリ中心部にあるノートルダム大聖堂で2019年4月15日夕に発生した大規模な火災は、フランスのみならず、世界中に衝撃のニュースとして伝えられました。築850年になるゴシック様式の大聖堂は世界遺産に登録され、フランスでも有名な名所ですが、特にパリ市民にとっては心の拠りどころとさえ言える歴史的建造物でした。これから叡智を結集して再建にとりかかるでしょう。日本でも過去文化財建造物が度々消失しています。火事は怖いです。 ■ 東池袋交通事故 4月19日12時25分ごろ、東京都豊島区東池袋4丁目の都道で大変な交通事故が起きました。この辺りは筆者が勤めていたところにも近く、よく知っている地域です。308『十日町』(2019年2月3日)の中に護国寺の節分会の豆まきに行って、帰りは池袋まで歩いて帰ったという記述があります。そのまさに道沿いです。大勝軒本店で中華そばを食べたということも書いてあります。事故の様子が暴走車のドライブレコーダーに記録されており、車の左側面がガードパイプに接触した後、速度を上げて約70メートル先の交差点に進入して自転車で横断中の70代男性をはね、さらにその先の交差点で自転車で横断歩道を渡っていた松永真菜さん(31)=同区東池袋2丁目=と長女の莉子ちゃん(3)をはねて、二人は全身を強く打ち死亡しました。さらに左折で進入してきたごみ収集車に衝突し、ごみ収集車は横転。さらに横断歩道を渡っていた別の歩行者4人もはね、信号待ちをしていた対向車線のトラックにぶつかって止まったのだそうです。警視庁は、いずれも赤信号で進入したとみています。運転していたのは飯塚幸三さん(87)=東京都板橋区弥生町=で、「アクセルが戻らなくなった」と話しているそうです。飯塚さんに持病は確認されておらず、免許証は2017年に更新していたとのこと。最初の接触事故の直前、妻が「危ないよ、どうしたの?」と呼びかけ、飯塚さんが「あー、どうしたんだろう」と応じる声もドライブレコーダーに記録されていました。飯塚さんは事故後、息子に「アクセルが戻らなくなって人をいっぱいひいてしまった」と電話、警視庁の調べに対しても同じ説明をしているそうです。 亡くなられた母子は本当に気の毒です。妻と3歳の可愛い盛りの女の子を一瞬にして失った旦那さんと親族の皆様には、気の毒で掛ける言葉もありません。もしこれが自分の娘と孫ならと考えただけで身の毛がよだちます。 ■ よくあるブレーキとアクセル踏み違え 車はこういう場合凶器になります。運転者が制御不能に陥ったものと思われます。修正しようとしてますます事態を悪化させてしまう、老人になるとこういうことが有り得るのです。
■ 免許返納も選択肢 飯塚さんは元工業技術院長で、農機大手クボタの副社長も務めた方、立派な方ですが、免許証返納の考えはなかったのか?お住まいは東武東上線中板橋駅と川越街道の間、威容を誇る日大板橋病院が見えます。この辺りも筆者の庭みたいなもので詳しいです。大変交通便利な場所なので、車が無くても問題ありません。田舎に住んでる老人が車がないと買い物も出来ないと言って運転し続けるのは仕方無い面がありますが、我が家もそうですが、車をやめてもさほど困りません。余熱利用施設エコパの露天風呂で70代、80代の老人たちが、免許証更新の検査で後期高齢者は認知症検査が有る話や、免許証返納どうする?と言う話をしています。エコパ行きの無料の市のバスがありますが、夕方来ている老人たちは大概自家用車を運転してやってきます。中にはもう返納するつもりという人も居ました。 筆者の元上司で、豊島園の近くに住んでいる90歳の方がいらっしゃいます。毎朝光ヶ丘公園まで車を運転して行き、長唄をひねり、ゴルフ練習場で打ちっ放しするのだそうです。同じ練馬区なのですぐ近くとは言え、大丈夫でしょうか?心配です。 (2019年4月21日) |