266  酒蔵と杜氏
 ふじみ野市・三芳町の余熱利用施設エコパのバーデプールで一緒に歩いている人が、大潮なので河口湖に釣りに行くと言います。大潮や小潮といった潮汐周期と釣果にどんな因果関係があるのでしょうか。詳細不明ですが、例えば株式の世界でも月の動きとの関係が良く言われます。おそらくこれは人間の心理との関係でしょうから、魚も同様に生物ですから関係有るのでしょう。月と太陽が一直線上になった時(満月、新月)に月と太陽の影響力が重なることで大潮になる、逆に月と太陽が直角方向になった時(上弦、下弦の月)は月と太陽の影響が分散して小潮となります。一般的に、最も釣果が期待できると言われるのは、干満の差が大きい大潮のときだと言われます。「湖でも潮は関係有るんですか」と訊ねたら、「あるらしい」とおっしゃってました。2018年4月16日(月)が新月であり、太陽と地球の間に月がありますから、月は真っ暗になります。16日から三日間大潮です。

■ オートメーションで羽ばたけ日本酒!
 さて本日は日本酒についての話ですが、過去この随筆で何度もこの話題について書いてきました。というのも、筆者の仕事は温湿度制御、圧力制御、空気環境制御が主だったので、お客様はあらゆる産業にわたりました。鉄鋼のような高温、超電導のような極低温、食品の冷凍、冷蔵、ビルの空調、半導体のクリーンエア環境、自動車や家電、きのこやトマト、いちごなどの施設型農業などあらゆる産業において、温度、湿度、圧力、空気清浄などは管理、制御されるべきアイテムでした。生き物はそれぞれに適した環境で生き生きと育ちます。その中に「醸造」という分野があり、「発酵」というものがあります。これは醤油、味噌、酒などを作るときの技術ですが、原料と水と空気を微生物が働きやすいような環境において化学作用を起こさせることで、私たちの食生活に有用なものを作り出すことです。古代から人類はこういう技術を編み出してきました。ところが実は日本という国は、災害が多く四方を海に囲まれている上に、海からニョッキリとマサカリの刃が突き出ているような国土ですから、気候変動が激しくて生物には結構厳しい面があります。水にしても、日本ではどういう性質の水が井戸から汲み上げられるか、近隣でも異なります。しかも北海道と沖縄ではまるで気候が違います。酒や焼酎を造るのにも、その土地ごとの方法があるのです。226『味噌汁』(2017年7月10日)で、世界的なワイン品評会、インターナショナル・ワイン・チャレンジ(IWC)の2017年日本酒部門の最優秀賞「チャンピオン・サケ」に岩手県二戸市福岡の南部美人(久慈浩介社長)の純米酒「南部美人 特別純米」が選ばれたことを紹介しました。このときの最後の部分で「オートメーションで羽ばたけ日本酒!」と書きました。確かに「南部美人」のように、優れた杜氏(とうじ)と蔵人(くらびと)で美味しいお酒を造っている蔵元もあります。しかしこれからは、それだけではダメなのです。今、日本の味噌、醤油、日本酒は和食ブームで海外から引っ張りだこです。今やそれらの製造工場は海外に進出しているのです。まちの小さな蔵はどう対処すべきでしょうか。
満面の笑みの「南部美人」久慈浩介社長
2017年7月6日英国ロンドンのホテルで

■ 減る杜氏と蔵人
 酒の醸造を指揮する杜氏や酒蔵で働く蔵人が減り続けています。右の毎日新聞のグラフをご覧下さい。スゴイですね。日本酒造杜氏組合連合会によりますと、2015年度は全国で杜氏703人(前年度735人)、三役数(杜氏補佐など)210人(同230人)、一般会員1357人(同1339人)、合計で2270人(同2304人)が酒造りに携わったそうです。20年前の1996年度には杜氏数は1515人、三役数1897人、一般会員3739人、合計で7151人が酒造りに携わっていました。合計で4881人減(69%減)です。酒造業に従事する杜氏はもともと農家の人が農閑期の季節労働者として働いていたものです。昔は酒造りではなく、工場や都市の工事現場にも出稼ぎに行っていたものが、今や居なくなりました。それでも酒造りは連綿と続いてきたので杜氏は求められました。しかし、高齢化、退職が進む中で、例年同一地域の人たちが同一酒造場に就労してきた酒造り組織の維持が危うくなっているのが現状です。伝統的酒造りは寒さの厳しいときの仕事、後継者は減り続けました。
2018年4月4日毎日新聞より

■ 定着しつつある「四季醸造」
 大手酒造会社では、一部の高級品に携わってきた杜氏らが高齢となり現役を退きつつあります。そこで社員が中心となって季節に関わらず造る「四季醸造」が定着しつつあります。造り手の確保に悩む中小の蔵でもITを駆使した醸造が広がっています。毎日新聞によりますと、酒どころの神戸・灘にある菊正宗酒造は超大手の一社ですが、2月下旬、社員たちが木おけに入った米とこうじを足で踏んでかき混ぜていました。酒米を発酵させる「もと」を造る重要な工程で、社員主体で取り組むのは今季が初めてだそうです。というのも杜氏の小島さんが78歳になり、社員の指導に徹することにしたからとのこと。「もと」というのは酉(とりへん)に元・・・酉元を1字にした文字(国字)なので特殊な辞書が入っていないと表示されません。酒母で酵母を培養するのが日本酒造りの第一歩です。

■ 一方で「生もと造り」へのこだわりも
 1965年ごろから冷蔵設備のある蔵で四季醸造に取り組んできた菊正宗でも、付加価値の高い「生もと造り」は冬場に小島さんや蔵人が担ってきました。寒い時期に蔵で寝泊まりして発酵を管理する重労働のため、高齢の蔵人が集まりにくくなり、小島さんも体力の限界を理由に第一線から退いたのです。小島さんは兵庫県篠山(ササヤマ)市で農業を営んでいます。丹波篠山地方では、農閑期の冬場に神戸などへ出稼ぎをする杜氏らが「丹波杜氏」と呼ばれ、酒どころを支えてきました。小島さんが菊正宗で働き始めた1958年ごろはほとんど手作業で、同郷の先輩から酒造りを学んだそうです。「杜氏は酒造りの文化を担ってきた。作業の一つ一つに意味があることを社員に伝え続けていきたい」と言います。今年の秋には社員が主体となって仕込んだ初めての酒が店頭に並びます。

■ 無上の幸福”paradise”
 254『大寒』(2018年1月21日)で、山形県東根市の酒蔵;六歌仙の日本酒を雪の中で熟成させて味をまろやかにする「雪中蔵囲い」を紹介しました。日本酒で「ひやおろし」と「寒仕込み」というものがありますが、この違いについて書きました。ところが、現在では蔵中の温度を空調設備で一年中冷涼に保ち、製麹機械などの発酵制御装置によってクリーンルームの中で菌を排除しつつ、発酵の温度管理を行えるようになってきたため、大手の蔵では四季醸造が可能となり、どの季節でも、同じお酒を同じ味で飲めるようになりました。日本酒に「旬」というものがなくなってしまうのはどこか寂しいという「通」のヒトもいるようですが、ホンマモンの日本酒好きにとって、美味しいお酒を年中安く飲めるという社会の実現は、無上の幸福(英語で言えば”paradise”)と言わなければなりません。

■ 醸造学を専攻した社員たちが進める近代的な酒造り
 丹波杜氏以外にも、全国には南部杜氏(岩手県)、能登杜氏、越後杜氏、広島杜氏、但馬杜氏など各地に杜氏グループがあります。日本酒造杜氏組合連合会にはピークだった1965年度で、3,683人の杜氏、24,392人の蔵人が所属していました。その後、農閑期の出稼ぎが減るとともに大手メーカーでは四季醸造や機械化が進み、造り手は醸造学を専攻した社員たちが中心となり、2016年度は杜氏694人、蔵人は1,553人まで減少しました。
 ただ、機械化、合理化によって蔵人の人数が減り、集中管理システムを用いて近代的な酒造りが進められてきた結果、若い社員技術者らも混じって酒造りを行うようになってきたため、一般会員数は微増しています。海外での日本酒人気を受けて、杜氏の技術を学びながら、そのノウハウをコンピュータに覚えこませながら、社員での酒造りが本格化してきているためです。日本酒で人気ダントツの「獺祭(だっさい)」で知られる旭酒造(山口県)にも杜氏はおらず、1999年から社員がデータに基づいた醸造に取り組んでいます。
【参考】
 日本酒造組合中央会(http://www.japansake.or.jp/sake/)
 日本醸造協会http://www.jozo.or.jp/
 日本酒が美味しくなった理由http://diamond.jp/articles/-/106392
【写真右】青森県の人気の酒「田酒(でんしゅ)」・・・株式会社西田酒造店 http://www.densyu.co.jp/

田酒(でんしゅ)

■ 設備投資するか、昔ながらの酒造りか
 四季醸造の設備を持たない中小の酒蔵では、杜氏や蔵人の確保に悩むケースも増えています。杜氏を社長が兼務したり、社員による酒造りに移行したりする酒蔵も目立ってきました。初期設備投資は巨額なので、なかなか踏み切れないのはもっともです。こうした酒蔵に向け、ITを活用した支援システムを提供し、タンクの温度などをセンサーで監視し、スマートフォンで発酵状況が分かるシステムを提供する会社なども出てきました。蔵で寝泊まりしなくても管理でき、京都府の中小酒蔵などで導入が進んでいるそうです。
 一方、昔ながらの酒造りに取り組む酒蔵もあります。伝統の製法にこだわることで杜氏や蔵人を引きつけ、伝統的な酒造りを売りにして昔ながらのファンを守り続けようということでしょう。これもひとつの道ですね。
 埼玉県は清酒出荷量全国5位、蔵元も多いのです。右は埼玉県の酒蔵マップです。小川町の「帝松」、飯能の天覧山、川越の鏡山など有名ですね。花咲特栄高校の近くにある加須の釜屋は「力士」で有名、焼酎も作っています。杜氏と蔵人が若い!将来性がありますね。

埼玉県の酒蔵マップ

■ 「獺祭」
 248『獺祭』(2017年12月11日)で、2017年12月10日(日)の読売新聞の朝刊に「お願いです。高く買わないでください」という旭酒造のメッセージ広告が掲載されたことを紹介しました。
 「獺祭」は、旭酒造と契約した正規販売店のみが販売できるようになっていますが、取り扱えないスーパーや酒屋の中には転売屋から仕入れ、希望小売価格の2倍、3倍の値をつけて販売している店もあります。小売価格は販売するお店が決めるので、高く売っても安く売ってもそれは小売業の自由です。したがって旭酒造は広告で訴えることに踏み切ったようです。
 ふじみ野市のイオンの店頭価格はメーカー希望小売価格の1.5〜1.9倍でした。それでも売れるんですね。だからやはり獺祭は美味いのですよ。
 この広告は考えてみればスゴイ広告です。どこで買えばいいか、調べたくなりますね。旭酒造の純米大吟醸「獺祭」が買える店(国内版)を見ました。ふじみ野市にはありません。さいたま市は結構ありますが、川越市は2店舗、我が家から最も近いのは車で4.6km11分潟}ツザキ中福店(川越市中福547)、4.7km15分潟}ツザキ新宿店(川越市新宿町1丁目25-48)、そして5.9km19分富士見市の山武酒店(よしのや;埼玉県富士見市関沢2-25-53)などで、所沢市の西武百貨は10km超です。「獺祭」を正規価格で、すなわち安く買うのは大変なんですね。川越市の潟}ツザキでは、田酒や南部美人、浦霞、出羽桜、初孫・・・・、書き切れないほどの銘酒を販売しています。富士見市の山武酒店(よしのや)は、秋田の新政、白瀑、愛媛の石鎚、福島の寫楽、山形の雅山流、山口の獺祭、鳥取の鷹勇、島根の十旭日、イチローズ・モルト特約店だそうです。

■ 旭酒造がニューヨークに酒蔵を建築
 皆さん、注目です。日本酒で人気ダントツの「獺祭(だっさい)」で知られる旭酒造は、ナント!ニューヨークに酒蔵を建築する事を決定、発表しました。酒造最適米と、酒造最適水があれば、クリーンルームで最適清浄空気環境を作って、ニッポンの技術をもって、世界中どこでも美味しい日本酒が造れるのです。消費地の近くで作れば輸送コストが低減されるので、より安く供給できます。日本は、良い水を作る技術と、良い空気を作る技術で世界一です。これに美味しい酒を造る技術を加えて、原料米を日本から供給すれば、世界のどこでも美味しい日本酒が造れます。これこそがニッポンの生きる道なのです。

■ 日本人の舌が作ってくれるブランド
 ただ、ウィスキーにしろワインにしろ、あんなに美味しい酒を造れる人たちの現地で日本酒工場を建てて、現地の人たちを雇って日本酒を造ったら、そのノウハウが移転して、やがて商売に成らなくなるのではないかと心配されるのではないでしょうか。その答えはキッコーマンにあります。キッコーマンの醤油ブランドは今や世界に鳴り響いています。それも海外で作っているのです。「日本では儲からなくていいんです。日本人は美味いだけでは買いません。コスパが求められます。でも日本で受けたら海外では高くても売れます。マーケティングリサーチは日本で、利益は海外で得る、日本人の舌が私たちのブランドを作ってくれているんです」・・・どうですか、この壮大な海外戦略!日本では儲からなくて良い、でも商品開発は日本でなければならない、微妙な味の違いを見分ける日本人の舌のお蔭で、海外で儲けさせて頂いている、キッコーマンの戦略はそのまま日本酒の成功に直結するのではないでしょうか。開発は日本で、製造は消費地直近で・・・・

■ グローバル化
 海外で工場展開すれば日本からものづくりが失われ、雇用も減り、究極は日本のためにならないのではないかという疑問が当然出るはずです。その答えですが、グローバル化によって国内の工場はドンドン減りました。しかし日本はいま人手不足で、企業は未曾有の利益を出して内部留保を増やし続けています。それが被雇用者に十分に還元されていないことは問題ですが、国内の工場をたたんで海外に移転しても儲かっている、再び日本に戻ってきた工場もありますがホンの一部です。何故ならもはや日本で若い人を雇うのは難しいからです。日本の人手不足は景気が良いからではありません。少子高齢化に伴う構造的要因です。したがって海外からのニーズがあるからといって日本国内でドンドン日本酒を造って輸出することは困難です。ましてや旧態依然の酒蔵で、厳しい寒さの中での「寒仕込み」なんて、余程のマゾヒストでなければやりたがりません。日本の酒蔵がドンドン減ったのは、構造的要因なのです。酒造りのオートメーション化、海外への工場展開は必須なのです。

■ 日本酒の国内出荷量はピーク時の7割減、輸出数量は10年で倍増
 酒の需要動向はどうでしょうか。昨年10月に出された農林水産省のレポートをご覧下さい。アルコール飲料全体の出荷量は、消費者志向の変化等により、酒類間での移動はあるものの、全体ではやや減少傾向で推移しています。近年では、日本酒、ビールなどが減少する一方で、チューハイなどのリキュール、果実酒(ワイン)、ウィスキーなどは増加しています。
 日本酒の国内出荷量は、ピーク時には170万klを超えていましたが、他のアルコール飲料との競合などにより、近年は60万klを割り込む水準まで減少しました。ナント!7割減なのです。酒蔵が減ったワケがわかりますね。一方、日本酒全体の国内出荷量が減少傾向で推移する中で、消費者の志向が量から質へと変化してきており、特定名称酒(吟醸酒、純米酒、純米吟醸酒等)の出荷量は増加傾向で推移しています。

■ 今こそチャンス
 日本酒の国内出荷量が減少傾向にある中、輸出量は日本食ブーム等を背景に近年増加傾向にあり、2016年の輸出数量は19,737klと、この10年で倍増しています。また、日本酒の全出荷量のうち輸出量が占める割合は3.5%となっています。輸出金額は、この10年で約3倍の伸び率となっているのです。つまり日本酒は世界的に見ればまだごくごくわずかな認知度ですが、その美味しさを知ったガイジンが着実に増えているということです。
 ウィスキーやワインの本拠地欧州ではまだまだ日本酒の認知度は低いのですが、日本の「山崎」や「竹鶴」というウィスキーがスコッチの本場で大評判とか、ワインの本場で日本酒が大人気になっているという現象が起きており、日本人の舌は本物だという評価が確立されてきました。今こそチャンスなのです。

■ シリアの「化学兵器」3拠点に米英仏が軍事攻撃
 米英仏の三ヶ国は2018年4月13日(米国時間)、シリアの首都ダマスカス近郊でアサド政権が化学兵器を使用したとして、シリアの化学兵器関連施設三ヶ所への軍事攻撃を実施しました。日本政府は「化学兵器の保有、使用は許されない」として、直ちにこれを支持しました。アサド政権を支援するロシアのプーチン大統領はこれを「侵略行為」と断じて反発し、ロシアの要請を受けて、国連安全保障理事会の緊急会合が開かれましたが、ロシアの主張に賛同したのは中国、ボリビアだけで、ロシアの提出議案は否決されました。常任理事国の拒否権によって、国連安全保障理事会は機能不全に陥っています。そうなったら、今回のように実力行使に踏み切るようになります。

■ コミーとトランプの泥仕合
 トランプ米大統領から解任された連邦捜査局(FBI)のコミー前長官が回顧録でトランプ氏を「マフィアのボス」とこき下ろすと、トランプ氏はツイッターで「彼は弱く信用できないスライムボール(ゲス野郎)だ。彼をクビにできて光栄だ」と反論し、泥仕合と化しています。いったい米国はどうなってしまったのでしょう。大統領の品位や風格というものがあるはずなのに、悲しいまでに地に堕ちた感じです。ただ、そんな大統領でも30%台後半の岩盤支持がある、それが米国なのです。

■ 朴槿恵前大統領が控訴を放棄
 1審で懲役24年、罰金180億ウォン(約18億円)の実刑を言い渡された韓国の朴槿恵(パク・クネ)前大統領(66)が控訴をしないそうです。検察側は量刑が少ないと控訴しました。朴被告の公判は週4回ずつ100回開かれ、延べ138人が証言台に立ちました。しかし朴被告は出廷を拒み続け、裁判所が選任した弁護団との接見も拒みました。「裁判は政治報復だ」として抗議する姿勢故に、罪の軽減を主張するのではなく、控訴もしないということでしょう。全斗煥(チョン・ドゥファン)、盧泰愚(ノ・テウ)両元大統領は、有罪判決確定の8ヶ月後に恩赦で釈放されています。収賄疑惑などで逮捕された李明博(イ・ミョンバク)元大統領(76)も2018年4月9日に起訴されました。李容疑者は3月22日に逮捕されて以来、取り調べを拒否、起訴後、検察捜査について、「シナリオに合わせた捜査だ」と批判し、起訴内容を全面否認する声明を発表しました。文在寅(ムン・ジェイン)政権の支持率は昨年9月に60%台に落ち込みましたが、南北、米朝の両首脳会談開催が決まった3月から再び上昇し、韓国ギャラップが4月6日発表した世論調査によると、74%まで回復しました。それにしても大統領経験者が辞めた後に弾劾される国、いったいどうなっているんでしょう。それだけ利権が集中し、大統領本人が悪いことをしなくても親族に人々が群がる構図になっているのでしょう。文在寅大統領はこれを改めなければ、次は自分が逮捕されるでしょう。

■ 安倍3選やいかに?
 安倍晋三首相はトランプ米大統領との会談のため、2018年4月17日午後、羽田空港から専用機でフロリダへと飛び立ちました。5月にはロシアのプーチン大統領との会談があります。シリア問題や外交官追放で激しく衝突している両首脳との親密さにおいて安倍首相は特異な存在であり、考えようによっては英仏独が出来ない外交ができるという点がありますが、今回ばかりはなかなか難しい局面です。国内では、これでもかと次々問題が噴出してきます。ついには女性記者に対する財務省の福田淳一事務次官のセクハラ発言報道まで飛び出して、財務省はこれを否定しました。世論調査では一段と支持率が下がり、NNN調査ではついに30%割れ、不支持が支持の倍という結果です。安倍首相は得意の外交で一気に失地回復を図れるのでしょうか。
 小泉純一郎元首相は2018年4月14日、秋の自民党総裁選の安倍晋三首相3選の可能性を問われて「難しいだろうな、信用されなくなってるから」と語りました。ただ、自民党内では依然として圧倒的支持があり、国会議員も過半数が支持しています。やはり経済政策の支持が大きいはずです。けれど長老たちが背反してきています。それは本来政治家の在るべき姿が筋の通った自律性にあると思っているからです。国会答弁が段々怪しくなってきています。配偶者も律すべきなのです。

■ 公文書改ざんで関係者を処罰すべき
 森友学園問題の発端は総理夫人が名誉校長となったことで役所が忖度したことだと言われています。それ以前に籠池という怪しい人物に、「日本会議」という接点を通じて大阪で総理が繋がったことが発端です。総理やその夫人が直接何か指令したわけではなくても、怪しいヤカラに利用されたことは確かです。財務省による公文書改ざん問題について検察は罪に問えないとの見解です。法律上で、司法は犯罪に出来ないというのであれば仕方ありません。佐川元理財局長は「罪に問われる恐れがあるから」と徹底的に国会証人喚問で証言を拒否しましたが、公文書を改ざんしても罪に問われないなら、今後公文書管理はどうなってしまうのでしょう。財務省自身が改ざんの経緯を明らかにして、関係者を厳しく処罰しなければ、再発防止は出来ません。国会も司法に委ねるのではなく、国政調査権によって行政のゆがみを正さなければ、三権分立の意味がありません。

■ 「記憶の限りではない」
 国家戦略特区による学校法人「加計学園」の獣医学部新設問題に関し、柳瀬唯夫経済産業審議官が首相秘書官当時の面会記録が槍玉に上がっています。2015年4月2日に愛媛県職員、今治市職員、加計学園社員の3名が内閣府の藤原豊地方創生推進室次長(当時)、柳瀬首相秘書官(当時)と個別に面会したとき、柳瀬氏が「本件は、首相案件となっている」と述べたことや、安倍晋三首相と加計学園の加計孝太郎理事長の会食で獣医学部新設計画が話題になったことが記された愛媛県職員作成の文書が見つかり、農水省でも愛媛県から同じ内容の文書が送られてきていることがわかりました。先立って文部科学省は「探したが無い」と発表しました。柳瀬氏は以前国会で「記憶の限りでは、愛媛県や今治市の方にお会いしたことはない」と面会を否定していましたが、文書が見つかってもその見解は変わっていないので、首相訪米同行から帰国後、国会に呼んで参考人招致または証人喚問となるようです。小泉純一郎元首相は「記憶と記録、国民がどっちを信じるか?そりゃ想像すればわかるでしょ」と語りました。

■ ウソや改ざんを許せない官僚たち
 2018年4月17日朝のNHKニュースで、愛媛県などの職員が総理大臣官邸を訪問した2015年4月2日当日に、文部科学省の担当者が県などの訪問の予定について内閣府側から伝えられたメールが見つかっていたことが文部科学省の調査でわかったと報じられました。メールには「本日15時に今治市などが官邸を訪れる」などと記されていたということです。愛媛県と今治市は官邸の訪問を認めていますが、内閣府が関係省庁の担当者にメールを送っていたということは、省庁間でも情報が共有されていたということです。このように、いくら否定しても、後からボロボロと記録やメールが見つかります。佐川氏や柳瀬氏が総理を守ろうと必死になっているのは悲壮感さえ漂います。「記憶の限りでは」という言葉が、せめてもの良心でしょうが、実は官僚の中にもウソはいけないという人が居て、だから次々とボロが出るのでしょう。筆者は中央省庁にも友人、知人が何人も居ますが、皆立派な人たちです。国民のためにと、使命感を持って仕事しています。だからこそ、ウソや改ざんは許せないのでしょう。

■ 「勝ち馬に乗る」
 この官邸訪問に関し、加計学園はもちろんノーコメントですが、愛媛県の中村時広知事(58)が一躍時の人になっています。県職員が作成した文書の存在を認めた上で、国会に招致された際の対応について「職員に精神的なプレッシャーをかけるのはどうかと思う。私が職員に話を聞いて、私が矢面に立つ」と述べ、自らが応じる考えを示しました。愛媛県は加計学園に3年間で総額31億円もの補助金を出すことにしています。決めた張本人の中村時広知事がどうして政府の不都合になるような文書の存在を認めたのでしょうか。今治市長は市の中に文書があるかと問われて「非公開にします」と言いました。首相官邸への出張報告書は必ず有ります。だから「非公開」なのです。どうして公開したくないかと考えると、その内容が想像できますね。加計学園の獣医学部誘致は加戸守行前知事から中村知事への引き継ぎ案件です。加戸前知事の後継候補として知事当選したのに何故?と思いますよね。国会議員落選も経験して、「勝ち馬に乗る」のが得意と評されてきた人です。松山市長の後、2010年に知事になり、11月30日に2期満了です。もう分かりますね。

■ 米山新潟県知事、辞職の意向?
 これまた本日未明、新潟県の米山隆一知事(50)が、自身の女性問題について、週刊誌の取材を受けたことを理由に進退を関係者と相談していると報じられました。1、2日結論を待ってくれと記者発表しました。米山氏は2016年、泉田裕彦前知事(55)の四選不出馬表明を受けて土壇場で知事選に立候補し、共産、社民などの推薦を受け、自民、公明推薦候補らを破って初当選しました。東京電力柏崎刈羽原発の再稼働に慎重な態度を示し、県独自に福島第一原発事故などの検証作業を進めていました。元々は自民党公認で国会議員選挙に何度も出ながら落選し、東日本大震災後も「原発は必要だ」と言っていましたが、その後心変わりしたようで、原発再稼働に慎重なことで県民の支持を受けていた泉田氏の引退を受けて「勝ち馬に乗る」選択をしたのでしょう。それにしても国も県もこんな話題ばっかり、いったいこの国はどうなっているのでしょうか...
(2018年4月17日)


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