248  獺祭
 北国や北陸からは雪の便りを聞くようになりました。それもそのはず、12月7日は二十四節気の「大雪(たいせつ)」でした。雪が激しく降り始めるころという意味で、12月22日の「冬至」に向かって陽はさらに短くなって寒さが増し、冬が深まっていきます。大雪のころになると冷たい空気からなる大陸の高気圧が優勢となり、西高東低の冬型の気圧配置の日が多く現れるようになります。そうは言いながらも我が家の辺りは好天で温かい日が続いています。夕方には、オレンジ色の空に群青色の富士山のシルエットが綺麗に見えます。ふじみ野市ですからね。

■ 秋葉原
 さてその12月7日は秋葉原で高校の在京同窓会の幹事会がありました。幹事会で60人も集まるんですよ。来年5月に在京の50周年記念同窓会を行うのでその協議もありましたが、毎年300名以上が集います。節目の年なので更に多くなるだろうということで、例年の東京ガーデンパレスではなく、日暮里のホテルラングウッドになりました。
 幹事会に出る前に久々の秋葉原パソコン街を散策しました。少女目当てではありません、パソコンショップです。中古パソコンがやけに安くなっていました。何かワケがあるのでしょう。

■ きのこが高い
 高い/安いと言えば、野菜が高いですね。秋の日照不足のためでしょう。不思議なのはきのこが高くなっていることです。キノコは今や大掛かりな空調を施したクリーンルームの中で栽培されています。したがって天候は関係ないはずです。すると人件費や光熱費の関係でしょうか。ガソリンや灯油が原油高で値上がりしていますが、電気代はそんなに大きく上がっていないように思うので、ハッキリした原因は分かりません。鍋の季節に野菜ときのこは欠かせないので、痛いですね。ただ数ヶ月前はキノコがやたらに安かったので、反動で仕込みを抑えたか、ホクトや雪国など大手が牛耳っている業界なので、話し合いしてるのか?

■ 政府の経済統計見直しへ
 政府は物価目標2%上昇を掲げていますがなかなか上がらないと言っています。しかし生活実感として全般に商品が値上がりしたように感じるし、外食も高くなっているので、本当に政府統計は正しいのか?と疑問です。GDPの基となる主な統計には、各世帯のお金の使い道を調べる総務省の家計調査や、企業の経営実態をつかむための財務省の法人企業統計などがあります。企業は景気の動向を判断し、経営計画を立てる材料などに使っています。麻生太郎財務相が2015年10月の経済財政諮問会議で、消費や賃金といった統計の精度を高めるよう提案したのがきっかけで、統計の見直しの議論が起こりました。安倍晋三首相も2016年10月、諮問会議で統計への信頼を盤石にする重要性に言及しました。政府は2017年1月、菅義偉官房長官を議長とする統計改革推進会議を設置しました。国の統計職員は2016年度、約1800人とじりじり減っています。ほかの国と比べると、2015年で英国の約半分、米国の約7分の1という水準です。国の統計を管轄する統計委員会の勧告機能などを強化する統計法改正案は、来年の通常国会に提出される見込みです

■ 酒好き
 我が連れ合いは「南部美人 特別純米」を飲んでいます。高い酒です。2017年7月6日、英国ロンドンのホテルで開かれた世界的なワイン品評会、インターナショナル・ワイン・チャレンジ(IWC)の日本酒部門の最優秀賞「チャンピオン・サケ」に輝いた純米酒です。祖父の住んでいた岩手県二戸市福岡の酒蔵です。この受賞以降、急激に人気が高まっているようです。昨年は山形県天童市の「出羽桜」が受賞しました。この酒も素晴らしく美味しい酒です。
 剣菱とか灘や伏見の酒が人気だったのは昔話、久保田や八海山などの新潟の酒などに取って代わられ、今や日本酒好きには「南部美人」や「出羽桜」などのほか、青森県の「田酒(でんしゅ)」や山形県の「十四代」、福井県の「黒龍」などが人気ですが、ダントツ1位は山口県の「獺祭(だっさい)」です。「日本酒物語」というホームページに日本酒ランキングが載っています。

■ 獺祭の蔵元は旭酒造
 獺祭の蔵元は旭酒造といって、山口県岩国市周東町獺越(おそごえ)という山深いところにあります。半径5km以内に住む人はわずか250人。そんな過疎の集落に似つかわしくない地上59mの12階建ての近代的ビルが酒蔵です。米国やフランスなどにも輸出しており、パリの一流レストランのソムリエにも絶賛されるお酒です。獺とはカワウソのことです。241『ロードレイジ』(2017年10月23日)で第1回カワウソ選挙のことを紹介しましたが、残念ながら日本では野生のカワウソは絶滅したようです。獺祭の言葉の意味は、カワウソが捕らえた魚を岸に並べてまるで祭りをするようにみえるところからきているようです。旭酒造が獺祭というブランド名を付けたのは獺越という地名に由来しているとホームページに書いてあります。

■ 獺祭高過ぎ
 我が家の近くのイオンの酒売り場で獺祭がずらりと並べられて売られていました。ひところは幻の酒と言われて、なかなか手に入らなかったものです。「純米大吟醸 磨き三割九分」の四合瓶が3***円、「純米大吟醸50」の四合瓶が2***円でした。一升瓶換算では「獺祭 純米大吟醸 磨き三割九分」が「南部美人 特別純米酒」より6千円も高い!これはいくらなんでも高過ぎます。
獺祭ホームページ

■ お願いです。高く買わないでください
 2017年12月10日(日)の読売新聞の朝刊に「お願いです。高く買わないでください」という旭酒造のメッセージ広告が掲載されました。横には「獺祭」の「純米大吟醸50」「純米大吟醸 磨き三割九分」「純米大吟醸 磨き二割三分」の希望小売価格が添えられて、全国の正規販売店が紹介されています。なぜ、このようなメッセージ広告を打ったのか、旭酒造のメルマガで広告に込めた思いや経緯が説明されています。
 「獺祭」は、旭酒造と契約した正規販売店のみが販売できるようになっていますが、取り扱えないスーパーや酒屋の中には転売屋から仕入れ、希望小売価格の2倍、3倍の値をつけて販売している店もあり、税込2418円の「獺祭 磨き三割九分」720mlを1万円以上で販売するケースもあるそうです。また、転売する間に、保存状態が悪かったり、日数が長期化して品質が落ちることもあるそうです。しかしメーカー希望小売価格があっても、小売価格は販売するお店が決めるので、高く売っても安く売ってもそれは小売業の自由です。したがって旭酒造は広告で訴えることに踏み切ったようです。旭酒造は、取扱店ではないスーパーや酒屋との軋轢を生んだとしても、「獺祭に愛情も何もなく、ただ儲けの追求のみが目的で獺祭を取り扱いたい酒屋さんに出す気はありません」と宣言、「本当にお客様にまともな価格で獺祭を買ってもらいたい。品質の劣化した恐れのある獺祭でなく、良い品質の獺祭を飲んでもらいたい」としているのです。
 イオンの店頭価格はメーカー希望小売価格の1.5〜1.9倍でした。それでも売れるんですね。

■ 杜氏に逃げられて
 獺祭を造る現場は伝統の酒蔵のイメージとは異なり、近代的な工場そのものです。伝統の酒蔵では冬場にしか仕込みができませんが、ここでは季節に拠らず室温が一定に保たれ、獺祭を1.8リットルの一升瓶換算で年間150万本も量産しています。旭酒造はかつて、過疎の集落で酒造りを営む山口県内で4番手の酒蔵でした。桜井社長は、地元にとどまり他の酒蔵と同じことをやっていてはジリ貧になるので、大吟醸酒に特化し、広い市場を求めて東京や海外に出て行こうと考えたのだそうです。実は1999年に新規事業(地ビール製造)に失敗、1億9千万円の損失を出して、経営危機に陥り、杜氏(とうじ)に逃げられてしまって、社員だけで酒造りに挑むしかなかったのが本当のところだそうです。

■ 機械で酒造り?
 酒造りの全工程で詳細なデータを取り、検査室のパソコンに蓄積して分析することで、酒造りの最適解を見つけ出すようにしたのだそうです。日本酒は、米を麹で糖化させる工程などを経て「もろみ」にして、それを酵母で発酵させて造ります。もろみの発酵は、山なりの理想の発酵曲線(「BMD曲線」と呼び発酵日数と糖度などの関係を示す)に、可能な限り近づける必要があります。そのための微妙な温度管理や水の追加タイミングなどについてデータを活用して知見を積み上げました。すると一番安価な獺祭は初年度から、杜氏の指揮下で造っていたときよりも味が良くなったのだそうです。杜氏の勘に頼った酒造りでは、年により品質にばらつきが出ますが、クリーンルームの中でデータで管理されながら製造される獺祭は、常に美味しい酒に仕上がるのです。品評会に出す酒は、他の酒蔵なら市販品と別に造りますが、旭酒造は市販のものをそのまま出します。ただしすべて自動というわけではありません。磨いた米は小分けにして手で洗う、均質に発酵が進むように小型の樽を使うなど、品質に関わるところは手間やコストを惜しまないのだそうです。一方、絞りには遠心分離機を使い、一つのラインで全商品のビン詰めを行うなど、品質に関わらないところは徹底的に効率化しています。

■ 富士通の農業向けクラウド「Akisai」活用で山田錦を確保
 課題もあります。人気が出て飛ぶように売れるのは良いのですが、原料となる米、山田錦の不足です。山田錦は栽培が難しいとされ、農家が敬遠するのと、高齢化で作り手が減っています。そこで、農業向けクラウド「Akisai」の事業の立ち上げを目指す富士通と協力して、若い人がスマホなどでデータ管理しながら米作りするようにして山田錦の確保に乗り出しました。山田錦を生産する農業法人などがAkisaiに蓄積した生育データなどを分析することで生産量を増やし、全量を旭酒造が買い取るというシステムです。

■ 山口県出身
 安倍総理大臣はロシアのプーチン大統領の誕生日に獺祭と萩焼のぐい飲みをプレゼントしました。2014年4月に来日した米国のバラク・オバマ大統領に安倍晋三首相がプレゼントしたのは、獺祭と江戸切子のぐい飲みでした。大手衣料チェーンのユニクロでは、新店舗の開店式の際に獺祭で鏡割りを行います。映画、「新劇場版ヱヴァンゲリヲン」シリーズの中でも、獺祭が登場します。葛城ミサトの愛飲する銘柄の一つとして獺祭が登場するのです。安倍総理、新劇場版ヱヴァンゲリヲンの庵野秀明総監督、ファーストリテイリングの柳井正会長兼社長、この三人は皆、山口県出身者なのです。

■ 醸造の自動化
 日本では美味い酒は手作りという誤った概念を持つ人がいまだに多いのではないかと思います。現実がそうではないことは獺祭が証明しています。岩手県ナンバー1の酒蔵「あさ開(あさびらき)」は盛岡市にあってクリーンルームの素晴らしい工場を持っています。ここの日本酒は安い酒でもおいしいのです。醸造は酵母と菌の管理と温度管理がイノチです。発酵というのはまさにイノチの躍動だからです。自らも熱を発します。したがって徹底的に温度管理されたクリーンルームが欠かせません。筆者は実は醸造機械の制御も仕事のひとつでした。酒や味噌、醤油です。そもそも長い時間をかけて生き物に活躍させて作る発酵製品がどうして安く売られることができるのか。キッコーマンなども素晴らしいクリーンルームで製造しています。コンピュータ管理で、昔の職人のノウハウがAI(人工知能)として生かされているので、安定した品質の製品が安く出来るのです。日本の「匠の技」は、実はこういう形でものづくりに生かさないと外国とは勝負できません。

■ 日本人の有休消化率、世界最下位
 旅行サイトExpediaの日本法人・エクスペディア・ジャパンが12月11日発表した調査結果「日本人の有給消化率は2年連続で世界最下位」というのはさもありなんと思いました。有休消化に「罪悪感がある」と考える日本人は6割以上にのぼり、これも世界最多だそうです。日本人は、平均有休支給日数20日に対して消化日数は10日で、消化率は50%、日本の次に消化率が低いのは韓国で、67%(支給15日、消化10日)だそうです。ブラジルやフランス、スペインは支給30日、消化30日で100%です。

■ 訪日韓国人観光客急増
 訪日韓国人客数は今年、過去最多の700万人を超えるとみられています。訪日韓国人客は前年同期比140%と急増しています。ウォン高・円安傾向が続いていることや韓国政府が連休にするような政策をとっていることが訪日客の増加に影響していると見られます。また、世界経済フォーラムがまとめた2017年の旅行・観光競争力ランキングで、日本は世界136ヶ国の中で、スペイン、フランス、ドイツに次ぐ4位となっていることもあって、韓国人の間で日本が魅力的な観光地となっているものと見られます。一方訪韓日本人客は横ばい、せいぜい微増と見られています。

■ 野村沙知代さん突然死 

「サッチー」ことタレントの野村沙知代さんが虚血性心不全で、2017年12月8日死去、享年85歳でした。自宅で倒れて病院に運ばれ2時間後に死亡、夫の野村克也さんは、「ピンピンしてて病気一つしたことの無いひとが・・・信じられない」と話しました。おしどり夫婦で、一緒に外食することが楽しみのようでした。サッチーは毒舌で人気を博しました。1989年には少年野球チーム「港東ムース」のオーナーに就任し、全国大会を二度制覇したのはスゴイですね。子どもたちの弁当の中身にもいちいち文句を言って母親たちを困らせたと聞きました。2001年には約5億6790万円の所得を隠したとして、法人税法違反(脱税)などの疑いで東京地検に逮捕され、翌年に有罪判決を受けました。虚血性心不全と言えば、筆者が社長時代、働き盛りの従業員がコレで亡くなりました。冠動脈が閉塞して心臓への血液の流れが阻害され、心臓組織が壊死してアッという間に亡くなる恐ろしい病気です。短時間に容体が急変して突然倒れるのです。動脈硬化が原因の場合が多く、内臓脂肪が多くて(メタボ)、血圧の高い人が危ない・・・アッ、自分だ!詳しくは日本心臓財団のホームページをご覧ください ご冥福を祈ります    合掌


野村沙知代さん

(2017年12月11日)


次回へ    前回へ    最新ページへ    つぶやき最終回