115  視聴率

 箱根・大涌谷の騒ぎもやっと静まってきましたね。ネパールの大地震の被害が甚大で、それどころではありません。
 このところ火山について触れましたが、右は、気象庁の火山登山者向けの情報提供ページの画像です。個々の火山毎に、気象庁が発表している火山情報等をご覧いただけます。噴火警報や火山の状況に関する解説情報を発表していない火山は各地方のページに掲載されています。
 内閣府の「防災情報のページ」はコチラです→クリック

■ 拡大続ける西之島
 火山活動が続く小笠原諸島・西之島(東京)で、海上保安庁は2015年5月22日、溶岩が南東側の海に流出し、陸地が約100メートル拡大したと発表しました。海上保安庁の空からの観測で、島の南西沖、約10km離れた海域で確認された変色水域については、過去に2度、南側で薄い黄緑色の変色水域が見つかった直後に火山活動が活発化したことから、「今回も活発化する可能性がある」としています。
 2015年5月20日現在の面積は2ヶ月前の前回計測時より約12ヘクタール広い約258ヘクタールで、東京ドーム約55個分に当たるそうです。火口では1分間に2、3回の噴火が確認され、4月末の前回観測時より1回当たりの噴火時間が長くなっているので、担当者は「上がってくるマグマの量などが増えているのではないか」と言っています。
 西之島は東京の南約1,000km、父島の西約130kmに位置し、火山列島(硫黄列島)と同一火山脈に属し、付近では海底火山活動が活発です。西之島は海底比高4,000m、直径30kmの大火山体の海面上に現れた山頂部にあたります。 

気象庁のホームページから

■ 低視聴率の花燃ゆ
 NHK大河ドラマ「花燃ゆ」視聴率がワースト記録を更新しました。2015年5月17日放送の第20話の平均視聴率が9.4%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)で、第15話(4月12日放送)の9.8%以来、2度目のひとケタとなったのです。前回は選挙速報で放送時間が変更されたことが影響したと見られましたが、今回は言い訳の余地がありません。言わなきゃいいのに、あの籾井勝人会長が定例会見で、「低過ぎるなという気がしている」「前半は話がばらけた」と現場批判ともとれる不満を口にしました。番組スタッフが大慌てで「これから面白い時代に入ります。プロモーションに努めます」と言ったそうです。これまでは「物語が幕末の動乱に入れば視聴率も回復する」と強気でしたが、その動乱の幕末に入っても回復しそうにありません。「花燃ゆ」はなぜ不人気か?前にも書きましたが、ちっともドキドキしないのです。「次はどうなるんだろう?」という気持ちにならなければ、また見ようという気がしません。豪華な役者を揃えても、脚本が面白くなければこうなります。役者は本の通りに演じているのですから、例えば井上真央には罪はありません。けなげに演じているではありませんか。脚本の3人はいずれも女性ですが、女性視点で見た尊皇攘夷の志士の妻、だから面白くないということではないでしょう。橋田壽賀子が脚本書けば面白くなりますよ。それは人間の本質を突くからです。人は誰しも醜い面を持っています。それを押さえつけて生きています。その醜さがチラリと垣間見えれば面白くなります。橋田壽賀子さんは「渡る世間は鬼ばかり」について、「私は嫌いな役者は作中で出張させたり、死なせたりしていました」と語ったそうです。そこまでやるか、脚本家、という感じですね。

■ 登場人物の波乱万丈の生涯
 このドラマの登場人物たちは実に波乱万丈の生涯を送っています。それを描いたら、面白くないわけがないのです。吉田松陰と親しく、その妹を妻とした小田村伊之助は、長州(山口県)萩の藩医である松島家の次男として生まれ、12歳で藩校明倫館の儒者・小田村吉平の養子となりました。尊王攘夷運動などへの幕府からの追及を逃れるため、藩命により慶応三年(1867)に「楫取(カトリ)」と改名しました。「楫(かじ)を取る」としたのは、祖先が水軍であったことに因みます。安倍晋三首相の「晋」は高杉晋作の1字をとっているそうですが、その先祖をたどると、岩手県盛岡の安倍宗任(アベノムネトウ)に辿り着き、その子孫が安倍晋三になるそうです。80『安倍宗任の子孫』(2014年9月14日)をご覧下さい。「花燃ゆ」が安倍首相の肝いりと言われる理由がここにあります。
 維新成った後、楫取は明治維新政府に「参与」として仕えましたが、すぐに免官し山口県に帰郷しました。倒幕と明治新政府の樹立が成ったことにより、自らの役目が終わったと考えたのかもしれません。しかし、新政府は楫取のような才能ある男を静かに野に置いておくことはできず、再び命じて足柄(あしがら)県参事に任じ、その後熊谷県権令(ごんれい)・熊谷県令を経て、明治九年第二次群馬県初代県令(知事)となりました。群馬県は当時「難治の県」と言われていました。在任期間は熊谷県時代を含め十年に及び、産業、教育面などに力を注ぎ、群馬県の基礎を作り上げ、「名県令」と称されました。
 しかし、現時点で小田村伊之助の妻は松陰の妹・寿ですね。烈婦と称された人です。寿の妹・文は久坂玄瑞に嫁ぎましたが、やがて楫取素彦と再婚しました。どういう事情があってこうなったのでしょう?そのあたりをチラリ、チラリと垣間見せれば、途端にドラマは面白くなるのに・・・いっそワタクシが脚本書いてやろうか、と思う今日この頃。
 最近の気になる女優は井川 遥ですね。吉田松陰がつながれた野山獄の女囚「高須久子」を演じました。女優業の傍ら、2人子どもを産んで(一姫二太郎)、只今子育て中でありながら、バンバン仕事してます。エライ!ちなみに夫はパイオニア創業者の孫で、14歳も年上です。

井川 遥

■ 佐藤健
 るろうに剣心という映画の原作は和月伸宏のベストセラーコミック、監督は大河ドラマ『龍馬伝』の監督を務めた大友啓史、実はこの人、高校の後輩です。緋村剣心役の佐藤健は、NHK大河ドラマ『龍馬伝』の人斬り以蔵を演じました。この役者は、久々に見る良い俳優です。
セブンイレブンが2012年に展開した「るろうに剣心キャンペーン」のポスター

■ 天皇の料理番
 「るろうに剣心」ではクールでありながら、人間らしい役を演じた佐藤健でありますが、この俳優は、今TBS放映中のドラマ「天皇の料理番」でも主役です。さいたま市岩槻区の出身です。「天皇の料理番」は、1979年に出版された、杉森久英による同名小説で、3度にわたりテレビドラマ化されました。宮内省大膳職司厨長(料理長)を務めた秋山徳蔵の青年期から主厨長になるまでを描いた作品です。秋山徳蔵の実際の経歴をもとにしてはいますが、細部はフィクションであり、実在した秋山との混同を避け、杉森の原作では「秋沢篤蔵」、ドラマ版では「秋山篤蔵」の表記となっています。
 初めてのシェフ役に挑むことになる主演の佐藤健は、実際の料理学校で料理修行を行い、料理人としての所作を勉強したそうです。皿洗いや野菜切りなどの修行期間を経て、料理人として成長していく過程に合わせ、実際の調理シーンも本人が演じているんだそうですよ。あの野菜のカットシーン、スゴイですね。福井訛りが良いです。
 妻の高浜俊子を演じる黒木華は若いのに味がありますね。山田洋次監督が映画『小さいおうち』の主役に抜擢しただけのことはあります。55『山田洋次ワールド』(2014年3月21日)を参照下さい。
 篤蔵が慕い頼る生涯の友・松井新太郎に桐谷健太、山上辰吉に柄本佑、篤蔵の優秀な兄・周太郎に鈴木亮平、篤蔵にカツレツを振る舞った軍隊のコック・田辺祐吉軍曹役に伊藤英明とイケメンが脇を固めています。黒木華や鈴木亮平を見て「あっ、花子とアンだ!」と思いました。ちなみに柄本佑は俳優・柄本明が父、女優・角替和枝が母なので、生まれながらに俳優になる運命なんですね。ちなみに妻は女優の安藤サクラ、彼女も父親は奥田瑛二(俳優)、母親は安藤和津(エッセイスト)という、大物2世同士の夫婦です。弟の柄本時生も俳優で、3歳下ですが、この兄弟は顔がソックリです。
 「天皇の料理番」の視聴率は好調です。脚本森下佳子も良く、日曜夜9時の時間帯、主題歌はさだまさし『夢見る人』ですから条件が揃っています。役者陣の好演も魅力的です。佐藤はやぼったいものの、料理に真摯に向き合う篤蔵という人物そのものに映ります。さらに、妻の俊子(黒木華(はる))はいじらしく、宇佐美料理長(小林薫)は威厳に溢れ、篤蔵をいびる先輩の荒木(黒田大輔)は本当に嫌な奴に見えます。

「るろうに剣心」の佐藤 健

■ 親の愛情は海より深い
 第4話で英国公使館との「兼業」がばれ、華族会館を追い出された篤蔵は、常に目をかけてくれた宇佐美への申し訳なさから、「ワシ、いつまでたってもアホで…すみませんでした…」と、一人、厨房で涙します。一方、篤蔵に目をかけながら、他の料理人たちの手前、追い出さざるを得なかった宇佐美も紫煙をくゆらせながら、一人、物思いにふけります。双方の心情が痛いほど伝わり、目頭が熱くなります。誰も悪くない、悪くないけれどそうせざるを得ない、こうした切ない心情を描いた作品が、見る者の心を揺さぶり、視聴率を上げるのです。「つぶやき」2『たそがれ清兵衛』と『壬生義士伝』(2003年1月20日)をご覧下さい。
 「天皇の料理番」第5話で、篤蔵は街の食堂に勤めることになります。まだまだダメなやつで、「大日本帝国一のコック」からはほど遠いのですが、周囲の人からの愛に支えられ、少しずつ成長していく篤蔵の姿に共感を覚える視聴者は多いでしょう。肺を病んで田舎の福井へ帰る優秀な兄、それを温かく迎える父母、妻子のためにダメ息子を返上しようと頑張る弟を一途に想う嫁のいじらしさをいとおしく思う父母、どんな息子でも子は子なのです。一方男子が居ないので、長女俊子に婿を迎えたのに出て行ってしまい娘を哀れに思って別れさせようとする父、美しい妹たちと違うが長女の宿命で結婚した俊子は、篤蔵の良いところを知り、別れたくありません、そんな娘の心を知って支えようとする母と妹達、やがて俊子の父も許すしかないと思うようになります。どんな子でも、親は子どもを愛するもの、親の愛情は海より深いのです。続きが待ち遠しくなる、これこそ好視聴率の素になるのです。
(2015年5月23日)


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