31  災害と地震

 今年は災害が多いですね。台風18号での水害や竜巻はすごかった。そのニュースの最中に千葉を震源とする地震だというニュース、いったい日本はどうなってしまったんだと思いました。25『事故と災害』(2013年8月12日)で紹介したこと、2013年8月9日(金)朝早くから雨脚が強まり、非常に湿った空気のぶつかった秋田県や青森県、岩手県では、断続的に猛烈な雨が降りました。気象庁は、9日朝の秋田県に続き、昼過ぎには岩手県にも「これまで経験したことのないような大雨」という情報を発表しました。岩手県では、9日朝8時頃から雨脚が強まり、昼前には、一段と激しい降り方になり、24時間に降った雨の量は、雫石で258.5ミリに達し、観測史上1位の大雨となりました。現実に我がふるさと雫石町では、町の年間予算を上回る被害が出て、国の激甚災害指定を受けました。

■台風18号による大雨被害
 大型の台風18号は2013年9月15日(日)から16日(月)にかけて、敬老の日連休の日本に上陸して列島を縦断し、近畿地方を中心に河川の氾濫や土砂災害など大きな被害をもたらしました。北海道まで広範囲に災害となったのは、「雨台風」だったからです。気象庁は京都、滋賀、福井の3府県を対象に、「これまでに経験のない大雨となっている」とし、初めて大雨特別警報を出して最大級の警戒を呼びかけました。14日の降り始めからの雨量は三重県大台町で580ミリ、奈良県上北山村で548ミリを観測。四国から関東甲信の多くの地点で300ミリを超えました。
 崖崩れや、河川の氾濫で死者が出て、家屋の損壊や床上浸水で、日本全国広範囲にわたり大きな被害が出ました。京都市では桂川が氾濫し、59万人に避難指示・勧告が出されました。市内有数の観光地・嵐山では旅館などが立ち並ぶ一帯が浸水し、消防隊員らが冠水した道路にボートを浮かべて宿泊客らを救出しました。福知山市一帯はボランティアが家の片付けを手伝っています。信楽高原鉄道は川にかかる鉄橋が流され、全線で運休中で、復旧のめどは立っていません。

2013年9月15日淀川河川事務所ホームページより転載、京都嵐山の桂川に懸かる渡月橋

■災害列島ニッポン
 このような激甚災害は滅多にあるものではありません。しかし2011年3月11日の東日本大震災を私達は経験したばかりです。日本と言うのは四方を海に囲まれて、その割には高山が多く、いわば海面に出刃包丁の刃がにょっきりと出たような地形です。したがって日本列島は、土砂崩れや河川の氾濫など、大雨がもたらす災害地域だらけだと言って間違いありません。比較的安全なのは、関東平野のような大平野の丘陵地帯、筆者の住む桜ヶ丘のような地名のところです。強固な関東ローム層の上にある所沢丘陵や狭山丘陵など武蔵野台地、丘や原が付く地名は比較的安全です。ただし最近では竜巻や雷など、平地が故の災害も有り得ますから注意が必要です。今回の台風18号でも竜巻被害が群馬県他、随所で起きました。
 台風銀座と言えば沖縄諸島から九州地方でしょう。熊本、長崎などは風光明媚で良い所ですが、唯一怖いのが台風による大雨、大風被害です。雲仙普賢岳のような火山の噴火もありますが、これは頻度が少ない、台風は毎年やってきます。特に時節柄10台後半と20台前半の台風が怖いです。沖縄の宮古島など、台風に備えて堅牢な家構造となっており、味も素っ気もありません。つぶやき437『宮古島(2011年5月29日)をご覧下さい。

■地震や津波は予想される
 2011年3月11日の東日本大震災は、恐らく筆者が生きているうちに体験するであろう最大の自然災害です。これをご覧下さい→つぶやき478『あれから1年』(2012年3月11日)。ただしそれは、今住んでいるところでの話であって、引っ越して山川の近くに住んだり、今後起きるであろう東南海大地震の被災予想地域に移り住んだらこの限りではありません。つぶやき426『M9.0の大地震』(2011年3月13日)でこの惨劇を紹介していますが、この中で書いておりますように、実は筆者は、「ななめのつぶやき」で、地震や津波には頻繁に触れていました。そして「宮城県沖を震源とする大地震は近々必ず起きる」、「関東大震災級の大地震は、関東では筆者の生きている間は起きないが、狭い範囲の直下型地震が怖いので活断層に注意が必要」、「東海地震の心配よりも東海と南海が連動する東南海大地震の発生が近い将来予想され、これが起きたら東日本大震災をはるかに上回る大災害となる」といったことをたびたび書いていました。そうは言うものの、スマトラ沖地震津波のバンダアチェの恐ろしいTV映像を見ながら、まさかその4年2ヶ月後に日本で同じ映像を見ようとは思いませんでした。予想していながら実際に起きてみると、実ははるかに予想を超える大災害だったことと、我が家の地域の安全性に改めて得心し、災害を研究しながら実は半信半疑だったところもあっただけに、改めて反省とともに、多くの方に警告を発し続けなければならないと思ってこれを書いています。

■南関東の地震
 2013年に入っても関東では震度5の地震が5回も起きています。
2013年9月4日9時19分鳥島近海400kmマグニチュード 6.9の地震では
■震度4の地域
岩沼市,浪江町,日立市,高萩市,笠間市,茨城町,筑西市,つくばみらい市,佐野市,鹿沼市,真岡市,岩舟町,高根沢町、埼玉県熊谷市,加須市,久喜市,春日部市,宮代町,さいたま市大宮区,緑区,千葉中央区,二宮町
■震度3の地域
群馬県沼田市,片品村,桐生市,太田市,館林市,渋川市,安中市,板倉町,明和町,千代田町,大泉町,邑楽町,みどり市、埼玉県行田市,本庄市,東松山市,羽生市,鴻巣市,深谷市,滑川町,吉見町,埼玉美里町,川口市,狭山市,上尾市,草加市,越谷市,蕨市,戸田市,志木市,和光市,桶川市,北本市,八潮市,富士見市,三郷市,蓮田市,幸手市,鶴ヶ島市,吉川市,伊奈町,毛呂山町,川島町,杉戸町,松伏町,さいたま市西区,北区,見沼区,中央区,桜区,浦和区,岩槻区,白岡市、東京都千代田区,中央区,港区,文京区,墨田区,江東区,品川区,大田区,世田谷区,渋谷区,中野区,杉並区,北区,荒川区,板橋区,練馬区,足立区,葛飾区,江戸川区,三鷹市,町田市,小金井市,国分寺市,西東京市

2013年9月4日気象庁発表の震度分布図
■震度2の地域
群馬県中之条町,高山村,みなかみ町,東吾妻町,昭和村,前橋市,高崎市,伊勢崎市,藤岡市,富岡市,榛東村,吉岡町,神流町,上野村,甘楽町,玉村町、埼玉県嵐山町,小川町,鳩山町,東秩父村,埼玉神川町,上里町,寄居町,ときがわ町,川越市,所沢市,飯能市,入間市,朝霞市,新座市,坂戸市,日高市,埼玉三芳町,越生町,ふじみ野市,秩父市,横瀬町,皆野町,長瀞町,小鹿野町、東京都新宿区,台東区,目黒区,豊島区,八王子市,立川市,武蔵野市,府中市,昭島市,調布市,小平市,東村山市,国立市,福生市,狛江市,東大和市,清瀬市,東久留米市,武蔵村山市,多摩市,稲城市,羽村市,瑞穂町,青梅市,あきる野市,日の出町,檜原村

■震度の違い
 この震度4〜2の違いは、遠い南の鳥島近辺から地震波が伝わり、地表を揺らすときの岩盤の違いによって現れるのです。同じ埼玉県で震度4、3、2と分かれるのがすごい。フィリピン海プレートの鳥島の地震が、その上に乗る北米プレートの日本列島北日本を揺らしました。西日本を乗っけている大陸のユーラシアプレートと、東日本を乗っ けている北米プレートは、糸魚川構造線で東西に分かれます。白馬岳に登りますと、この構造線の断層が見事にわかります。北米プレートの下に太平洋プレートが潜り込んでいるので、北海道から三陸沖〜千葉県沖にかけての境界が、地震の帯状の巣となります。ユーラシアプレートと北米プレートとフィリピン海プレートのT字交差三角点の真上にJAMSTECと日産追浜工場があります(だから揺れるというわけでは無し)。鳥島は南からのフィリピン海プレートの上です。ここ での揺れが何故右上図のような揺れの強さとなって日本列島を揺らすか、と言いますと、それは地盤、岩盤の差です。
 北米プレートと太平洋プレートの間に溜まった歪がはじけて東日本大震災が起きました。したがって、まだその歪の影響が残って大きな地震は続くものの、M9.0といった巨大地震は当分起きません。これから最も怖いのはユーラシアプレートとフィリピン海プレートの間、駿河トラフから南海トラフにかけての東南海地震です。ここには歪が着々と溜まりつつありますので、いつこれが弾けるか、非常に怖い状況が迫りつつあります。神奈川県西部から九州に掛けての広範囲で、危険な状況です。

日本列島は4つのプレートがせめぎあう上にある
 日本列島周辺では複数のプレートが重なりあっており、それらのズレにより地震が発生することがあります。関東地方の下には、「北米」「フィリピン海」「太平洋」の3つのプレートが重なっており、それら相互の均衡状態がくずれた時に、首都圏でも大きな地震が発生する可能性があります。
 プレート型地震の被害は、直下型(活断層型)に比べより広範囲に及ぶため、いずれのエリアが契機になったとしても、首都圏の被害は免れないものと思われます。

■活断層が引き金となる直下型地震
 2004年の新潟県中越地震、2005年の福岡県西方沖地震、2007年の新潟県中越沖地震、そして2008年の岩手・宮城内陸地震。すべて無警戒の活断層が引き金となりました。活断層は、プレートよりも地表に近い部分にあり、影響範囲もプレート型よりも狭い範囲とされていますが、ここ数年の発生状況をみる限り、決して軽視することはできません。
 国は、都市圏近郊のうち特に「立川断層帯」(埼玉県の名栗渓谷から東京都府中にかけて)を重点調査する方針を示していますが、活断層地震は発生周期が長く、予測が非常に難しい点、また以下の主要活断層以外にもM6.9未満の活断層が数多く存在している点は認識しておく必要があります。関東平野北西縁断層帯主部は、群馬県群馬郡榛名町から安中市東部、高崎市、藤岡市、埼玉県本庄市、深谷市、熊谷市、鴻巣市、北本市、桶川市などを経て、北足立郡伊奈町に至る断層帯です。長さは約82kmで、概ね北西−南東方向に延びています。本断層帯は南西側が北東側に対して相対的に隆起する逆断層です。
 平井−櫛挽断層帯は、群馬県多野郡吉井町から藤岡市、埼玉県児玉郡神川町、児玉町(現・本庄市)、美里町を経て大里郡寄居町に至る断層帯です。長さは約23kmで、概ね北西−南東方向に延びています。本断層帯は左横ずれを主体とし、北東側隆起成分を伴うと推定されます。
 南関東ではおよそ200年〜300年周期でM8クラスの大地震が起きています。直近の関東大震災は1923年(大正12年)です。その前は元禄関東地震1703年です。したがって、このクラスは我々が生きている間は来ない確率大です。ただしこの間にM7クラスは起きるでしょう。「安政江戸地震」は、被害記録が残る唯一のM7級首都圏直下型地震、1855年11月11日22時頃発生し、現在の東京湾北部〜江東区で死者7千人以上、1万4千軒もの建物被害をもたらしました。震度分布は、青山、麻布、四谷、本郷、駒込辺りの台地は震度5、皇居外苑、神田小川町、下谷、浅草、本所辺りは震度6、特に日比谷の入江埋立地、本所、深川等の低地の埋立地では被害が顕著であったようです。

■南関東の地震が起き易い場所
 それでは地盤、岩盤の差が地震が起きやすさにどう影響するか見てみましょう。東大地震研究所が2011年4月22日発表したところでは、東日本大震災で起きた地殻変動の影響で、首都圏の地盤に力が加わり、地震が起きやすい状態になっているそうです。
 解析結果は、大震災後に発生した地震の分布ともほぼ一致しているとのこと。同研究所では、国の地震調査委員会が今後30年間に70%の確率で起きると予測しているマグニチュード7級の南関東の地震が誘発される可能性があるとして、注意を呼びかけています。震源が30キロよりも浅い地震は、静岡県東部から神奈川県西部で、30キロよりも深い地震は茨城県南西部、東京湾北部で起きやすくなっていることが判明したそうです。
右図で黒い部分が南関東地震の起き易い場所で、中央部「さいたま」のところは、埼玉県戸田市の北部が南限で、川口市、さいたま市、志木市、富士見市、上尾市、伊奈町、蓮田市、白岡町、宮代町、久喜市、加須市はスッポリ含まれます。越谷市、春日部市、杉戸町、幸手市の西部、桶川市、北本市、鴻巣市、羽生市の東部が含まれます。埼玉県では他に秩父市と小鹿野町、茨城県では南東部の神栖市、鹿嶋市、潮来市、行方市、稲敷市の東部、最西部の古河市、五霞町、境町、千葉県の香取市、東京都では檜原村、山梨県では東部の上野原市、道志村一帯、小菅村と大月市と都留市の東部、神奈川県の小山町、御殿場市、裾野市、三島市、函南町、熱海市、伊豆の国市、伊東市、伊豆市、東伊豆町、河津町、下田市です。これらの地域に住む人は地震対策をしたほうが良いということです。ただし、先般経験した地震がありますので、必要以上に神経質にならなくて良いとも言えます。ただ、直下型ならばこわい・・・
 右図で白い部分(水戸市や横浜市周辺)はデータが無いのでわかりませんが、最も薄い灰色の部分が地震の起き難い場所です。なんと、この地域は地図上ではたったの2箇所しかありません。

東大地震研究所2011年4月発表の「南関東で地震の起き易い/難い場所Map」

■南関東の地震が起き難い場所
 地震の起き難い場所は、群馬県の渋川市周辺と埼玉県の中南部・・・東秩父村、小川町、滑川町、嵐山町、東松山市、吉見町、ときがわ町、鳩山町、坂戸市、川島町、越生町、毛呂山町、鶴ヶ島市、川越市、飯能市、日高市、狭山市、ふじみ野市、三芳町、入間市、そして所沢市の北部、つまり「武蔵丘陵」です。すなわち南関東の中で地震の起きにくい場所はホンの一部しかありません。
 2013年9月4日9時19分の鳥島近海400kmを震源とするマグニチュード 6.9の地震の地域別震度と、東大地震研究所が発表した地震の起きやすい、起きにくい場所が見事に一致していることがわかります。揺れた地域は、埼玉県戸田市を南限に、真っ直ぐ北上、久喜、加須を通り古河から北東に向きを変え、日立市〜高萩市方面に向かっています。すなわち、日立市〜いわき市、福島原発〜仙台市のほうは、そもそも揺れやすい場所なのです。

■東京都の地震
 東京都は5年に1度「地震に関する地域危険度測定調査」を行い、結果を発表しています。今回第7回の発表は2013年9月17日で、町(丁目)ごとに5段階にランク付けし、その図を公表しました。東京23区において建物倒壊・火災危険度・災害時活動困難度を考慮した総合危険度が5段階中4、5にあたる地域を「危険度の高い地域」とし、色・パターン別に地図上に示しています・・・右図
 都内の市街化区域の5,133町丁目について、各地域における地震に関する危険性を、建物の倒壊及び火災について測定しました。
●建物倒壊危険度 (建物倒壊の危険性)
●火災危険度(火災の発生による延焼の危険性)
●総合危険度(建物倒壊や延焼の危険性)
●「災害時活動困難度」を考慮した危険度【新規】
危険度が最も高い「ランク5」は84地域で▽足立▽荒川▽墨田の3区で6割以上を占め、「ランク4」は下町一帯、大田、品川、杉並、中野区などに広く分布しており、多摩地域は3以下です。倒壊危険度が高かったのは地盤が軟らかい隅田川沿いなど下町一帯、火災危険度が高いのは木造住宅が密集するJR山手線の外側一帯でした。
 また震災を受けて液状化被害を多く見積もり、消防車などが通れる道路の整備状況も考慮。杉並、中野区周辺は道路整備の遅れでランクを上げ、道幅が広い台東区浅草周辺のランクは下げたそうです。
 皇居がある千代田区の安全性はさすがですね。荒川、隅田川流域が最も怖いのに対し、東京湾の埋立地が安全というのは意外でした。中央区、港区、渋谷区、新宿区、世田谷区、板橋区などはほぼ安全で、区部では練馬区が危険度が最も低いようです。怖い地域に住んでいるからと言って引っ越すというわけにはなかなか行かないでしょう。ココから先は自己責任です。
(2013年9月23日)


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