32  CO2濃度増加

 先週の災害の話、地震は自然災害の典型ですが、昨今の風雨災害は、どうも私達人間の活動の結果ではないか?というのは、ほぼ人類の共通認識ではないでしょうか。だって例えば還暦を過ぎた自分の子供の頃と比べてどうよ?と言えば、真夏の暑さ一つとってもまるで違うし、災害の規模も桁違いです。竜巻なんて昔はそうそうありませんでした。
 半世紀以上の歴史を持つ米ハワイ・マウナロア観測所での大気中の二酸化炭素(CO2)濃度が初めて400ppm(0.04%)を超えたそうです。CO2を吸収する植物の光合成が活発になる夏に向けてCO2濃度は下がるため、例年5月ごろにピークを迎えます。同観測所は人間活動の影響が少ないマウナロア山の標高約3400mに設置され、地球温暖化の原因とされるCO2増加を初めて示したことで知られています。1958年の観測開始時は約315ppmだったのが、冬に上昇して夏に下がるパターンを繰り返しながら増え続けています。その様子を示したグラフが右図です。ものの見事に増え続けていますが、一直線と言うよりも、ややエクスポネンシャルなところが怖いですね。
図:ハワイ・マウナロアの二酸化炭素濃度
ハワイ・マウナロアの二酸化炭素濃度(朝日新聞より

■有用な炭酸ガスですが・・・
 気象庁のホームページを見ますと、2011年の世界の炭酸ガス平均濃度は、前年と比べて2.0ppm増えて390.9ppmとなっています。産業革命(18世紀半ば)以前の平均的な値とされる280ppmと比べて、40%増加しています。炭酸ガスは冷媒や飲料、冷却材などに有用ですし、リンゴの貯蔵にも用います。大江戸温泉物語など都市型Spaでは「炭酸泉」が大人気です。遺体の保管などにも用いるドライアイスは、炭酸ガスを固化したものです。私達の生活にも、植物にも無くてはならないものですが、これが地球の上空に溜まると、地球の熱を宇宙へ放散しない保熱材の役割を果たしてしまうのです。

■気象庁の観測点における二酸化炭素濃度および年増加量の経年変化
 気象庁の観測地点である綾里(岩手県大船渡市三陸町)、南鳥島及び与那国島における大気中の二酸化炭素濃度と、その時系列データから季節変化や、それより短い周期成分を取り除いた濃度及び濃度年増加量の経年変化が右図です。植物活動の影響による季節変化を繰り返しながら、二酸化炭素濃度は増加し続けています。
 綾里は与那国島や南鳥島に比べて高緯度に位置するため、陸上の植物活動の影響を受けやすく、季節変動が大きくなっています。東日本大震災の影響で2011年3月11日から4月にかけて、欠測の時期があります→クリック。また、与那国島と南鳥島はほぼ同じ緯度帯にありながら与那国島の濃度のほうが高くなっているのは、与那国島が大陸に近く、人為起源の二酸化炭素排出の影響を受けやすいのに加え、植物の呼吸や土壌有機物の分解によって秋から春にかけて濃度が高くなった大陸の空気が、季節風により運ばれることが多いためと推定されるそうです。

気象庁のホームページより転載、気象庁の観測点における二酸化炭素濃度の経年変化

■世界全体での二酸化炭素濃度の上昇
 温室効果ガス世界資料センター (WDCGG)のデータを統計的手法で解析し、それにより求められた地球全体の二酸化炭素濃度(WDCGG解析値)の経年変化が右図です。
 地球全体で見ても、濃度が上昇していることが分かります。
 また、WDCGGが収集したデータをもとに、緯度帯別に平均した大気中の二酸化炭素月平均濃度の経年変化を示したものが下の図です。緯度帯別に見ますと、北半球の中・高緯度帯の濃度が高く、南半球では濃度が低くなっています。これから容易に想像できるのは、二酸化炭素の放出源が北半球に多く存在するため、ということです。すなわち、炭酸ガス放出は人間活動の結果であるということがこうしたデータからわかるのです。
 また、春から夏に減少し、夏から翌春にかけて増加する季節変化は、上で述べたように、主に陸域の植物活動によるものです。植物が活発に二酸化炭素を吸収する季節には濃度が下がります。グラフの上側、北半球の中・高緯度帯は濃度の振動、すなわち山谷が大きいですね。陸域面積の多い北半球では季節変化の振幅が大きく、陸域の面積の少ない南半球では振幅が小さくなっているのがハッキリわかります。

気象庁のホームページより転載、地球全体の二酸化炭素濃度の経年変化

 また、グラフの真ん中辺りで振動の山谷の皺が崩れているのは、北半球と南半球では季節が逆になっているからです。さらに詳細に見ますと、北半球では、中緯度および高緯度における二酸化炭素濃度の極小が8月であるのに対して、低緯度では9月であり、中高緯度に比べて低緯度で季節進行が遅れています。これは、北半球の中高緯度の季節変動が低緯度に伝搬するのに時間を要すること、および雨季・乾季に伴って中緯度より遅れて季節進行する低緯度の植物活動の影響があると考えられているそうです。
 地球全体で見ればちっぽけな人間が、世界を覆い尽くす植物の活動にここまで抗しているとは恐ろしい・・・


気象庁のホームページより転載、緯度帯ごとに平均した二酸化炭素濃度の変動

■二酸化炭素排出は抑えられないか?
 不遜なまでの人類の二酸化炭素排出は抑えられないか?非常に難しいテーマです。何故なら今、世界の人口は爆発的に増えています。更に人間が食べるための家畜がこれまたそれ以上に増えています。動物は酸素を吸って二酸化炭素を吐き出します。これだけでも増加の勢いは止まりません。更に自動車や発電所、工場など人間の活動の中で、燃やしてエネルギーを得るものは二酸化炭素を排出します。だったら、自動車をやめますか?できませんね。一部の環境保護活動家などが、CO2を排出しない暮らしなどを提案していますが、焼け石に水というものです。ハッキリ言えば自己満足です。それを周囲に強要するな、と言いたいくらいです。何故なら、自分は既に豊かな暮らしを経験して、環境に優しい暮らし?トンデモナイ、世界の大多数はこれから豊かな暮らしを経験したい発展途上国の人たちですから。

■二酸化炭素排出の少ない原発の増加は世界の趨勢
 たとえば、発電所は今日本で火力を増やしていますが、これは原発を動かせないからです。原発はクリーンエネルギーと言われる理由は、二酸化炭素の排出量が少ないからです。ただし、ひとたび事故を起こせば、その放射線排出を抑えるのは至難の業です。だからこれは無いほうが良い。だからといって火力発電で代替すれば地球温暖化が進みます。では放射線と二酸化炭素とどちらが人間の生存にとって脅威か?高市早苗自民党政調会長が「フクシマの原発で人は死んでいない」と発言してマスコミから袋叩きにされましたが、安部総理は更迭しませんでしたね?何故か?事実だからです。原発事故で人は死んでいませんが、地球温暖化による自然災害で死ぬ人はいっぱいいて、これからドンドン増えるでしょう。だから原発を運転停止して、火力発電所を増やすのは間違っていますが、福島県の原発関連の被災者のことを考えれば、正しくてもそれは言えない、ということです。世界中で日本とドイツを除いて原発を増やす動きであるのは、地球温暖化対策のためです。人口が増え続けて、燃やせなければ、これは仕方ありません。技術を持っている日本が協力することは当然です。

■工場は海外へ、過疎化する地方
 ソフトウェア技術者は、CO2濃度が高くなると頭が回らなくなります。アメリカのマイクロソフトをはじめとするIT企業が、森林のオフィスを好むのはこのためです。我がふるさと盛岡広域8市町村は、食糧と水ときれいな空気に恵まれていることが特長です。葛巻町のように、そこにクリーンエネルギーを組み合わせた先進的な自治体もありますが、それは国のお金をうまく活用したからであって、問題はそういうところも過疎化が直線的に進行している点であります。それは、少子高齢化という日本国家が抱える問題の他に、農林業の付加価値が低い(原因は生産性が低いから)ことと、第2次産業の製造業がこれまた直線的に減少しているからです。働くために若者は都会へ向かいます。ところがこと製造業に限れば、工場はドンドン海外へ移転し、2013年4〜6月の設備投資全体では0.02%の微増でしたが、筆者の会社の食いぶちである製造業の設備投資は9.1%の減少でした。企業にとっては利益が上がれば良いので、海外で生産したほうが良いからそうしているだけです。だから我々も海外の工場から注文を 貰うべく活動しています。しかし働く人にとっては雇用の場が減っています。労働者は第3次産業へと移動します。本当に付加価値を生む第1次産業を再生させる必要があり、そのためには空気と水とエネルギーが必要です。

■北東北にまでスコールが降るようになりました
 雫石町では新しい地熱発電の計画があるそうです。八幡平市も掘ればいくらでもエネルギーが出るでしょう。メタンハイドレートのような資源は所詮化石です。地球温暖化への悪影響が少なく、最もエネルギー効率の良いのは地熱ですが、我々のような電気屋から見ますと、制御するのが難しいのです。しかも人体に有害なヒ素を始めとするガス排出を伴い、配管も腐食させます。燃料棒を使って制御できる原子力は実は大変制御しやすいものでした。だから、誰も地熱を見向きもしなくなりました。2013年8月9日の豪雨水害は、雫石町、盛岡市、矢巾町、紫波町の人たちには、これまで経験したことのない未曾有の大雨だったそうです。地球温暖化で北東北にまでスコールが降るようになったということです。再生可能エネルギーの利用とCO2排出削減は急がないとヤバイところまで来ています。大都市への人口集中は当面進むでしょうが、その逆転の歯車を回さないと日本そのものがダメになると感じています。

■星野リゾート→企業とリゾートの一体化
 東京と軽井沢、北杜市、信州、那須のように両方に住まいを持つ人が筆者の周りにも出てきました。田舎の人は貧しくなり、都会の人は収入のためには都会に居なければならないが、休日には緑豊かな大自然の中でリフレッシュしたいわけです。別荘よりもっと楽なのが旅館やホテル、それも温泉があれば最高です。軽井沢の星野リゾート、素晴らしいですね。そのうちつぶやきますが、ゴールドマンサックスと提携してリゾート運営の達人を目指しています。さびれゆく温泉旅館も知恵と工夫と情熱で新しいグローバル・リソースとなるわけですから、食と水とクリーンエネルギーとスパ・リゾート、スノー・リゾート、これにITやデジタルコンテンツを組み合わせた産業を立地させれば、米国的な、豊富な緑に囲まれたインテリジェント企業集積地が出来るのでは?その場所は軽井沢よりも盛岡広域のほうが自然には恵まれています。今のペースではこれは夢ですが、そう言っていたら日本はダメになります。夢は現実にしなければなりません。それではいつやるか?今でしょ!!

■MRIインターナショナル
 ジャッキー・チェンの邸宅売却?MRIインターナショナル(英文名MRI INTERNATIONAL,INC.)は、アメリカネバダ州ラスベガス郊外の住宅地に本社を置く資産運用会社ですが、金融商品取引業者登録を金融庁により取消処分されました。日本国内の顧客から預かった資産約1300億円を運用せず、金融庁が第ニ種金融商品取引業の取り消しを行ったことで、同社は金融庁の管轄である更生特例法に基づいて破産申し立てを行う対象の事業者ではなくなってしまい、金融庁の更生特例法を使用した財産の保全手続を進められなくなったほか、利息を受け取っていないにもかかわらず顧客が納税を行った所得税及び住民税の過去のみなし納税の還付についての手続きも難航する事態となってしまいました。被害者の弁護団が結成されました。被害の拡大を防ぐことを優先した金融庁と顧客の被害回収のための法的手続きとのギャップがある現在の法制度を問題視する声も上がっています。
 一方で日本支店の幹部や親族がMRIインターナショナルの金融商品に多額のお金を投資し、日本支店の従業員らの多くも投資していいたことがわかっており、日本支店幹部らでさえ資産運用の実態を知らずに自社商品に投資していたとみられます。同社のホームページを見ますと、従業員もわかっていなかったことが分かります。不正な会計は米国本社社長であるエドウィン・ヨシヒロ・フジナガが主導していた疑いが強いようです。ネバダ州連邦地裁が米国証券取引委員会(SEC)に調査を命じ、大規模詐欺の実態解明がこれから進むと思われますが、お金のある人が狙われるこうした事件は今後ますます増えるでしょう。
(2013年9月29日)


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