466  リケジョ

 2022年2月10日は気象庁から大雪の恐れが繰り返し発報されました。ふじみ野市にも大雪注意報と着雪注意報が出されました。しかし日本気象協会のtenki.jpを見る限りそう大した雪にはなりそうにないので、夕方になって余熱利用施設エコパに出掛けました。バーデプールで歩いていると、窓の外に見える雪が大粒になって激しく降り出しました。上がって、露天風呂で仰向けになっていると、真っ黒な空から、大きな雪がドンドン降ってきます。顎まで湯に浸かって空を見上げていると、冷たい雪が顔に降り注ぎます。首から下は温かくて顔が冷たい、雪国の露天風呂ではよく経験することですが、この地域では滅多に無いことなので楽しみました。本日2月13日(日)も降雪予報が出ています。

■ 大学改革
 今回は大学に関して採り上げます。筆者は国立大学法人の経営協議会・学外委員を務めています。もう3期6年になります。348『大学改革』(2019年11月12日)で、いま国立大学法人は、第3期中期目標期間に在り、文科省は令和4年度から始まる第4期中期目標期間に向け、「国立大学改革方針」を示していることを紹介しました。やたらとカタカナが多いのです・・・サステイナブルでインクルーシブな教育を目指し、ダイバーシティへの対応や、イノベーション、Society5.0、SDGs(エスディージーズ)、SINET(学術情報ネットワーク)、リカレント教育、大学ガバナンス・コードの策定・・・といった具合です。更に、教員にはテニュア・トラック制が適用されつつあります。何のことか分かりますか?

■ インクルーシブ教育システム(inclusive education system)
 「インクルーシブ教育システム」を直訳すると「包容する教育制度」となります。人間の多様性の尊重等の強化、障害者が精神的及び身体的な能力等を可能な最大限度まで発達させ、自由な社会に効果的に参加することを可能とするとの目的の下、障害のある者と障害のない者が共に学ぶ仕組みであり、障害のある者が「general education system」(教育制度一般)から排除されないこと、自己の生活する地域において初等中等教育の機会が与えられること、個人に必要な「合理的配慮」が提供される等が必要とされています。近年、学習障害(LD)・注意欠陥多動性障害(ADHD)・高機能自閉症等の障害をもつこどもたちへの対応が議論されるなかで、インクルーシブ教育が注目されているのです。

■ SINET
 SINET;学術情報ネットワークは、日本全国の大学、研究機関等の学術情報基盤として、国立情報学研究所(NII)が構築、運用している情報通信ネットワークです。大学、研究機関等に対して先進的なネットワークを提供するとともに、多くの海外研究ネットワークと相互接続しています。

■ 国立大学ガバナンス・コード
 国立大学ガバナンス・コードは、国立大学が果たすべきミッションを踏まえ、学問の自由と大学の自治を尊重しつつ、その教育・研究・社会貢献機能を最大限に発揮するための経営・ガバナンスの在り方の基本原則を、各国立大学の総意のもとに社会に提示するものです。その中で筆者が委員を務める経営協議会は、多様なステークホルダーの幅広い意見を聞き、経営に関する重要事項の審議を活性化させて、大学の経営力を強化するための体制確保(学外委員の選考方針の明確化、効果的な審議・運営方法の工夫、議論の充実等)のために必要とされています。国立大学が法人化されて以降、大学の「経営」に当たって特に学長のリーダーシップが求められた結果、一部では学長の権力が強まって、パワハラなどの問題が指摘されるようになりました。こういうときに経営協議会が適切な監視と助言を行うことが必要とされているのです。

■ リカレント教育
 少子化で学生数が減る中、大学としては社会人を対象にしたリカレント教育に眼を向けるところが増えています。「学び直し」のニーズだったり、「企業の社員の資質向上」 だったり目的は様々ですが、地域の特色に応じた人材育成に取り組む大学も目立ちます。例えば金沢大学では「能登の里山里海」、山梨大学なら「ワインの研究」、高知大学では「土佐フードビジネスクリエータ人材創出」など、その地域ならではのテーマで社会人教育を行っています。

■ 急ぎたいリケジョ育成
 いま日本社会のDXの遅れが大問題になっていますが、実はデジタルトランスフォーメーションに携わる技術者が絶対的に足りないのです。日本よりはるかに進んでいる中国や台湾、韓国と比べて何が違うのか?日本の大学進学率は51%ぐらいですが、韓国は日本より20%多いのです。中国や台湾は行って見れば分かりますが、女性がバリバリ活躍しています。力仕事は男のほうが得意ですが、IT分野なら男女の差は関係ありません。むしろソフトウェア部門長を務めたこともある筆者の感覚からすると、粘り強い人が多い女性のほうが向いている気もします。ところが日本では理系の女子大学生が極端に少ないのです。農芸化学や発酵醸造学分野には結構いますが、理工学分野には極度に少ないのです。これはやはり親の考えが影響しているのでしょう。ちょうど脂が乗ってきた時期に出産・育児を経験する女性の雇用について企業が躊躇しているかというとそんなことはありません。大学も今や女性研究員、教員を増やそうと躍起ですが、特に理工系では学生が少ないので、大学院に進んで研究員、教員になろうとする人が少ないのが現状です。これから日本社会はなりふり構わず「リケジョ」を増やさなければ明日はありません。

■ 大学の学費はなぜこんなに上がった?
 ところでいまコロナ禍の影響もあって大学の学費が問題視されています。日本社会の格差拡大と、日本人の所得低迷が学生にしわ寄せされている面があります。446『教育と貧困』(2021年9月26日)で、大学の学費の変遷から、裕福でなければ大学へ行けなくなった日本の現状を紹介しました。更に、世帯収入が減り教育費用が増えたことで、教育が隠れた貧困を引き起こしていること、奨学金とバイトで食いつなぐ学生が多い一方で、奨学金の利用が減少していること、コロナ禍でアルバイトも減収していること、少子化で学生数が減り授業料増額を行う大学も出てきたこと、世界の中で大学ランキングでも遅れをとる日本、といったことを紹介しました。
 日本は1990年代から長いデフレが続き、「失われた30年」と言われますが、この間も、大学の学費はほぼ一貫して値上げされてきました。国立大学は1972年から上昇が始まり、2005年からは、上昇が止まり、フラットになりました。実質所得が増えないため、家計は学費負担に耐えられず、今や学生の2人に1人は奨学金を利用します。なぜ、こんなに学費負担が重くなったのでしょうか。

 その理由は、大学教育への公的支出が貧弱になったからです。高等教育への支出の家計負担割合は経済協力開発機構(OECD)加盟国中、英国に次ぎ2番目に高いのが日本です。しかも、その重さは増すばかりです。学生1人あたりの教育費負担の推移をみると、政府負担は1979年の79万円をピークに低下傾向にあり、一方、家計負担は1974年の41万円からからほぼ右肩上がりで上昇しています。高度成長期に家計所得が大きく伸び、大学進学率が高まって、受け皿になった私立大では定員増や大学・学部新設が進みましたが、経営基盤は弱く、学費値上げに原資を求めました。1970年度に国の補助金(私学助成)が始まり、1980年には私立大の収入の3割になったのですが、国の財政難から、これをピークに補助金は縮小し、現在では収入の1割に落ち込んでいます。私立大としては学費依存や寄付に頼るしかないのが現状です。力のある大学は、自ら事業を行って収入を得ています。しかし私立大の4割近くは定員割れとなっており、特に新設大では経営悪化に直結しています。国立大は2004年に法人化されて独立採算となり、国の交付金は毎年削減されています。教育研究の高度化が求められるなか、国立大経営はますます厳しくなっています。2019年度には、東京工業大、東京芸術大が学費値上げに踏み切りました。今後は他大学の追随も予想されます。

■ 高校生が選んだ大学人気ランキング
 学校情報サイト「日本の学校」を運営するJSコーポレーションは、20万7,308人の高校生を対象にアンケート調査を行い、「国立大学・公立大学・私立大学の人気ランキング(2022年1月31日集計)」をまとめました。調査期間は2019年4月〜2022年1月です。
【国立大学】 1位:東京大学、2位:筑波大学、3位:大阪大学、4位:東北大学、5位:京都大学、6位:千葉大学、7位:北海道大学、8位:神戸大学、9位:名古屋大学、10位:岩手大学
【公立大学】 1位:大阪市立大学、2位:東京都立大学、3位:大阪府立大学、4位:岩手県立大学、5位:兵庫県立大学、6位:静岡県立大学、7位:横浜市立大学、8位:名古屋市立大学、9位:愛知県立大学、10位:北九州市立大学
【私立大学】 1位:青山学院大学、2位:近畿大学、3位:関西大学、4位:慶應義塾大学、5位:明治大学、6位:早稲田大学、7位:上智大学、8位:中央大学、9位:同志社大学、10位:立命館大学

■ 法科大学院ピンチ
 横浜国立大学は、2019年度以降法科大学院の学生募集を停止しています。法科大学院への志願者、入学者とも減少して定員割れが続いたため、「改善を見込むのは困難」と判断したためです。これにより、法科大学院を設置した神奈川県内4大学は、多様な経歴を持った法曹の養成を目指して始まった制度からすべて撤退しました。2000年代の司法試験の改革以降、弁護士の数が急増し、弁護士の処遇が悪化したことによるものでしょう。イソ弁やノキ弁、ブル弁、ボス弁、タク弁、ケー弁、マチ弁、アカ弁、ヤメ検、ヤメ判など、弁護士といっても様々な形態があり、弁護士=名士だった時代とは様変わりなんですね。

■ 人気の薬学部もピンチ
 加計学園問題で一時獣医学部定員が問題になりましたね。農水省が獣医師定員を増やす必要はないと言っているのに何故か獣医学部の新設が許可されました。実は獣医師といっても産業動物の獣医師は不足しており、ペットなどの獣医師が過剰なので、全体の数は足りていますが、偏重しているのです。ペットなどの獣医師は、人口減でペットの数が減っているので、将来ますます余剰になるのが眼に見えています。歯科医師が足りないというので歯学部定員を増やした結果歯科医師が過剰になったのと同じ轍を踏んでいるのです。同じことが薬剤師でも起きています。厚生労働省の「薬剤師の養成および資質向上等に関する検討会」の取りまとめでは、薬剤師の養成に関して6年制薬学教育の問題点が数多く指摘されました。入学定員を充足していない大学、入試の実質競争倍率が相当低い大学が存在することや、6年間で卒業して国家試験に合格できる学生が私立大学で6割に満たない状況などが列挙されたのです。薬剤師の需給動向については、「将来的に薬剤師は2045年に12.6万人過剰になる」との試算が示されたことにより、特に薬学部の入学定員数について「抑制も含め教育の質の向上に資する適正な定員規模のあり方や仕組みなどを早急に検討し、対応策を実行すべき」と明記されたことが大きな焦点となっています。薬学部の「退学率」を文部科学省が2022年1月に初公開、もっとも高いのが医療創生大学56.25%、続いて40.78%の千葉科学大、33.54%の第一薬科大でした。

■ 藤井聡太棋士最年少五冠達成
 2月11日から東京都立川市の「SORANO HOTEL」で行われた第71期ALSOK杯王将戦七番勝負第4局は翌12日午後6時23分、挑戦者の藤井聡太竜王(19)=王位・叡王・棋聖=が渡辺明王将(37)=名人・棋王=を114手で降し、4連勝で初の王将位を獲得するとともに、タイトル5冠を達成しました。強いですね。19歳6ヶ月での5冠は、歴代の達成者3人(大山康晴十五世名人、中原誠十六世名人、羽生善治九段)の中で最も若く、1993年8月に羽生さんが22歳10ヶ月で達成した記録を更新しての史上最年少5冠です。また王将位獲得も、86年の第35期に中村修九段が達成した23歳4ヶ月を抜き史上最年少記録です。

■ 三幸製菓の火災
 2月11日の深夜、新潟県村上市にある米菓製造大手「三幸製菓」の荒川工場で、南側の棟から火が出て全焼し、清掃作業アルバイトの68歳から73歳の女性4人が死亡し、焼け跡から1人が遺体で見つかりました。連絡が取れていない20代の男性従業員2人のうちの1人とみられます。心から哀悼の意を表します。
 米菓メーカーと言えば圧倒的に新潟のメーカーですね。筆頭は亀田製菓、続いて三幸製菓です。他に、岩塚製菓、栗山米菓、阿部幸製菓、越後屋製菓、浪花屋製菓、ブルボンなどが有名です。九州・福岡のもち吉や、歌舞伎揚で有名な東京都の天乃屋(岩手や福島に工場あり)、筆者の大好きな金吾堂製菓(岩手や栃木に工場あり)も有名ですね。三幸製菓はその商品の安さで、近年グングン売り上げを伸ばしてきました。「雪の宿」はおいしいですね。

三幸製菓の「雪の宿」

■ お酒に強い人が多い地域
 飲酒の量には遺伝的な要素があるとも言われますが、地域によってお酒の強さに差があるのかどうか、株式会社ユーグレナが調査して、「お酒に強い遺伝子タイプが多い都道府県ランキング」を公表したそうです。1位は「青森県」(68.92%)、続いて2位「沖縄県」(67.92%)、3位「岩手県」(67.59%)、4位「秋田県」(65.92%)、5位「山形県」(65.88%)となっており、東北エリアが上位を占めました。また低かったのは47位「奈良県」(47.86%)、46位「岐阜県」(47.88%)、45位「和歌山県」(48.23%)などで、近畿エリアや東海エリア各府県の順位は中盤以下にとどまる傾向が見られたそうです。これは分かる気がします。娯楽が少ない地域では、酒盛りが一番の楽しみ、酒を飲めないと仲間の輪に入れません。ましてや寒い地方では、屋内で酒を酌み交わすのが一番の楽しみなのです。気候の温暖な地域では冬でも屋外で楽しめたりするので、酒盛り以外にも楽しめるのです。では暖かい沖縄が何故?沖縄というのは人と人の絆がものすごく強いのです。「オトーリ」という風習をご存知ですか?「御通り」という意味で、今では急性アルコール中毒の恐れがあって禁止している自治体がありますが、宮古島では今だに行われているみたいです。親がまず口上を述べて、強い泡盛をガブッと飲み干して次の人に器を渡す、その人はガブッと飲み干して親に器を返す、親はまた泡盛を注いで次の次の人に渡す、これを一回り繰り返して、最後に親が泡盛をガブッと飲み干して、参加者の協力に感謝の言葉を述べ、次の親を指名します。車座の中でこれが延々と繰り広げられます。これも仲間の絆確認なのでしょう。コロナ禍ではやってはいけませんね。

■ 大谷翔平にグランドセイコー贈呈
 セイコーウオッチ株式会社は、2021年12月に広告出演契約を結んだエンゼルス・大谷翔平投手(27)に、2021年ア・リーグMVP受賞を記念して、高級腕時計「グランドセイコー」を贈呈したそうです。大谷に贈呈されたモデルは「Evolution 9 Collection SLGH005」で、岩手県久慈市と葛巻町の境界にある平庭高原の白樺美林をダイヤルにあしらい、同じく雫石町にある「グランドセイコースタジオ雫石」(盛岡セイコー工業株式会社内の雫石高級時計工房にある)にて製造された時計です。時計業界で最も権威ある賞とされるジュネーブ時計グランプリの2021年度「メンズウオッチ」部門賞を受賞したグランドセイコーの次世代を担うモデルで、希望小売価格(税込み)は104万5千円という高級品です。大谷は「雫石町は、花巻市から比較的近いので、このモデルが組み立てられているスタジオにも、いつか訪れてみたいですね」と話し、同社の服部会長は「MVPを獲得した大谷選手の腕に、ジュネーブ時計グランプリのメンズウオッチ部門賞を受賞したグランドセイコーが重なった姿を見て、とても嬉しいですし光栄です」とコメントしたそうです。

2021年12月にMLBアリーグMVP記念でグランドセイコー贈呈;大谷翔平と服部会長(©報知新聞社)
(2022年2月13日)


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