454  COP26

 11月22日と言えば”いい夫婦の日”ですが、二十四節気では「小雪」です。もうそんな時季なのです。岩手県雫石町の小岩井農場からは雪の便りが届きました。雪が降れば、風景はモノクロになります。12月になれば下写真のようになります。雪はすべてを覆いつくして、汚いものまで美しい白銀の世界に変えてくれます。ただ、寒い!


11月24日(2021年)の小岩井農場
            

12月14日(2019年)の小岩井農場

■ COP26では石炭火力発電所の廃止がクローズアップ
 英国グラスゴーで開かれていたCOP26が終わりました。以前、これについては重要な問題なので、改めて別に採り上げます、と書きましたが、COP(コップ)は締約国会議(Conference of the Parties)の略称です。2021年秋に開かれたCOPは、国連気候変動枠組み条約(UNFCCC: United Nations Framework Convention on Climate Change)の26回目の会議なので、COP26と呼ばれます。条約の最高意思決定機関と位置づけられ、すべての条約締約国(2021年11月現在197ヶ国・地域)が参加して温暖化対策の国際ルールを話し合う大規模な国際会議です。目的は、大気中の温室効果ガス濃度を安定させることです。COP26では温室効果ガスの排出削減対策がとられていない石炭火力発電所の廃止がクローズアップされました。結果的には「廃止」ではなく、「削減」で落ち着きましたが、ヨーロッパ各国など40ヶ国あまりが賛同しているのに、日本は石炭火力発電所の廃止に手を上げませんでした。なぜ日本は石炭火力をゼロにできないのでしょうか。主要経済国は可能な限り2030年代に、世界全体では可能な限り2040年代に、排出削減対策がとられていない石炭火力発電所から移行するため、取り組みを進めるという提案がありました。これに対し、日本のほか、中国やインド、アメリカなどは賛同しませんでした。日本も、将来的に二酸化炭素の排出の多い石炭火力の割合を減らしていきたいとは考えていますが、やりたくても、すぐにはできない事情があります。

■ 2050年カーボンニュートラルを目指す
 日本は菅前総理が約束したように2050年二酸化炭素排出量実質ゼロを目指しています。この「実質ゼロ」とはどういうことでしょうか。CO2などの温室効果ガスの人為的な発生源による排出量と、森林等の吸収源による除去量との間の均衡を達成することを言います。これを「カーボンニュートラル」と言います。日本は森林が多いのですが、国土が狭く、CO2を多く排出する発電所や鉄鋼業に見合う分の吸収源は中々難しいと言われています。しかも都会に人口が集中し、そこではどんどん緑が減って、空から見れば茶色い国土と化しているのです。外国にお金を払って不足分を買うなどと言う話が本気で議論されています。発電については二酸化炭素を出さない太陽光などの再生可能エネルギーを数多く導入したいのはやまやまですが、日本は森林が多く、太陽光パネルの適地が少ないのです。しかも木を伐採して太陽光パネルを設置することは吸収源を減らすだけでなく、樹木の保水効果による飲料水の確保や土砂崩れ防止効果があり、自治体などは大規模ソーラー発電所の建設には難色を示すようになっています。風力発電はどうでしょうか。日本は大陸と違って島国なので、台風襲来に耐える頑丈なプロペラが必要です。また海からマサカリの刃がニョッキリと出たような地形ですから、大陸棚が少なく洋上発電も適地が少ないのです。人家の近くだと、低周波のプロペラ風切り音が人の健康に有害とされます。したがって欧州より不利な状況にあるのは間違いありません。

ソーラー発電

■ 日本は石炭火力をやめたくないのが本音
 欧州では石炭火力と比べて二酸化炭素排出量が少ないLNG=液化天然ガスによる発電が主です。石炭火力は再生可能エネルギーと違って保管もできるので、エネルギーの安全保障上、重要だというのが今の日本政府の考え方です。「エネルギー基本計画」では、2030年度の時点で発電量の19%を石炭火力でまかなうとしていて、減らしてはいくものの、完全にゼロにはできないという考え方です。ただその根底にあるのは産業界の本音ではないでしょうか。発電コストを考えると、石炭はほかの電源より価格が安いのです。製造業の多い日本では、工場などの電気代がそのままコストになりますから、電力消費量の多い業界を中心に石炭火力をやめることで電気代が上がるのがいやなのだと思います。さらに、日本が開発に力を入れているアンモニア発電の技術を海外に売り込みたいという思惑もあるのかもしれません。アンモニアは燃焼時に二酸化炭素が出ないのが特徴で、窒素酸化物の排出を抑えつつ安定的に発電するための実証実験が始まっています。アンモニア発電は、今ある石炭火力発電の設備のタービンを取り替えるだけで発電することができるため、すでに設備投資した石炭火力を稼働させながら脱炭素を目指すことができます。しかも石炭火力への依存度が高いアジア各国にも技術を輸出できる可能性があるのです。
 各国によって抱える事情はさまざまです。 日本としては石炭火力の割合を着実に減らしつつ、CO2排出削減の技術を実用化し、脱炭素の道を探っていくしかありません。

NaS電池 電力貯蔵で期待されますが燃焼事故で停滞気味

■ ブラックアウト
 ただ欧州が言うように石炭火力をやめろと言っても、LNG火力だって燃やしていますから二酸化炭素は排出します。比較して二酸化炭素排出量が少ないというだけで、化石資源を燃やして水を沸騰させてその蒸気でタービンを回して発電するのです。原発は原子力エネルギーで水を沸騰させてその蒸気でタービンを回すので、燃焼ではありませんから二酸化炭素を排出しないのです。再生可能エネルギーは自然任せで不安定ですから、発電量は光や風次第です。発電量が減ったから停電しますというのでは消費者は許してくれません。日本は2011年3月11日(金)の東日本大震災で原発が停止し、計画停電を経験しました。北海道では2018年9月6日(木)未明、北海道胆振東部を最大震度7の地震が襲い、その後に起きた北海道全域の停電、“ブラックアウト”は大きな問題となり、TVや新聞などでも広く報じられました。苫東厚真火力発電所が停止したからブラックアウトになったのかというと、それだけではありませんでした。水力発電所や、風力発電所も大量に停止したのです。電気は、電気をつくる量(供給)と電気の消費量(需要)が常に一致していないと、電気の品質(周波数)が乱れてしまいます。供給が需要を上回る場合は周波数が上がり、その逆の場合は周波数が下がります。これがぶれてしまうと、電気の供給を正常におこなうことができなくなり、安全装置の発動によって発電所が停止してしまい、場合によっては大停電が起こります。需要と供給は『常に』一致していなくてはならないというのが「発電」と「配電」の厄介な点です。北海道では、50Hz(ヘルツ)という周波数の水準が維持されていましたが、大地震で火力発電所の停止後、需要に対する供給がバランスを崩し、電気が足りなくなって周波数が下がったことから、大停電が実際に起きてしまったのです。

高浜原発

■ 二酸化炭素排出量削減のために停電させる中国
 こうした災害による停電は仕方ないとも言えますが、電気は今や生活の基本ですから「仕方ない」では済みません。そのため日本では不安定な再生可能エネルギー発電をバックアップするために火力発電所を建設しなければならないという、大きな矛盾が生じました。今年中国でも大停電がしばしば起きました。中国政府が環境対策として石炭を主燃料とする火力発電所の抑制に動いたことが主な要因で、全国の約3分の2の地域で電力供給の制限が実施される異常事態となったのです。中国政府が設定した目標未達の地方政府が二酸化炭素排出量削減措置を強化して、電源構成で約7割の比率を占める石炭火力発電所が次々と操業停止に追い込まれたのです。こんなことは中国だから出来ることで、民主主義国家なら大暴動になるでしょう。

水力発電

■ 日本の進むべき道は
 日本政府の言う「排出削減対策」というのがどういう対策、どういう技術を指すのかは明確ではありません。脱石炭一色ではないでしょう。脱原発でもないはずです。本来原発は脱炭素への希望の星でした。ただ問題は人類がそのエネルギーをコントロールできるか否かです。福島第一原発事故は、人間の原子力危険抑制技術がまだ途上にあることを示しました。しかも廃棄物の処理方法が定まっていないので、推進するには問題があります。再生可能エネルギーが実用化できるなら脱原発したいところです。化石資源を燃やすのはダメ、原子力には頼れないとなれば、残るは自然エネルギーしかありません。しかし太陽光は夜は×です。雲がかかっても×です。電気を蓄える電池の技術も途上です。となれば、太陽光エネルギーで一旦水を電気分解して水素にして貯蔵し、必要な時に燃料電池で電気にするといった方法が現実的です。しかしソーラーパネルを並べる場所が無い、となれば、すべての建物に設置を義務付けるなどが必要となります。コスト以前の問題として、そうしなければ自然破壊になるからです。
 風力はどうでしょうか。これまた風任せですから不安定です。今年欧州では風が吹かなくてLNG火力発電に依存せざるを得ない現状です。光も風もお天道様任せ、さすればやはり水素に変換して貯蔵するしかありません。ところが水素も危険なガスです。原子力→原爆、水素→水爆というように、使い方によっては人類への凶器ともなるのです。人間が電気という便利なエネルギーに目覚め、これに依存せざるを得ないならば、人類に危険でない方法で発電することを考えなければなりません。日本にとって希望があるとすれば「海」です。洋上風力発電にしても、太陽光発電にしても海に浮かんだままで発電できないか?それを陸地に配電するのではなく、その電気で海水を水素と酸素に電気分解して酸素は放出し、水素は貯蔵して、陸地に運んで電気に変える、その時にできるのが電気と水、これが可能になれば、人類にとって必須の酸素と水と電気が手に入る、電気で車や船の運動エネルギーに変えられる、実用化すれば、日本ほど資源に恵まれた国は無いということになります。いま日本が進むべき道は、国民一丸となって、海を利用した電気エネルギー確保の技術開発です。これが出来れば石油も石炭もウランも要りません。日本は一躍資源大国になれるのです。

浮体式洋上風力発電
 ただし現実には採算面で厳しいのが現状です。日本の自然環境の厳しさに負けて撤退する日本企業が相次いでいます。結局デンマークやドイツなど欧州企業依存が多くなります。日本政府はここに国家予算を投じて、国を挙げて取り組まなければ、民間依存ではダメです。2050年は、そんなに先のことではありません。

■ 大谷祥平満票MVP
 米大リーグ、エンゼルスの大谷翔平選手の出身地、岩手県の地元紙「岩手日報社」(盛岡市)は11月19日、ア・リーグ最優秀選手(MVP)選出を記念した特別号外を計約5万部発行し、東京や岩手県内で配布しました。東京のJR新橋駅前では、同社の東根千万億社長(我が連れ合いの高校同級生です)らが号外を配布し、スーツ姿の人や親子連れが「記念になる」と受け取り、笑顔で見ていました。岩手では郷土の英雄のためにわざわざ社長が東京まで来て配布した、とニュースで大きく報じられました。

岩手日報の号外

■ 怪物;佐々木麟太郎予想に違わぬ大活躍
 451『怪物』(2021年11月2日)で紹介した花巻東の1年生スラッガー;佐々木麟太郎は、11月20日(土)に開幕する、各地区の覇者が集う明治神宮大会では一番の注目選手になるでしょう・・・と書いていましたが、予想に違わず大会通じて3試合10打数6安打9打点、2本塁打という強烈な全国デビューでした。準決勝・広陵戦では高校通算49号本塁打となる同点3ランアーチを含む4打数3安打5打点の大暴れを見せましたが、チームは9-10で惜敗、決勝進出はなりませんでした。このホームランは滞空時間が長く、右翼席前列に落ちましたが、パワーが無ければ打てない本塁打で、見上げた人たちを唖然とさせたそうです。

■ サッカーWCアジア最終予選
 本田圭佑が11月14日、苦戦するカタール・ワールドカップ(W杯)アジア最終予選の森保ジャパンの日本代表について、期待する日本人選手として2人の名前を挙げました。ベルギー1部ロイヤル・ユニオン・サン=ジロワーズに在籍するMF三笘薫とイングランド1部の名門アーセナルでスタメン出場するDF冨安健洋です。アジア最終予選ではサウジアラビアが5勝0敗1引き分けでトップ、ピンチだった日本は4勝2敗でかろうじて2位に浮上しました。しかし6試合で5得点3失点というのはどうなってるんでしょう?余りにも得点力が少ないのが森保ジャパンの特徴です。初めて代表初の試合出場で三笘薫のぬるぬるドリブルでアシストしたゴールで2位浮上した日本代表、さすが本田圭佑は見る目があると思いました。とにかく得点能力が低過ぎる、もっともっと攻撃的な選手を活用して行かなければヤバイですね。

■ 「悪い円安」ますます進む
 452『悪い円安』(2021年11月10日)で、ドル円レートは当面113円/ドルを挟んだ動きでしょうと書き、長い目で見れば米国長期金利が上がればより円安に動くでしょうとも書きました。ところが、わずか2週間で今や115円/ドル、4年8ヶ月ぶりの円安ドル高水準となりました。米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が再任されることで米国の金融政策は現行路線が維持され、日本経済には来年にも見込まれる米国の政策金利引き上げに伴う円安進行が当面の課題になります。輸出産業に有利な円安も、昨今は輸入物価の上昇で国内経済に打撃を与える「悪い円安」の側面が強くなっています。日本銀行の黒田総裁は「悪い円安」を否定していますが、デフレ懸念が根強く残る中、日本銀行は金利を低く抑える大規模な金融緩和を続けざるを得ないのが悩みですね。経済界には、このままでは130円/ドルも覚悟という声すら出始めました。

■ 日大背任問題
 日大元理事の井ノ口忠男被告や、安倍元首相のゴルフ仲間の医療法人「錦秀会」前理事長の籔本雅巳被告らが、日大板橋病院の建て替えや医療機器納入をめぐり、大学の子会社を使って、計4億2千万円の資産を流出させ、一部を私物化したとされる事件で、田中英寿理事長に7千万円を謝礼として渡したとの供述があり、田中理事長は授受を否定していますが、検察は所得税法違反の疑いも視野に捜査しているようです。東京地検特捜部が阿佐ヶ谷の田中氏宅に家宅捜索に踏み込んだ際、部屋に約2億円の現金があったそうです。ただお金に色はついていませんから、自宅ビルで奥さんが経営するちゃんこ屋の収益だと言われれば、そうか、ということにもなりますね。田中理事長は大相撲・遠藤関の後援会騒動でスッタモンダの大騒ぎとなり、これを機会に銀行口座を使わず現金主義になったと言われています。現金だと証拠になり難いのです。理解に苦しむのは親密な元理事らが起訴され、自らへの謝礼疑惑が浮上しているにもかかわらず、田中理事長が公の場での説明を一切避けていることです。理事会や評議会のメンバーも田中理事長の絶大な権力を恐れてか、口を閉ざしています。大学当局も被害届を出さないくらいですから、やはり権力は絶大なんですね。しかし日大は国から年90億円の私学助成金を受け、税法上の優遇措置も受けています。この事件で私学助成金は保留されているようです。100万人からのOBはどんな気持ちでしょうか。田中理事長は沈黙を続けるのではなく、ハッキリと説明すべきですね。

日大板橋病院

■ フェイスブック問題
 米フェイスブックの元社員の内部告発で大問題となっています。欧米の主要メディアが大きく採り上げ、各国で「フェイスブック離れ」が起きています。このニュースは今後も注目です。
(2021年11月24日)


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