377  月見草

 東京都は休業要請を3段階で緩和するロードマップについて、6月1日午前0時から「ステップ2」に移行しました。都内の感染者数はわずかに増加傾向にありますが、小池都知事は悩んだ末に医療提供体制も十分確保できていることから決断したようです。漫画喫茶やカラオケ店、ゲーセン、パチンコ店を含む「ステップ3」への移行時期については「感染状況などのモニタリングを続け、臨機応変に対応する」としています。なお接待を伴うバー、キャバレーやナイトクラブ、ライブハウスには引き続き自粛要請し、解除は国の方針を見て判断するようです。一部マスコミには「東京アラート」を発する数値が出ていながら、解除ありきではオカシイではないか、と批判する声も有りますが、それはコロナ禍で困ることの無いヒトの声でしょう。

■ 毎度お馴染みのCOVID-19感染者及び死者の状況
●5月31日(日)12:00現在の新型コロナウイルス関連の感染者及び死亡者の数…厚労省発表

国・
地域
米国 英国 イタリア ブラ
ジル
フランス スペイン メキシコ ベル
ギー
ドイツ イラン カナダ オランダ 中国 日本 韓国
人口百万 331.0 66.44 60.46 209.5 66.99 46.75 126.2 11.49 83.15 81.16 37.59 17.38 1439 126.5 51.26
感染者 1,769,776 272,826 232,664 498,440 151,496 239,228 87,512 58,186 183,189 148,950 90,179 46,126 83,001 16,851 11,468
死亡者 103,768 38,376 33,340 28,834 28,771 27,125 9,779 9,453 8,530 7,734 7,073 5,931 4,634 891 270
感染率 5,347ppm 4,106 3,848 2,379 2,261 5,117 693 5,064 2,203 1,835 2,399 2,654 57.7 133 224
致死率 5.9% 14.1% 14.3% 5.8% 19.0% 11.3% 11.2% 16.2% 4.7% 5.2% 7.8% 12.9% 5.6% 5.3% 2.4%
死者ppm 313 578 551 138 429 580 77.5 823 103 95.3 188 341 3.2 7.0 5.3
メキシコの死者数が急伸、もうすぐ1万人突破、カナダも7千人越え、北米が凄まじいですね。ロシアは感染者数396,045人でブラジルに次いで第三位、死者は4,549人、もうすぐ中国を抜きます。人口1千万人のスウェーデンは感染者37,113人、死者は4,396人で致死率12%、死者は430ppmです。南米、アフリカなど南半球ではこれから寒くなり、いっそうの感染拡大が懸念されます。

■ 第2波?
 北九州市で5月31日(日)新たに12人が感染し、小学校でクラスターの発生が確認されました。感染の確認は9日連続で合わせて97人になり、そのうち34人の感染経路が分かっていません。北九州市は北橋市長の記者会見で「第2波真っ只中にある」としていますが、菅義偉官房長官は5月29日の記者会見で、「第2波とは考えていない」と述べました。専門家の話では、これから暑くなるにしたがってウイルスの活動は停滞し、第2波は気温が下がってくる秋口と想定され、第3波は鎖国を解除した後、海外からウイルスがやってくるという話でした。したがって今北海道や北九州市で発生している感染者はあくまで第1波のウイルスが残っていて、緊急事態宣言解除による緩和で潜んでいたものが出てきただけということです。更に北九州市の場合はクラスター追跡のため無症状者にもPCR検査をしており、結果的に陽性者の半数が無症状者であることが分かりました。この結果から、感染者の実数はずっと多いという推測を裏付けるものと分かってきたのです。筆者の専門である制御工学では、偏差に過剰に反応してドタバタすると、かえって事象が収束せずに発散して暴れることがわかっています。微分したり積分したりして、トレンドを見ながら修正動作を繰り返すべきなのです。

■ こども食堂など社会福祉活動に寄付を!
 企業の決算発表を見ていると、赤字になった企業も出ていますが、概ね大きな利益を上げて増配する企業も目立ちます。昔では考えられなかった利益額を目にすると、従業員に還元してないのかなぁとか、企業間格差も増大してるんだということがわかってきます。足元では仕事が無くなった人たちがたくさん居て、いつもながら社会の底辺に居て生活に困窮している層にしわ寄せが行っているようです。こども食堂も休んでいたものが再開され始めていますが、食事も満足に摂れないこどもがいるなんて、一昔前には想像も出来ませんでした。少子化でこどもが大事なのに、いったいどうしたものかと考えてしまいます。こうした格差社会を作ってきた大人たちに責任があるのです。グローバル化に血道をあげてきた経済システムは是正されなければなりません。それとともに、一生懸命こども食堂を運営している方たちに感謝して、生活に余裕のある人は寄付すべきです。

アジサイが色付いてきました
 
白いアジサイの勢いがスゴイ!

■ コロナ禍がもたらした人間活動是正要求
 今回の騒ぎで新しい生活様式に移行しなければならないとされています。東京オリンピックを当てにして東京で建設されたホテル群や民泊はガラガラ、警備会社も仕事が無く、あのなんとかリゾートなぞいったいなんだったの?という感じです。コロナ禍がもたらしたものは、人間活動に対する是正要求です。戦後食うものも無くなった社会で頼りにされたのは農家でした。買出しのリュックを背負ったヒトが、農家で物々交換しました。日本ももう一度農業を見直すべきでしょう。インバウンドも当面回復しないでしょうが、旅行による癒しは人間にとって大事なものですから、回復不能なダメージを受けないよう支援して行く必要があります。
 飲食店は来店客が減ったためテイクアウトに乗り出し、これによってプラスチック食品容器の急増が環境にもたらす悪影響が心配です。スーパーの買い物袋の有料化が始まる段階で逆行現象が起きているわけで、これに対する対策が急務です。新しい生活様式と言うならば、この面もしっかり考えるべきでしょう。

■ 東京集中の解除が進むでしょう
 地価も東京や大阪が下落し、埼玉や奈良が上がると言われています。家賃を払えないから解約するテナントが続出したり、テレワークしてみて、わざわざ賃料の高いビルに入居する必要がないことが分かった企業が増えたのです。働く人にとっても、あの満員電車は何だったの?とか、わざわざ都心へ行かなくても仕事できるんだということがわかると、なるべく自然の多い地価の安いところで豊かな暮らしをしながら仕事をしたほうが良いということが認識されました。ウォーターフロントの高層マンションに住むことの意義が薄れました。ましてや首都直下型地震発生確率が高いことを考えれば、地盤強固で風水害の心配が少ないところへ移ろうという発想が出てくるのは当然です。不動産投資家の9割以上が、今後不動産価格は下がると見ているそうです。ただ、じゃあ感染者が一人も居ない岩手県?いやそれは交通費がかかり過ぎるということで、茨城、栃木、群馬、山梨、静岡などを模索する人も増えるはずです。このEssayで度々書いて来ましたが、海外先進国では大都市からオフィスが郊外へ転出し、金持ちも緑豊かな郊外へ逃げ出して、残ったのは下層の住民だけという事例が増えてきていました。日本は逆行して東京集中などが進んできたのですが、コロナウイルスはダメ押しを突きつけたということです。今すぐ岩手県ということは少ないでしょうが、今現在の地球温暖化進行を見ていると、東京は住み辛くなる一方で、50年後には岩手県が最も住みやすい土地になるでしょう。

■ 日経平均株価の上昇
 2020年1〜3月期の東証1部上場企業の3割弱が純損失、全企業の売上高は前年同期比7.0%減の123兆円、純損益は1兆473億円の赤字(前年同期は5兆9,509億円の黒字)でした。4〜6月期はさらに悪化すると言われていますが、日経平均株価は上昇しています。何故でしょう?以前にも書きましたが、30年に一度のバブル崩壊は目前ですが、まだエネルギーが足りないのです。コロナショックで一時株価はズドンと落ちましたが、エネルギー充填のためにまた上がっているのです。金利は今やゼロもしくはマイナスとなれば、投資資金の向かう先は現物ないし株しかありません。金=GOLDは上がっていますが、不動産は「新しい日常」を考えると手が出せません。すなわち株価は上がるべくして上がっていて、企業業績を反映してということではありません。株価は将来の先取りですから、今現在の業績悪化には目を瞑り、未来の夢を買っているのです。先行きはコロナ次第ですが、世界大恐慌などということになるなら・・・ナムアミダブツですな。

■ 月見草と待宵草
 夏の夜に涼やかに一晩だけ咲く月見草は清楚な姿が魅力的です。咲き始めは白く徐々に朝に近づく頃、淡いピンク色に色づき静かに花びらを閉じて一夜を終えます。花言葉は「ほのかな恋」「移り気」です。アカバナ科マツヨイグサ属の多年生植物です。

ヒルザキツキミソウ
 
マツヨイクサ
 左は「ヒルザキツキミソウ」で、宵に咲くツキミソウと花色は同じようですが、昼間にも開花しています。我が家の前の川越街道中央分離帯にもきれいに群生しています。国土交通省が植栽しています。待宵草(マツヨイクサ)は月見草と同じマツヨイグサ属の植物ですが、待宵草を月見草と呼ぶ方が多いようです。色も黄色をしていて月をイメージしますね。太宰治の「富嶽百景」の中に出てくる名句の「富士には月見草がよく似合ふ」の描写で太宰治が見た月見草も「黄金色をした」という表現から、月見草ではなく待宵草ではないだろうか?と言われているようです。

■ 月見草と言えばノムラさん
 月見草で思い出すのは野村克也さんですね。通算600本塁打を放った1975年、マスコミの取材に「王や長嶋がヒマワリなら、オレはひっそりと日本海に咲く月見草や」という名言を残しました。今と違って当時はセリーグの人気がパリーグを圧倒していて、中でも子供たちの好きなものは「巨人、大鵬、卵焼き」と言われた時代です。野村克也さんの訃報は362『日本経済↓』(2020年2月19日)に載せました。2020年2月11日(火)午前3時30分84歳で虚血性心不全のため死去されました。ノムラさんは長嶋さんの1歳上、王さんの5歳上でした。郷里は日本海に近い京都府丹後半島の網野町、父は満州で戦死、母子家庭の極貧の中で育ちました。王や長嶋と違って、貧乏ゆえの苦労も有り、劣等感もあったのでしょう。アイスを売ったり子守をしたり、新聞配達のアルバイトで家計を支えました。少年時代は他の子同様巨人ファンで、“赤バット”川上哲治があこがれでした。峰山高校の野球部から南海のテスト生として入団した苦労人です。この人の非凡なところはその知能です。打者としては投手を、捕手としては打者を、徹底的に研究しました。打者への“ささやき戦術”も有名ですね。阪急の“世界の盗塁王”福本豊とは名勝負を展開しました。投手に“クイック投法”を導入させたことは当時のプロ野球に革命を起こしました。監督としても革命的でした。阪神を放出された江夏豊には「球界に革命を起こそう」とクローザーとして再生させる“野村再生工場”、他にもたくさんの選手が球団から放出されて野村監督のもとで再び輝きました。巧みな話術で選手の眠っていた才能を開花させたのは、やはり苦労人だからこそでしょう。”ID野球”・・・野球は頭を使ってやるもんだというところも、精神論のど根性野球とは一線を画すものでした。月見草発言以外にもエピソードはたくさんあります。当時弱小チームだったヤクルトの監督を受諾して、「1年目は種をまき、2年目には水をやり、3年目は花を咲かせましょう」の名言、古田を育て、ヤクルト黄金時代を築きました。1995年、日本シリーズでオリックスを破り、監督としてヤクルトを2度目の日本一へ導いた時の名言、「勇将の下に弱卒なし」、2007年、楽天の田中将大投手が5失点しながらも9勝目をあげたときは、「マー君、神の子、不思議の子」...数々の名言があります。ボヤキも有名でした。そのボヤキの裏にあるものを汲み取れるかどうかが問題でしたね。解説者としては、野球関係者にとってはとても参考になる方でした。沙知代夫人の訃報は248『獺祭』(2017年12月11日)に載せました。2017年12月8日死去(享年85歳)夫婦仲良く虚血性心不全、ピンピンコロリの死でした。このときのノムラさんの落ち込みようは気の毒で、本当にサッチーを愛していたんだなということが分かり、ますます人間ノムラの評価が高まりました。

野村克也さん
 
野村沙知代さん
(2020年6月1日)


次回へ    前回へ    最新ページへ    つぶやき最終回