■ 米国景気後退入り予兆の「逆イールド」が発生 334『古希』(2019年8月5日)で、世界の株式市場、為替市場はトランプ米大統領のツイートに振り回されていると書き、336『草津と万座』(2019年8月18日)では、2019年8月14日に米国債券市場で、米2年債利回りが米10年債利回りを上回る「逆イールド」(長短金利差の逆転)が発生し、これは過去事例に照らし米国が景気後退入りする予兆であると書きました。
■ リーマンショックの世界波及は「グローバル化」のせい というのもリーマンショックはサブプライムローンの破綻によるものでした。社会的信用の低い所得層(サブプライム)に、返済能力以上に住宅ローンを貸し付けて、カネが回らなくなったもので、いわば「住宅バブル崩壊」みたいなものですが、金融危機なので市場にじゃぶじゃぶカネを回して解決したわけです。このとき本来は米国内だけの問題のはずなのに、世界中の経済が打撃を受け、特に日本などは何も悪いことをしていないのに深刻なダメージを受けて、企業の経済活動が停滞しました。その原因は「グローバル化」です。金融はグローバリゼーションによってネットワークされ、米国だけの問題じゃなくなったわけです。リーマンショック後米国経済は再び好調を続けました。 ■ 日本の「金融バブル崩壊」から失われた○○年が... 一方日本では1989年に消費税が導入され、1990年に大蔵省(現財務省)と日銀が金融引き締めを行ったことで信用収縮が一気に進み「金融バブル崩壊」が起きましたが、その後長期低迷に入り、デフレが長く続きました。世界二位だったGDPも伸びなくなり、賃金も伸びず、国民の所得はドンドン外国に抜かれて行きました。「失われた20年」・・・長いデフレを脱却すべく2012年に始まったアベノミクスは、「アベクロ政策」でバンバン金融緩和し、禁断の国債・株買いに日銀が手を染めて、国民の大切な年金資産を預かるGPIFまでもが同じことをやって日本の株価を上げましたが、デフレは一向に終わりません。 ■ FRB、ECBの施策効果なし、日銀は手詰まり
■ 欧州でコロナウイルスの感染者が急増 新型コロナウイルスの大規模な流行を受けて、世界経済への悪影響が深刻化しています。当初は感染の拡大が見られなかった欧米でもコロナウイルスの感染者が急増しており、特に北イタリアやイランは深刻です。イタリア政府はイタリア全土を封鎖する措置に踏み切り、イタリア経済は実質的に機能不全に陥っています。1〜3月期の成長率は記録的なマイナス成長になると予想されます。ドイツではパスタがパニック買いの対象になりました。ドイツ人は合理的であり冷静沈着であるというイメージがあるだけに、これは衝撃的でした。スペインでも非常事態宣言が出ました。WHOは当初日本に警戒の目を向けていましたが、それはクルーズ船への対応のせいで、まだパンデミックではないと言っていましたが、今やコロナウイルス感染の中心は欧州だと言っています。 ■ 米国で国家非常事態宣言、欧州からの入国禁止 3月11日朝までは「落ち着け、すぐに状況は良くなる」と言っていたトランプ米大統領でしたが、夜にはテレビ演説し、欧州からの入国禁止措置を発表、続いて3月13日、国家非常事態を宣言し、感染拡大の防止に向けて500億ドル(約5兆4000億円)の連邦資金を投入すると表明しました。実はトランプ氏がTwitterで、新型コロナウイルスをインフルエンザと比較し、「インフルエンザの致死率の方が新型コロナよりも高い」とつぶやいていたのに対し、大統領の新型コロナウイルス対策チームのメンバーで、アレルギー・感染症国立研究所長のアンソニー・ファウチ博士が11日下院の公聴会で、激しい口調で「インフルエンザと同じようなものだという人がいる。しかし、インフルエンザの致死率は0.1%だ。新型コロナウイルスは、その10倍以上にのぼり、格段に死を招く確率が高い」とトランプ米大統領に警鐘を鳴らしたのです。米有数のシンクタンクであるブルッキングス研究所は、1918〜19年に流行したスペイン風邪と同程度の感染率という最悪のシナリオの場合、新型コロナウイルスで死亡する日本人は57万人、世界で6800万人という恐ろしい数字を出しました。日本は最善でも13万人、アメリカ:最善24万人、中国:最善280万人、世界合計:最善1518万人!ウソでしょう!と言いたいですね。実際、当時とは情報量が違いますから、そんなことにはならないでしょう。 ■ グローバリズムの終焉
■ 「ユニコーンバブル崩壊」 そのバブルとは何か?ユニコーンバブルと言う人も居ますが、いずれ米国への余剰資金集中によるバブルと考えます。「ユニコーン」とは、創業10年以内で企業価値が10億ドル以上の未公開(非上場)スタートアップ(ベンチャー)企業のことです。米「ウーバー(Uber)」、「リフト(Lyft)」、中国「滴滴出行(Didi)」、シンガポール「グラブ(Grab)」など、ライドシェア企業も多いですね。ベンチャーキャピタルが上場資金を提供しますが、公開初日は高いがその後株価が下落する事例が続いています。すなわちユニコーンバブルはすでにしぼみつつあると考えられます。 他にも社債への投資が続いてきました。日本企業は日本でお金が運用できないので米国に投資してきました。それが円安ドル高の流れになったのです。すなわち米国を舞台にバブルが成長してきました。日本のソフトバンクグループなど典型です。ソフトバンクのバブルも崩壊するでしょう。今コロナショックで大騒ぎですが、実は30年に一度のバブル崩壊は、米国発で世界に波及すると思われます。 ■ 働き方改革 今回のコロナパラリシスで「巣ごもり」状態になることで、テレワークが注目されています。これは日本が大変遅れている分野で、そのために一極集中になって東京にヒトが集まり過ぎるわけです。コロナウイルスは満員電車でも感染しているのではないかと言われていますが、通勤は別名痛勤と言われるように、実に大変なものです。人生の中でこれに費やす時間のなんと多いことか!いかに運動になるかは、通勤をやめた時点で直ぐ分かりました。日本人がアメリカ人みたいにブクブク太っていないのは通勤でエネルギーを消費しているからだろうと思います。 実はこれこそが働き方改革になるのではと考えます。日本では地方創生と言いながら、実態は真逆のことが進んでいます。これは官僚の思惑によるものと想像しますが、東京一極集中が進むことで、トウキョウヒートアイランド現象が起き、緑が失われ、痛勤を強いられているのです。米国などは都市から企業や富裕層が去り、大都市は貧困層の住む街になりつつあります。IT企業は緑豊かな地にオフィスを構え、社員も緑豊かな郊外に住んでいます。仕事が終わればすぐゴルフも出来れば釣りもトレッキングもできるのです。無駄な通勤時間は少なく、自然に溢れた環境で働き、暮らせる、それはITをうまく活用しているからです。 ■ 原油価格を巡る各国の思惑
■ シェールオイルの登場 2011年以降、シェールオイルで米国の原油生産量が倍増した半面、サウジとロシアの生産は停滞してきました。少なくとも過去5年間を振り返ると、米シェール生産者は原油市場で中期的なアンカー(安定供給者)の役割を果たしてきました。
■ 原油価格の急落 サウジが過去に仕掛けた「生産量戦争」は、1985〜86年(当時はザキ・ヤマニ石油相)、あるいは2014〜16年(アル・ヌアイミ石油相)の場合でも、想定よりも期間が長くなり、サウジは経済がリセッションして痛手が大きくなりました。5年前には原油価格が30ドルを切り、株も暴落して、円高が進行し、今と全く同じ状況が起きました。 今回はロシアとサウジの交渉が決裂し、サウジは4月から生産を2割アップすると表明したのです。原油価格の下げ圧力を最大化し、すべての産油国に痛みを強いるという意図があるわけです。前回書いた「苦肉の策」というやつです。ロシアを再び交渉の場に引っ張り出すか、あるいは米国が国内のシェール業者を守るために仲介役として乗り出してくるのを待つ狙いです。原油価格の急落をトランプ米大統領は「消費者にとって良いことだ」と言いましたが、それは日本にとってはとても良いことですが、米国のシェール生産者は赤字になって生産量を落としますから、目前に選挙を控える大統領としては単なる強がりで、実は困っているわけです。 ■ 株の急落で怖いのが... 今まで株価は上がり過ぎて来て、多くの投資家は疑心暗鬼でした。上げはジワジワ、下げは急落というのがいつものパターン、ノコギリの歯のようなパターンですが、これは人間の心理によるものです。恐々買って、売るときは投げるというパターンです。成功する投資家は、投げを見て買い、目標を決めて達したら売る、再び買うのは相場が荒れるまで待つ、決して焦らない、という人です。 GPIFの株買い→年金資産の消失懸念・・・これは怖い!小沢一郎さんは、今回の株価暴落でもしかすると26兆円の年金資産が消失するのではないか?とTwitterでつぶやいています。安倍首相は過去の国会答弁でそのリスクを問われたとき、「もしそうなったとしても、原資が減れば当然給付に反映される」と言っています。至極当たり前の答弁ですが、だからこそ怖い! ■ 目処と目途 前回新型コロナウイルス感染症対策専門家会議が「3月19日頃を目処に公表する予定」としたことについて、「目処」はメドだけど、政治家は「目途」;モクトというコトバが好きなようです、と書きました。
(2020年3月15日) |