365  故事
 何を書いてもボヤキになりそう、というときは滅多に有りません。今回の新型コロナウイルスによる世界中の混乱は、それこそ滅多にない出来事です。家に閉じ込められた子どもたちも可哀そうなら、イベント自粛や観光客の激減で収入が減って言い知れない不安におびえている人たちの苦痛にも心から同情します。そういう筆者も運動不足で、身体はなまるし、心のモヤモヤも晴れません。

■ 東京大空襲から75年
 3月10日と言えば、東京大空襲ですね。もう75年経つのだそうです。1945年3月10日午前0時8分、マリアナ諸島を発進し、東京の下町上空に侵入した300機を超える米軍B29爆撃機が、日本の木造家屋がよく燃えるように開発した大量の焼夷弾で高度約2千メートルからじゅうたん爆撃、現在の墨田、江東、台東区などにあたる当時の本所、深川、城東、浅草の各区などで大火が発生し、2時間余りの爆撃で、死者は約10万人、負傷者約4万人、被災家屋は約27万戸に達しました。筆者が以前2003年1月から2012年12月まで10年520回にわたり書いていたつぶやきの171『東京大空襲』(2006年4月22日)をご覧下さい。許し難い戦争犯罪ですが、戦争と言うものは結局「勝てば官軍負ければ賊軍」という戊辰戦争を表す言葉が端的に示すように、敗れた側に理は無いのです。戦後75年、日本がいまだに米国の属国であるのは致し方ないのでしょうが、戦争犯罪を犯した国に従わざるを得ない口惜しさは....

■ 東日本大震災から9年
 3月11日と言えば、東日本大震災からもう9年です。忘れもしないあの大揺れ、あの大津波、原発事故、我がいとこも3人家を流されました。「災害は忘れた頃にやってくる」という言葉は今や死語です。「災害はいつでもやってくる」・・・災害列島に暮らす日本人の宿命ですが、毎年どこかで大災害が起きて、避難所が設置されています。どこが安全か?海が無くて、山が無くて、川が無くて...?いいえ、足元にマグマが煮えたぎり、プレートが複数交錯していつもギシギシやっている災害列島・日本ですから、どこが安全とも言えませんが、雷や竜巻を別にすれば、科学的に見て最も心配なのが東南海地震津波と首都直下地震です。確率的に考えれば、あとはいつ首都圏を逃げ出すか、それが問題ですね。

■ 苦肉
 「全国に新型コロナウイルスの感染が拡大しているが、そんな中、深刻なマスク不足に苦肉の対応が続いている」とニュースでやっていました。「苦肉」って何だろう?我々は日本人なので、歴史的に中国から言葉を学び、文化を伝承してきました。したがっていろいろな言葉の意味を、これってどういうこと?と思って調べると中国の故事に行き着きます。
 苦肉とは魏晋南北朝時代の中国の『兵法三十六計』 という、兵法における戦術を六系統・三十六種類に分類した兵法書に出てくる言葉だそうです。「三十六計逃げるに如かず」というのはこの兵法書から来たものです。苦肉はその第三十四計にあたる戦術です。人間というものは自分を傷つけることはない、と思い込む心理を利用して敵を騙す計略なのだそうです。日本では苦肉の策とか苦肉の計という使われ方をされます。肉とは我が身を指し、自らそれを苦しめることはないはずという心理を逆手に取るわけですね。でもマスク不足に苦肉の対応ってどういう意味でしょう?
  俺は待ってるぜ;歌・石原裕次郎
♪霧が流れてむせぶよな波止場
♪思い出させてヨー また泣ける
♪海を渡って それきり逢えぬ
♪昔馴染の こゝろと心
♪帰りくる日を たゞそれだけを
♪俺は待ってるぜ

コロナウイルスが海を渡ってくる時代、これをグローバル化と言います。ウイルス撲滅を俺は待ってるぜ

■ 皮肉
 「苦肉」と似たような言葉に「皮肉」もあります。では皮肉って何だろう?弱点をつくなど骨身にこたえる事を、それとなしに言う、意地悪な言葉のことですね。また期待していたのとは違った結果になることにも使われます。骨や髄は身体の内部にあって、人間の身体の芯となる部分なので、「本質の理解」を意味し、皮や肉は表面にあることから「本質を理解していない」といった非難の言葉に使われるのだそうです。そこから、皮肉だけが批評の言葉として残り、欠点などを非難する意味で使われるようになったそうです。

■ 人間万事塞翁が馬
 「人間万事塞翁が馬」という言葉も有名です。昔、中国の北辺の塞上(国境の砦)のそばに住んでいた老人(翁)の馬が胡の国に逃げ、それを知った人が翁をなぐさめたら、「いやこれは幸いになる」と言うのだそうです。がっかりして気が動転したかと思ったでしょうね。すると数ヶ月後、その馬が胡の駿馬(しゅんめ)を連れて帰ってきたんだと...それを知った人が翁に「良かったね」と言って祝福したら、「いやこれは災いになる」と言うのだそうです。なんて素直じゃない人かと思ったでしょうね。するとその老人の息子がその駿馬に乗り落馬して足を折ったのだそうです。それを知った人が翁をなぐさめたら、「いやこれは幸いになる」と言うのだそうですよ。全くもう、素直じゃないんだから、と思ったでしょうね。ところが、胡の国との戦いが勃発し、足を折った息子はそのおかげで徴兵を免れて命が助かったという故事から、人生の幸・不幸は予測しがたく、幸運も喜ぶに足らず、不幸もまた悲しむにあたらないとのたとえに使われるのです。

■ 原油と株の急落
 米国の株価は2020年3月9日▼2013ドルと史上最大の下げ幅を記録しました。連れて日経平均株価も暴落、あっと言う間にピークから5千円もの大暴落です。この背景には新型肺炎による米国および世界経済の減速懸念が深刻度を増してきて、原油価格が大暴落したことが挙げられています。原油は商品の代表的なもので、これと株価、そして金融債権がいわゆる経済の三要素です。リスクオフとなれば投資家は株を売り、安全資産の日本円を買いますから、円高になって日経平均株価はますます頭を押さえつけられるわけです。   つぐない;歌・テレサテン
♪窓に西陽があたる部屋は
♪いつもあなたの 匂いがするわ
♪ひとり暮らせば 想い出すから
♪壁の傷も 残したまま おいてゆくわ
…置き去りか...

■ コロナショック
 リーマンショック以来の経済大ピンチだと言うので、今回の経済危機が新型コロナウイルスによるものだという意味から「コロナショック」という人が居ますが、筆者はそれにくみしません。ちなみに「くみする」は「与する」が本来で「組する」は当て字ですが、実際は後者のほうが使われてるみたいですね。「コロナショック」は世界的な混乱状態という意味ではその通りですが、経済に対してのコトバとしてはそのまま該当するものとは考えません。確かにトリガーはCOVID-19ですが、これまで散々書いてきたように、今まで株価は上がり過ぎて来たのです。多くの投資家は疑心暗鬼だったはずです。
 本格的バブル崩壊は30年ごとにやってくるという過去事例からすると、まさに今がそのときです。しかし、何度も書きますが、今回の下げエネルギーはまだバブル崩壊の域に達していないのではないかと見ています。日本ではアベノミクスということで米国に追随して上げてきましたが、その手段は「アベクロ政策」と呼ばれる金融政策です。安倍首相と黒田日銀総裁コンビによる金融緩和政策ですね。その先行きには名だたる経済専門家から警鐘が鳴らされ、出口政策を取れ!と口を酸っぱく言われてきましたが、何処吹く風、国民の内閣支持率を背景に日銀のETF買いオペ、GPIFの株買いが続いてきました。その間東京にはビルが林立し、東京都周辺地域の緑は伐採され、国道16号線内側は一段と開発が進みました。上海化です。そればかりかIRを推進するとかで、これまで悪とされてきた賭博で国興しするんだとか...急激な格差拡大で不安が蔓延し、結婚もしない、しても子どもを産まない(産めない)、少子化が進む、高齢化は待った無し、地方創生は名ばかりで、地方の野山は荒れ、耕作放棄地が原野化し、野生動物が増える、限界集落が増える...   つぐない;作詞・荒木とよひさ
♪愛をつぐなえば 別れになるけど
♪こんな女でも 忘れないでね
♪優しすぎたの あなた
♪子供みたいな あなた
♪あすは他人同志になるけれど

哀しい歌ですね。こんな詞は荒木先生ならではです。愛をつぐなえば別れになるかもしれませんが、アベクロ政策の結果はつぐなえるのでしょうか

■ 日銀大ピンチ!
 株価暴落と円高進行で日銀の次なる手は?年間では6兆円ものETF(株価指数連動型上場投資信託)買いオペを繰り返してきた日銀が2020年1月現在保有する日本株は約28.5兆円にのぼります。簿価は黒田日銀総裁いわく1万9千5百円です。これを下回ると含み損が発生します。日経平均株価がさらに1万6千円前後まで下がれば、ETFの含み損は4兆円を超え、債務超過となります。中央銀行なので民間企業のように倒産することはありませんが、外国の事例で明らかなように、そうなったら外国人投資家の心理を冷やし、日本売りにつながり、円安・株安・国債安のトリプル安となって、日本経済は不況なのに物価が上昇するスタグフレーションに突入しかねません。その先に待つのはハイパーインフレ、お金は紙切れ、日本経済の破綻です。日銀が、断末魔の政策として更なるマイナス金利上乗せに走ろうものなら、恐らく地方銀行がバタバタ倒れる金融バブル崩壊になります。なんとかしてこれだけは避けなければいけません。ピンチは真っ先に弱者に襲い掛かるからです。   女の意地;歌・西田佐知子
♪こんなに別れが 苦しいものなら
♪二度と恋など したくはないわ
♪忘れられない あのひとだけど
♪別れにゃならない 女の意地なの

女の意地で別れなければならない...しかし泪こらえて夜空を仰げば、またたく星がにじんでこぼれるのです。日銀の意地なんか間違っても張らないで下さい

■ イベント自粛の延長
 安倍首相は2020年3月10日午後、政府の新型コロナウイルスの対策本部で、大規模イベントなどについて、新型コロナウイルス感染症対策専門家会議が判断するまで今後さらに10日程度、自粛を要請する考えを示しました。専門家会議は2月24日に「今後1〜2週間がヤマ」との見解を示しました。その期限である3月9日時点での日本の状況に対する専門家会議の見解は、「爆発的な感染拡大には進んでおらず、一定程度、持ちこたえているのではないかと考えられる」としています。また、北海道での対策については、北海道での緊急事態宣言から少なくとも約2週間後でなければその効果を推定することが困難であり、その後、複数の科学的指標を用いて効果を判断し、3月19日頃を目処(メド→政治家は目途;モクトというコトバが好きなようです)に公表する予定だそうです。ただ委員の一人の発言として、このウイルスの収束は「年を越える恐れがある」とのこと。いや、それってヤバイですね。東京五輪はどうなるのでしょう。

■ 冷静な対応、理詰めの対策を
 来週は岩手に会議で行きます。今や3月に入っての東海道新幹線の利用者数が前年同期比56%減だそうです。東北新幹線も同様でしょう。したがって指定席はまだ取っていませんが、JR Cyber Stationというホームページの空席案内を見ると、本日以降すべての東北新幹線の指定席で×は有りません。ホテルも飲み屋もガラガラ、いろいろなところで悲鳴が上がっています。「濃厚接触」なんてイヤなコトバが出回っていますが、こういうときこそ、「濃厚接触」しないように気をつけながら、屋外で身体を動かしたいものです。そして、こういうときこそ、塞翁が馬という故事を思い出すべきときです。7年前の今日書いた、4『円安株高、景気は意志によって作られる』(2013年3月10日)をご覧下さい。本日の日経平均株価は急落後値を戻して、若干前日を上回って引けました。それはトランプ米大統領が「減税」を打ち出したからです。「原油暴落は消費者にとって良いことだ」とも言っています。それはその通りですね。特に日本にとってはとても良いことです。
靖国神社の鳥居

■ 景気は意志によって作られる・・・増税は心理悪化につながる
 本日、日本政府が打ち出した対策第二弾はハッキリ言って効果は少ないでしょう。無利子融資されたところで、借金は返さなければいけないわけで、延命だけでやがて死ぬことが多いのです。東日本大震災のときの対策の結果で分かっていたはずなのに...今必要なのはもはや日銀に頼ることではありません。「景気は意志によって作られる」のです。企業経営者のトランプ米大統領はそこが分かっているのでマーケットが反応したわけです。昨年10月の消費増税のとき、安倍首相の信頼する経済ブレーンは増税に反対し、むしろ減税すべきだと進言しました。しかし多くの取り巻きスタッフは財務省の言う増税已む無しとして、首相は「リーマンショック級の経済危機が起きない限り増税する」と言いました。公明党の主張した軽減税率を採用したため、5%→8%にしたときのGDP年率▼7.4%なんてことは起こらないとし、そのときの経験を生かして様々な対策を打ちました。キャッシュレスにすれば5%引きなんてまさに大盤振る舞いの消費喚起策でした。しかしふたを開けてみれば▼7.1%です。前回3%より少ない2%の増税で、しかも食料品への増税が無くても、人々の心理というものは悪化するのです。

■ 金融に頼るときに非ず、しかし政府の対応は?
 追い討ちをかけるように1月に新型コロナウイルス騒動が起きました。中国政府の過激な対応を横目に、2月の月例経済報告でも内閣府は「相変わらず国内景気が緩やかに回復している」との判断を維持しました。個人消費や雇用情勢、企業の設備投資が堅調だから...と言うのです。「何を考えているんだ?」と信じ難い思いでした。企業の設備投資が悪化し、景気が後退局面に入ったという統計数値が次々出ている中です。この政府の主張を日本経済新聞は「景気の実態、統計数値とズレる判断」と珍しく批判しました。リーマンショックのときに有効な手を打てなかった麻生内閣、その人がずっと財務大臣です。人々の心理を好転させて、その結果景気が良くなって、従業員の賃金が上がれば、自然に法人税も所得税も納付が上がってくるのです。もはや金融(財務省〜日銀)に頼るときではありません。
(2020年3月10日)


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