287  災害列島
 今年は実は驚くべきことがありました。8月半ばにふじみ野市のさくら通りを車で走行中、ひらひらと落ち葉が舞い、道路の隅に枯葉が溜まってサラサラと動いているのです。晩秋にしか見られないような落葉の風景でした。あまりの酷暑と降雨の無さに、桜の木の葉が落ちてしまったと思われます。異常気象で庭のキュウリとゴウヤは全くダメ、プチトマトも少しは収穫できましたが、途中からダメになりました。みょうがはやっと今頃になって姿を見せて来ました。279『老神』(2018年7月17日)で「災害列島日本にはどこにも安全なところは無い」、海外の旅行会社のジョークとも取れる宣伝文句「日本は犯罪が少なくて、とっても安全安心なところですよ...ただ、災害が多くてとっても危険なところでもあるんです、良く調べてくださいね」と書きました。書いておきながら、目の当たりに災害の現実を見せ付けられると、口惜しい限りです。

■ 台風21号がもたらした凄まじい被害
 前回「9月になりました。1日早朝はオレンジ色の朝焼けがきれいで、西の空に美しい虹が現れるや、すぐに掻き曇り雨が落ちてくる・・・これからの不気味な気象を予感させて恐ろしい!・・・(中略)・・・今年最強とされる猛烈な台風21号は・・・(中略)・・・厳重な警戒が必要です」と書きました。ヤッパリと言うか、一部では予想以上の凄まじい被害となりました。
 台風21号は9月4日正午頃徳島県に上陸し、四国から神戸、大阪、京都、北陸と抜けて日本海西岸を北上して、9月5日午前9時に間宮海峡で温帯低気圧に変わりました。今回の被害地域は日本すべてにわたったと思います。日本のど真ん中を足早に突き抜け、沖縄から北海道まで、大荒れでした。樹木がなぎ倒され、車がコロコロと飛ばされ、窓ガラスが割れ、外壁や屋根が吹き飛ばされ、プレハブや自転車置き場が吹き飛ぶ有様は、この世のものとは思えませんでした。大阪市内の最大瞬間風速は47mに達したそうです。神戸の六甲アイランドでは大量の車が被害を受け、関空では高潮被害と、連絡橋にタンカーがぶつかるダブルパンチでとてつもない被害となりました。各地で電柱が倒れて停電し、建物が壊れ、住宅の損壊も莫大な数になりました。“京都の奥座敷”貴船でも、長引く停電で川床営業できない状態です。嵐山の渡月橋では100mにわたって欄干が倒れ、1934年の建築以来初めてとのことですから、いかに風が凄まじかったかを示しています。

■ 青森県のリンゴも落果被害
 青森県弘前市などのリンゴ園では収穫前の主力品種の「ふじ」や「王林」などが落果、木が倒れるなどの被害もありました。市や農協などは市内100ヶ所以上で被害状況を調べました。中には半分近く落果したリンゴ園もあるとのことです。青森県りんご果樹課によりますと、日本海側の県西部を中心に広範囲でリンゴの落果が確認されており、県も被害状況を調べていますが、1991年に大被害をもたらした台風19号(通称リンゴ台風)と比べれば、被害はだいぶ少ないとはいえ、大事に育ててきたリンゴがまだ収穫まで大分ある状況で落果してしまうと、農家の無念は察して余り有ります。
 北海道でも風雨が強まり、倶知安町で43.4m、岩見沢市で37.6mの最大瞬間風速を記録し、電柱の倒壊による停電が大規模に拡がり、倒木によるけが人の発生といった被害が出ました。

■ 災害経験が生きて・・・
 我が家でも両側を紐でくくりつけてあったベランダのよしずが倒れ、テレビのBSアンテナのケーブルがもぎりとられました。ケーブルは余裕を持って緩ませていたので、ひきちぎられるはずがなかったのですが、良く見たら針金1本がちぎれていました。一方向だけの風ならそうなるはずがないので、風が舞って、アンテナの馬がゴワンゴワンと揺られたのか、アンテナケーブルが縄跳びの縄のように激しく揺れたのでしょう。台風が去った翌日はまだ強風で危険だったので翌々朝に屋根に上って修理しました。
 全国に大きな爪あとを残した台風21号ですが、テレビで繰り返しその危険を伝え、過去同じような経路を辿った室戸台風や第二室戸台風の経験を放送して、台風に備えろと警告していましたし、JR西日本などでは早々に運休を決めるなど、事前の対策が奏功して、死者は言っては何ですが台風の規模の割合にしては少なかったと言えます。それだけ気象予報の精度が上がり、災害経験が生きてきたということです。

■ 北海道で震度7の大地震〜ブラックアウト
 ところが9月5日台風21号で被害を受けた北海道で翌日未明3時7分大地震が起きました。影響で、北海道内すべての火力発電所が緊急停止し、一部の発電所で火災や破損が発生しました。全道295万戸が停電状態になり、信号や医療機関など市民生活にも影響が広がりました。鉄道は前面運休、学校も休みとなりました。震源に近く管内電力の約半分をまかなう苫東厚真火力発電所(厚真町、165万kW)が地震の揺れを感知して緊急停止し、連動して他の発電所も自己保のため停止(ブラックアウトと言う)したものです。完全復旧には時間がかかる見通しです。航空関係では、新千歳空港が地震の影響でターミナルビルで水漏れが発生し、保安検査機器に影響する可能性があるとしてビルを閉鎖し、6日同空港を発着する国内線、国際線の全線が欠航となりました。鉄道はJR北海道によると、北海道新幹線が9月7日午後から走らせるとのこと。

■ 平成30年北海道胆振東部地震
 気象庁は発生当日、この地震の名称を「平成30年北海道胆振東部地震」に定めたと発表しました。地震の規模はマグニチュード6.7、震源の深さは37km、最大震度は震度7(厚真町)、北海道では初めてです。東北東-西南西方向に圧力軸を持つ逆断層型で、内陸地殻内で発生した地震だそうです。

■ 山津波の様相
 この地震の凄まじさは右写真で分かります。とにかく山という山が方向関係なく崩落しています。これでは山裾にあった人家はひとたまりもありません。山崩れなどにより大量の土砂が一気に押し寄せる現象で「山津波」と言われることもあります。普通の土石流(英語:debris flow)は、土砂が水(雨水や地下水)と混合して、河川・渓流などを流下するものですが、この場合はそんなもの関係なく、ありとあらゆる山が崩れています。恐らく台風21号と、それ以前にも前線の影響でたっぷり水を含んでいた土砂が、ズドンと揺さぶられてダーッと落ちたものと思います。

厚真町の山崩れ
 台風は備えられますが地震はそうは行きません。今回の地震では山崩れのほか、札幌でも地盤の液状化が起きました。東日本大震災で千葉県の浦安や埼玉県の久喜(鷲宮)で起きたのと同じようです。つくづく地震は恐ろしいと実感します。

■ 震源が深く、断層帯との関連は薄い?
 277『閖上』(2018年7月3日)で、政府の地震調査委員会が、今後30年以内に震度6弱以上の地震の発生確率などを推計した「全国地震動予測地図」の最新版を公表したことを載せました。今回の震度7の地震は陸のプレートの地殻内で断層面がずれ動いて起きたとみられますが、震源から西に約10km離れた場所には主要活断層帯の「石狩低地東縁断層帯」が南北に走っているものの、震源が深さ約37キロと活断層の地震としては異例の深さのため、同断層帯との関連は薄いとの見解が出ています。
 右図を見ますと今回の震源地はオレンジ色ですから確率はそれほど高くないとされていました。「石狩低地東縁断層帯」は縦に赤く筋状になっています。胆振・日高地域では今でも東西方向から地殻を押す力が加わっていて地震が起きやすいと以前から指摘されてはいました。北海道では千島海溝沿いのプレート境界でM9クラスの巨大地震の発生も懸念されていますが、こうした海溝型地震ではありません。いわゆる「内陸直下型」です。内陸直下型は、地層の歪みやねじれによって発生し、いつ、どこで起こるのか予測不能であり、繰り返し起こるのかもわかりません。日本最大の内陸直下型といわれる安政の大地震(1855年)では、死者は約1万人と言われています。関東大震災(1923年)でも大きな被害が出ました。東京では揺れを体感できる地震は2週間に1回くらいの頻度で起きますが、札幌では年間に5回くらいしかありません。北海道は広いので、地震が多いように感じますが、札幌では右図で分かるようにそんなに多くないのです。そんな地震の少ない地域でも、強い内陸直下型地震がいつ起きてもおかしくないわけですから、近々強い東京直下地震が必ず起きると言われている地域に住んでいる私たちは対策を考えざるを得ません。
 今回の北海道の地震は2年前の熊本同様、水容器やガソリン、電池、食料、卓上コンロ用ガスボンベなどの備えの必要性を改めて感じさせました。

政府が発表している2018年地震発生確率分布

■ パワハラと暴力
 体操女子の宮川紗江選手(18)のパワハラ問題で、当の速見佑斗コーチ(34)が記者会見を開きました。宮川選手は日本体操協会が独自調査で判明したとして公表した速見氏の宮川選手への暴力行為は11回だということについて、2回は事実だと認めていました。速見コーチは2018年9月5日に謝罪会見を行い、「私、速見佑斗は宮川選手への度重なる暴力行為によって不快な思いと恐怖を与えてしまったことを深くお詫びします」と頭を下げ、今後に向けて「一切暴力行為を行わないことを誓います」と述べました。コレだけを見ると許してあげてよと思いがちですが、暴力コーチがそうそう簡単に変わるとは思えません。速見氏は記者会見後のテレビ局のインタビューで、日本体操協会の調査で列挙された11回の暴力行為について問われ、「顔にアザができた」という1点を否定しただけで、ほかは概ね認めました。一定期間暴力行為が現実に無いと日本体操協会が確認したら処分解除となるでしょう。簡単に許されることではありません。

■ 少年野球の場合
 パワハラというのは、権力を持つ者からいやがらせを受けたと感じるものですから、暴力を受けていなくても有り得ます。というか、今の時代にあからさまな暴力でパワハラというのは珍しくなっているのではないでしょうか?昔は少年野球でもケツバットとか、立たせて延々説教などということがあったやに聞いています。しかし我が野球チームではそうしたことはありません。他のチームでは、いつの間にかチーム名が変わったので「どうしたの?」と聞いたら、監督の暴力が父母から問題指摘され、解団的出直しで新規出直しした、ということがありました。暴力行為は今や一発アウトです。問題は「言葉の暴力」です。いまだに指導者が子どもたちに恐怖を与えるような怒鳴り方をするチームがたまにあります。選手指導の上で怒る、叱ることは当然ありますが、それにも程度があります。恐怖を与えるような怒鳴り方はパワハラだと言われるでしょう。

■ 暴力一掃するまで5年かかった
 2018年9月2日(日)のNHK「サンデースポーツ」に生出演した野球評論家の落合博満氏(64)が、スポーツ界の暴力やパワハラ問題について語ったことが印象に残りました。自身の中日監督時代も振り返り、「暴力を一掃するまで5年かかった」と内情を明かしたのです。このところスポーツ界で取り沙汰されている暴力やパワハラの問題について意見を問われると、中日の監督時代に指導者として暴力は許さない立場を取っていた落合氏は「2003年の秋に監督に就任したときに、全員を集めて『何があっても、暴力をふるった時点でユニホームを脱がせるからな』ということを確認事項とした」と言明。「監督だろうが、選手だろうが、コーチだろうが、球団スタッフだろうが、そういう者が出てきた時点で一発でアウト」と伝えたことを明かしました。
 そうした厳しいやり方をとった上で、「チーム内から暴力が一掃されるまでどのくらい時間がかかりましたか」と問われると、落合氏は「丸5年かかりました。こんな簡単なことが」と告白。「120人くらいの所帯ですよ。何千人、何万人いる中での一例ではなく。それがまさか5年かかるとは思ってなかった。俺が言ったことが周りには信用されてなかったんだろうな、と。時間をかけて、『本当にこの監督、コーチは暴力をやらないんだな』と選手に自覚してもらうのに5年かかった」と語りました。

■ 根絶は小さな組織から地道にやるしかない
 落合氏はまた、スポーツ界の暴力やパワハラといった問題を根絶するために重要なのは「大きな所帯で全部に浸透させようとするのではなく、小さなところからやること。大きな組織の中にある小さな組織のところから地道にやっていくしかない」と持論を展開しました。これは容易に達成できることではなく、「何十年とかかると思う。きれいな、暴力やパワハラが絶対にありませんといえる時代は、私たちが生きている間には訪れないと思っていた方がいい。それだけ時間がかかる難しい問題だと思います」とも続けました。説得力がありましたね。
(2018年9月8日)


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