259  平昌冬季五輪
 春を感じます。近所の梅が咲き、近くの河津桜も咲きだしました。庭の沈丁花も赤いつぼみを開き、他の木々もつぼみの躍動が感じられるようになって来ました。北国から寄せられる厳しい雪の便りとは違って、これが同じ国かと思うほどのギャップがあるのはちょうどこの時期です。2018年2月19日は二十四節気の「雨水」でした。空から降るものが雪から雨に替わる頃、深く積もった雪も融け始め、春一番が吹き、九州南部ではうぐいすの鳴き声が聞こえ始めるときだそうです。ふるさと岩手はまだ真冬です。雪国の人々には「雨水」なんて、まだ遠い先ですが、厳しい冬を越して春を迎える喜びは、南関東に生まれ育った人にはわからない感覚です。

■ 草津に行ってきました
 255『羽毛布団』(2018年1月28日)で紹介した草津白根山の本白根山(モトシラネサン)の噴火は、1月23日午前9時59分ごろ発生、夥しい数の噴石が、シーズン真っただ中のスキー場に降り注ぎ、スキー場で訓練をしていた陸上自衛隊の隊員1人に石が当たって死亡、けが人も出ました。噴火した場所は過去に噴火記録のある白根山ではなく、本白根山の鏡池付近でした。火口からおよそ5km離れている草津温泉には、「噴石が届く恐れはない」との当局見解でしたが、観光客はさすがに触らぬ神に崇りなしでキャンセル殺到、更にその後も客足が遠のいて、草津温泉の減収は巨額のようです。
 湧出量で東西の横綱である大分・別府温泉は、右のような”今は、別府行くより、草津行こうぜ。”キャンペーンを九州で展開しました。まあ、そうは言ってもさすがに九州から草津へ行く人は少ないでしょうが、その心意気は多としましょう。写真には草津温泉の湯もみが使われていますね。筆者は47年前に秋田駒ケ岳の噴火を経験しました。高山植物の豊富な山で、美しいお花畑があり、噴火の兆候も歴史も無かったのでみんなビックリしましたが、これはストロンボリ噴火だったので、噴火のエネルギーが無くなるまで入山規制が敷かれて、近くの温泉も閉鎖となりました。しかし今回の草津の場合は水蒸気噴火ですから、プシューと抜けてしまえばマグマと違ってエネルギーは残りません。そういう科学的知見に基いて、温泉オタクの草津支援旅行となったわけです。しかしやっぱり観光客はやや少なめでした。しかし来ている人は真に温泉好きとガイジンでした。次は連泊で湯巡りします。

■ 平昌冬季五輪閉幕
 平昌冬季五輪も終わりました。日本勢が獲得したメダルは金4、銀5、銅4の計13個で確定し、冬季では1998年の長野大会の10個を超えて1大会最多となりました。メダル獲得総数の1位はノルウェーの39個。開催国の韓国も過去最多の17個でした。
 日本のメダル獲得は意外にも原 大智の男子モーグル銅メダルで始まりました。事前予想では堀島行真ではないかとされていました。スキージャンプ女子ノーマルヒル個人の高梨沙羅が銅メダルのジャンプを終えたとき、共に戦ってきた先輩の伊藤有希が抱きついて祝福したら、万感の思いが沙羅の頬を濡らしました。感動のシーンでした。カーリング女子;LS北見の藤澤五月、吉田知那美、鈴木夕湖、吉田夕梨花、本橋麻里の銅メダル獲得は本人たちもまさかと思ったようですが、日本の平昌冬季五輪に最後にまたまた感動の花を添えました。金メダルはいずれも感動を呼びましたが、中でも怪我の影響が心配された羽生結弦が頑張って熊のプーさんをスケートリンク上に嵐のように降り注がせた演技は、日本人に感動と勇気をくれました。銀メダルの選手が実は筆者的に最も感動しました。スピードスケート女子1500mの高木美帆、複合ノーマルヒルの渡部暁斗、スノボー男子ハーフパイプの平野歩夢、スピードスケート女子1000mの小平奈緒、フィギュアスケート男子シングルの宇野昌磨です。
 メダルは得られなくてもフィギュアスケート女子の宮原知子の4位、坂本花織の6位の演技は素晴らしかったですね。期待していたスノーボード女子ビッグエアの岩渕麗楽は、あと一歩でしたがさすがの実力を示してくれました。地元の皆さんから圧倒的支援を受けたスキー女子ハーフパイプの小野塚彩那も残念だけれど、後進の選手がこれから続々出てくるのではないでしょうか。
 今回改めて、冬季五輪の女性選手は、各国とも綺麗な選手が多いなと感じました。若いから綺麗なのは当たり前ということもありますが、それだけではない気がします。厳しい環境に耐えて競技を続ける中で、内面から表面へと躍動の輝きがにじみ出てくるのだと思いしました。

■ 小平奈緒が女子スピードスケート500mで金、日本中が大興奮!
 平昌冬季五輪のスピードスケート女子500mで、本命:小平奈緒(31)が金メダルを獲得しました。銀メダルの李相花(イ・サンファ;28)はこれまで五輪2連覇の韓国の英雄、彼女の重圧を労った小平奈緒の姿は、実に美しいものでした。韓国・中央日報も「ゴーグルを着用しないで満面に笑みを浮かべた小平は、氷板で疾走するときとは別人のようだった」と報じました。

小平奈緒の獣を追うような素晴らしい滑り、実に美しいフォームですね
小平奈緒は松本市の相沢病院所属ということですが、長く支援してきた相沢病院にも金メダルですね
 世界各国のマスコミも、小平奈緒のスポーツマンシップを讃える報道で溢れ、これこそが単に金メダルと言うだけではない、真の王者の勲章だったのではないでしょうか。

■ 女子団体追い抜き(パシュート)で日本が金、日本中が大興奮!
 平昌冬季五輪の女子団体追い抜きで高木美帆、高木菜那、佐藤綾乃で決勝に臨んだ日本は前回覇者オランダとの決勝を2分53秒89の五輪新記録で制して金メダルを獲得しました。実は筆者は小平奈緒のスピードスケート女子500mと女子団体パシュートだけは絶対金メダルと思っていました。
 1500mの金メダリスト、ブストをエースに全員がメダリストのオランダは最初から力で高速レースを仕掛けてくるだろうと読んだ日本は、まず高木美帆を先頭にして素早く隊列を整えて半周13秒台で突っ込んでオランダをわずかに上回る素晴らしい滑り、その後佐藤綾乃、高木菜那と先頭をつなぎ、残り4周からはオランダに先行されましたが、あわてることなく「三つ子」のように脚をそろえ、スムーズな先頭交代、最後に再び高木美帆が仲間を引っ張って「組織力」を武器にした日本が残り1周のところで逆転、その後もスピードをほとんど落とさずゴールに飛び込んで、最終的には1秒59の大差をつける圧勝でした。

左から、菊池彩花、佐藤綾乃、高木美帆、高木菜那、300日一緒、家族以上の繋がりが結実しました
pursuitとは追撃とか追跡という意味で、チームパシュートは、自転車競技やスピードスケートの競技形態

■ 韓国の炎上いかがなものか
 女子団体パシュートの韓国チームは19日の1回戦で、残り1周のラストスパートのとき、最後方のノ・ソンヨン選手がキム・ボルム選手とパク・ジウ選手から大きく引き離される形となり、8チーム中7位で準決勝進出を逃しました。この競技はタイムを競うわけではなく、対戦相手との勝敗は3人の最後尾の選手のゴールがどちらが早かったかで決まります。韓国のテレビには、キム選手とパク選手が引き揚げる一方で、3人の中では年長であるノ選手が落ち込んで座り込む様子が映り、キム選手はインタビューで「最後のスケーターがついてこられず、残念なタイムに終わった」とコメントしました。このチームワークの無さに怒った韓国国民から、ネット上で「炎上」騒ぎが起きて、キム、パク両選手の代表追放を求める大統領府への署名が50万人分も寄せられる大騒ぎとなりました。確かに、日本の小平奈緒が、試合終了後肩を落とすイ・サンファに寄り添って肩を抱いて、健闘を讃える姿に比べれば、「同じ仲間なのになんだ!」と怒る気持ちもわかりますが、ちょっとやり過ぎではありませんか?
 韓国ではセウォル号沈没事件をはじめ、ネットで炎上騒ぎがしばしば起きますが、これはいわば「ネットいじめ」と言うべきもので、決して良いことではありません。というよりも本来許されるべきでないと言いたいところです。顔の見えない形で集団イジメに加担するような行為は、卑劣と言われても仕方無いでしょう。大統領を勤めた人が、末路は同様な非難の嵐の中、失意と共に去っていくというのは毎度のこと、国の指導者への尊敬も無いような有様は、他国から決して快く思われないことをそろそろ気付くべきではないでしょうか。

■ マススケートの女子で高木菜那が金メダル!
 平昌冬季五輪のスピードスケート新種目マススケートの女子で高木菜那(日本電産サンキョー)が金メダルを獲得しました。五輪で日本の女子選手が同一大会で金メダル2個を手にするのは夏季を含めて史上初だそうです。これで菜那はもはや「美帆の姉」と呼ばれることはないでしょう。
 この種目で二位になったことはあるもののトップになったことのない菜那よりも、優勝経験があり、最後の局面でスピードを出せる佐藤綾乃(高崎健康福祉大)が強いこともあり、ニッポン1、2フィニッシュとも言われていましたが、チームとして戦うことを想定していた綾乃が、予選で前走の転倒に巻き込まれる不運、たった一人で臨んだ決勝を鮮やかなレース運びで制したのです。
 オランダ勢二人が協力して仕掛けてくることを恐れていた菜那でしたが、シャウテン(オランダ;スハウテンと表記するメディアもあり)の後ろに、155cmの小さな体をぴったりつけてチャンスをうかがっていました。勝負所の終盤、一気にペースが上がり、菜那の前を行くシャウテンがトップに立ってラストの1周へ、鐘が鳴ります。菜那にとって怖い相手だった韓国の優勝候補キム・ボルム選手は、常に菜那の直後で腰に手を当ててきます。しかし菜那は冷静でした。最後のカーブで内側を締める一方、シャウテンが出口でふくらんだ一瞬を逃さず、シャープに切れ込み内側から抜いて圧巻の爆発力で首位を奪うと、そのままトップスピードでゴールへ飛び込みました。

左から、銅のイレーネ・シャウテン、金の高木菜那、笑顔の無い銀のキム・ボルム
 キム・ボルム選手は銀メダルを獲得しましたが、レース後、国旗をリンクに置いて、スタンドに向かって土下座するようにひれ伏して、頭を下げました。上記の如くネットで炎上騒ぎにさらされていたからです。しかしそんなバッシングの中での銀メダル、アッパレではありませんか。表彰されても写真のように笑顔がありません。もう非難することをやめて、素直に祝福することこそスポーツ精神というものです。

■ カーリング女子日本が銅メダル!
 平昌冬季五輪のカーリング女子、2月24日の三位決定戦で5−3で英国を下し、銅メダルを獲得しました。23日の準決勝で韓国に惜敗したLS北見の日本ですが、この試合も押され続けて絶体絶命の場面から同点に追い着き延長戦(エキストラエンド)へ、負けましたがその粘りは感動的ですらありました。予選最終戦のスイス戦で勝てば準決勝というところで自分のミスで負けたと泣きじゃくる吉田知那美選手のもとへ、隣で米国に接戦の末勝ってニッポンに四強入りをもたらしてくれたスウェーデンの選手たちが寄ってきてハグして慰める姿は、あぁスポーッツっていいなぁと思わせるシーンでした。考えてみれば四強の中でトップ成績の韓国が唯一負けたのが日本で、スウェーデンも日本に負けているのですから、日本は実力で四強入りしたわけです。
 予選で負けている英国との三位決定戦もすごい戦いとなり、セカンドの鈴木選手が絶妙なショットを決め、スキップの藤澤五月選手が好調で、3−3の同点で第9エンドを迎えました。日本は不利な先攻で迎えましたが、156cm小柄なスキップの藤澤五月選手がハウスの中に投じたのに対し、英国の長身スキップ・ミュアヘッドのラストショットが日本のストーンに当たらずミスとなって日本に1点が入り、この試合初めて4−3でリードしてさあ第10エンド、またもや不利な先攻で迎え、イギリスがハウスの中心付近にストーンを置き得点を狙いました。スキップの藤澤五月選手は、「自分の最後のショットが良くなかったので負けたと思った」そうです。自分たちの石の脇ギリギリ通過して横並びを狙ったのがわずかずれて当たってしまったのですが、これは「良くなかった」と言うほどのショットではありません。英国のスキップ・ミュアヘッドの強気で正確なショットからすると、負けは仕方無いと思いました。
吉田知那美(サード)、藤澤五月(スキップ)、本橋麻里(リザーブ)、鈴木夕湖(セカンド)、吉田夕梨花(リード)

■ カーリングは人生と似た競技
 実際見ていた人もそう思ったでしょう。中央に英国の石を残してしまったまま、LS北見は英国のスキップ・ミュアヘッドのラスト一投を見ていました。その表情は、もう諦めの感じでした。どの国のスキップも何故かみな美女ですが、中でも英国のミュアヘッドは綺麗です。しかしリリースのときの眼は怖い!アクション女優ミラ・ジョヴォヴィッチみたいです。強気のミュアヘッドは2点狙いの力を込めたテークショット、四方に石を弾いて、中央に残ったのは、日本の黄色い石でした!日本カーリング界初の銅メダル、藤澤五月は「信じられない」という顔で言葉が出ません。一瞬の間を置いて、日本の選手たちは、抱き合い、泣いて、笑いました。ラストショットをミスした、ミュアヘッドの落胆は気の毒でした。カーリングというスポーツはまさしく人生と似た面があります。一寸先は闇か光明か、分かりません。

■ カーリングを楽しめるクラブチームを作ろうと...
 日本で近年人気が出て来たカーリングですが、カーリング女子の創世期を支えたチーム青森で活躍した本橋麻里は、2006年トリノ五輪、2010年バンクーバー五輪で共に優勝したスウェーデンの選手たちが、育児しながらカーリングしている姿を見て、本当にカーリングを楽しめるクラブチームを作ろうと地元北海道北見市常呂町に戻り、チームを立ち上げました。選手ゼロ、スポンサーゼロからのスタートでした。常呂町出身の有力選手に、「オ〜イ、帰って来いよ〜」と呼びかけました。“元祖カー娘”の小笠原、船山らを擁して前回ソチ五輪出場の北海道銀行や、日本選手権4連覇を達成している中部電力から、実績も無い、カネも無いLS北見に来た選手たちは、カーリングが本当に好きだったのでしょう。日本各地のチームの“エッセンス”が詰まったミラクルチームが、ついに悲願を成し遂げたのです。本橋麻里は選手たちと抱き合い、泣いて、笑いました。「カナダやスウェーデンのクラブチームのように人間力のあるチームを作りたいと思っていた。本当に後輩たちがその通りにすくすく育ってくれた」と本橋麻里は言って、支援してくれた方々への感謝の思いを口にしました。2歳男児の母親にとって、これからますますカーリングを楽しめるのではないでしょうか。

■ スノーボード女子ビッグエア;岩渕麗楽惜しくもメダル逸す
 平昌冬季五輪の今大会から採用された新種目;スノーボードビッグエア女子・決勝で、日本女子選手最年少で、予選を3位で通過し、冬季五輪の日本女子最年少メダルの期待がかかった16歳の岩渕麗楽(キララクエストク)は、2本のベストスコアの合計147.50点で惜しくも4位に終わり、表彰台を逃しました。1回目は「キャブ900」を決め、79.75をマーク、4位の好位置につけましたが、2回目、逆転を狙って繰り出した大技「バッグサイドダブルコーク1080」の着地がわずかに乱れて手をついてしまい、得点を伸ばせません。3回目も「バックサイドダブルコーク1080」に挑んだものの転倒し、あどけなさの残る顔で、両手を合わせてカメラの向こうで応援してくれている人たちに謝罪しました。金メダルを目指して果敢に勝負しましたが、悲願達成はなりませんでした。日本勢では4度目の五輪出場で予選3位の31歳;藤森由香(アルビレックス新潟)が122・75点で7位、19歳;鬼塚雅(星野リゾート)が119・00点で8位でした。3人が入賞を果たしたのは立派なものです。

スノーボード女子ビッグエア予選1回目岩渕麗楽の演技

スノーボード女子ビッグエア決勝を終え、笑顔を見せる美人選手;藤森由香(左)と可愛い岩渕麗楽(れいら)

■ 確定申告始まり、国税庁長官へのバッシング
 いじめと言えば国税庁の佐川宣寿長官に対するバッシングもスゴイですね。16日に確定申告の受け付けが始まって以降、佐川長官の罷免を求めるデモ隊が国税庁・財務省の入る庁舎、各地の国税局に押しかけ、罷免を求める署名もたくさん集まっているそうです。一官僚に対してこれほど批判が集中するのは、極めて異例な事態で、税務当局が悪いわけではありませんが、1枚の領収書が税金の額を左右するだけに、「失くした」とか「廃棄した」など許されないと考える人たちには、森友学園問題での、当時財務省理財局長だった佐川氏の「虚偽答弁」が許せないのでしょう。佐川長官は、自宅にマスコミが張り込んでいるので、都内のホテルから公用車でぐるっと遠回りして出勤しているそうですが、実に異常ですね。それにしても、その後財務省と森友側との膨大な交渉記録が残っていたことが発覚したり、麻生財務大臣が国会の答弁で、当時の佐川理財局長の「虚偽答弁」と口を滑らしたりする動きは何なのでしょうか?

■ 教師が銃を持てばいい?
 トランプ大統領には、またまたビックリさせられました。アメリカの高校で起きた銃の乱射事件で高校生らがホワイトハウスを訪れ、トランプ大統領に銃規制を求めて直訴しました。これに対してトランプ大統領は、「銃に熟練した教師がいれば攻撃されてもすぐに解決できる」と信じられない返答、そういう問題ではないでしょう。高校の中で犯人と教師の銃撃戦ですか?西部劇で分かるように、米国の歴史はインディアンを銃で制覇した侵略の歴史です。銃に対しては銃で、これが米国なのです。米国民の三分の一がこれを支持する現実、米国とはそういう国なんだと思って付き合うしかないみたいですね。

■ 大杉漣さん急逝
 俳優の大杉漣(おおすぎ・れん、本名大杉孝=おおすぎ・たかし)さんが、2018年2月21日午前3時53分急性心不全で死去されました。1951年徳島県生まれ、66歳でした。ご冥福を祈ります    合掌
 連続ドラマ『バイプレイヤーズ〜もしも名脇役がテレ東朝ドラで無人島生活したら〜』(毎週水曜 後9:54)の撮影を千葉県で2018年2月20日行っていて、終えて宿泊先に戻り食事をとっていたところ腹痛を訴え、共演者の松重豊(55)と関係者らに付き添われて救急病院へ、しかし容態は回復せず、松重豊から連絡を受けた俳優の遠藤憲一(56)、田口トモロヲ(60)、光石研(56)らの共演者、テレビ東京の関係者、そして家族に見守られながらの最期だったそうです。
 明治大学在学中に東京で劇団に入団し、俳優として本格的な活動を始めたので、結局大学は中退となりました。ロマンポルノの作品やVシネマに出演したのち、40代で、北野武監督の映画「ソナチネ」の、凄みのある暴力団幹部の役をオーディションで射止め、演技派として知られるようになりました。これがきっかけで映画界で次第に知名度を増していき、北野武監督の作品には、映画「HANAーBI」や「アウトレイジ最終章」など、必ず起用されるようになりました。テレビドラマでも存在感を発揮し、ほのぼのしたお父さん役やバラエティー番組ではコミカルな一面を見せて、幅広い世代の人気を得て、親しまれていました。お偉いさん役を演じたかと思うと、はたまたドスの効いた悪役、何をやっても画になる役者でした。2016年の映画「シン・ゴジラ」には首相役で出演しました。

ペット大好きだった大杉漣さん
 2007年放送のNHK連続テレビ小説「どんど晴れ」で、ヒロインの比嘉愛未のお父さん役でした。横浜のお菓子屋の夫婦を森昌子と演じました。「ゲゲゲの女房」にも出演しましたね。3月放送予定のNHKスペシャルでも、福島第一原子力発電所の事故当時の所長役を演じているそうです。大杉漣さんが出るというだけで見たくなるという役者でした。この人の死による映画、テレビ、演劇界の喪失感は、主役級の大物スターを上回るものではないでしょうか。
 40年近く親交がある映画監督の滝田洋二郎さんは「昔から型にはまらない異質な役者で、生涯で一体いくつの役を演じたのだろうと思います。いくら忙しくても忙しそうにはせず、明るく現場を盛り上げて決して人の悪口を言わない...そんな彼の活躍には見習うことも多く、私自身、勇気をもらいました」と語っています。人柄がわかる言葉です。
 我が住むまちの余熱利用施設「エコパ」の露天風呂で2018年2月21日、おじいさんたちが大杉漣さんの急死の話題でワイワイやってました。「ピンピンコロリ」の死に方は理想だと言うのです。皆さん「おれたち年頃だからなぁ」とワッハッハと笑っているのです。年頃=死に頃だけど、たいてい「ネンネンコロリ」で、介護を受ける破目になる、どうせ死ぬなら、大杉漣さんのように逝きたいよ、というわけです。急性心不全についてはいまさら説明するまでもありません。248『獺祭』(2017年12月11日)で書いた野村沙知代さんは虚血性心不全でした。動脈硬化が原因の場合が多く、血圧の高い人が特に危ないわけですが、70歳を越えるとおじいさんの8割は高血圧になります。確かにお年頃ですね。


■ 埼玉が誇る俳人の金子兜太さん死去
 埼玉県小川町出身で熊谷市在住の日本を代表する俳人・金子兜太(とうた)さんが2018年2月20日亡くなりました。2月6日に誤嚥(ごえん)性肺炎のため緊急入院し、20日深夜、息子さん夫妻らに看取られる中、大きく息を吸うようにして逝ったそうです。98歳でした。ご冥福を祈ります    合掌
 東京帝国大経済学部を卒業後、日本銀行に入行、海軍士官として南洋トラック島で終戦を迎え、後に復職しました。戦後は社会的な題材を詠む「社会性俳句」に取り組み、前衛俳句運動の中心となるなど、戦後の俳句運動の旗振り役を務めました。季語の重要性は認めつつ、季語のない無季の句も積極的に詠み、時に有季定型の伝統派と激しい論戦を繰り広げました。俳句をより多くの人に開かれたものにし、「お〜いお茶 新俳句大賞」など軽くカジュアルな新潮流も楽しんで、多くの人々に親しまれました。小林一茶や種田山頭火の研究でも知られ、再評価の機運を盛り上げました。
 口癖のように「おれは『平和の俳句』が一番大事だと思っている」と言い、よく西太平洋・トラック諸島での経験を語りました。「目の前で手が吹っ飛んだり背中に穴があいて死んでいく」「いかついやつがだんだんやせ細って仏様みたいに死んでいく」。そうした戦場体験が戦後の生き方を決めたようです。
 ところでその前日の話ですが、時事通信が2月19日午前6時50分ごろ、「戦後の現代俳句をリードした俳人で文化功労者の金子兜太さん(98)が死去したことが19日、分かった。98歳だった」との記事を配信し、後に誤報だと判明し、約1時間後に記事全文を取り消して、同社は「事実関係の確認が不足していました。金子様、ご家族をはじめ、関係者、読者の皆さまに多大なご迷惑をお掛けしたことを深くおわびします」と謝罪しました。ネット上で、「よりによって訃報で誤報?アリエナイ」と話題になりました。通信社としては致命的ミスですが、現実に翌日亡くなられたということは、風前の灯だったのでしょう。98歳まで生きたのは、トラック島で死んで行った戦友の分まで生きて、反戦を貫くんだという強い意思によるものだったのでしょう。


■ 左とん平さん死去
 これまた名バイプレーヤーとして知られた俳優の左とん平さんが2018年2月24日午後3時、心不全のため都内の病院で死去されました。東京都出身、80歳でした。ご冥福を祈ります    合掌
 「さがみ典礼」のお葬式のCMは、左とん平さんでおなじみの「さがみに相談したら?」です。「さがみ典礼」は、埼玉県川口市で生まれ、約200の自社斎場を保有、我が家の近くにもあります。コマーシャルを見ながら、大変失礼ながら、「この人もそろそろかな?」と思っていましたが、とん平さんは昨年、急性心筋梗塞で倒れ、闘病を続けていました。葬儀屋さんのコマーシャルと言えば、やはり見る人の心に訴える実直性が一番です。その意味ではとん平さんはピッタリでしたね。葬儀はもちろん・・・・でしょう
(2018年2月26日)


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