161  ほったらかし温泉

 昨年のお花見の模様は、109『花見』(2015年4月5日)で紹介しました。今年も前々回紹介の通り、3月24日(木)、東京北区・飛鳥山公園で花見の予定でしたが、天候不良で延期となり、4月4日(月)となりました。ところがこの日も雨模様、午前中強く降る状況を見て「だめだこりゃ」と思っていたら、にわかに止んで決行!昨年のような大賑わいではありませんが、続々と人が集まってきます。この集まりはヘンなメンバーで、一言では言い表せませんが、「長屋の花見」で、大家は秘境探検家なのです。1年振りに中学校の恩師に会い、48年振りに高校の同級生と再会しました。

我が家の近所で、ソメイヨシノの前に紅白の花桃が咲く

飛鳥山公園・長屋の花見・・・どうです、バックの桜のあでやかなこと
 日本ではどこでも桜の名所はあります。飛鳥山公園は徳川吉宗が江戸の庶民に花見の文化を定着させようと桜を植えたと言う元祖・花見スポットなので、とりわけ有名です。我が街もお花見スポットはわんさかあります。ただ今年の春は、雨が多く、桜は長持ちするものの、好天下でお花見できた人は少ないでしょう。そこで筆者は、桜の遅いところに行こうと決めました。かねがね行きたいと思っていた山梨市の「ほったらかし」です。

■ ほったらかしへ向かいます
 山梨市に行くには関越道〜圏央道〜中央道ルートが最も短時間ですが距離は長く、高速道路料金がかかります。帰りは高速を使うとして、往きは一般道で行こうと考えました。秩父から雁坂トンネルの道が好きなのですが大回りなので、最も短距離の国道16号線〜411号線で行くことにしました。しかし東京都西多摩郡奥多摩町から山梨県北都留郡丹波山村を通って甲州市塩山へ抜ける道は疲れます。登りはダラダラ〜クネクネ、下りは急勾配のクネクネ、エンジンブレーキLowです。しかし山梨に入っての梨と桃の花盛りの壮観なパノラマは圧巻でした。

■ 国道411号線で山越え
 国道411号線は、青梅市に入ると、多摩川に沿って吉野街道とJR東日本青梅線と並行して西進します。万年橋で多摩川北岸に渡ると、進行方向前面(山梨県方面)に奥多摩の山々が眼前に迫ります。上り勾配が始まり、吉野梅郷、御岳渓谷などの景勝地付近を通過します。御嶽駅を過ぎて奥多摩町に入ると谷沿いを進むようになって、鳩ノ巣駅を過ぎると、しばらく狭いトンネルが連続するようになります。奥多摩駅を過ぎると、道幅が狭くなり、勾配がさらに急になって奥多摩湖が現れてきます。湖畔の比較的平坦な道をしばらく走り、やがて山梨県に入ります。小袖川を渡ると、山梨県の丹波山村に入ります。山梨県に入ったというのに、東京都側よりも急な勾配の上り坂とカーブが続きます。左手に道の駅たばやまがあったので寄ってみました。ここから川向こうの丹波山温泉「のめこい湯」には吊り橋を渡って行くようです。ここから丹波山村を抜けるまで集落がなく、暫く山間部を川沿いに走ります。途中で山中の急カーブのところで中型ダンプトラックが道路端に落ちて傾いた形、どうしたんだろうと思ったら近くにパトカーが居て、警察官が運転手と話していました。要注意の道なのです。次々とトンネルをくぐって甲州市に入ります。いくつかの急な坂のヘアピンカーブを通り過ぎ、この国道の最高地点柳沢峠に着きます。 柳沢峠から先は甲州市街まで、最初は急坂です。ヘアピンカーブを緩やかにするための道路改修工事が続いています。途中から長く緩やかな下り坂が続きます。斜面一面に展開した淡白とピンクに菜の花の黄色が混じったフルーツ街道・・・素晴らしい春の道です。

笛吹川フルーツ公園から甲府盆地を俯瞰、桜満開、盆地一帯が桃色

ほったらかし温泉の「あっちの湯」から眺望する甲府盆地の夜景

■ 露天風呂から眼下に見えるビル群は石和
 ほったらかし温泉は山梨市で、宣伝もサービスもなし、勝手に楽しんでというところからほったらかし温泉と名付けられたと言われています。ここに行くには山梨県笛吹川フルーツ公園の中を通ります。この公園を散策しましたが、きれいでした。斜面を上り下りすると、広大なので汗が噴き出します。ここからの夜景は新日本三大夜景と書いてありました。ちなみに他の2箇所は笹倉山(北九州市)と若草山(奈良市)だそうです。更に登った広い土地に作られた温泉は、1999年7月に開場した旧源泉の「こっちの湯」と、2003年12月に開場した新源泉の「あっちの湯」があって、入浴料は税込み800円、ただしハシゴはできず、別々に料金がかかります。有料ロッカー100円です。こんな高い山の上ですからもちろん自噴ではなくボーリングして汲み上げて加温しています。pH10ぐらいの強アルカリ泉ですが、メタ珪酸ゼロなのでツルツルにはなりません。露天風呂からの眺めは絶景ですが、立派な建物ではなく、山小屋風です。素晴らしい光景なので温泉を掘ってビジネスにしたのでしょう。眼下の最も手前にビル群の一角が見えて、コレが石和温泉です。石和温泉は笛吹市で、1961年(昭和36年)に温泉が湧出したそうですから、ずいぶん歴史が浅い温泉です。

■ 餃子の王将と社長射殺
 47『食市場』(2014年1月26日)で「餃子の王将」について触れました。大東隆行社長が2013年暮れに銃殺された件、「何という卑劣な犯人、早く逮捕して欲しいと思います」と書きました。

■ 素晴らしい社員教育研修
 誰からも慕われる社長で、どうして殺されたのだろうといぶかる声が圧倒的でした。しかし、社長と言う立場なら逆恨みを買うことは十分考えられる、と書きました。餃子の王将の新入社員研修がスパルタであることや、なぜ餃子の王将が人気があるのか、ということについても書きました。サービス産業はお客様に喜んでもらわないと成り立ちません。特にこのような「食」の会社は、そのために徹底的な従業員への教育・研修をします。時には過重労働で訴えられることもあるくらいです。餃子の王将は、あいさつや礼儀を社会人として身につけさせ、「汗をかく」「涙を流す」「感謝する」ことを叩き込むのだそうです。考えてみるとこれは我々の少年野球チームの方針とピタリ一致します。あいさつされてうれしくない人なんていません。チームワークが良くなければ勝てません。外食産業も少年野球チームも基本は同じです。

■ 一転、不適切取引が判明し、業務委託契約解除
 ところが、王将フードサービスは2016年3月30日、不適切な不動産売買などの相手になった経営者(王将創業家との関係が深い人物)のグループ企業との業務委託契約を、同日付で解除したと発表しました。事業所の電話設備などの保守委託契約で、2006年4月から2015年11月に計約3,430万円を支払ったのだそうです。王将の経営実態を調べた第三者委員会が、委託契約も不適切だと前日に指摘していました。同社は、「(この経営者の企業グループと)今後一切取引しないと確約する」との声明を出しました。特定の企業経営者との間で、過去に約260億円もの不適切な不動産売買などがあったことが発覚したのです。うち約170億円は回収できず、損失処理したとのこと。大東隆行前社長(当時72)の射殺事件後、経営実態を調べていた弁護士らによる第三者委員会の調査で判明しました。

■ 大企業のコンプライアンスって何?
 当然王将フードサービスの株価は暴落、それはそうですね。こうなってみると、新入社員に教えていたことはなんだったんだ?と言われそうですが、そのように言ってはなりません。経営者の不正と、企業としての教育研修は別物です。企業の大多数というか、ほとんどすべての従業員は必死に、真面目に仕事しているのです。むしろ会社のために必死になって働いてきた社員がかわいそうです。
 こういう事件のたびに思うのですが、今大企業は盛んにコンプライアンスを口にしますが、それって本気で遵守しようとしてますか?東芝の事件を見ても、コンプライアンスってなんでしょうか?かっこよくカタカナ言葉で言ってますが、ホンネとタテマエの使い分けの気がします。むしろ義理と人情、唐獅子牡丹の経営のほうがカッコイイ場合もあります。日本に限りますけど。

■ 反社会的勢力との関係
 第三者委員会の調査報告書は、王将の現経営陣と反社会的勢力との関係は「確認されなかった」と結論づけ、王将フードサービスの渡辺直人社長は自信に満ちた表情で「過去の恥をすべてさらけ出した。報告書の通り、反社会的勢力と関係ないことは十分ご理解いただけたと思う」と会見で話したそうですが、市場の反応は違いました。射殺された大東前社長は、王将創業者の次男と、その経営者との不適切な取引を知り、それを清算しようとしたようです。この創業家との関係が深い経営者は、暴力団など闇社会とのつながりを持つ人物として有名な存在だったのは広く知られていました。しかも、大東前社長が射殺された後も、企業間取引は続いていたとなると、会社側の言うことを素直に市場が受け取らないのは致し方ありません。
 京都府警は既に九州の工藤會の組員に目星をつけているようです。25口径のピストルとか、逃走したバイクのナンバープレートとかDNAの一致など、いろいろ言われている割にはスッキリ決着つけないのは、何か○○なところがあるのでしょう。この組織は日本で一番過激な暴力団であり、敵対する山口組も神戸山口組との抗争で大騒ぎですから、下手に動くと警察と言えどヤバイのかもしれません。

■ タックスヘイブンに世界の首脳関係者続々
 パナマの法律事務所モサック・フォンセカから漏洩した機密ファイルが、世界を震撼させています。南ドイツ新聞が入手し、国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)が4月3日に発表したところでは、そのデータ量は2.6テラバイト、1万4000の金融機関とそのクライアント21万4500社の税務情報が記載されているそうです。ウィキリークスやスノーデンのファイルより質量ともにはるかに大きく、インパクトも強烈とのこと。中国の習近平国家主席ら共産党最高指導部3人の親族、ロシアのプーチン大統領の友人、イギリスキャメロン首相の親族、アイスランドのグンロイグソン首相自身(責任をとって辞任)、ウクライナのポロシェンコ大統領・・・・、政治のトップが自ら税金逃れするなんて...

■ セブン&アイの鈴木敏文会長辞任
 日本初のコンビニエンスストア「セブン―イレブン」を立ち上げ、最大手チェーンに育て上げたセブン&アイ・ホールディングスの鈴木敏文会長兼最高経営責任者(CEO・83)が辞任を決めました。日本の暮らしにコンビニを根付かせた草分けのカリスマ経営者です。しかし、そのコンビニの首脳人事でつまずき、突然の退場となり、世界中にこのニュースが流れました。鈴木会長は日本を代表する経営者だからです。
 セブン&アイ・ホールディングスの大株主で、「物言う株主」として知られる米投資会社サード・ポイントが、セブン&アイに対し、経営者の世襲をけん制する内容の書簡を送り、「鈴木敏文会長が次男の康弘氏(取締役)を、セブン&アイのトップに就ける道筋を開くといううわさを耳にした。事実なら、鈴木会長のトップとしての適性と判断力に重大な疑問が生じる」と指摘した上で「後継者の選考に透明性が欠ける、あるいは血縁要素が介入するのであれば、株主利益に反する」と主張したそうです。こうした世襲との指摘に対しセブン&アイ首脳は「全くあり得ない。心外だ」と反論しました。
 鈴木会長はコンビニエンスストア事業を手掛ける子会社セブン−イレブン・ジャパンの井阪隆一社長(58)を交代させようとしました。井阪社長は在任7年ですがこうした大企業トップにしてはまだ若く、鈴木会長に反発しました。セブン&アイ・ホールディングスは4月7日午前の取締役会で、井阪社長を交代させる人事案を否決しました。セブン−イレブンの業績が好調なことなどを理由に、社外取締役が反対し、社内取締役にも反対者が出て1票差で否決されたのだそうです。鈴木氏はこれを受けて記者会見し、井阪社長交代案提出の理由については「COOとして物足りなかった」と説明し、社内取締役にも人事案否決に組する人が出たことに「私の不徳の致すところで、ざんきに堪えない」と述べました。鈴木会長に忠実なセブン&アイの村田紀敏社長も退く模様です。会見で村田社長は、創業者であり二人三脚でグループを育ててきた伊藤雅俊名誉会長(91)が社長交代を認めなかったことに疑問を呈しました。
 通常鈴木会長ほどの超カリスマ経営者ともなれば、その意向に逆らえるはずなどありません。しかしそれは旧来の考え方で、「物言う株主」の投資ファンドや、社外取締役制度が、そうした日本的経営が通用しない場合もあることを示しました。

■ 進む円高、株安、ヤバイ
 4月7日の外国為替市場で円相場が1ドル=107円台と1年5ヶ月振りの円高水準に達したのは、5月に主要7ヶ国(G7)首脳会議(伊勢志摩サミット)を控え、「政府・日銀は円高抑止に動きにくい」との見方が市場に広がっているためと見られます。今回の円高進行のきっかけは、米紙ウォール・ストリート・ジャーナルが掲載した安倍晋三首相のインタビュー記事で安倍首相が「外為市場での恣意的な介入は控えるべきだ」との発言が、為替介入に消極的と受け止められたからだそうですが、首相としては当たり前のことを言っただけです。日銀の黒田東彦総裁は4月7日の支店長会議で「必要な場合には追加的な金融緩和措置を講じる」と改めて強調しました。日銀が大丈夫だと言っても、市場の反応は株価や為替に現れます。アベノミクス頑張れ!というのが筆者の考えですが、雲行きは怪しくなっています。強気の発言に終始する安部首相ですが、その発言は次第に信用されなくなっています。国民はますます財布の紐を締め、遂に大蔵省は1万円札を増刷せざるを得なくなりました。金融機関が信用できなくなり、タンス預金しようということでしょう。
(2016年4月9日)


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