125  リバースオークション

 リバースオークション(Reverse Auction)とは、売り手が買い手を選定する通常のオークションと異なり、買い手が売り手を選定する逆(Reverse)のオークションです。通常のオークションでは売り手が商品を拠出し、買い手が価格を入札して最も高い価格を入札した者に商品が渡ります。つまり、売り手が買い手を選定して、買い手の間で、商品価格が競り上がるのです。

ゴーヤは2階の屋根まで到達しました
 日本政府でリバースオークションを日本語に名称を変えて「競り下げ方式」として約100件を実施したところ、平均で17%のコストカットという劇的な成果をあげたそうです。従来は、相見積もりなどによるアナログ的な交渉になり、人や会社の兼ね合い次第では最適価格が見いだせなかったのですが、リバースオークションは純粋な価格競争が可能となり、最適価格が私情を挟むことなく実現するわけです。経費削減をしたい多くの企業が注目している手法です。
薄緑色のゴーヤです
 リバースオークションを実施している日本の企業で有名なのは、日立製作所です。日立プロキュアメントサービス株式会社〔略称:HIPUS(ハイパス)〕は、2002年6月に株式会社日立製作所資材調達部門のグループ会社として、調達業務の事業化及び調達効率向上を目的に設立されました。資材調達は企業運営には欠くことのできない機能であり、企業間競争が熾烈を極める経営環境下において、調達コストの低減は各企業の至上命題となっています。HIPUSは、日立グループで長年培われてきた調達ノウハウをビジネスコアとして、調達コンサルティングから購買受託・代行、ネットを介した集中購買まで、BPO(Business Process Outsourcing : 戦略的調達一括外注)が可能な調達総合ソリューションを展開しています。

■ ヤバイ東芝にしたのは?
 日立製作所と並んで日本を代表する大企業と言えば東芝です。しかも、日本の模範企業でもありました。それが組織的に不正な会計処理を行なっていたことが明るみに出て、日本の株式市場への信頼を揺るがすような事件となっています。利益のかさ上げなど、不適切な処理があったことに伴う決算の修正額は、2008度から2014年度で1518億円にものぼるそうです。田中久雄社長と佐々木則夫副会長、元社長の西田厚聡相談役の歴代3社長が辞任することになりました。東芝の「経営トップ」を含めた組織的な関与があり、意図的に「見かけ上の利益のかさ上げをする目的で行われたものがある」として、東芝の経営体質そのものが厳しく批判されています。こういう粉飾があったということは納税額も多かったと言うことで、税務署は東芝に返金するんでしょうね。
 この背景には「当期利益至上主義」や「目標必達のプレッシャー」「上司の意向に逆らうことができないという企業風土」があったと言われていますが、そんなこと言われたら、胸を張って東芝を批判できる企業が今の日本にどれだけあるでしょうか?歴代3社長が責められているのは、東芝の経営陣が昔と変質したということですが、それは日本企業全体が同じでしょう。ステークホルダーとしての株主至上主義、高額配当しなければ経営陣を責める米国の投資ファンド、先般122『自殺』(2015年7月14日)で紹介した村上ファンドもそうですが、米国発のこうした考え方が日本企業にも浸透してきたことが背景にあると思います。良い、悪いを言う以前に、株主資本主義とはそういうものです。ただ、額に汗して働いて報酬を得るのではなく、頭を使って情報を収集して投資して対価を得るマネー経済、それで良いのか?ナチスがユダヤ人を嫌ったように、実直に働くドイツ人には、知恵で金儲けする人が嫌いな傾向があります。また努力しないで借金漬けになっても国民にはいい顔をし続けるギリシャ政府みたいなのも大嫌いなのです。ユダヤ人が鍵を握る米国経済ですから、ドイツ人と同じ傾向がある日本人と考えると、何か不気味です。

■ 原油価格低迷で先行きガソリン価格は?
 WTI原油先物価格の過去半年間の動向を見ますと、もみあいながらも6月頭までは高値への値動きを目指していたものの、そこを天井とし、後は失速しています。今年の年頭、あるいは3月下旬の水準に戻しつつあります。他方、5年範囲のチャートで見ますと、2011年以降はもみあいの後、2013年に入ってから高値へ走ったものの、2014年夏をピークに、それ以降は急落し、今年の頭に最安値を付けたあと、ややリバウンドで戻しましたが、再び値を落とす動きを示しています。これを受けてガソリン価格はどうなっているかと言いますと、2008年夏期に急騰して暴落しました。リーマンショックですね。その後2014年夏までガソリン価格は細かく上下しながらジワジワと上昇、これは為替レートにおける円安化と共に、原材料の原油価格の上昇に伴うものでありました。またGSがドンドン廃業して、元売系列のGSが増えたので、価格操作できるようになって、売り手市場になってきたこともあります。2014年秋以降は急速な原油価格の下落に伴い、稲穂がこうべを垂れるがごとく、値を落としています。
 急速に円安が進んだのに、それと合せるように原油安が進んだことが日本経済にはラッキーでした。ガソリンや灯油の価格は、産業にも国民の暮らしにも最も影響が大きい要素です。先行きもっと円安になるでしょう。原油価格はシェールオイルの台頭や、再生可能エネルギーの開発などによって、戦争でも起きない限り再び高騰することはないでしょう。したがって、ガソリンや灯油の国内価格は大幅な上昇も下降も無く、揺れながら、今と同じような価格が続くものと推定されます。
 国内の石油元売り業界においては、出光・昭和シェル連合が現実となりそうです。JXホールディングスとの2強が誕生すると、シェア6割以上を寡占することになり、今後焦点になってくるのは、売上高で業界3位の東燃ゼネラル石油や、同4位のコスモ石油の去就です。「4社体制は最終形態ではない」と出光の月岡社長が記者会見で話すとおり、大手2社を軸に、ますます元売り再編の動きは本格化していきそうです。

直近の原油先物相場


東京都区部の自動車ガソリン小売価格推移

■ 2022年冬季五輪は北京、初の夏冬開催
 7月31日のIOC総会で、2022年冬季五輪開催地は北京に決定しました。北京は2008年に夏季大会を開いており、史上初めて夏冬両五輪を開催することになりました。対立候補のアルマトイ(カザフスタン)は中央アジア初開催を逃しました。IOC委員による投票では、北京が44票、アルマトイが40票とわずか4票差だったそうです。中国での冬季五輪開催は初めてで、アジアでは1972年札幌、1998年長野、2018年の平昌(韓国)に続き4度目となり、五輪は平昌から2020年東京に続き、3大会連続のアジア開催となります。北京は2008年夏季大会の会場を利用して開催費用を抑える計画をアピールし、実績を訴えました。今回の招致では巨額な設備投資や住民の反対で立候補断念や撤退が相次ぎ、最終候補2都市から開催地を選んだのは、2006年冬季大会を決めた1999年総会でトリノ(イタリア)がシオン(スイス)を破って以来です。
 実は北京は寒いのですが雪が降らないので、人工降雪機を使うことになるでしょうね。日本のスキー場ではもはやお馴染みです。メーカーは東洋製作所などが有名です。

■ 2020年東京五輪のウソが次々露呈
 2020年東京五輪は、メインスタジアムの巨額な建設費が問題となり、建設構想が見直しとなりました。奇抜なトラス構造が建築費を高騰させたため、デザインそのものを見直すことになり、巨額のデザイン費はドブに捨てるようです。事のキッカケはTBSの「ひるおび」で批判されたことではないでしょうか。これまでの五輪会場のスタジアムが5個はできるという巨額な金を税金で払うほどの余裕があるのか?というわけですが、121『事件』(2015年7月4日)の借金時計でわかるように、ニッポンは1070兆円の借金を時々刻々と増やし続けている国ですから、まあなんちゅうことは無いのかもしれません。実は「お金のかからない五輪」をアピールして東京招致を実現したのに、公約の「コンパクト五輪」は不可能になり、各会場も軒並み当初見積りより大幅アップの建設費になると言われています。どうして少子高齢化で先細りの日本にそんな余裕があるのでしょうか?安倍総理の招致演説のウソが次々明るみに出ています。「TPP絶対反対、ブレナイ、嘘つかない自民党」で総選挙に勝利した途端、TPP推進に転換したように、日本では政治家の公約は破るためにあるというのが民主党も含めて既成事実となっています。政治家のウソが堂々とまかり通る国、それを許容する国民、こんな国の在り方で良いのでしょうか?
(2015年8月2日)


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