126  どまんなか

恒例8月第1土日の少年野球
合宿を武蔵嵐山渓谷で実施

 西瓜割りは上図の逆さまに置くのがコツ
 槻川のバーベキュー場は昨年に比べ大整備されたのに3年前よりお客様が少ない。驚いたのは中国人グループ、日本社会の中に定着化していること実感
2015年

2012年
■ 武蔵嵐山渓谷
 武蔵嵐山渓谷は外秩父山地の堂平山(天文観測所があります)に端を発した槻川が、小川町を経て嵐山町の遠山地区に流れ込み、標高179mの大平山にぶつかって右折南行し、岩場によって流路を狭められ、標高165mの正山にぶつかって、流路が大きく180度転じて、巾着状の独特な地形を形成して、嵐山渓谷と呼ばれます。やがて都幾川と合流する二瀬の手前までがみごとな渓流となっています。
 昭和3年(1928)秋、日本で初めての林学博士・本多静六博士が当地を訪れ、渓谷の最下流部にある槻川橋より渓谷と周辺の紅葉や赤松林の美しい景観を眺め、京都の嵐山の風景によく似ているとのことで、“武蔵国の嵐山(むさしのくにのあらしやま)”と命名されたそうです。それが大変評判になり、関東各地から多数の観光客が訪れるようになりました。何より都心から近いのが魅力です。東武東上線の菅谷駅も昭和10年(1935)には「武蔵嵐山(むさしらんざん)駅」に改名され、駅から観光客の長い列ができたほどです。そんな中、昭和14年(1939)6月に与謝野晶子が娘の藤子さんと共に訪れ、渓谷の自然などをテーマに「比企の渓」29首を歌いあげました。与謝野晶子歌碑に向かう途中の散策路は遊歩道が整備されている良い散歩道です。

■ バーベキュー場にも中国人
 槻川の嵐山渓谷バーベキュー場は、関東のバーバキュースポット5年連続人気第1位です。入場料は不要でバーベキューセット持ち込み可、直火も可で洗い場もあります。泳げるので小さい子も遊ばせられます。但し車の駐車料金は普通車1000円、大型バス4500円なので、団体様で利用すれば格安です。嵐山町の、多分シルバーの方たちが張り切って働いています。炉やバーベキューセットはレンタルがあり、、燃料なども購入できます。若者がこんなに多い場所はなかなかありません。それにしても中国人がたくさん来て、子供連れですから、少子高齢化の日本で中国人は子供を産んで、着々と日本社会に定着していることがわかります。先日中野で中華料理屋さんに入ったら、店員は中国人ですが、フラリと入ってきた中国人がメニューを見て日本語で注文しています。お客さんも店員も中国人なのに会話は日本語です。我が家の近くのアパートに住んでいる中国人家族は、夫婦は中国語で会話していますが、小学生の子供との会話は日本語です。つまり子供は日本人化しているわけですよ。近所のお祭りにも子供がゆかたを着て、母子で出掛けます。日本人社会に融け込もうとしているわけです。中国人の子供が成長したら、日本社会の中に欠かせない存在になって行くだろうと実感します。東日本大震災直後、中国人が大量帰国して、たちまち困ったのは飲食業界でした。

■ 同年齢の少年野球指導者ご逝去
 武蔵嵐山での少年野球合宿を土日で実施しましたが、その初日に訃報が入ってきました。少年野球の連盟役員の方が逝去されたというのですが、この方は筆者と同じ団塊の世代最終年次です。少年野球チームの監督もされ、その後は連盟役員を務めておられました。北海道赤平で小学校長の7男1女の末っ子として生まれ、東京の大学を出て、現在のふじみ野市鶴ヶ丘小学校に奉職され、三角小学校、東原小学校、やがて狭山市や川越市など近隣の小学校の教頭などを勤められ、定年退職後も頼まれて教員の指導などをされていました。昨年8月に体調を崩されて、手術して一旦回復されたように見えたのですが、またこの5月から入院されて帰らぬひととなってしまいました。5月のゴールデンウィークに息子さんがお父さんと富山旅行した写真がありました。恐らくはオヤジと最後の旅になるだろうと北陸新幹線で連れ出したのでしょう。涙無くして見られませんでした。
 故人が少年野球チームの監督時代、2001年の我がチームとの練習試合で、3塁ランナーが本塁突入したのをブロックした我がチームの捕手が怪我したとき、わざわざその選手の自宅である蕎麦屋さんにお詫びに来られました。試合中の怪我は、お互いに必死にプレーした結果であり致し方無い面があります。故人の誠意ある対応にかえって恐縮したものです。息子さん二人も自分の少年野球チームで育て、やがて埼玉県高校野球の強豪チームに入れました。今は社会人ですが、我が息子よりも若いが、立派に成人した息子さん達、これから人生を楽しまなければならないときに、さぞ無念だったろうと思います。
 達筆で、少年野球大会のときには賞状を墨書して頂きました。大変温厚なお人柄でした。少年野球の指導者では、過去筆者と同年代の方々が次々とガンや心筋梗塞で亡くなられています。自分と同じ世代の人が亡くなるたび考えさせられます。お通夜に行けば少年野球関係者が大勢居るでしょう。あえて月曜日の朝、告別式に行きました。最期の別れを告げたかったからです。若い男たちがたくさん参列していました。現役バリバリの仕事を持つ人たちが、休んで来てくれたのです。こんなにも大勢の教え子に見送られて、幸せな人生だったなぁと言ってあげたいですが、でも残念でしょう、無念でしょう、もっともっと、やりたいことがたくさんあったはずです。改めて、自分も残る人生を充実して生きなければ、と思いました。

■ 非正規1979万人、中年フリーター増加中273万人
 日本の非正規雇用労働者の数は、1990年代前半のバブル崩壊後の「失われた20年」の間に右肩上がりに増加し、その数は2015年1〜3月期平均で1979万人、労働者全体の37.7%に達しているとのことです。今はアベノミクスで採用環境が改善していることから、34歳までのいわゆる「若年フリーター」は2003年をピークに減少しています。しかし「就職氷河期」に直撃された世代を含む35歳以上の「中年フリーター」については増加に歯止めがかかっていないそうです。「中年フリーター」は1990年代は130万人台で安定していたそうですが、バブル崩壊から約10年が経過した2000年代に入ってから目立って増え始め、2015年には273万人に達しているそうです。
 「新卒一括採用」が今なお企業の主体である日本では、就職時に派遣社員などの形で非正規社員として採用されると、中途で正社員に転換することはなかなか難しく、これが、非正規労働を継続させる理由となって、就職氷河期のフリーター層が「中年」の年代にさしかかっているのだと思われます。年金・保険などセーフティーネットの強化や正社員への転換を後押しする制度作りなどに社会全体で取り組む姿勢が求められます。
 これまでは若者の貧困が問題視されていましたが、今問題なのはもう若者じゃなく、中年になっていて、それがどんどん初老になり、高齢者になっていくであろうと言われています。安倍政権の政策は、派遣労働を一層許容していく方向です。年金制度が崩壊するのでは?と言われているときに、将来を担う若者の雇用をますます流動化させることは、滝壺めがけてまっしぐら政策と言えるでしょう。

■ 安倍内閣に暗雲
 磯崎首相補佐官という安倍総理を支える人が「法的安定性は関係ない。我が国を守るために必要かどうかが基準だ」と発言して問題になりました。それだけなら言い方を間違ったと弁解できるかもしれないのに、地元大分の講演で「法的安定性で国を守れますか? そんなもので守れるわけないんですよ」と言ったものですから炎上したわけです。これは確信犯だなと思っていたら、国会で簡単に発言撤回して謝ってしまいました。なんという軽さ!こんな政治家で国が守れるのでしょうか?先立って中谷防衛相が、「現在の憲法をいかにこの法案に適応させていけばいいのか検討した」などと国会でしゃべってしまったわけです。安倍総理を支える親衛隊の勉強会「文化芸術懇話会」の一員である当選2回組の方たち、「マスコミを懲らしめるには、広告料収入がなくなるのが一番いい」という大西英男議員(68)や、「SEALDsという学生集団が自由と民主主義のために行動すると言って、国会前でマイクを持ち演説をしてるが、彼ら彼女らの主張は「だって戦争に行きたくないじゃん」という自分中心、極端な利己的考えに基づく。利己的個人主義がここまで蔓延したのは戦後教育のせいだろうと思うが、非常に残念だ」とツイッターした武藤貴也議員(36)、いったい歴史をどう考えているのでしょうか?
 米国NSAが日本政府ほか日銀や各種の機関を盗聴していたという問題、麻生財務大臣が「それは有り得るだろう」と発言しました。安倍総理が「ウィキリークスは民間機関だからそのまま信じられないが、事実ならば遺憾なので米国政府に確認する」と発言したのは情けないとしか言いようがありません。この機関はドイツのメルケル首相の携帯やフランスのオランド大統領も盗聴していたくらいですから、当然日本も盗聴されているでしょう。ウィキリークスがどうこう以前に、メルケル首相やオランド大統領が激怒してオバマ大統領に抗議して、盗聴しないことを約束させた時、恐らく日本の諜報機関も調査して米国に確認していたはずです。今頃になって「米国政府に確認する」というのはポーズです。それとも麻生財務大臣がおっしゃるように「それは有り得るだろう」と思ったけれど「まあ、いいじゃん、同盟国ナンダシ」ということで追及していなかったのだとしたら、何をかいわんや、言葉を失います。
 安倍内閣の人気は、経済政策、アベノミクスにあることは間違い有りません。国民は安保より、憲法9条より、まず生活が楽になること、豊かであることが第一です。だからアベノミクスを支持しているわけです。筆者もアベノミクスは経済格差を拡大させることを承知の上で、しかし「失われた20年」の自虐的な状況より良いと思っています。アベノミクスの正念場は「第三の矢」すなわち成長戦略です。ところがここにきてTPPがなかなか妥結しない、という状況になっています。中国経済の状況が怪しくなって、日本への影響が懸念されています。暗雲がたちこめて来ました。、

■ どまんなか
 高校野球では連日熱戦が続いていますが、埼玉県北部の高校野球部を舞台にした小説「どまんなか」(講談社)が人気です。著者は元「ベースボールマガジン」記者で埼玉県在住の作家・須藤靖貴さんです。須藤さんが埼玉県立松山高校(東松山市)野球部を取材して書き上げた作品で、埼玉県を中心に、とくに東武東上線沿線で売れているそうです。
 埼玉県北部の架空の公立高校・大代台高野球部の青居礼文(あおい・れぶん)、通称レブンは、とびきり速いまっすぐだけで勝負するピッチャーです。バント禁止、けん制球禁止、投げる球はど真ん中へなど、高校野球のセオリーに反した独特の野球理論を持つ新監督「ごきげん」の就任で、万年県大会1回戦負けのチームが成長していく姿を描いています。熱い仲間たちとともに、弱小野球部の歴史を変えるべく埼玉県大会に挑みます。大代台・・・読み方によってはダイダイダイ、音感が良い、とレブンは気に入っています。
 緻密なコントロール、打者の裏をかく配球、そんなものは要らない、大事なのは球威、球威のある球をどまんなかへ!投げ込み、走りこみは要らない、猛特訓よりミーティング重視で、猛ミーティングで選手の自主性を引き出そうというゴキゲン監督、部長は女教師のフキゲンです。野球を通じて心身ともに成長する少年たちを描いた、傑作青春小説です。ただレブンはアトピーで乾燥肌で、投球中に指がひび割れて投げれなくなる不安を抱えています。

どまんなか−第1作

■ アーリーワーク
 そんな監督のもと、選手たちは自主的に早朝練習・・・アーリーワークをするようになります。その後に、部員の当番制で朝ご飯をつくって、練習後部室で一緒に食べるくだりもあり、ご飯、味噌汁、生卵といったシンプルな朝食が、いかにもおいしそうに描かれています。試合はダイジェストのようにあっさり流し、代わりに練習や通学、食事といった野球部の日常をメインに描いています。スポーツする人にとって一番大事なのは体づくり、その基本は食事です。朝練で汗を流した後のすがすがしさ、その後で食べるご飯と味噌汁のうまさ、そんな場面も含めて、「こんな高校生活っていいなあ」という感想を寄せるお母さんたちもいるそうです。 「サワヤカ」とも「熱い」とも違う、「野球部」の空気が味わえます。「劇的な試合展開」は少々飽きた、という方におすすめ、という話もあります。3部作です。

■ 野球人も推薦
 桑田真澄さんが推薦しています・・・「野球を愛し、楽しむ心。いちばん大切なことが、この小説には書かれています」
 松井秀喜さんも推薦しています・・・「この本を手にした皆さんがご承知のように、これは高校野球を題材にした青春小説です。僕は2014年6月で40歳になりましたが、高校野球と聞くと今でも、じんと、胸が熱くなります。打って守って走って。そして仲間たちと汗を流し、笑って、泣いて・・・。あれだけ無我夢中になれる時間は、一生の中でもないでしょう。生活がかかっているプロの世界とはまた違った、純粋さが高校野球にはあると思うのです。 この『どまんなか』には、僕が感じたような高校野球の素晴らしさが凝縮されています。ちょっと前まで練習試合ですら勝ったことのない公立高校が、たった2、3年のうちに甲子園を目指せるようになるというのは、ほとんど有り得ないでしょう。まして、舞台は全国でも有数の激戦区である埼玉県。現実味があるかないかと問われれば、ないのかな、と答えるほかありません。でも、この作品にはリアリティよりも、もっと大事なことが描かれているように思います。それは『野球を愛する心』。これこそが、著者の須藤靖貴さんがもっとも訴えたかったことなのではないか、と感じました」

■ 埼玉県立松山高校の快進撃を作者も応援
 松山高等学校応援團OB会も推薦しています→クリック
 著者の須藤靖貴さんは中学の時に川越に移り住み、進学校の城北埼玉高校(ふじみ野市)から駒澤大学文学部という経歴で、松山高校出身ではありません。しかし須藤さんは今年も熊谷公園野球場に松山高校の野球の応援に駆け付けました。第97回全国高等学校野球選手権大会埼玉県大会の1回戦で狭山清陵高校を下した豊岡高校との2回戦が初戦です。2015年7月14日(火)、試合は6-3で勝ちました。須藤靖貴さんに野球の魅力を訊ねると、「強いものが勝つとは限らないこと」だそうです。学生時代やっていたアメフトは、体力差が絶対的でした。しかし野球は違う、道具をうまく使いこなしたり、選手たちのチームワークで勝てることもあるのが魅力、と語ります。

■ 埼玉県は私学4強が闊歩
 松山高校は第97回全国高等学校野球選手権大会埼玉県大会でBEST4まで進みました。最近の埼玉県は私学の強豪校の天下です。中でも浦和学院、春日部共栄、花咲徳栄(ハナサキトクハル)、聖望学園が4強で、川越東が台頭して来たというところです。川越東は名前からすると公立のような感じですが、女子ソフトボールでたびたび日本一に輝く星野女子高校の兄弟校、星野学園グループです。ちなみに花咲徳栄は、陸上競技ほかスポーツで有名な埼玉栄高校と兄弟校、佐藤栄学園グループです。埼玉大会の準決勝は7回戦にあたります。ここまで勝ち進んでやっとBEST4ですから、埼玉県で勝ち上がることの難しさが分かるでしょう?相手は強豪花咲徳栄です。昨夏、開幕試合で、筆者の少年野球チームの出身者が複数居る山村国際に敗れました。山村国際は、山村学園グループです。まさかの大番狂わせでした。強豪といえども油断できないのが高校野球なのです。花咲徳栄は、昨夏の屈辱を胸に、守備と打撃を鍛えて勝ち上がってきました。

■ 「事件」続きの2015年埼玉大会
 埼玉県営大宮公園野球場一塁側スタンドの松山高校の大応援団は、現役・OBが一帯となった「どまんなか」応援団です。一方の花咲徳栄応援団も21世紀以降甲子園に何度も出るようになって洗練され、ウラガクほどでは有りませんが、チアガールも華やかです。ただこの日は応援団の数は明らかに松山が勝っていました。花咲徳栄は、準々決勝の西武文理高校との対戦でも、コールドで圧勝しました。筆者は県営大宮球場のスタンドで観戦していました。西武文理の5番打者は、まだ2年生ながら筆者の少年野球チームの出身者なので応援に行ったわけです。その前の試合は浦和学院が、県立熊谷高校に圧勝しました。県立高校がBEST8まで来るだけでも「事件」なので、県立熊谷高校の応援席はOBで溢れかえっていました。みなさん、仕事を休んで応援に来たわけです。滅多に無いことなので、仕事だって休みますよ。結果は大敗でしたが、県立熊谷高校の応援団は、選手たちに惜しみない応援を送っていました。ちなみに松山高校は準々決勝で聖望学園を破りました。これも「事件」でした。もうひとつの準々決勝は県立白岡高校が埼玉栄高校と逆転また逆転の大激戦の末勝ちました。これも「大」とは言いませんが、「事件」でした。埼玉栄高校は、以前は強かったのですが、最近は低迷していました。ところが今年から、東北(宮城)と九州国際大付(福岡)で指揮をとり、通算11回の甲子園出場に導いた若生正広監督が復帰したことで、前評判を吹き飛ばし、昨年準優勝の市立川越などを撃破して勝ち上がりました。県立白岡高校は昨年秋も今年春も1回戦負け、そんなチームがいきなり7連勝して埼玉大会の決勝まで進んだのですから、これは「事件」どころか、「大大大事件」でした。
 話を準決勝に戻します。目の前で優勝候補の浦学が県立白岡高校に敗れ、花咲徳栄の選手には動揺もあったようです。同じ公立の松山に“追い風”が吹いていると感じたからでしょう。1回1死1、2塁、打席に立った花咲徳栄の4番、大阪出身・大瀧愛斗選手(3年)は「球場の雰囲気にのまれないように」とバットを構えたそうです。平常心で外寄りの直球を捉え、鋭い打球が右前に飛びました。今大会、2本塁打を放っている4番が、引っ張らず期待に応える先制打、うまく右におっつけた、これで攻撃にリズムが生まれました。4番がチームのために、何をしなければいけないか、この場面でシッカリ他の選手たちに見せ付けたことで、「ヨシ、オレも」と思ったことでしょう。松山打線は花咲徳栄の投手陣を打ち崩せず、試合は6回12-2のコールドで幕を閉じました。

■ 完全アウェイを跳ね飛ばし、埼玉県代表は花咲徳栄高校
 結局埼玉県代表は花咲徳栄となりましたが、県立白岡高校と花咲徳栄の決勝戦は、県営大宮公園野球場全体が県立白岡高校応援団みたいな感じ、「大大大大事件」を見たいという高校野球ファン、ガイジンが多い花咲徳栄が敗れるのを見たいという意地悪なヒト、いろいろなファンが集まったものの、花咲徳栄にとっては完全アウェイと感じたでしょう。しかしそれを跳ね返せたのは、昨夏、開幕試合での大番狂わせの翌日から、その反省に基いて必死になって鍛えた守備と攻撃力でした。県立白岡高校も必死の頑張りで、手に汗握る闘いでしたが、最後に残ったのは屈辱から這い上がった花咲徳栄でした。今年の甲子園では前評判は低いですが、この完全アウェイ状態を跳ね飛ばした精神力は、甲子園でもきっと花開くだろうと確信しています。
 今年の埼玉大会は公立高校が大活躍しました。これは「どまんなか」効果ではないかと思います。公立高校の選手たちが頑張って、特待制度で有力選手を集める私学強豪校に勝つ、判官びいきの大好きな日本人は、弁慶に対する牛若丸を応援したいわけですよ。しかし筆者のような野球好きは、それだけでは甲子園では勝てないことを知っています。絶対的な強さを持っているように見えた浦和学院が敗れましたが、この学校はそういう面を持ち合わせています。「負けるはずがない」と思われることはプレッシャなのです。むしろ屈辱を知る花咲徳栄の精神力に期待したいところです。

■ 夏の甲子園開幕
 8月6日から第97回全国高等学校野球選手権大会が開幕しました。全体としては前年3917校から10校減の3907校が参加、地方大会出場校数は毎年神奈川県が最多でしたが、今年は愛知県が最多で189、最少は鳥取の25です。2番は神奈川で186、以下大阪180、千葉170、兵庫162、埼玉157、東東京137、福岡136、西東京130、10番目が南北海道119、静岡112、北北海道102、茨城101、ここまでが三桁です。
 予選ではセンバツ準優勝校である東海大四、ベスト4である浦和学院と大阪桐蔭が敗れるという波乱がありました。センバツベスト8の中の5校が予選敗退(大阪桐蔭・常総学院・浦和学院・県立岐阜商・東海大四)ということで、改めて夏の甲子園への切符を勝ち取ることの厳しさを感じました。
 激戦区の大阪を勝ち抜いた大阪偕星学園に注目しています。新しいデザインのユニホームを学校からプレゼントされることになった山本皙監督(47)のインタビュー記事を見ました。これまでの“窮状”を赤裸々に語っていました。同校野球部のユニフォームはK1文字のマークが入ったシンプルなもの。練習用のユニフォームは上下500円、試合用でもストライプ柄にKのマークが入ったもので上下1万円。スパイクはナント!980円だそうです。就任当初、このデザインにしたのも「お金がかからないんですよ。倉敷高のときも同じデザインだったんですが、Kのマークはマジックで書いていたんです」と言っていました。山本監督の理念・・・「スポーツってね、国籍、肌の色、お金持ち、貧乏とか関係ないんですよ。野球がうまい奴が勝つ。貧乏でもお金持ちに勝てるんです。野球をしてるときくらいは、子供たちにそういう夢を見させてあげたい」。さらに「前任の高校で突然、部員が来なくなった。何でかと聞いたら部費が払えないから。僕がその子の家に行くと、母子家庭でお母さんが真っ黒に手を汚したまま出てきた。ガソリンスタンドで働いてたそうです。なのにプッチンプリンを出してくれて…。もう涙が出ましたよ。それでお金はいらないから、野球をやろうと言ったんです」と懐かしそうに当時を回想してました。だからこそ「この学校でもお金がない子たちにすべてを合わせる。遠征費も1日3食ついて2500円のところに泊まってきた」と家庭環境に配慮したチーム作りをしてきた指揮官。「お金がないから野球ができない、勝てないというのはおかしい。そういう姿を甲子園でも見せられたら」と手作りの“リアル・ルーキーズ”に自信をのぞかせています。高校野球の常識を覆す集団が勝ち続けたら、恵まれない球児の希望になるでしょう。

■ 夏の甲子園優勝予想
 大会主催の朝日新聞の記者達が事前予想した結果が載っていました。それによると有力5校は、
@東海大相模…二枚看板:左投げの小笠原慎之介と右の吉田凌が、ともに最速150キロ超。こんなチームは過去の甲子園を振り返っても記憶にありません。昨年も優勝候補の一角に挙げられながら、初戦敗退でした。捕手の長倉や遊撃手の杉崎ら、そのときの選手が7人残り、今夏にかける思いは強いはずです。渡辺監督が率いる横浜高校との決勝戦ではドラ1候補のエース小笠原慎之介が7安打4奪三振で完封。右腕の吉田凌は縦スラを武器とする技巧派タイプ、左腕の小笠原慎之介は速球派タイプ。二人をどのようにして使い分けるのかという門馬監督の采配が重要なカギとなりそうです。初戦の聖光学院は戦後最長の9年連続出場で、出場校の中で唯一無失策という堅実なチームです。東海大相模にとっては嫌な相手と初戦で当たる結果となりました
A敦賀気比…史上8校目の春夏連覇がかかります。昨夏BEST4、今春優勝、その立役者はもちろんエース平沼翔太。少年野球の頃、巨人〜阪神の故小林繁投手が見て、「この子は必ずプロ野球の投手になる」と言ったという逸材です。最速144キロのストレートと多彩な変化球を武器とする本格派右腕で、打者としても高校通算15本塁打の強打者です。決勝では序盤に3点リードされたものの、中盤に追いつき、最終回に主将のタイムリーでサヨナラ勝ちするという劇的な展開で甲子園出場を決めました。センバツで2打席連続満塁弾を放った松本哲幣もスタメンに名を連ねており、マークが厳しくなることが予想される中で結果を残すことができるのかという点に注目です。初戦の相手である明徳義塾は全国選手権の初戦で負けたことのないチーム、ここを突破できるかが鍵です。選抜後も慢心はまったくなく、エース平沼は絶好調ではないけれど、打者の狙いを外して打ちとる投球術は高校生離れしています。福井大会でやや低調だった打線がどれだけ援護できるかがカギになりそうです
B静岡…選抜の準々決勝で敦賀気比に3-4惜敗しましたが、1番を打つ鈴木将に内山、堀内、安本の大型選手が揃う打線は今大会の中でもトップクラスの破壊力です。強肩強打のキャッチャー堀内謙伍、走攻守三拍子揃った安本竜二らがチームを牽引します。プロも注目する2年生エースの村木は最速146キロにフォークボールと成長し、好投すれば悲願のVも見えてきます。春から破壊力が格段に増したようです。3年生の左腕村松とともに投手陣が踏ん張れれば、公立勢として2007年の佐賀北以来の頂点も見えてきます。まずは強打の東海大甲府との「富士山決戦」がカギになります
C智弁和歌山…甲子園歴代最多、63勝の高嶋監督が、投打に高いレベルのチームに仕上げてきました。エース左腕の斎藤祐太は32回を投げて3失点、被安打14で与四死球もわずか6と、抜群の安定感を誇ります。2番手以降が気になるところです。看板の強力打線は打率3割2分9厘と智弁にしては爆発力に欠けましたが、山本、西山、春野ら素材は素晴らしい。高嶋監督が「甲子園までに打線の状態を上げる」と宣言しているだけに、期待感があります。7月3日に行われた大阪桐蔭との練習試合では、5番の春野が3ランを放ち6-5で勝ちました
D作新学院…栃木から5年連続出場は史上初だそうです。1番の赤木や中軸を打つ添田、朝山の振りは鋭く、足を絡めた得点力も高い。投手陣は4投手の継投で乗り切ってきましたが、柱がいないのがやや不安と言われています
 5強を追う第二群10校
E仙台育英…秋の神宮の覇者。センバツでは優勝した敦賀気比に接戦の末に敗れたものの、チームの完成度の高さは間違いなくトップクラスでした。春はエースの佐藤世那に頼りっきりであった投手陣でしたが、2番手の百目木優貴(どめきゆうき)が成長し、二枚看板ができたことは大きなアドバンテージとなるでしょう。4番郡司、5番佐々木良は絶好調ですが、広い守備範囲と強肩を持ち「高校1ショート」との呼び声高い3番平沢大河の予選での不振がやや気になるところではありますが、本来は広角に打ち分ける巧打者です。打線は1番佐藤将が打率4割超、2番青木は6割近い。3番の平沢が1割台と調子が上がっていませんが、郡司、佐々木良と中軸も好打者がそろっています。佐藤世がエースとしてチームを引っ張れるか?宮城大会では、調整不足から準決勝では1死も取れずに3失点で降板しましたが、決勝では気持ちが吹っ切れたようで8回無失点。甲子園で完全復活すれば十分に上位を狙えます
F中京大中京…投打に安定感があります。エース右腕上野は最速143キロで変化球の精度が高く、愛知大会決勝は2回途中から救援して9回までゼロを並べました。上位打線は振りが鋭く、4番で捕手の伊藤は高校通算44本塁打。決勝で右中間席に運んだパワーは魅力です
G健大高崎…看板の機動力は群馬大会で20盗塁。35盗塁の昨夏のチームに比べれば少ないように見えますが、機動力は健大です(シャレ)。また勝負強い5番の主将柘植を中心に、攻撃のバリエーションは増えており、巧みな投球ができるエース左腕の川井も存在感があります
H花巻東…146キロ左腕の高橋は好投手で、菊池雄星2世と呼ばれます。救援に、先発にと大黒柱の働きで、チームも粘り強さがあって接戦に強い
I広島新庄…左腕の堀が注目。田口(現巨人)ら好左腕が育っているチームで、堀も140キロの直球に多彩な変化球を持っていて、レベルは高い
J遊学館…個々の能力が高い。石川大会で打率1割台の5番広橋ら中軸の奮起がカギ
K関東一…1番で俊足強打のオコエがムードメーカーになれば勢いづく
L東海大甲府…打線が良い。中軸だけでなく9番飯塚も本塁打を放っていてどこからでも点が取れる強打のチーム、1回戦で優勝候補静岡との「富士山決戦」となります。お互い投手も良いだけに、打撃戦となるか投手戦となるか注目されます
M明徳義塾…伝統の勝負強さは見逃せません。甲子園で初戦敗退したことが無いというスゴイチーム。高知大会決勝は9回2死から逆転しました。昨年の岸のようなエースはいませんが、今年は継投で勝機を見いだすようです。初戦の相手が優勝候補の敦賀気比、甲子園常連校の名監督がどう選手を操って対抗するか、注目の一戦です
N大阪偕星…上にも書きましたが、昨夏の全国王者で4年連続出場を目指した大阪桐蔭の田中投手を打ち破っての初出場。勢いがある“リアル・ルーキーズ”に期待しましょう
第三群
○早稲田実…1年生の3番清宮幸太郎が注目されています。ラガーマンの父を持つ1年生で、米国で開催されたリトルの大会で世界一となり、「和製ベーブルース」とアメリカでも注目されました。地方大会準々決勝で5打数4安打、準決勝では2安打。5戦連続安打で16打数9安打、チャンスに強いところが人気の理由です。チームとしては、投手力や守備力がやや劣るので、打力でカバーしていくことが上位進出のカギとなります
○九州学院…1年生の村上が4番です。選抜で出場全4校が1回戦で負けた九州、沖縄勢ですが、夏は九州学院の打力が一番光っています
○聖光学院…戦後最長の9年連続出場。福島大会6試合で無失策はさすが。捕手佐藤のリードもよくバッテリーは安定しています。初戦の相手が優勝候補東海大相模、これまた見逃せない一戦となりそうです
○鳴門…4年連続出場。昨夏の甲子園を経験した左の河野、右の尾崎、両投手が軸。特に河野の内角をどんどん突く投球は見ものです
○天理…27回目出場。1番船曳、3番貞光、4番坂口の好打者が力を発揮すれば上位を狙えそう
○北海…全国最多の36回目の出場。まとまったいいチームです。エース渡辺幹と今夏急成長した山本の二枚看板が持ち味
○霞ヶ浦…初出場、技巧派左腕安高、本格派右腕綾部の二人が安定しています。少ない好機で挙げた得点を守り抜くパターンです
○興南…春夏連覇を果たした第92回大会以来の甲子園です。エース比屋根は変則左腕で左打者は戸惑うかもしれません。どこまで打力が向上しているかがカギです
○龍谷…春の九州大会を制した龍谷は、佐賀大会の準決勝、決勝をいずれも延長逆転勝ちするなど粘り強い
○九州国際大付…3番岩崎、4番山本を軸とした打力に期待
○滝川二…1〜7番にずらり左打者が並ぶ。4人いる右投手の継投時期が勝敗を左右しそう
○花咲徳栄…鎌倉、高橋の継投が勝ちパターン。守備も埼玉大会7試合で4失策とよく鍛えられています
ここまで27チームです。
旋風期待>のチームは
○鳥羽…100年前の第1回大会を制した京都二中の流れをくむ。15年ぶりに出てきました。チーム打率4割2分9厘で本塁打はゼロ。つなぐ野球が身上で、右腕・松尾は制球力と緩急で勝負します
○秋田商…京都二中と第1回の決勝を戦ったのが秋田中(現秋田高校)でした。秋田商は同じ秋田の伝統校です。成田翔はOBの石川(現ヤクルト)をほうふつとさせる好左腕
○三沢商…好投手・右横投げの野田はシンカーを駆使して、八戸学院光星を4安打に抑えました
○鶴岡東…打のチーム。安食、丸山らが力強い打撃をします
○中越…昨秋、今春と北信越大会4強入り。波方を軸に打線が切れ目なし
○今治西…春夏連続出場。杉内ら右腕4枚を擁し、伝統校らしい堅実な試合運びをします
○明豊…前田は注目の好左腕で、制球力が抜群です。バックも堅守で支えます
○宮崎日大…18年ぶり出場。杉尾−薗田のバッテリーを軸に選手の能力が高い
○鹿児島実…右腕・橋本がほぼ1人で投げ抜いて勝ち上がりました。打線は左6人が並びます
○白樺学園…投手力があり、河村、中野と大型右腕2人を擁しています
○専大松戸…エースで4番の原が大黒柱です。千葉大会決勝で勝ち越しの満塁ランニング本塁打を放ちました。激戦区千葉大会を勝ち上がったものの、初出場で、魔物の甲子園を勝ち上がれるか?初戦の相手は近年夏の甲子園BEST4に2回進出している花巻東、これがカギとなりそう
ここまで38チーム
その他
○比叡山…16年ぶり出場。2季連続で甲子園に出場した近江に決勝で零封勝ちしました
○下関商…古豪。タイプの違う3投手の継投で勝ち上がってきました
○上田西…2年ぶりの出場。勝負強さがあります。長野大会準決勝で松商学園、決勝で佐久長聖を1点差で連破しました
○石見智翠館…どの選手も豪快にバットを振ります。長打力はあるそうです
○鳥取城北…打力が良いチーム。決勝では鳥取西相手に15安打を集めました
○寒川…香川大会の決勝で丸亀城西から20点という記録的得点を挙げました
○高岡商…犠打で確実に走者を送る手堅い野球で7年ぶりの出場
○創成館…夏の甲子園は初めて。左横手投げの2投手が試合を作れるか?
○岡山学芸館…初出場。岡山大会の準決勝、決勝は9回に2点差を逆転した粘りがあります
○津商…春夏通じて初めての甲子園です。三重大会決勝は9回に5点を奪う大逆転劇で出場を決めました
○岐阜城北…1番池尾は岐阜大会で9盗塁しました。機動力を生かした攻めを甲子園でも披露したいところ
以上49チームです。
既に甲子園は開幕しています。事前予想通りになかなか行かないのが高校野球の面白いところ、今年も暑い夏、熱い夏になるでしょうか?
(2015年8月8日)


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