85  激動の時代

 今回は最近の話題を採り上げてみます。政治的な問題やスポーツ、事件、事故は別として、経済的な問題や文化的な話題についてピックアップしてみます。

■ 太陽光発電抑制の動き
 2回前に北海道、東北、四国、九州、沖縄の電力5社が、再生可能エネルギー固定価格買い取り制度(FIT)に基づく再生エネ発電電力の新規受け入れを管内全域で停止する話題に触れました。これら5社管内で計画中の太陽光発電事業をこれ以上受け入れると、送電網の能力を超えたり、管内の需要を上回るので、もう受けられないよ、という話です。経済産業省はFITの見直しを慌てて発表しました。風力発電は夜でも発電する可能性が高いですが、太陽光は昼ですら発電しないことがあり、気まぐれな発電施設ですから、せっかく発電しても電気エネルギーを捨てるしかない場合もあります。
 「つぶやき」502『太陽光発電』(2012年8月26日)で、次のように書きました。

ドイツやスペインの例を見ればわかるが、国民が悲鳴をあげ、政府が悲鳴をあげ、やがて発電事業者が悲鳴をあげ、投資回収が出来なくなって、金融パニックになることも考えられる。かなりリスクが先見えする事業でもある。

こうなることは電気技術者なら容易に想定していました。蓄電池の技術が追いついていませんし、需要地と供給地が離れ過ぎています。2014年10月12日のTBS「時事放談」で、太陽光発電などの買い取り停止問題と政府の原発再稼働推進について、武村正義氏は「法律に例外規定があるせいで電力会社がわがままを言っている、本末転倒」と指摘し、「自民党内でも原発依存度を下げるという主張が聞かれなくなった」と話していました。浜矩子氏は、「この分野でもまやかしとごまかしが見られる、原発再稼働に至る道があらかじめ作られているように思える」などと言っていました。しかし、発電というのは政治家や評論家が何やかや言ってどうなるものではありません。「電気エネルギーを捨てる」というのも大変なんです。熱にして捨てるしかないのですが、そうすると設備の寿命が短くなります。こういうことをまるで知らない人が、電力会社を悪者にしたところで、じゃあどうすれば良いか?それはあなたが考えなさい、では話が先に進みません。マスコミはどうも物事を一面的にしか見ない、技術的なことは難しくてわからない、違うんじゃないですか?

■ 地熱発電は良いのですが...
 問題は、太陽光発電が最も買取価格が高いということです。しかも設置が簡単で、すぐ発電できます。高く買い取ったツケは消費者に回すことになっています。「最近どうも電気代が高くなった」、特に家庭の主婦は実感しているでしょう。太陽光発電が増えるほどそうなるし、円安になって天然ガス価格が高くなれば火力発電のコストも上がります。もちろん、再生可能エネルギー発電でも、水力は良いですが、適地はもう少ないし、地熱発電はとても良いのですが、御嶽山の噴火で分かるように、危険と背中合わせのため、安全のための投資で設備費が膨大になるので、やりたい企業が少ないのです。太陽光発電は、蓄電池の技術開発のメドが立たなければ、増やすのはムリでしょうね。

■ 青色発光ダイオード開発の3人にノーベル賞
 2014年のノーベル物理学賞が、青色発光ダイオード(LED)を開発した名城大学の赤崎勇教授(85)と名古屋大学の天野浩教授(54)、米カリフォルニア大学サンタバーバラ校の中村修二教授(60)の3人に贈られることになりました。新世代の光源として、LEDが広く社会に普及する礎を築いたことが評価されたものです。これで日本のノーベル賞受賞者は22人となるそうですが、中村氏は米国籍だったはずです。物理学賞は2008年の南部陽一郎、小林誠、益川敏英の3氏以来6年ぶりです。授賞式は12月10日、ストックホルムで行われます。光の三原色のうち、赤と緑のLEDは、1960年代に開発されました。しかし、残る青色のLEDは、商品化に必要な明るさを得るための作製技術が長く見つかりませんでした。赤崎氏は松下電器産業(現在のパナソニック)東京研究所在籍の1970年代前半、青色LEDの研究開発をスタート。材料として化学的に安定した「窒化ガリウム」にこだわり、名古屋大教授に転身後の1985年、作製が困難とされていた透明な結晶を作ることに、当時大学院生だった天野氏と協力して成功しました。2人はこの結晶を用いて、青色LEDを1989年に世界で初めて開発しました。一方、中村氏は徳島県阿南市の「日亜化学工業」に勤めていた1988年、研究に着手。窒化ガリウムの結晶を作る独自の製法を編み出し、1993年に量産化技術を開発、さらに1997年、青色の半導体レーザーを開発し、大容量のブルーレイディスクの読み取りや記録に応用されるなど、光学分野で世界をリードする日本に大きく貢献しました。
LED照明だとフリルレタスも良く育ちます(成長期と成熟期で波長変更)

■ 西澤潤一先生が何故受賞しないのか?そのワケ
 赤崎勇教授と中村修二教授がノーベル賞候補であることは、以前にも書きました。実は日本にはノーベル賞待ちの人が他にもたくさんいます。何よりも、西澤潤一先生が何故受賞しないのか?そのワケを54『技術流出』(2014年3月16日)で書きました。まあ、今更西澤潤一先生は受賞しなくても良いのかもしれません。ノーベル賞よりはるかに上に位置すると思われるからです。勲章もそうですが、推薦人が居ないと候補には挙がりません。何故あの人が勲章貰って、この人は貰わないの?なんて良くある話で、それは皆様も良くご存知のはずです。日本社会に限らず、褒章や授賞なんてものは見事に恣意的なものなのです。赤崎勇教授と中村修二教授は180度評判が分かれる人で、温厚な赤崎先生と闘争的な中村先生という面で、日本社会では中村修二氏は異端児です。だから米国籍を取得して米国の大学教授となったわけです。米国から見れば、米国人にノーベル賞が与えられるなら、同等の日本人も仕方無いや、ということですね。ただこのお二人は、パナソニックと日亜化学という所属企業を飛び出て大学教授となったという点では共通点があります。また豊田合成と日亜化学はそれぞれ、このお二人によって会社の隆盛を得たのも間違いありません。筆者は社会人となってすぐから、日本のLED製造のための装置を作ってきました。したがってLEDについてはうんちくを語れるのですが、だからこそ西澤潤一先生の偉大さを誰よりも知っているつもりです。そしてこれは中村修二教授も同感のはずです。

■ 特許の権利帰属で世界の潮流に逆行する日本
 先日、来日した中村修二教授が怒っていましたが、日本では一時期発明の特許を個人から企業に帰属転換させる動きを見直し、個人の権利もなるべく認めようという動きだったのが、安倍政権になって、再び企業のものにする、という動きに変わったのは、世界の流れに逆行する、ということ、筆者も同感です。米国では、重要な発明をしたらベンチャー企業を作ってそこで一儲けします。そこで貯めたお金でまた新たな研究開発に投資するわけです。そういう先端の科学者、技術者は、所属企業の決裁を仰いでいたら満足な研究開発が出来ません。自分の発明で稼いで、また新たな発明をする、それこそ技術者冥利に尽きるというものです。日本では特許の権利を会社に取り上げられてしまうので、ベンチャー企業など作れません。そこで大学教授などになって、ベンチャーを立ち上げるわけです。

■ ドルと株に一服感・・・目先の調整に過ぎません
 ドル高・株高に急ブレーキがかかっています。これまでのドル堅調地合いは、他の地域の状況に比べて良好に見える米国に人気が集まるという、美人投票的なものでした。ところが小売売上高などの経済指標が軒並み市場予想を下回ったことで円が買われドル下落となりました。
 もともとドルの好感度は、米10年国債利回りが低位安定していた中でも上がってきていたので、金利が大幅に低下したから売られたというのは後付けの理由です。海外短期筋が前のめり気味で構築したドルロングポジションを調整しようとしていた矢先の弱い経済指標が出て、すわ調整となっただけで、鉱工業生産や新規失業保険申請件数は良好で、ドルは売られる場面ではありません。
 フランスの経済学者でパリ・スクール・オブ・エコノミクスの教授、トマ・ピケティ氏の新刊書『21世紀の資本論』(Capital in the Twenty-First Century)にそのうち触れますが、米国はお金を操作して儲ける事に長けた国になってきていますから、わざと相場を作っているのです。変動が利益を生むのです。そこで富める者と貧者の格差が生まれます。

さといもが美味しい季節になりました 茎も食べますよ 昔は干して冬の保存食でした
茎は「ずいき」と言い、煮物や酢の物にします→クックパッドのレシピを参照してください

■ 円高トレンドが終焉し、中国が躍進する
 米国の経済指標でよほど悪い数字が続かない限り、ドル高/円安トレンドは変わらないでしょう。欧州や日本、中国などに比べて米国が美人に見えることに変わりはないからです。筆者は10年前から2015年で107円/USドルと予測していると書いてきましたが、2014年で既にそれを達成しましたので、目先調整が入っただけで、ちょっとペースを速めて110円/USドルに向けて緩やかなドル高/円安が続くと見ています。更にその先に...
 円高トレンドが終焉し、中国が躍進する、と45『自動車と中国の躍進』(2014年1月16日)で書きました。原発停止で貿易赤字が定着し、ドンドン国富が海外へ移動して失われて行く日本、一方でグイグイ伸びる中国や、シェールガスでエネルギー革命が起き、オバマ大統領の対外縮小・内向き政策で軍事支出を減らし内需拡大で景気が上向きの米国、こうなれば円を売ってドルを買うのは投資家の必然だ、と書きました。9ヶ月前ですが、筆者の展望は、円安が進んで輸入品は上がりますから、エネルギーや食料などをほぼ海外依存している日本の物価は上がります、消費税が上がって支出が増え、徐々に日本人の資産は減って行きます、一時的に消費抑制するので輸入は減ります、しかし、エネルギーや食料は必需品ですから、これは長くは続きません、これまでの長い円高トレンドは終焉する可能性が高く、中国との国力の差は勢いよく広がって行くと考えられます、と書きました。どうですか、今、どうなってますか?更に言うなら、今後ますます中国は強大化します。今香港で起きている事象は、日本では50年前です。筆者は学生でした。その後どうなりましたか?学生運動に情熱を燃やした連中が国を引張り、日本は高度成長してGDP世界2位まで登り詰めました。そのエネルギーがあるからこそ、中国は有望なのです。
 ただし、株価や為替レートの調整については、さらに3年遡って「つぶやき」463『恐慌』(2011年11月27日)・・・実はもっと恐ろしい動きが背景にあるのですよ。想像するだに恐いことは、果たしていつ?

■ 血圧降下薬・・・ジェネリック医薬品(後発品)
 血圧降下薬アゼルニジピン錠8mg「テバ」を1錠毎朝飲んでいます。これはジェネリック医薬品(後発品)で、先発品は第一三共のカルブロック錠8mgです。後発品はたくさんあります。こちらをご覧下さい。薬価が違うのはなぜでしょう?
 この薬は心臓や体の血管を広げて血流を良くします。そうすると血液の抵抗が減り、血圧が下がります。また、心臓の収縮を抑えて、心臓を休ませる働きもします。主に高血圧症の治療に使用されています。将来起こるかもしれない脳卒中や心臓病、腎臓病を防ぐためです。そのほか、脳、腎臓、手足、目の網膜など体全体の血流を改善するので、いろいろな病気の治療に応用されることがあります。血管壁の細胞にカルシウムが流入すると、血管が収縮し血圧が上がります。この薬は、カルシウムが細胞内に入るのを抑えます。その結果、血管が広がり血圧が下がります。このような作用から「カルシウム拮抗薬」と呼ばれています。ただし、グレープフルーツジュースといっしょに飲むと、この薬の血中濃度が上昇し、副作用が出易くなるかも?と注意書きがあります。

今シュンはカブですね 株ではなく蕪です

■ 尿酸排泄促進薬:痛風用・・・ジェネリック医薬品(後発品)
 痛風なので、夕食後ナーカリシン錠50mgを1錠飲んでいます。こちらをご覧下さい。これは、尿酸排泄促進薬です。国内での処方実績が豊富で、長期服用も問題ありません。ただ、ごくまれに重い肝障害を起こすことがあるので、定期的に肝機能検査を受ける必要があるそうです。腎臓で尿酸が血液中に再び吸収されることを抑え、尿酸を尿中に排泄させて、血液中の尿酸の量を低下させます。通常、痛風、高尿酸血症の治療に使用されます。
 「風があたるだけでも痛い」といわれる痛風。痛みの犯人は関節にたまった尿酸です。はじめての痛風発作は、尿酸の結晶ができやすい足の親指に多発し、発作的に激しい関節痛を伴います。筆者は5月の連休明け、伊香保温泉から帰って来て、少年野球のGW最終日のバーベキューでしこたまビールを飲んで焼き鳥食って...その翌日出社した時から違和感が出て、激しい痛みと腫れが2〜3日続きました。足は腫れ、革靴が入らないので黒い人工皮革風スニーカーでうめきながら出勤しました。ちなみに、患者の98〜99%は男性です。痛風を放置すると、関節が変形したり、腎臓など内臓にも悪い影響が出るそうです。
 血液中の尿酸値が高いことを「高尿酸血症」と言います。基準は血中尿酸値が7mg/dLを超える場合です。痛風はそのような状態で起こりますから、発作を予防するには体内の尿酸値を下げる必要があります。そのために用いるのが尿酸降下薬です。尿酸産生過剰型には尿酸生成抑制薬(尿酸合成阻害薬)を、尿酸排泄低下型には尿酸排泄促進薬を用いるのが合理的だそうです。治療の目標は尿酸値を6mg/dL以下に維持することです。でも、とにかく水をガブガブ飲むのが一番良いみたいです。

■ 医療にもマイナンバー制度
 エストニアの医療情報システムですが、エストニアでは画像診断データを含む医療情報を国中の医療機関で共有できるようになっているそうです。医療機関だけでなく、患者本人が自分の診断データを自分の家で閲覧できるシステムが構築されています。ただ自分のレントゲン写真などは見てもさほど面白くはないので、妊婦健診の胎児のエコー画像のアクセス数が大きいとのことでした。
 日本では共通番号制度(マイナンバー制度)が施行されます。これとは別に、厚生労働省が検討している「医療等ID」がどのようなものになるのかはまだ分かりません。おそらく、将来的には患者が何らかの統一的なIDを持つことにはなりそうです。とはいえ、全国の医療機関で検査結果や画像診断データを共有する、というのは、実現するにしてもかなり先になりそうな印象です。個人情報保護法の下では、医療情報は患者本人以外が病院から持ち出すことが難しいためです。医師からデータをもらって、患者が自分で保管・活用する、という「母子手帳型」のシステムであれば導入も早いのかもしれません。ただ、広範な医療データの管理を患者に求めるのは、万人向けの医療システムとしては欠陥が多いでしょう。自分でコンピューターを使えない人は高水準の医療が受けられない、というのは望ましくない状態です。セカンドオピニオンもそうですが、患者が医師を選ぶ時代になってきて、医師間で患者の情報がマイナンバーによって受け渡されるのは必然だと考えます。
 日本の公的医療は?健康保険は大丈夫?潟宴Cフィのサイト参照
 次回はTOYOTAの話題に触れます。

トヨタのホームページより
(2014年10月19日)


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