73 野球選手権大会
ミーンミンミンと蝉がうるさい季節になりました。蝉時雨です。蝉しぐれと言えば福田こうへい、「南部蝉しぐれ」は少年野球チーム大井ウエストの主題歌です→クリック。先週触れたように、この時期には野球大会のピークもあります。第85回都市対抗野球大会決勝戦は、初めて天皇、皇后両陛下を東京ドームにお迎えしての天覧試合となり、東海地区代表の大垣市・西濃運輸が45年振りに決勝に進み、初優勝を目指した太田市・富士重工業を2対0で破り、3年振り33度目の出場で初優勝しました。V候補の東芝、3連覇を狙ったJX―ENEOSを撃破して創部55年目で悲願の日本一、大会の最優秀選手に贈られる橋戸賞には、決勝戦で見事な完封勝利を達成した西濃運輸のエース、佐伯尚治投手が選ばれました。二塁も踏ませず、散発3安打で無四球完封、見事です。31歳の右腕は、横手から両コーナーの低めを丁寧に突き、直球は130キロ台前半なのですが、計測不能のスローカーブで緩急をつけて打者を翻弄しました。シンカー、スライダー、チェンジアップも冴えて、二塁も踏ませず9奪三振、無四球でシャットアウトです。佐伯とトヨタ自動車からの補強選手・佐竹がそれぞれ2完投し、5試合で3投手だけで優勝、近年の常識をぶち破る投手起用でした。野球は8-7の逆転また逆転のルーズヴェルトゲームが面白いという話もありますが、こうした投手戦もまた野球の醍醐味です。今年はTVドラマ『ルーズヴェルトゲーム』の人気もあって、社会人野球も盛り上がり、ついに天覧試合となったわけですが、青島製作所のモデルは鷺宮製作所と言われています。かつては、よく招待券を鷺宮製作所から頂いたものです。 ■ 波乱が起きている夏の高校野球埼玉県大会、何故こんなことが? 第96回高校野球選手権大会、いわゆる夏の甲子園の地方予選が本日2014年7月31日、愛知県代表が東邦となり、49代表が揃いました。日本各地で熱戦が繰り広げられていた高校野球の地方大会、関東では埼玉の強豪校が続々と姿を消す波乱が起きました。2014年7月17日で4回戦進出校が出揃いましたが、その中に第1シードだった浦和学院と聖望学園の名前がありません。春の県大会Vと準Vが居ない、さらに近年甲子園で名を馳せた花咲徳栄も初戦敗退と予期せぬ展開となっている、と新聞やネット上で話題となっています。 浦和学院は8『選抜高校野球』(2013年4月6日)で紹介したように、昨春の選抜甲子園大会で当時2年生エースだった小島(おじま)和哉投手(鴻巣市赤見台中)を擁して優勝しましたが、夏の甲子園では1回戦で対戦した宮城・仙台育英高校相手にエースが大乱調で、10−11でサヨナラ負けを喫しました。被安打9本、与えた四死球も9個、これについては昨年の25『事故と災害」の中で詳しく解説しました。絶対負けることの無いはずの試合を何故落としたか?采配に対しても疑問を呈しました。 2014年夏の波乱に至る経緯を検証してみましょう。 ■ 2013年埼玉県秋季高校野球大会で西部地区は激戦、聖望も姿消す 小島にとって高校生活最後の1年は、エースとしてだけでなく、チームの大黒柱として引張って行かなければならない立場になりました。夏の大会で負けた時点で3年生の高校野球は終わりですが、翌日から2年生以下の時代になります。特に常勝ウラガクのエースの重圧たるや、大変なものであったでしょう。先輩が居なくなった最初の大会、2013年埼玉県秋季大会ではこのプレッシャからか、県大会3回戦で本庄一に負けました。聖望学園はさらにひどく、県大会前の地区大会代表決定戦で川越東に延長14回サヨナラ負けしました。ただ、本庄一にしても川越東にしても強豪です。高校野球に「絶対」などというものはありません。 ■ 2013年埼玉県秋季高校野球大会は花咲徳栄が優勝、市立川越が準優勝 2013年埼玉県秋季高校野球大会は、第1シード浦和学院、第2シード春日部共栄、第3シード花咲徳栄と川越東となり、結局花咲徳栄がノーシード市立川越を破って優勝し、第3位は本庄一と春日部共栄でした。ノーシードから勝ち上がった市立川越は、すでに夏の大会で2年生の上條将希が背番号10でありながらエースを押しのけるキレのある速球で活躍し、準々決勝で聖望学園に敗れましたが、埼玉県に上條将希あり、と高校球界で一躍注目される存在になっていましたので、ノーシードと言っても、結果的には順当でした。ただ2013年夏の大会準々決勝市立川越対聖望学園戦は市営大宮球場、同時刻に隣の県営大宮球場で埼玉平成対浦和学院戦の試合をやっていましたので二兎を追えず、佐々木誠太と青木一也を県営で応援していたので、上條将希は見られませんでした。秋季高校野球大会準決勝は本庄第一VS花咲徳栄、市立川越VS春日部共栄となりました。花咲徳栄は井上−高杯のバッテリー、キレのある直球とスライダーでバッタバッタと三振を奪う花咲徳栄のエース井上祐太投手(相模原市内出中)が、ヒット6本を打たれながらも、本庄一を完封しました。市立川越は上條−丹羽、春日部共栄は金子−守屋のバッテリー、準決勝前の試合まで春日部共栄の失点はわずか2、市立川越は10でした。しかし澤藤は市立川越が勝つ、と予想しました。その根拠は、夏の大会で春日部共栄は埼玉平成に敗れており、それが佐々木誠太に抑えられたためでした。今度は上條将希がやってくれる、それだけが根拠です(^-^)。予想通り、上條将希が被安打3、奪三振12の完封勝利、前評判通りのピッチングを披露しました。決勝戦では、花咲徳栄の井上祐太投手と市立川越の上條将希投手のエースの投げ合いはありませんでした。連投になる上、今後何度も激突するであろう両校は、控えにも好投手を擁しています。打力では花咲徳栄が上で、古川澄也主将(栃木県壬生中)と多田友哉選手(横浜市万騎が原中)の二人が中心です。花咲徳栄は外人部隊チームで、百人ぐらい野球部員が居て、背番号1桁に埼玉県出身選手は1人しかいません。 この後、12月オーストラリア遠征の埼玉県選抜メンバー20人に上條将希は、投手1で選ばれました。もちろん浦和学院の小島和哉投手も選ばれ、朝霞高校のエース菊島 翼投手も選ばれました。 ■ 2014年埼玉県春季高校野球大会は浦和学院が優勝、聖望学園が準優勝、市立川越と大宮東が第3位 年が明けて2014年になり、埼玉県春季高校野球大会が行われました。東西南北各地区において地区予選(結果pdf→クリック)が行われ、東部地区では春日部共栄と花咲徳栄、昌平、久喜北陽、栄北、越谷南などが順当に予選突破しました。北部地区でも松山や上尾、桶川、本庄一、秀明英光が、南部地区では浦和学院、市立川口、慶応志木、埼玉栄、川口、浦和実、大宮東、蕨が勝ち上がりました。朝霞は延長14回2-7で埼玉栄に負け、立教新座は延長10回4-5で大宮南に負けました。激戦区西部地区では1回戦で富士見が川越東と激突し5-6で惜敗、強豪所沢商は3-4で所沢に負け、所沢中央は2-7で城西大川越に破れ、埼玉平成は4-6で星野に破れ、山村国際は延長10回ふじみ野に7-10で破れました。市立川越、聖望学園、西武文理は危なげなく予選突破、他に川越東、狭山ヶ丘、川越工、ふじみ野も勝ち上がりました。 さて春季県大会の結果はコチラ(pdf→クリック)です。第1シードは秋季大会優勝の花咲徳栄ですが、ナント!1回戦で狭山ヶ丘に1-4負けました。第2シード市立川越は準決勝で浦和学院に0-1惜敗、1回裏の隅1でした。第3シード本庄一は初戦西武文理に2-5敗退、春日部共栄は準々決勝で浦和学院に3-9で負けました。結局準決勝で2-1大宮東を破った聖望学園が浦和学院と決勝で対戦、延長11回4-3で浦和学院がサヨナラ勝ち。コチラに詳しく載っています。 こうやって見てきますと、代替わり後の秋季大会で浦和学院と聖望学園は結果を残せず、春季大会でリベンジして頂点に立ちました。秋季大会第1シード浦和学院、第2シード春日部共栄、第3シード花咲徳栄と川越東でしたが、結局花咲徳栄がノーシードから勝ち上がった市立川越を破って優勝し、第3位は本庄一と春日部共栄でした。春季大会では第1シードの花咲徳栄と第3シード本庄一が初戦敗退、市立川越と春日部共栄は安定して強いことが分かります。特に市立川越は負けるときも惜敗、他のチームのように力を出せぬままに負けるということはありません。これは投手力が安定していることを示しています。 ■ 2014年第96回高校野球埼玉県大会は3回戦終了、浦学は県立川口に敗退 2013年秋→2014年春→2014年夏と高校球児たちの戦いが続きます。特に夏の大会、3年生は負けたら高校野球は終わりになります。試合に負けたチームの選手たちの脱力した姿を見るのは忍びないものです。浦和学院エース小島和哉投手には2013年夏の雪辱を晴らすためにどうしても勝ち抜きたい思いがあったでしょう。2013年秋は本庄一に延長11回1点勝ち越されて負け、2014年春は準々決勝で春日部共栄を破り、準決勝では1回裏の隅1で市立川越を破り、決勝で聖望学園と延長11回を戦いサヨナラ勝ちしました。ここぞというときに力を出して勝って来たのに、2014年夏本番、7月15日、浦和学院は公立校である県立川口高校に1−4で敗れました。「自分の良いときのピッチングを取り戻すことができなかった。悔しいです」と小島投手は涙をぬぐったそうです。県立川口だって、過去の戦績を見れば強いチームです。筆者は見ていないので新聞情報ですが、小島は先頭打者にデッドボールを与えてしまい、エースに、チームに動揺が走ったのでは?と書いてありました。経験豊富な投手であってもメカニックに狂いが生じてしまえば、取り返しのつかないことが起きるのは昨年の夏の甲子園1回戦でも見ています。昨年までのチームならば、2年生小島を3年生がカバーすることができましたが、今年は小島のウラガクですからそうは行きません。エースの動揺は守りにも伝染し、エラーにはなりませんでしたが、味方の拙守もあり、初回に2点を取られると、4回にも死球などで2点を取られました。3年連続の甲子園出場を目指した重圧というよりも、どんなエースでも好不調はあります。不調でも、だましだまし投げているうちにリズムを取り戻す、もしくは他の選手がカバーしてくれるなどで勝ち上がるものです。昨年、見た事無いほど不調の小島を投げ続けさせて勝てる試合を落とした森士監督、控え投手は3年生でも良い投手が居たのに出しませんでした。小島で負けたら仕方ない?そうかもしれませんが、昨年は2年生でした。なんでそこまでこだわるんだ?筆者は歯軋りしながらこの敗戦を見ていました。「今年は小島のチーム」と言われてきました。昨年と違い、本当に「小島で負けたら仕方ない」チームです。その大黒柱が揺らげば、打線にも次第に焦りが見えてきます。初球や早いカウントから手を出してしまい、蟻地獄状態に陥ることは、少年野球でもあります。ズルズルと負けてしまうのです。こういうときは本当に歯軋りしたいほど口惜しいものです。 ■ 山村国際が1回戦花咲徳栄を破り勢いに乗る 「開幕戦での山村国際の金星が他校にも自信を与えた」と新聞に書いて有りました。開幕戦で花咲徳栄を2−1の接戦で破った創部6年目の山村国際高校の奮闘のことです。元々は女子高だった同校ですが、野球で高校の名前を広めようと選手補強に力を入れています。昨年は1、2年生のチームで、1年生ながら小西翔武(背番号17)がレギュラーをおさえて出場し、佐々木龍斗も背番号20でベンチに入っていました。今年は2年生になった小西翔武(背番号7)がレギュラーで、佐々木龍斗は20人に入っていません。堀内汰門選手(3年生、背番号2、滑川中)はプロ注目の捕手です。ガイジンではなく地元選手ばかり、それも通学圏内、小西翔武が遠いくらいですが、いわゆる勢いのあるチームですから、昨年の埼玉平成同様2014年は勝ち続けるのでは?と見ていました。それが春季大会は延長10回ふじみ野に7-10で1回戦負け、これでアク抜きとなりました。 花咲徳栄は昨年秋に市立川越を破って優勝した時点では、2014年は間違いなくトップクラスの強豪のはずでした。しかし春は地区大会を順当に勝ったものの、県大会1回戦でナント!狭山ヶ丘に1-4で負けました。このためシードされませんでした。同じくノーシードの山村国際の相手は花咲徳栄、この組合せを見たときは、正直「運が悪いナ〜」と思いました。しかし、山村国際の選手たちは、花咲徳栄が例年ほど強くないと考え、シードが当たり前のチームが不慣れなノーシードであるショックに付け入ろうと考えたのではないでしょうか?「絶対に負けない。勝ってやる」という挑戦者の気持ちが、プレッシャーのある相手を上回ったと思います。勢い付いた山村国際はその後の2戦をコールドゲームで勝ち上がりました。花咲徳栄にも何か事情があったのでしょうが、それは詮索するだけムダというものです。どんな強いチームにだって勝てるという気持ちが大事なのです。山村国際の勝利が、その後、強豪校と対戦するチームの潜在意識に「自分たちもやれる」という思いを植え付けたのは間違いありません。 ■ 聖望学園は立教新座にコールド負け 浦和学院が県立川口高校に負けた翌日、聖望学園は立教新座になんと1−8のコールド負け、立教新座の主将は元巨人軍の吉村禎章氏の次男吉村俊捕手(3年生、背番号2、立教新座中)、攻守にわたり活躍しました。立教新座は春季大会で延長10回4-5で大宮南に負け、これでアク抜きとなりました。阪神・鳥谷 敬内野手の母校でもある聖望学園は相手に主導権を握られたまま、夏が終わってしまいました。浦和学院も聖望学園も先取点を取れず、焦ったことが敗戦の原因でしょう。聖望学園の試合スタイルは先行逃げ切りです。逆にそれを相手にやられ、浮足立ってしまったのかもしれません。県立川口、立教新座に自信を与えたのは、開幕戦で花咲徳栄を破った山村国際高校の奮闘だと新聞は書いています。 ■ 連続延長戦の激闘を制した埼玉栄と朝霞に注目 再試合で2試合連続延長戦突入という激闘を制した埼玉栄と朝霞の粘りは見事です。この両チーム、春季大会の南部地区予選で、朝霞は延長14回2-7で埼玉栄に負けています。両チームとも延長戦が好きというわけではないでしょうが、良く言えば粘り強くしぶとい、悪く言えば決定力が無い、ということですね。例年強豪でシードされることの多い埼玉栄は、春季県大会1回戦で所沢に2-4負けたのでシード落ち。夏の2回戦は、春日部に4-3で勝ち、3回戦で武蔵越生と延長15回5-5で引き分け再試合、翌日また延長11回4-3で埼玉栄が勝ちました。次はシード校の川越工業です。朝霞は朝霞西と並んでふじみ野市出身の選手が多い高校で、地元ふじみ野高校は逆に少ないのです。エース菊島 翼(3年背番号1、福岡中)、4番捕手中野大輝(2年背番号2、葦原中)がバッテリーを組み、代打の切り札宮崎圭祐(3年背番号19、福岡中)のほか、田頭大希(2年背番号4、大井中)と名取晃一(2年背番号6、大井西中)が2年生で二遊間を守り、矢武 亮(2年背番号14、大井中)、保坂佳吾(1年背番号16、福岡中)と、ふじみ野市の少年野球でお馴染みだった選手が揃っています。田頭大希の時の大井少年ファイターズはキャプテンが内田で、名取晃一たちはどうしても勝てませんでした。湊 地広(3年、大井西中)は残念ながら故障して20人に入れませんでした。1回戦で草加東に9-0、7回コールド勝ち、田頭が先発し5回無失点、打っても2ランホームランと投打に活躍しました。2回戦三郷北と延長12回の熱戦、9回裏3-1から朝霞が同点に追いついて延長へ、9回投げたエース菊島を田頭がリリーフ、12回裏サヨナラ押し出しで勝利。その2日後の3回戦はシードの市立川口が相手、先発マウンドは田頭、3点リードして6回からエース菊島が登板しましたが、追いつかれて延長に、結局10回投げ抜いて引き分け再試合となりました。 ■ 朝霞の延長再試合、応援に行きました こうなったら応援に行かなくちゃ、というので17日朝霞市営球場へ行ったら、上福岡イーグルスのS監督や大井ウエスト平山さんが居ました。みなさん教え子の応援に来ています。朝霞高校の地元だけに応援の人も多かったのですが、1試合だけなのに入場料はやっぱり500円でした。市立川口高校はブラスバンドと生徒が一体になった素晴らしい応援で、アウェーなのに応援では明らかに勝っていました。 前日15回を投げ切った市立川口のエース佐々木はさすがに登板せずライトに入り、控えの投手から2回4点、3回1点、早々に5点を取った朝霞、こちらも前日熱投の菊島ではなく田頭がマウンドに上がりました。ところが3回裏ピンチを招き、流れは市立川口へ、たまらずマウンドに菊島を送り、田頭はセカンドへ、菊島は緩急をつけた見事なピッチングを展開しましたが、しぶとい市立川口打線は応援団の必死の応援に応え、ジワリジワリと得点します。朝霞が突き放すチャンスを迎えると、3人目としてエース佐々木が6回からマウンドに上がり、速球で抑えます。とても前日15回投げた投手とは思えない球威でグイグイ押してきます。1点リードで迎えた9回裏2死3塁、打球はショートへのゴロ、ヨシ!もらった、いらっしゃいと捕球体勢に入った名取の前で打球は大きく跳ね上がり、外野へ抜けました。これで連日の延長戦、エースの投げ合いが続きます。この日朝霞はレフトに打撃を買われた木村拓義(2年生、背番号17、朝霞三中)が3番打者で入っていましたが、途中で内山涼太(3年生、背番号7、和光二中)を入れ、更に局面打開のため代打の切り札宮崎圭祐(3年背番号19、福岡中)を出しました。最初の打席は四球でしたが、11回表2度目の打席はその宮崎からでした。左打者なのでレフトが浅い守備になりました。強打者と知っている筆者から見ると、いくら左打者とは言え、浅過ぎると気にかかった矢先に、宮崎はバシーンとおっつけてライナーがレフト頭上を越え、3塁打となりました。無死3塁、なんでも出来る場面で4番中野、強烈に引張ったのですがレフトライナー、しかし4番ですから深く守っています、思わず3塁を見ました、飛距離からすれば犠牲フライになると思ったのです。しかしランナーはベースに戻っていません、残念!打席には5番吉田誠吾(2年背番号3、所沢東中)、打った当りはセンターへの大飛球、これは飛距離十分、宮崎がタッチアップして悠々生還しました。その裏菊島が得意のスライダーで逃げ切り、名取はショートゴロを上手くさばきました。9番バッター名取は上手く四球を選んだり、見事な送りバントで活躍しました。ここぞというときは4番中野でさえ送りバントを決める、この堅実さが朝霞のシブトサの源泉です。巨漢でも低い姿勢からキッチリバントを決める、「上手いナ〜、ウエストの子供たちにも見せたいナ〜」と平山さんが唸っていました。 ■ 眼を離せない埼玉2014選手権の展開 強豪校がバタバタ敗退する埼玉大会、どこが勝ち抜いてくるか?プロ注目の上條将希投手をはじめ、控え投手にも好素材がそろう市立川越や、春日部共栄など、安定して強いチームが軸となるでしょう。とにかく油断大敵、投手を中心とした守りの堅いチームが最終的には残って行くのが順当なところですが、金星をつかんだチームがその勢いで頂点へ駆け上がることも考えられます。優勝候補の浦和学院に先制して焦りを誘い、4-1で押し切った県立川口や、同じく優勝候補の聖望学園に先制パンチを浴びせ、吉村主将の活躍でコールド勝ちした立教新座、俄然マスコミから注目されています。両校とも優勝候補の花咲徳栄を2−1の接戦で破った山村国際の快挙に刺激され、「オレたちもやればできる」と勇気を貰ったそうです。しぶとい埼玉栄や村岡稜投手のノーヒットノーランがあった不動岡、近年のしてきている戸田の南稜、頭の良い生徒の揃う慶応志木、川越東、シード校で勝ち進む西武文理、狭山ヶ丘、川越工、松山、昌平、大宮東、上尾、1回戦でふじみ野を破り波に乗った小松原や、実力を発揮している本庄一、本庄東、所沢商、久喜北陽、どこをとっても強そうです。 野球はメンタルスポーツですから、平素の実力だけでなく、ネームバリューがモノを言います。埼玉平成は昨年の躍進で一躍有名になり、山村国際も俄かに注目の存在となりました。富士見が川越東と激突し5-6で惜敗、強豪所沢商は3-4で所沢に負け、所沢中央は2-7で城西大川越に破れ、埼玉平成は4-6で星野に破れ、山村国際は延長10回ふじみ野に7-10で破れました。市立川越、聖望学園、西武文理は危なげなく予選突破、他に川越東、狭山ヶ丘、川越工、ふじみ野も勝ち上がった春でしたが、夏本番の大会はどうなったでしょう?残念ながら所沢中央は姿を消し、ふじみ野、所沢、城西大川越、聖望学園、星野も既に居ません。富士見、川越東、所沢商、埼玉平成、山村国際、市立川越、西武文理、狭山ヶ丘、川越工は勝ち残っています。 ■ 2014年第96回高校野球埼玉県大会4回戦 4回戦に向けて下記のように書きました。さて結果はどうなったか?
■ 2014年第96回高校野球埼玉県大会5回戦 BEST8をかけての5回戦、応援するは埼玉平成、山村国際、市立川越です
■ 2014年第96回高校野球埼玉県大会準々決勝
■ 2014年第96回高校野球埼玉県大会準決勝
奥に見えるオレンジ色のスタンドは、NACK5スタジアム大宮、大宮アルディージャのホームです 組合せと結果 東東京・二松学舎大付は遂に念願の甲子園! ■ 少年野球時代の対戦〜高校野球でも活躍〜決勝で勝てない二松学舎大付 2008年の少年野球上福岡パワーズのバッテリーは小峯恭輔と瑛輔の兄弟、捕手の瑛輔君がパワーズのキャプテンでした。その後、瑛輔君は大宮シニアのキャプテンを経て、二松学舎大付に進みました。昨年は圧倒的な攻撃力とエース大貫を擁して第2シードの二松学舎大付ですが、準決勝では8-1と第3シード関東一を圧倒して決勝戦進出、反対のヤマには第1シードの甲子園常連校帝京、ところがこれを食ったのがノーシードながら戦前下馬評の高かった修徳でした。二松学舎大付は9年前の決勝進出時、相手も同じ修徳に敗れました。第95回の昨夏は、7月27日神宮球場での決勝戦、二松学舎大付はナント!これが10度目の東東京大会の決勝進出でした。両チーム合わせて30安打が飛び交う打撃戦の末、修徳が二松学舎大付を破り、9年ぶり5回目の甲子園出場を決めました。瑛輔君は2年生ながら5番を打ち、この日も2塁打を含め複数ヒットで気を吐きましたが、残念ながら13-6で負けました。小峯瑛輔の夢は残る1年にお預けとなりました。 ■ 秋季東京都大会では さあ先輩が居なくなった秋の東京大会、2013年11月10日(日)神宮球場で行われた関東一との決勝戦、瑛輔君は4番ファーストです。二松学舎大付は夏に続き、またしても決勝で敗れました。7−6で関東一が翌年春のセンバツを確実にしました。1回、試合開始後わずか3分で先制しましたが、先発の大黒一之投手がピリッとせず、2回途中3失点で降板したのが誤算でした。その後打線が奮起し、6回に同点に追いつき延長戦まで持ち込みましたが、あと1本が出ず、残念でした。ここまで決勝戦敗退が続くのでは、神頼みも必要かもしれないと思いました。 ■ 春季東京都大会では準々決勝でノーシードの成立学園に敗退 小峯瑛輔の高校野球最後の1年、春のセンバツ出場は成りませんでしたが、春季東京都大会では第1シード関東一に次ぐ第2シードでした。ちなみに第3シードは東海大高輪台と日大三高、第4シードは足立西、小山台、大成、日体荏原、第5シードは修徳など8校、計16校がシードでした。その結果は東京都高等学校野球連盟のホームページ(pdf)に出ています。第2シードの二松学舎大付は、準々決勝でノーシードの成立学園に敗れ、成立学園は準決勝でこれまたノーシードから勝ち上がった日大鶴ヶ丘を撃破しました。ちなみに日大鶴ヶ丘はこれまたノーシードの東亜学園との引き分け再試合を勝って上がってきたものです。決勝は修徳と帝京を破って上がった第1シードの関東一×ノーシードの成立学園となって、延長11回8-7で成立学園が優勝しました。この結果を見ると、いかに東京が激戦区かということが分かります。また、東東京の方が西東京よりも強豪校が多いのです。 ■ 第96回高校野球選手権大会東東京大会で”11度目の正直” 第96回の今夏選手権大会、西東京は7月28日(月)神宮球場で決勝戦、日大鶴ヶ丘が東海大学菅生に9回2-1サヨナラ勝ち、6年ぶり3回目の優勝です。一方東東京大会は、春季東京都大会の結果を受け、第1シード成立学園、第2シード関東一、第3シード帝京、第4シード修徳と二松学舎大付、第5シード足立新田、駿台学園、東亜学園、雪谷となりました。東東京大会の結果トーナメント表pdfをご覧下さい。二松学舎大付は3回戦からの登場で、城西大城西、東海大高輪台、城東、東亜学園と撃破、7月27日(日)の準決勝で成立学園に9-2、7回コールドで春のリベンジを果たしました。一方反対のヤマは、帝京が圧勝続きで、7月27日(日)の準決勝も関東一に12-4、8回コールドで春のリベンジを果たし、7月29日(火)神宮球場で決勝戦対決となりました。手に汗握る大熱戦となり、二松学舎大付が11回目の挑戦で、帝京を延長10回5-4で破り、初優勝しました。1971年に初めて決勝に進出して以来、昨夏まで42年間で10連敗中だった呪縛から脱しました。 ■ 決勝戦序盤は投手戦 過去10度涙をのんできて、夏の甲子園は初めて、しかし、昨年から常に安定した強さを誇ってきましたから、当然と言えば当然ですが、相手の帝京には過去三度決勝戦で敗れています。しかも帝京のエース清水昇投手(3年)の防御率は1.1だったか、つまり大量点を取らなくても勝てるわけです。この大会でたったの3個しか四球を与えていない制球力の良さ、そして強力打線、このバランスの取れたチームに勝つのは至難の技です。清水投手の顔は何となく日本女子サッカーの澤穂希を彷彿とさせます。すなわち負けん気の強い投手で、これはピッチャーとして最大の強みです。この試合帝京打線は本塁打こそ無かったものの、三塁打1本、二塁打6本と打ちまくりました。序盤は帝京:清水投手と二松学舎大付:大黒一之投手(3年)の投手戦となり、3回は、たった23分で終わりました。その間、安打は二松学舎大付の9番、1年生の三口英斗の内野安打1本だけでした。ただその中で光ったのは、二松学舎大付の守備でした。1回裏帝京の2番郡泰輝の三遊間深くのゴロを、遊撃手の竹原祐太が好捕すると、強肩をいかして1塁にダイレクト送球して刺しました。さらに3番中道大波の捕邪飛を、1年生捕手の今村大輝が追いかけ、二松学舎大付のベンチである、1塁側ダッグアウトに倒れ込みながらキャッチしました。さらに3回裏には帝京8番小幡隆の3塁線深くの打球を、サードの北本一樹が好捕し、ワンバウンド送球で刺しました。このように好守備が出ている時は気力が充実していることを示しています。 ■ 決勝戦中盤に帝京がリード 中盤に先制したのは帝京でした。5回裏に6番安竹聡司がセンター横にライナーの打球、これを二松学舎大付の中堅手・末松祐弥が少しはじくのを見て安竹は2塁を陥れ、これが帝京の初安打(記録は2塁打)です。更に7番笠井拓弥が左中間を破り、安竹が生還して、帝京が1点を先取しました。ただし外野からの見事な返球で、笠井は3塁タッチアウト(記録は2塁打)。ただ、3塁ではなくバックホームしていれば本塁でタッチアウトに出来たと思わせる素晴らしい返球でした。6回には四球をはさんで二塁打3本で2点、持ち味の長打力で3点をリードします。6回裏、1番打者からの猛攻でした。先頭の1番鈴木悠太が一塁手の頭をライナーで越える二塁打で出ると、2番郡は四球、3番中道が右翼に逆らわない打撃の二塁打で、鈴木が生還。ここで二松学舎大付は先発のエース・大黒をベンチに下げてマウンドに1年生投手の大江竜聖を送りました。しかし4番浜田弘幸は大江の初球を、右打席から右翼方向をしっかり狙って打ち、二塁打。郡が還って、この回2点目。エース・大黒が退いた上に、代わった1年生・大江の不安な出だし、それでも大江は、続くピンチを得意の変化球で乗り切り、かろうじて望みをつなぎました。1年生投手と言えばつい4ヶ月チョット前まで中学生です。まだ可愛い選手、大井ウエストの4年生田口成に似ています。ところが監督がエースのリリーフに送った理由が分かりました。ピンチで、しかもいかにも打ちそうな帝京の打者を向こうに、口をキリリと結んで、落ち着いたマウンドです。この投手は心臓に毛が生えてるな、と思いました。1年生バッテリー対帝京打線、これは稀に見る出来事です。 ■ 決勝戦終盤は二松学舎大付が追い着き、帝京が突き放し、また二松学舎大付が追い着く 清水投手から3点を奪うのは難しそうと誰もが思ったでしょう。7回表二松学舎大付の攻撃、5番岡田浩輝の中前安打、そして6番秦 匠太朗が四球を選びました。ほとんど四球を与えることの無い清水投手ですから、どうしたことでしょう?1死1、2塁のチャンスで打席に入った1年生捕手の今村大輝がスライダーを左翼にはじき返しました。「レフトフライか」と思った打球は左翼席に届き、試合を振り出しに戻す起死回生の同点弾となり、1塁側二松学舎大付の応援団はヤンヤの大喝采、「今年もダメか」と思っていたのが、1年生の第3打席で、意外と伸びた打球は、ギリギリでスタンドに入る3ラン本塁打となって球場の雰囲気ががらりと変わったのです。それでも帝京はその裏、先頭の8番小幡が左翼フェンス直撃の三塁打で出塁。1死後1番鈴木が初球を打って右前安打。小幡が生還し、勝ち越しました。しかしながら、続く郡の捕邪飛を、今村がバックネットまで追いかけ好捕。その間一塁走者・鈴木はタッチアップして二塁に進塁しました。少年野球でも「ファウルフライはタッチアップだぞ」と教えています。ファールエリア深くの打球を追いかけて捕球しても、一塁走者の進塁を許すだけですが、、とにかく早くアウトをひとつでもとってやると、ただひたすら球を追いかける、1年生の溌剌としたプレーが流れを変えるのです。 8回表二松学舎大付は、左前安打で出塁した末松が三塁に進み、4番小峯瑛輔が打った三遊間を抜けそうな打球を、帝京の三塁手・鈴木が飛びつきましたが、打球がキョウレツで弾いて、バックアップしたショートも送球を諦める内野安打となり、末松が還り、同点に追い着きました。二松学舎大付ベンチは、見るとエース大黒始め何人かの選手が泣いています。リードされても追い着く、しかも期待の4番が、その通り気迫で打ってくれた、これは感動したでしょう。「勝てる!絶対勝てる!」 二松学舎大付ベンチには溢れんばかりの闘志が燃え盛っているように見えました。交代したばかりの時は打たれた大江ですが、次第に変化球が冴え、130キロ程度の速球も、球威を増してきます。しかも今村の要求通りに、ギリギリの低めにストライクがコントロールされるようになってきました。一方の帝京は、エース清水 昇が1人で投げ抜いてきましたが、清水も抜群のコントロールで負けてはいません。 ■ 決勝戦は延長へ、二松学舎大付が悲願の優勝 そして延長戦を迎えました。10回表二松学舎大付は1死後2番北本が左前安打します。ここで、この日安打がなかった二松学舎大付の主将、3番竹原が低めの球を叩くと、ショートの頭を越え、レフトの右を破りました。うま〜くボールをバットに載せて、軽〜く打ったという感じ、ヤンキースのイチローが得意な打球です。北本は2塁を回って、3塁へ、サードコーチャーはグルグル手を回す、3塁を蹴って北本が生還、三塁打となり決勝点となりました。試合後のインタビューで竹原は、「4番の小峯瑛輔が絶対打ってくれる、自分はつなぐ打撃をしようと思った」と言っていました。またも二松学舎大付ベンチは涙、涙、この試合、初めてリードして、流れからして勝てる!そう確信したようです。しかし相手は全国のチームが目標とする帝京、率いる前田三夫監督(65)は監督歴43年の超有名監督です。二松学舎大付の市原勝人監督(49)だけは恐らくまだ勝てるとは思っていなかったでしょう。しかし10回裏、それまで口をキリリと結んで丹念に投げてきた大江投手はマウンドで笑顔すら見せる・・・、自分のピッチングに自信が出てきたのでしょう。結局帝京の攻撃を3人で抑え、悲願の夏の甲子園大会、初出場を決めました。 ■ 二松学舎大付優勝の陰に1、2年生の活躍 二松学舎大付は、もともと力のあるチームで決勝10連敗はナゾでした。優勝の最後の一押しとなったのは、大江―今村のバッテリーや、二塁手の三口英斗といった1年生、更に、今まで不動の5番であった秦を6番に下げ、5番に定着した2年生の岡田といった新戦力が活躍したことです。3点リードされて迎えた七回の今村の第3打席、1死1、2塁の場面での同点3ラン、「ホームランの実感はなかったけど、ベンチで、上級生が笑顔で迎えてくれて実感が湧いた」と今村は言いました。2塁への送球の速さや、上級生にも物おじせずリードができる精神面を買われ、5月から正捕手に指名されました。守備の要が入ったばかりの1年生というところが、市原監督の眼であり、こんな大抜擢に、竹原祐太主将(3年)ら先輩たちは「お前は楽しめ」とミスをした場面でも励ましてくれたそうです。3点を追う7回1死1、2塁でのサインは「待て」だったそうです。それを打ってしまって、公式戦初の本塁打になりました。打席の今村は、サインを見落としていました。真ん中に入ってくるスライダーをがむしゃらに打って、上級生が笑顔で迎えてくれて、打ったんだと思ったそうです。サインの見落としは、ベンチに戻ってから気付いたそうで、1年生が本能で打った3ランが、決勝10連敗の呪縛を解くカギになったとは、おそらく神の思し召しでしょう。 ■ 監督の采配を越えた結果・・・しかし選手の抜擢が当たった 市原監督は試合前の一塁側ロッカー室で、選手に初めて呼び掛けたそうです。「オレを、甲子園に連れて行ってくれ」、二松学舎大付OBで、1982年センバツではエースとして甲子園で準優勝しました。監督としては決勝6度目の挑戦で「これまでは(選手を)連れていってやろうという気持ちでした」が、「待て」を出した1年生に1発が飛び出すということは、「選手たちが野球をやったということ。私の手の中から、飛び立った感じです」。2番手で登板した1年生大江が1失点で粘り、延長10回は竹原祐太主将が決勝の適時三塁打を放つ、采配の思惑を大きく越えた結果が出ましたが、結局選手を信じて市原監督が配置した選手が活躍するということは、采配がバッチリ当たったということで、そうでなければ、帝京には勝てなかったでしょう。 読売新聞には、埼玉の決勝について、「春日部共栄の金子投手と市立川越の上條投手、同じ条件とは言え、暑い盛り、準決勝、決勝と連戦になる日程、これで良いのだろうか?」と疑問を呈していました。東京では準決勝と決勝の間に1日の間をとっています。 (2014年7月31日) |