63  美味しんぼ

 痛風は辛いものです。5月9日は会社を休み、病院へ行き、即座に「痛風ですね」と診断されて、隣の薬局で薬を頂いて帰ってきました。翌日は土曜日、東京ガーデンパレス(湯島)で3百人以上集まる高校の在京同窓会総会で、幹事なので出なければなりませんが、とても無理なので、こちらも欠席のメールを入れました。それでも少年野球のグラウンドには行って子供たちの練習を見ていました。歩くのは辛いのですが、自転車やバイクは歩かないので大丈夫なのです。日曜日は試合に行きました。見事準々決勝を勝ち抜いてメダル確定です。
 しかし痛いごときで会社を連休できませんから、5月12日(月)朝は行こうと思いましたが、足が腫れているので靴が入りません。黒いスニーカーで通勤、痛い、痛い、びっこを引いて会社へ行きました。帰宅する電車の中で急に体が汗ばみました。別に暑くないのですが汗が噴き出ました。すぐピンと来ました。低血糖だな・・・。自律神経が失調してるな・・・。それから帰宅するまでの間の気だるさ・・・、いや〜辛い。
 1週間経っても右足の痛みはおさまらず、再び病院へ、血液検査の結果が出ていて、尿酸値、コレステロール、中性脂肪、いずれも高い、血圧これまた高い、4拍子揃ったらフツウ脳梗塞にならないほうがおかしい、というような状況でありました。もしこのESSAYが突然更新されなくなったら、「当たった!」と思って下さい(>_<)

■ 後絶たぬ鉄道自殺
 前回、リストラから日本の貧困化が加速され、電車に飛び込む人が増え、若者の自殺が急増したと書きました。最近は人身事故でダイヤ乱れが頻発しています。首都圏では20年ほど前からでしょうか、JR中央線での自殺が頻発したのが始まりで、今では、どこもかしこも人身事故だらけです。鉄道会社としては死体の処理など、たまったものではありません。処理する社員の気持ちになって、やめてもらいたいものです。
 国土交通省によりますと、平成24年度は30分以上の遅延などを生じる事故は全国で631件で、前年より30件も増えました。各社は自殺の抑止効果もあるとされるホームドアの普及も進めていますが、歯止めがかかりません。鉄道関係者らは頭を痛めています。
 2014年5月8日午前、首都圏の鉄道担当者は人身事故の一報に時計を確認し、思わずため息をついたそうです。埼玉県ふじみ野市の東武東上線踏切で、男性が遮断機をくぐり抜け、はねられました。午前10時28分。以前は影響の大きくなるラッシュ時の自殺はほとんどなかったのに、最近は関係なく頻繁に起きるそうです。鉄道自殺の特徴は衝動的だということです。増え続ける事故に、小田急電鉄は飛び込みの多い駅や踏切に、自殺の抑止効果が高い青色LED照明を取り入れ、乗務員の巡回も強化しています。

輸送障害の件数の推移(産経新聞)
 東京メトロは、ホームドアの普及を進めています。2009年度は丸ノ内線などの一部だけでしたが、2012年度は全179駅の半分程度の84駅まで拡大、自殺を含む人身事故は、ほぼ半減したそうです。担当者は「転落防止が目的だが、自殺の抑止にも効果がある」と言っています。2012年度の自殺が231件と前年より16件増えたJR東日本は2014年5月10日に御徒町駅にホームドアを設置、東急電鉄も昨年、中目黒駅などに増やしました。ただ、各社とも「無理に乗り越えるケースは防げず、自殺を抑える決定打にはならない」と口を揃えます。最近では首都圏などで相互乗り入れが進み、一旦事故が起きると、社の垣根を越えて影響が広範囲に及ぶ傾向も出ています。上記の東武東上線の人身事故でも東京メトロは有楽町線や副都心線への東上線からの乗り入れを一時中止しました。「大勢に負担をかけることを考えて欲しい」。担当者は訴えます。 鉄道自殺が多い鉄道会社
1 JR東日本 2 JR西日本
3 JR九州 4 東武鉄道
5 JR貨物 6 名古屋鉄道
7 西武鉄道 8 JR東海
9 東急電鉄 10 小田急電鉄

■ 「美味しんぼ・福島の真実編」騒ぎの経緯
 61『いちえふ』(2014年5月4日)で、福島第1原発にからむ話題の漫画2篇を紹介しました。特に「美味しんぼ・福島の真実編」について、原作者雁屋 哲氏の偏向を指摘しました。過去の経緯を辿ってみましょう。

4月28日に発売された、小学館の週刊少年向け雑誌「ビックコミックスピリッツ」22・23合併号の連載漫画「美味しんぼ」における、福島県の震災・原発事故被害に絡んだ内容表現について、各方面から大きな反発が生じています。鼻血やだるさなど、放射線被害を連想させる表現が多数ありました。これに対してネットで批判、非難が炎上しました。スピリッツ編集部は「綿密な取材に基づき、作者の表現を尊重して掲載しました」と直ちに釈明しましたが、これが火に油を注ぎました。

5月1日、スピリッツ編集部ツイッターで「4月28日発売時点ですでに次号(24号)は制作済み」(つまり、24号に関する対応処理は何もできませんと言いたいらしい)、そこで「5月19日発売の25号と自社サイトで識者見解などを集約した特集記事を掲載予定」と声明しました。

5月4日、原作者雁屋 哲氏はブログで次のように意思表明しました。鼻血の描写について「当然ある程度の反発は折り込み済みだったが、ここまで騒ぎになるとは思わなかった」と記した上で、漫画が「風評被害を助長する」とする意見を批判しています。
−−−その23、特にその24ではもっとはっきりとしたことを言っているので、鼻血ごときで騒いでいる人たちは、発狂するかも知れない。今まで私に好意的だった人も、背を向けるかも知れない。私は自分が福島を2年かけて取材をして、しっかりとすくい取った真実をありのままに書くことがどうして批判されなければならないのか分からない。真実には目をつぶり、誰かさんたちに都合の良い嘘を書けというのだろうか。「福島は安全」「福島は大丈夫」「福島の復興は前進している」などと書けばみんな喜んだのかも知れない。今度の「美味しんぼ」の副題は「福島の真実」である。私は真実しか書けない。自己欺瞞は私の一番嫌う物である。きれい事、耳にあたりの良い言葉を読み、聞きたければ、他のメディアでいくらでも流されている。今の日本の社会は「自分たちに不都合な真実を嫌い」「心地の良い嘘を求める」空気に包まれている。「美味しんぼ」が気にいらなければ、そのような「心地の良い」話を読むことをおすすめする−−−

5月7日 「美味しんぼ」に前町長が登場した福島県双葉町が公式に抗議声明…「現在、原因不明の鼻血等の症状を町役場に訴える町民が大勢いるという事実はありません」と作中の井戸川氏の発言を否定し、県外から町役場に、福島県産の農産物は買えない、福島県には住めない、福島方面への旅行は中止したいなどの電話が寄せられているとし、県全体にとって風評被害を生じさせ、双葉町民と福島県民への差別を助長させることになるとの危惧を示しています。「双葉町に事前の取材が全くなく、一方的な見解のみを掲載した、今般の小学館の対応について、町として厳重に抗議します

5月8日 環境省、リリースで間接的に鼻血表現に対して否定的見解を出す

5月9日 石原伸晃環境相は、「美味しんぼ」の表現に関して公式記者会見上で「風評被害あってはならない」と苦言を呈しました。
 雁屋 哲氏は自らのブログで「スピリッツ編集部に電話をかけたり、スピリッツ編集部のホームページなどに、抗議文を送ったりするのはお門違い」「書いた内容についての責任は全て私にあります」と書きました。
 井戸川克隆・前福島県双葉町長は東京都内での記者会見で、「発言の撤回はありえない」と話し、鼻血が出る人の話しを多く聞いており、自分も毎日鼻血が出ると言い、石原伸晃環境相が記者会見で作品に不快感を示したことについても批判しました。

5月11日 片山さつき参議院議員、ツイッターで政府内対応に関して言及。「美味しんぼの福島についての問題についても、週明けに政府内の対応を把握し、疑問をもたれた皆さんにご報告します」
お笑いコンビ「ダウンタウン」の松本人志がフジテレビの報道番組「ワイドナショー」(日曜午前10時)に出演。漫画「美味しんぼ」に描かれた福島第1原発を訪れた主人公らが原因不明の鼻血を出す描写が物議を醸している件について持論を述べました。松本は「美味しんぼ」の描写に非難が相次いでいることについて、「最近、すぐみんな抗議する」と近年の風潮に広げて話題を展開、政治への抗議は当然としながらも、この件については「作品やから。みんなで作るもんじゃない。作者のものであって、周りが抗議したって…外部の人間がストーリーを変えろとかいうのは、ちゃんちゃらおかしい」と批判によって作品の内容を変えようとすることへの疑問を呈しました。

■ さあ問題のビックコミックスピリッツ24号が発売
5月12日 ビックコミックスピリッツ24号発売。 「美味しんぼ」で前号に続き、井戸川克隆・前福島県双葉町長や、岐阜環境医学研究所所長の松井英介先生が登場します。
 政府の事後対策会議にも、福島県の会議にも呼ばれたことがないという井戸川氏、汚染土壌を貯蔵する放射性廃棄物の中間貯蔵施設を双葉郡に作るという福島県と双葉郡の会議に出席しなかったことを町議会でとがめられ不信任決議を受け辞任したということに−−−
 中口新介 「その町議会はおかしいですよ。どうして不信任するんです」
 難波大助 「井戸川さんが邪魔な勢力があるんや…」
というセリフの後、井戸川氏は、「福島に鼻血が出たり、ひどい疲労感で苦しむ人が大勢いるのは、被ばくしたからですよ」、「私はとにかく、今の福島に住んではいけないと言いたい。どんな獣でも鳥でも自分の子供を守るために全力を尽くす。どうして人間にできないんですか。子供の命が大事でしょう」 と語り、
 海原雄山 「私が福島を回るあいだに感じていたことを井戸川さんに明確に言っていただいて、胸のつかえが下りました」
 山岡士郎 「しかし、真実を言うと町長を辞めさせられるこの日本という国は…」
というやりとりがあります。
 その後、双葉町から避難してきた人の現状の紹介や、福島大学の荒木田岳准教授が除染の現状を語る場面が続き、荒木田准教授は「福島が、もう取り返しがつかないまでに汚染されたと私は判断しています。福島を広域に除染して人が住めるようにするなんて、できないと私は思います」 と語ります。
 続いて放射線医学の専門家として岐阜環境医学研究所所長の松井英介先生が「大阪で、受け入れたガレキを処理する焼却場の近くに住む住民1000人ほどを対象に、お母さんたちが調査したところ、放射線だけの影響と断定はできませんが、眼や呼吸器系の症状が出ています」「鼻血、眼、のどや皮膚などに、不快な症状を訴える人が約800人もあったのです」と話す様子が描かれています。 次号で「福島の真実」編はクライマックスとのことです。

■ 5月12日「美味しんぼ」に相次ぐ抗議
 福島県は、公式サイト上で「断固容認できず、極めて遺憾」と表明しました。4月30日付で小学館から内容などに関する問い合わせがあり、5月7日付で返答したと発表しました。事実上の抗議声明です
 大阪府は、公式サイト上で5月12日発売号掲載分中の震災がれきに関する記述についてその内容を否定(ホームページ参照)すると共に、大阪府及び大阪市は事前の取材は一切受けていないことを明らかにしました。同日、大阪府と大阪市は小学館への抗議を行ったことを表明、大阪府の松井一郎知事は12日午前、記者団に「保健所、医師会にそのような事実はないと確認をしている」と否定しました。橋下徹市長は、自身が「美味しんぼ」のファンだと明かした上で、「漫画なので基本的には自由だが、根拠のない話だと表現の自由の範疇外。取材が甘過ぎるのではないか。編集部には根拠をしっかり出して欲しいと思う」と指摘しました。
 スピリッツ編集部は、同日発売号掲載分につき見解を発表。「行政や報道のありかたについて、議論をいま一度深める一助となることを願って作者が採用したものであり、編集部もこれを重視して掲載」としました。
 菅義偉官房長官は午前の記者会見で「住民の被ばくと鼻血の因果関係は考えられない」と不快感を表明。また「政府として科学的見地に基づいて正確な知識をしっかり伝えていくのが大事だ」と発言。
 自民党の石破茂幹事長も記者会見で「風評被害を払拭しようとする中で、それに逆行することは自制すべきだ」と言及
 首相官邸ツイッターで、「一部指摘」との表現を用いながらも今件問題を取り上げ、専門家評価を紹介して否定
 福島県佐藤雄平知事は、埼玉県内の市町村長や教育長らに福島県の復興状況を知ってもらおうとさいたま市で講演を行いました。埼玉県の上田知事が、福島県の早期復興と風評払拭のため新たに「福島応援キャンペーン」を展開すると発表し、埼玉県民に福島県への旅行を呼び掛けるほか、埼玉県庁の職員食堂での福島県産品メニューの提供などを通して、食と観光の魅力を発信するなど、埼玉県民一丸で福島の再生を後押ししようと意欲を見せていることに応えたものです。講演の後で記者団に問われ、作品内描写に対し「風評被害を助長するような印象で極めて残念」と不快感を表明しました。「福島に住んではいけない」とする記述などについては「今は福島県民が一丸となり、全国から復興を支援していただいている時で、このような雰囲気の漫画があって、残念で遺憾」と繰り返し述べました。
 自民党福島県連は、「風評被害に立ち向かっている県民の心情を踏みにじった」として、小学館に抗議文書を郵送したと発表
 民主・県民連合は「特定の個人の意見を取り上げることで、県民への差別を助長させる」とする抗議声明を読み上げました。声明は小学館に郵送したそうです。すなわち福島県では与野党一致して小学館に抗議しているわけです。
 岩手県は5月12日発売号で言及のあった大阪の震災がれき処理について見解を発表し、「各過程での空間放射線量率については全て受け入れの前後で値に変化はなく、安全に処理していることを確認している」と発表しました。
 福島大学は作中の荒木田准教授の主張に対し、中井勝己学長名で遺憾の意を表明しました。
 5月12日に福島第1原発を視察した下村博文文部科学相は視察後に「科学的、医学的な根拠はない。福島県民にとってひどい迷惑だ」と批判しました。

5月13日 閣僚から批判発言が相次ぎました。
 根本匠復興相…「漫画とはいえ、地元の不安や風評被害を招きかねない内容で、誠に遺憾」
 森雅子消費者行政担当相…「大きな影響力のある漫画が誤解を与える内容で大変残念だ」
 太田昭宏国土交通相…「言論の自由は大事だが、福島に住んでいる人の心情を理解する必要がある」

■ キャロライン・ケネディ駐日米大使が5月14日、東京電力福島第1原発を視察
 キャロライン・ケネディ駐日米大使は5月14日、就任後初めて福島県を訪れ、東京電力福島第1原発を視察しました。発生から3年以上経過した東日本大震災や原発事故の爪痕は今も生々しく「衝撃を受けた」と表明し、米国は廃炉作業や汚染水問題、除染技術で「必要とされる限り支援していく」と強調し、日米協力継続を約束しました。現場の人たちには温かい励ましに聞こえたようです。
 ケネディ氏は長男の大学生ジョン・シュロスバーグさん(21)と共に全面マスクと白い防護服を着用して原発構内を視察、4号機で使用済み核燃料の取り出し作業を見たほか、事故対応の最前線となった1、2号機の中央制御室を視察しました。

■ ガレキ処理焼却への住民エゴを吹き飛ばした東京、大阪の首長
 「大阪のガレキ処理焼却場の近くに住む住民1000人中約800人が不快な症状」という表現について大阪府では「該当する焼却工場がある此花区役所、同保健福祉センター、此花区医師会に確認をしたが、処理中においても、その後においても、そのような状況は認めらなかった」とし、また安全性についても「各種手段を用いて確認をし、安全に処理をした」と説明しています。いわく「各過程の空間放射線量率については全て受け入れの前後で値に変化はなく、安全に処理していることを確認しています」とのこと。この「調査したお母さんたち」というのは、「大阪おかんの会」だそうです。ただ、この会は調査した対象も方法も地域も違うと言っているそうです。
 「美味しんぼ」における文言と大阪府のリリースから、当該焼却場は大阪市環境局舞洲(まいしま)工場です。同焼却場で処理されたのは岩手県宮古地区の震災ガレキです。遡って思い出しますと・・・東京や大阪で岩手県のガレキを受け入れると発表した時、反対運動が起きました。しかし当時の石原慎太郎知事は、東京都が東北以外の自治体で初めて、東日本大震災で発生した災害廃棄物(がれき)を受け入れて処理を始めたことに対し、都民らから反対の声があることについて、「(放射線量などを)測って、なんでもないものを持ってくるんだから『黙れ』と言えばいい」と語って、強引に押し切りました。他の自治体が腰が引けている中で流石だと感心しました。都は2011年11月3日、岩手県宮古市から第1便として約30トンを受け入れ、処理を開始。ガレキそのものから放射線量は検出されず、都内の処理施設周辺の空間放射線量にも影響はありませんでした。石原都知事は「放射線が出ていれば別だが、皆で協力して力があるところが手伝わなければしょうがない」と指摘。「皆、自分のことばかり考えている。日本人がだめになった証拠だ」と述べました。
 一方大阪では2012年8月30日、東日本大震災で生じた岩手県の災害廃棄物(ガレキ)受け入れに関する市民説明会を中央公会堂(北区)で開きました。橋下徹市長と松井一郎大阪府知事が出席して安全性を強調しましたが、約400人の参加者からは批判が相次ぎました。壇上の市長らに詰め寄る人もいるなど紛糾しました。2013年度までに計3万6千トンのがれきを受け入れ、その焼却灰を此花区の北港処分地(夢洲〈ゆめしま〉)に埋め立てる方針です。11月の試験焼却を前に、全市民対象の説明会を初めて開き、橋下氏は「専門家によってがれきの安全性は確認している」と繰り返し、放射性物質による健康影響の可能性を否定、「東北が困っているなら大阪が助けるのは当然」と訴えました。ところが参加した市民から「うそをつくな」と怒号が飛ぶなど会場は騒然とし、「受け入れを中止すべきだ」との意見表明が続きました。これに対し橋下氏も「会場を出れば多くの府民、市民が岩手県を支えたいと言っている」と譲りませんでした。説明会は大阪市民だけを対象にしたため、入れなかった約200人が周辺で抗議し、警察官ともみ合う一幕もありました。神戸市の男性会社員(38)は「将来の影響も分からないまま処理を(被災地以外に)拡散するのは間違いだ」と話していたそうです。こうした住民エゴというか、思いやりや助け合いの気持ちが無い人々は、いくら計測データや科学的根拠を示しても、「ウソだ。真実を隠している」と言うものです。こういう輩に対してリーダーシップを発揮するのが石原慎太郎や橋下徹などごく少数の首長だったというところに、日本社会の利己主義蔓延の悲しさを見ました。
 ガレキ処理に協力的だったのは同じ東北の青森県や山形県、東京都が特に積極的、他に北海道北斗市、稚内市、秋田県の主要市町村、茨城県や埼玉県の各市町、千葉市、市川市、横浜市、川崎市、相模原市、新潟市、長岡市、三条市、柏崎市、新発田市、富山県の富山市他、金沢市、輪島市、福井県の敦賀市他、静岡県主要市、京都市、舞鶴市、宮津市、福知山市、大阪市、堺市、神戸市、他省略、ただ、北九州市や大分県の津久見市など遠方でも積極的に受け入れてくれたところもありました。

■ 岩手県宮古の津波災害とガレキ
 筆者の母は岩手県宮古市鍬ヶ崎の生まれです。現在93歳、仙台のケアハウスで暮らしています。宮城野区の七北田川に近いので津波で建物周辺は海となりましたが、土盛りして高くした上に建物があるので浸水しませんでした。しかし、11日間の停電で大変な目に遭いました。生涯で、関東大震災、昭和三陸津波、チリ地震津波、東日本大震災という四つの大災害を経験しています。ただし、直接的被害を受けたのは昭和三陸津波と東日本大震災です。自らの生家も写真の如く津波にさらわれ、その上に観光船が乗っていました。これは筆者が携帯で撮った写真です。いとこ3人も家を流されました。一面のガレキの山でした。自衛隊が片付けてくれて、それをやがて東京都や大阪市はじめ全国の善意の自治体が処理してくれました。感謝です。一方で、住民の反対に押し切られた自治体もありました。こういうときに、民主主義とはなんだろう、と考えさせられます。もちろん過半数が反対したらそれはダメです。しかし一部の声のデカイ人や、デモをする人たちに対し、首長がリーダーシップを発揮してそれを跳ね除ける、そういう強いリーダーには拍手です。
 自宅兼職場を流された船鍛冶の同年の従兄弟は、漁師さんたちから背中を押されて、再び工場を建て、老体に鞭打って仕事をしています。漁に使う道具を作ってもらいたい漁師たちが、市役所に働きかけて、仮設住宅住まいのまま仕事場だけ建設する許可を市役所に交渉して得たそうです。
【参考】ESSAY 19『宮古の今は?』(2013年6月30日) つぶやき514『三陸被災地視察』(2012年11月18日)をご覧下さい。

■ 大阪市環境局舞洲工場周辺の住民とは
 この地区は、埋立地のいわゆる工業地帯で、住宅地はほとんど周囲には見当たりません。1.5キロから2キロほど南東に行くことでようやく住宅地帯が確認できますが、それより近場には多数の工場、そしてあのユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)があります。工場地帯で働く人たちやUSJで遊んでいる人達よりも遠い距離に住む人たちを、「焼却場の近くに住む住民」として、その人たちの8割もが「鼻血、眼、のどや皮膚などに、不快な症状を訴える」状況にある環境下に置かれていたのだとしたら、USJに勤める人達や工場地帯の従業員は、どのような影響を受けているのでしょうか。実在する人物に「放射線だけの影響と断定はできませんが」としながらも、文脈上多分にその可能性(ガレキ処理で生じた放射性物質が外部に露呈し、その影響で住民たちが症状を発している)を読み手に想像させる形で表現しています。そもそも岩手県宮古地区のガレキからは放射性物質は例えば大阪と比べても差は検出されなかったのです。このガレキはいわゆる津波によるガレキです。福島第1原発からの放射性物質飛散マップを皆さん記憶にあると思いますが、岩手県宮古地区には全く向かっていません。すなわち、東北大震災=放射性物質というミソもクソも一緒にしたような話なのです。これはもうヒドイを通り越して、誹謗としか言えません。「反対」と言えば、それが喜びになるような人たちが存在するのです。

■ 岐阜環境医学研究所所長の松井英介という男は何を主張しているか
 「チェルノブイリ事故を上回る東電福島原発事故による自然生態系破壊を経験した今、私たちはチェルノブイリを経験から学び、福島県など汚染地域で今後発症するであろう”低線量”放射線内部被ばくによる晩発障害から子どものいのちと健康を守るため、できる限りの努力をしなければなりません」と松井英介氏は主張しています。
 この1フレーズで既に大きな嘘があります。「チェルノブイリ事故を上回る」というのは、何をもって言えるのでしょう。発表されている国連やIAEAのデータでははるかに下回っています。晩発障害とは、時を経て出てくる先天障害や白血病・がん・免疫異常・循環器疾患などのことだそうです。「出るぞ、出るぞ」って、お化けのことですか?
 外部被ばくによる障害がどこからも報告されていないことから、「内部被ばくはこわいよ、障害はずっと後から顕れてくるんだよ」と言っているのです。内部被ばくは主として食べ物からのアルファ線とベータ線によるもので、汚染水がプランクトンから魚に濃縮され、空気を吸ったり草を食べた乳牛からの牛乳も汚染されていると茨城県の牛乳を引合いに出しています。群馬県の野菜も危険と言っています。汚染された地域から避難せよと言っています。その範囲は福島県だけではなく、関東にまで及んでいます。ヨウ素131は、甲状腺に集中的に取り込まれるので、安定型のヨウ素剤を飲めと言っています。「放射性物質を浴びた父親の精子を介して、あるいは母親の卵子を介して次の世代に障害が現れることは、世界各地に実例があります」とさえ言っています。つまり、怖ろしいことに一般論を紹介して、あたかもそれが福島第一原発とつながること、食べ物や飲み物から内部被ばくすることの怖さを言っています。しかし自然界にはそもそも放射線が有って、私達人間自身も放射線を発しており、内部被ばくしているものだという基礎的話は見当たりません。
 言っていることがどういう内容か・・・座禅洞診療所・岐阜環境医学研究所のホームページをご覧下さい。要するに単なる呼吸器科の診療所で、診療は予約制で、月・木・金の9時〜12時しかやってません!
 「おすすめリンク集」の中に反原発・反捕鯨の「グリーンピース」があります。これでどういう考え方の人物か、わかりますね?
 でも「鯨食は文化だ!」という雁屋 哲と、反捕鯨のグリーンピース好きの松井英介がどうして結びつくのでしょう?・・・反原発です。
 問題はこの松井英介氏、震災後全国津々浦々でこの内部被ばくの講演をして回り、多数の人が信者になっていることです。まるでカルトですね。

■ チェルノブイリ事故と福島第一原発事故との比較
 「チェルノブイリ事故を上回る」などというフレーズは事故直後盛んに言われました。そこで、改めておさらいしてみましょう。
事故の性格・・・チェルノブイリは1基の原子炉が運転中に暴走〜爆発〜原子炉破壊〜噴煙数千メートル〜全世界に放射性物質拡散、まき散らされたセシウム137とヨウ素131の量は520京ベクレル、福島第1は原子炉は制御棒で運転停止しましたが、原子炉冷却水が制御盤冠水で機能せず、メルトダウンを起こして、水が沸騰して分離され溜まった水素が爆発し、まき散らされたセシウム137とヨウ素131の量は63京ベクレル、およそ8倍強の差があります。ただし、福島は原子炉4基ですから、事故の後始末としてはチェルノブイリよりも厄介と言えます。
原発内で被ばくした人・・・チェルノブイリは134名の急性放射線障害が確認され、3週間以内に28名が死亡、その後も19名が死亡していますが放射線被ばくとの関係は不明。福島は急性放射線障害の人はゼロ
原発内清掃作業者・・・チェルノブイリは24万人の被ばく線量平均100ミリシーベルトでしたが、健康に影響は出ませんでした。福島は上限100ミリシーベルトで作業外れますが、まだ該当者少数、健康に影響は認められていません。
周辺住民・・・チェルノブイリでは、高線量汚染地の27万人は50ミリシーベルト以上、低線量汚染地の500万人は10〜20ミリシーベルトの被ばく線量と推定されていますが、健康への影響は認められていません。例外は小児の甲状腺がんで、汚染された牛乳を無制限に飲用した子供の中で6000人が手術を受け、現在までに15名が亡くなっています。福島の牛乳に関しては、暫定基準300(乳児は100)ベクレル/キログラムを守って、100ベクレル/キログラムを超える牛乳は流通していません。したがって内部被ばくによる甲状腺がん発症は考えられないと言われています。また福島の周辺住民の被ばく線量は20ミリシーベルトを超えている人はいないと考えられています。

■ 大阪での描写へのネット上でのスレッドを上げてみましょう
○嘘をついてまで危険だと広めたい動機ってなんだろう?
○800/1000が具体的症状を訴える場合、疑われるのは化学テロだと思う。漫画であっても具体的地域と数値を出す場合には調査の引用は必須だと思うのだが。
○「綿密な取材」が福島県に3つ質問しただけ(しかもその質問も稚拙)だもんな
○いくらデマとは言え、構成要素の3階層全部に問題があるってのは、酷いを通り越して主張する人間の正気を疑うレベルだよなぁ
○結論ありきで取材してるからちゃんと検証しないんだろうな
○来週の特集とやらがどうなるやら…
○岐阜環境医学研究所のサイトを見つけたんだけど明らかに公共じゃないし、お察しな感じなんですが
○指摘に該当する大阪市環境局舞洲工場周辺。いわゆる工業地帯で住民はほとんどいない。そもそもあそこの運ばれた「被災財」は岩手からのものだから美味しんぼは明らかな被災地差別な訳だよ
○岩手って原発あったんだ!!
○綿密な取材とはこの程度の検証で論破されちゃうものなのでしょうか
○何から何まで酷いな
○うーむ
○そもそも「お母さんたち」は実在するんかな?
○「おかあさんたち」ってどこの誰で、どの辺に住んでる人たちに、どんな形式でアンケートとったのかが気になる
○こんな取材をしている東西新聞は大丈夫か
○ここまでのデタラメをマンガだから許されると思ってる作者と小学館は、真面目な漫画家や出版社を愚弄してることに気づいてないのか
○原発の前で再稼働反対を訴える住民たちのほとんどが県外から来てるという話を思い出した
○松井って医者、ググると色々出て来る
○松井英介をググった瞬間にくらくらきた
○カリーと小学館はがれき処理焼却場の場所もどこのガレキかも知らなかったんや
○何から何まで設定に無理のある嘘漫画だな…
○取材しちゃいけない人にしっかり取材したんだな
○「数の問題ではない」と言うだろ、そのうち。そこまでは想定内
○USJも抗議するレベル
○そもそも近くに人が住んでなかった。ここまで酷いとは予想してなかった
○母集団の多くが「たまたま何かの症状が出たのをガレキ焼却に結び付けたい人々」だったと予想。あるいは相当予断のある聞き方でもしたか
○雁屋哲の取材が杜撰だったことがわかる
○たぶん福島の真実(虚)の世界の話であって、最後にこのお話はすべてフィクションですといってなかったことにするしかない
○「放射能はーありまぁーす!」って言いたいんならノートを公開すべき
○「報道」してるつもりなら、当然ソースを明らかにしないといけないんだが、「お母さんたち」ではない具体的な情報源を示せるのかねぇ
○最終回で海原雄山の大どんでん返しが炸裂するんですよ。「士郎、ソースも確認せずに鵜呑みにするとは、まだまだ甘いな」と今までの話を全否定しちゃう超展開で、阿鼻叫喚地獄!
○さすがにこれはひどいな。USJ勤めてる人は鼻血続出か?岐阜環境医学研究所、ネットで探しても松井所長しか出てこないけど田舎の医者の個人的な研究所だろうか。訴えられてしかるべきだわな
・・・・どうですか。支持する意見などひとつもありません。

■ 福島大学の荒木田准教授の主張
 福島大学は作中の荒木田准教授の主張に対し、中井勝己学長名で、漫画に載った准教授の発言内容について「大学としての見解ではない。(准教授の)個人の見解。多方面にご迷惑をかけたことについて大変遺憾だ。大学人としての立場を理解したうえで発言するよう注意喚起する」との見解を発表しました。ただ、注意喚起したところで、人の口に戸を立てるのは無理でしょうね。
 荒木田准教授も震災後全国各地で講演して回りました。こういうとき、国立大学法人福島大学の准教授という肩書は効くでしょう。だけどこの方は別に放射線の専門家ではありません。地方政治を専門とする学者です。当初は妻子を新潟に避難させて、自らは除染活動を行う傍ら講演して回ってたようです。「福島が、もう取り返しがつかないまでに汚染されたと私は判断しています。福島を広域に除染して人が住めるようにするなんて、できないと私は思います」と言うのは、自身の思いですから、これは自由です。でも住めないならご自身も引っ越さないといけませんね?
 自然界からの放射線を「自然放射線」といいます。今、1人が1年間に自然放射線を受けている量(KEK 放射線科学センター)は、世界平均で2.4ミリシーベルトといわれています。実は松井英介氏の住んでいる岐阜県が日本で一番放射線量の多い地域で、神奈川県の1.5倍です。放射線を出す岩石・花崗岩が多いのです。西日本が自然放射線量が多いのです。
 荒木田准教授が人が住める放射線量をいくつと考えているか分かりませんが、仮に1ミリシーベルトと言うのであれば「福島県は人が住めない」ことになります。完璧に除染してもダメでしょうね。国連の調査団が発表した見解さえも信じられないというのであれば、福島大学をやめて岩手大学や弘前大学にリクルートするしかありません。盛岡市や弘前市は福島市に比べれば線量が少ないですから。

■ 「ダウンタウン」の松本人志の見解について
 「作品やから。みんなで作るもんじゃない。作者のものであって、周りが抗議したって…外部の人間がストーリーを変えろとかいうのは、ちゃんちゃらおかしい」と批判する側への疑問を呈したそうですが、これは視点が間違ってますね。彼は、雁屋 哲氏や小学館が火だるまになっていてカワイソウ、と言っているわけではなく、作品の中味を変えろと言うのが横暴だと言っているのでしょう。しかし、これだけ行政、マスコミ、ネットが一丸となって批判に回るのは何故か?と深く考えて欲しいと思います。普通この三者の意見が一致するなんて有り得ません。なぜ一致するかというと、いくら「作品」だからと言っても、実在の人物を登場させて、その口から語らせているので、フィクションではなくドキュメンタリーに見えるからです。「福島を2年かけて取材をして、しっかりとすくい取った真実をありのままに書いている」と言いますが、何が真実なのでしょうか。大阪のガレキ焼却などは誰もがウソだとわかります。井戸川氏にしても荒木田氏にしても、自分が真実だと思っていることを言っているのでしょう。しかし「真実」というものは、心の中にあるものでは無くて、現実にある姿です。色眼鏡をかけて見れば別の色に見えるのです。大多数が同じに見えるものが大多数の真実なのです。雁屋氏の真実が、大多数の日本人には虚実に見えるのです。
 フィクションならば「ストーリーを変えろとかいうのは、ちゃんちゃらおかしい」のは当然ですが、内容に虚偽や誹謗があって、それが人を傷付けるものであったら、被害者が怒るのは当然です。「訂正しろ」とか「取り消せ」と抗議するのは当たり前です。「表現の自由」も含めた「自由」には必ず「責任」と「義務」が付きまといます。それらが無い「自由」は「自分勝手」「無法」になります。

■ 美味しんぼ抗議は「表現の自由侵害」と福島の市民団体
 5月15日の朝日新聞デジタルによれば、週刊ビッグコミックスピリッツの人気漫画「美味しんぼ」の東京電力福島第一原発事故をめぐる描写に対し、福島県が発行元の小学館に抗議したのは、「表現の自由の侵害にあたる」として、県内の市民団体が5月15日、抗議文を佐藤雄平知事に送った、とのこと。これは、福島県内の子どもたちの「被曝(ひばく)しない権利」の確立を求める「ふくしま集団疎開裁判の会」など4団体(会津放射能情報センター、子どもたちを放射能から守る福島ネットワーク、子どもたちの健康と未来を守るプロジェクト・郡山、ふくしま集団疎開裁判の会)。「風評被害を助長する」という県の批判に対し、同会の井戸謙一弁護士らは「事実の歪曲(わいきょく)。(描写は)根拠のない風評ではなく、体験に基づく見解だ」と反論しているそうです。不安にさいなまれていれば、そのストレスで、「いわれのない鼻血、免疫力の低下、慢性疲労症候群、めまい等で苦しむ」症状が出てくるのかもしれません。
 福島県内ではほとんどが小学館への抗議の声ですが、このような団体も一部にはあります。極少とは言え、こう言った声も紹介しておかなければ不公平なのでご紹介します。集団疎開裁判とは何かと言いますと、福島の放射線被ばくが怖いので、集団で疎開させろと訴えている人達です。こういう人たちが松井英介医師の「内部被ばく」「晩発障害」などの話を聞いて、甲状腺ガンを心配し、小さな子供のいる母子を安全な地へ集団疎開させるように求めています。福島地裁でも仙台高裁でも却下されて、暗黒裁判だと言って怒っています。それなら、と、安倍総理の夫人、安倍昭恵さんなどにも訴えているらしいですよ。行政や保健機関がデータを示して大丈夫と言っても「ウソだ」と言う人たちです。それらしい医師などを引っ張ってきて講演してもらって、「ホラ、危ないじゃないの」と言っています。政治家も「王様の飼い犬」であるマスコミもみんな敵だとしています。5月21日には参議院議員会館B-103室で緊急記者会見を開催するそうです。井戸謙一弁護士の他、原発ゼロの山本太郎参議院議員も出席します。詳しくはコチラ
 こういう反原発、原発ゼロ団体の方達は聞く耳を持ちません。せめて皆様、冷静に「福島第一原発事故と放射線に関する基礎知識」をご覧下さい。
(2014年5月17日)


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