584  不耕起栽培

 ふじみ野こどもエコクラブでは、子どもたちの環境学習の場として400坪の畑を地主さんから貸していただき、無農薬・ノープラスチックの野菜作りをしています。地主さんはこどもエコクラブの主旨に賛同して、ただ同然で貸してくれています。「環境にやさしい農業」とは実に大変です。鍬やスコップ、熊手などでの農作業はまさしく力仕事です。夏は汗まみれで、くたくたに疲れてしまいます。

■ 不耕起栽培に挑戦
 今年から実験的に不耕起栽培を始めました。昨年までは地主さんのご厚意で、年2回トラクターで耕作して頂いていました。トラクターの威力はスゴイもので、土が深くまでフカフカに柔らかくなるのです。畝を造るのも楽だし、草も無くなって、後は種を播くだけです。
 ところがある時埼玉県生態系保護協会の会長さんが視察に来て、「トラクターで耕すというのは実は土を貧しくしているんですよ」とおっしゃいました。耕すという行為は農業の基本で、人類が農業を始めてからずっと続いてきたものです。耕すことで土壌の構造をふかふかにし、水がたまりやすいようにして、植物の育ちやすい環境を整える、耕すことは、人類の文化の基本であるといえます。トラクターは化学肥料とセットで20世紀初頭から世界中に広まり、その結果、収量が劇的に上がり、世界人口は増えました。しかし、トラクターを使うことで、化石燃料に頼った農業になり、土が砂嵐となって、耕すほどに土が減り痩せて行くようになったのです。森林の枯葉で堆肥が出来て、家畜の糞尿が肥料になった昔ながらの有機農業が、トラクターと化学肥料、除草剤の農業になってしまいました。


2023年4月の畑 トラクターで耕した後です
奥の方には畝を作り、野菜が生え始めています
土の色が赤茶色ですね 関東ローム層の土は火山灰土なのです

■ 不耕起栽培のためのマルチング
 不耕起栽培とは、ほ場を耕さないでそのまま播種を行い栽培する農法です。慣行栽培とは違い播種前に農地を耕さないため、農作業の省略化や燃料削減、生物多様性の保全などに一定の効果があるとされています。不耕起栽培は、耕うんや整地の行程を省略し、作物残さを田畑の表面に残した状態で次の作物を栽培する技術です。中耕も含めて栽培中は一切耕起をしないのが基本で、畝を作らず平面で栽培します。もともと北南米の乾燥地帯で、耕起によって土壌の養水分が流亡し砂漠化することを防ぐために開発された技術です。降雨が多く多湿な日本の気候や土壌、狭小なほ場には適さず、成果が上がらないこともあって、なかなか日本では普及が進まなかったようです。しかし、デメリットや課題を解消するための研究や試行錯誤を重ねた結果、各地で独自の不耕起栽培の方法が確立されました。日本では主に水稲、小麦、大豆、とうもろこしなどで普及が徐々に進んでいます。冬場イネ科の植物を植え、春に根は残したままで刈り取ってそのまま土の上に載せておけば「自然なマルチ」になる上に、有機肥料に転ずるという一石二鳥になると言われています。他にも「ホトケノザ」や「スズメノカタビラ」等の草をそのまま残しておき、自然な「草マルチ」にする農家もあります。ハコベやツユクサなども除草せず「草マルチ」に転用出来ます。ちなみに「マルチ」というのは、農業用の資材で畝の表面を覆う「マルチング(マルチ)」のことを言い、マルチングを用いた栽培方法を「マルチ栽培」と言います。稲や麦のわらで土壌表面を被覆することが一般的でしたが、現在ではプラスチックのフィルムマルチシートを使う農家が増えました。マルチの目的は地温の調節、雑草抑制が主ですが、そのほか土壌水分の保持、降雨時の土砂跳ね返りを防止して病害発生を抑制、畦内の肥料流亡を防止する等の効果があります。

我が畑の近くの農家では、ほうれん草栽培に丸穴のフィルムマルチシートを使っています
この土は黒っぽく、長年耕した結果を示しています

■ 根菜類の栽培には向かない?
 不耕起栽培はじゃがいも、大根、にんじん、さつまいもなどの根菜類の栽培には向かないとされています。土をふかふかに耕すことで根が成長するためですが、不耕起の場合機械的抵抗が大きいので根の肥大が抑制され、分岐根の発生によって品質が劣化するとされています。したがって見た目カッコよく、スラっと伸びた作物を作りたい農家はトラクタで耕うんし、畝を造って排水を良くするのです。平らな土に種を播き、草マルチした状態で果たしてどうなるか、ニンジンも大根も、今年の結果には注目です。もし草マルチでミミズなどが土中掘り起こししてくれれば成功するかも?ちなみに今年はサツマイモを200株植えましたが、畝を造って植えたものと、平地に植えたものでどう結果が異なるか実験しています。

周囲に草が多いように見えるのは、今年は「除草」せず「不耕起栽培」しているからです
左側は畝に植えたサツマイモ、右側は平地に植えたもの、さて結果は?
ちなみにサツマイモを植えたところはホトケノザが自然に枯れただけで除草してません
草マルチの様相ではありませんね。

■ 子どもたちの環境学習の場
 ふじみ野こどもエコクラブの畑は立派な野菜を育てるのが目的ではなく、子どもたちの環境学習のためですから、化学肥料を使わずに、除草剤も使わずに、どうすれば野菜が育つかを試して実験する場です。堆肥を作ると、ミミズなどの土中生物がいっぱい増えて、草がそこだけ大きく成長します。それだけ土中養分が多いということです。そして土が黒っぽくなり、ミミズや土中の虫を狙ってトカゲが集まり、鳥も集まってきます。見事な生態系学習になるのです。草だって立派な教材です。どういうところにどういう草がはえるか?それは何故なのか?詳しい先生に教えて頂きます。タンポポの根がどれだけ成長するか掘って調べたらビックリしましたよ。厄介なのは土中の青虫、普段は見えませんが、夜になると土の中から出て来て野菜を食べまくります。春菊やネギなどくせのある野菜は食べられませんが、ブロッコリーやキャベツなどは美味しいらしく、バンバン食べられます。殺虫剤など撒かないので、見つけたら箸でつまんで、他の雑草畑に移動させます。踏みつぶすなどの非情なことはしません。不耕起栽培は一種の社会実験です。なお、ふじみ野こどもエコクラブのホームページで活動の詳細をご覧になれます。

2024年4月21日(日)子どもたちの環境学習でタンポポの根がどれだけ地中に伸びてるか
穴を掘って計ってみました。ビックリですね、30cmなんてものではありません、こんなに深くまで...
(2024年5月19日)


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