433  投資詐欺

 梅雨入りして以降、空はどんよりしながらも雨がなかなか降らず、例年とは違うなぁという感想でしたが、やっと降ってきて、これからはぐずついた天気が続くようです。6月も終わりに近づき、もう今年も半年経ったか・・・という感想ですが、空と同様どんよりした気分の日が続きます。今年は残念なことに少年野球も忙しくないのです。天気予報はコロコロ変わるので、数日先のことは分からない日々が続いています。

■ 2回目のワクチン接種を受け...
 2回目のワクチン接種を受けました。同じ日に大阪府の吉村知事が1回目の接種を受けたと報じられました。1回目より副反応が大きいのは抗体が出来ていて、ワクチンを新型コロナウイルスと思って免疫作用が働くためだと言われており、何とも無かったと言う人もいますが、少しは反応してくれなければ...などと思っていました。中には発熱して大変だったという人も居ますが、ほとんどの人からは大したことないと聞いていました。やはり1回目同様、接種した腕が重くなり、張った感じになりました。注意して発熱を何度も測っていたところ、平熱より0.1〜0.2℃高く、反応してるなぁと思いました。全身倦怠感が出たのが1回目と顕著に違うところでした。運動した後や、畑仕事をした後のような疲れと同じ感じで、昼寝しました。1回目は小池百合子さんと同日だったので、小池さんはどうしたかなと思いますが、静養中ですから先延ばしでしょうね。

■ 「重大な懸案事項」
 その小池百合子さんの周辺で、きな臭い事件が起きました。横浜のみなとみらいに聳え立つランドマークタワー19階に、太陽光発電や浄水装置開発などを手掛ける潟eクノシステムという会社がありました。フロアの奥には湾岸エリアが一望できる応接室があり、ここに投資家たちを案内して商談する・・・典型的にきなくさい話で、この手の勧誘話は筆者が経営者だったころにもよくありました。菅義偉首相のブレーンの1人で、地銀再編のキーマンとして知られている北尾吉孝社長率いるネット金融大手、SBIホールディングス(株)が今年2月5日、子会社のSBIソーシャルレンディング(株)の貸付先の企業に「重大な懸案事項」があるとして第三者委員会を設置したことが事件の始まりでした。


横浜・みなとみらい地区のシンボル;ランドマークタワー

■ 太陽光発電投資詐欺
 SBIソーシャルレンディング(株)は、「融資型クラウドファンディング」とも呼ばれる、ネット経由で借りたい企業と貸したい投資家を結びつけるサービスを2011年から始めました。投資家から募った資金を事業会社に貸し付ける事業です。「重大な懸案事項」がある貸付先の企業とは潟eクノシステムでした。第三者委員会の報告書によると、2017〜20年に個人投資家から集めた資金をSBIソーシャルレンディング(株)は再生可能エネルギーや不動産案件対象に潟eクノシステムに約380億円を貸し出し、ほかの事業返済などに約130億円が使われていたのです。これを受けて東京地検特捜部は4月、金融機関にうその書類を提出して融資金を騙し取った詐欺の疑いでテクノシステム社の家宅捜索に入りました。そして5月28日、阿波銀行と富士宮信用金庫に虚偽の書類を提出して、計11億6,500万円を騙しとったとして、潟eクノシステムの生田尚之社長らを逮捕したのです。その資金の大半は太陽光発電をはじめとする正規の目的に使われず、複数のトンネル会社を通じて、会社の借入金の返済などに充てられていたのです。

■ カジノとキャバクラ好きの生田尚之容疑者
 生田容疑者のカジノ狂いは有名だったそうです。ラスベガス初め、マカオ他いろいろなところのカジノで擦っていました。妻子がいるのに、愛人も複数いて、キャバクラではお気に入りの女の子の誕生日祝いに一晩で1,200万円も使い、シャンパンタワーにカラオケでバカ騒ぎするなどしていたそうです。問題は、この会社…潟eクノシステムが小池百合子さんの資金管理団体と政党支部に計200万円の献金をしていたことです。週刊文春によれば、小池さんの金庫番≠フ男性が潟eクノシステムの最高顧問のような役割をしていたとのことです。詐欺事件を捜査する東京地検特捜部がどこまでこの事件に斬り込むかが注目されています。小池百合子東京都知事の周辺にも捜査の手が及ぶとみられています。

■ 著名人利用は詐欺師の常套手段
 生田容疑者は、原発に反対し、太陽光発電など再生可能エネルギー利用を促進するという主旨で小泉純一郎元首相との対談記事や、潟eクノシステムのCMに俳優・小泉孝太郎さんを起用したのをはじめ、複数の政治家との関係を謳って融資先を信用させるのに利用していました。詐欺師が政治家など著名人を立てて利用するのは常套手段です。それにしても、小泉純一郎元首相、小池百合子東京都知事、SBIの北尾社長らを利用するとは大したタマです。金融庁は6月8日、SBIソーシャルレンディング(株)が金融商品取引法に違反したとして業務停止命令を出し、SBIホールディングスはソーシャルレンディング事業(融資仲介業)から撤退すると表明しました。

■ 「中高生でもできるアルバイト」?
 投資詐欺で注意しなければいけないのはスマホを使ってSNS(会員制交流サイト)などで投資勧誘する手口が増えていることです。先日も山形県で、マッチングアプリを通じて知り合った女を名乗る人物などから、LINE(ライン)で「FX(外国為替証拠金取引)への投資の金が必要」などと言われ、十数回にわたって、現金計約3千万円を指定された口座に振り込んだという男性の話が報じられました。オレオレ詐欺は今や常態化しましたが、ネット利用の投資詐欺が増加しているようです。
 「金が稼げる」「高額バイトあり」などという投稿を見て、子どもが引っ掛かるケースも見られます。例えば「1万円のギフトカードを買ってその“コード”を送ってください。他の人に同じように勧誘して、その人から1万円分のポイントが入手できたら、山分けしましょう。二人以上勧誘すればすぐに元が取れ、あとは勝手にお金が増えて行きますよ」などという書き込みがあるのだそうです。分別ある大人なら、典型的なマルチ商法への勧誘、違法行為そのものだと気付くでしょう。しかし中高生がお小遣い稼ぎでお年玉を使って”投資”する感覚で手を出したとしたら...被害者どころか、加害者にだって成り得るのです。Twitterに限らず、InstagramやTikTokでもこうした「中高生でもできるアルバイト」などという書き込みが見られるそうです。

■ 植物工場の成否
 256『野菜高価』(2018年2月4日)で、植物工場について触れました。モヤシはあんなに安いのにどうして商売になるのか?についても書きました。モヤシのような「発芽野菜」を「スプラウト」と言い、なんといっても村上農園が有名ですね。植物工場でレタス栽培が一時期注目されましたが、太陽光利用型植物工場はともかく、人口光栽培の「みらい」など大学発ベンチャーは結局立ち行かなくなり倒産しました。グランパのドーム型野菜工場も悲惨でしたね。決して詐欺ではありません。画期的なアイデアでしたが、ドームを膨らますエネルギーが余計でした。国からも地方自治体からも民間からも多額の補助金、投資を集めながら倒産しました。ところが、モヤシやキノコのような安いものでも、立派な施設でヒートポンプなどエネルギーを使いながら栽培してるのに商売になっています。何が損益分岐点なのでしょうか?養液ミョウガ栽培や、太陽光利用型植物工場でのイチゴ栽培やトマト栽培は利益が出ていることも紹介しました。ただし、ここで紹介した軽井沢四季彩ファームは、詐欺で訴えられています。「桃薫」という白いイチゴを「軽井沢貴婦人」と銘打って、すごく高い値段で販売していました。

太陽光利用型植物工場でイチゴの高設養液栽培

■ 軽井沢四季彩ファームの栽培棚レンタルオーナー商法
 2019年1月に岡山県警はイチゴの売上額を過大に偽って栽培棚のオーナーになるよう顧客を勧誘したとして、特定商取引法違反(不実告知)の疑いで栽培棚レンタルオーナービジネスを展開する「軽井沢四季彩ファーム」(東京)の福嶋徳彦代表社員ら6人を逮捕しました。イチゴ生産の委託先は「株式会社四季彩農園」(長野県北佐久郡軽井沢町発地)で、四季彩ファームと四季彩農園は「資本関係は無いしグループ会社でもない」として、別会社だというのですが、逮捕された1人が同農園の会長を務めているわけですから、怪しい話です。軽井沢四季彩ファーム鰍ヘ全国に営業所を展開し、高級イチゴの栽培棚の所有権を小口販売する『栽培棚レンタルオーナー』なる商品を販売して、2018年までに約32億円を集めたようです。出資したのは全国27都道府県に在住する高齢者を中心とした約840人だそうです。2020年1月に「お詫びと現状の報告」と題された1枚の封書が投資者宛に送付されました。「この度は大変なる御迷惑を致し、すなわちレンタル料金と栽培ベッド購入代金返還が滞る事になり、ついにお約束が実効できない事態に陥ってしまい心より深く深くお詫び申し上げる次第でございます」・・・出資者のもとに配当金が払えないという詫び状が送られてきました。それどころか元本も戻りません。典型的投資詐欺ですね。詫び状には「役員の報酬を全額カット及び私財提供」、「著しい風評被害を被り、取引金融機関はロックされました」、「台風19号の水害被害」などが重なり、「刃折れ矢尽きて破産の受容すらままならない現状です」などと、再起が不可能である理由を縷々挙げ連ねていたとのこと。すでに、集めた32億円のキャッシュはなく、残るのは長野県内の25棟のハウスのみ。今後の投資金の返済には、うち20棟を売却し、返金に充てると言うのですが‥‥。

長野県北佐久郡軽井沢町発地の四季彩農園のハウス 浅間山がきれいです

■ 東てる美さんを利用
 ひところ、「高級イチゴ『軽井沢貴婦人』を栽培している東てる美の田舎暮らしに密着」・・・というテレビ番組がいろいろなチャンネルで放映されました。有吉であったり、坂上であったり、いろいろな番組で軽井沢で暮らす東てる美さんが、四季彩農園で軽井沢貴婦人という1箱12600円の大きいイチゴを育てるために大変な作業をこなす姿が紹介されたのです。農業で一攫千金を考える人には青年就農給付金制度を利用すると良い・・・とか、東てる美さんが銀座の高級フレンチで営業を行う姿を紹介し、スタジオで軽井沢貴婦人を試食したりしました。「軽井沢貴婦人」というのも東てる美さんのネーミングのようです。このテレビ放映の模様をプリントして、軽井沢四季彩ファーム鰍フ営業マンが全国に営業に回りました。ゼロ金利の時代、おカネを持っている高齢者の中には飛びつく人が出たようです。なお東てる美さんは思うようにもうからないのですぐ止めてしまったみたいですが、一度放映された残像は消えるものではありません。

軽井沢貴婦人(桃薫)のネット販売

■ 怪しい儲け話
 筆者のところにも軽井沢四季彩ファーム鰍フ営業マンがやってきました。隣駅の駅前のマンションに住んでいて、某超有名証券会社の営業から転職したというのです。証券会社はお客様が儲かろうが損しようが手数料が入るけれど、そういう商売がイヤになって、地に足の着いた商売をしようと思って転職したと言うのです。フムフムなるほど、投資信託よりは農業のほうが確かに地に足は着いてるな、と思って話を聞いていました。曰く、軽井沢四季彩農園は、日本の最も素晴らしい農業文化を活性化するために、夏場には収穫不可能といわれた夏採りイチゴ栽培にも成功し、2012年からは農水省所管の独立行政法人「農研機構」が新種登録した「桃薫」(自社ブランド名:軽井沢貴婦人)の生産に力を注いで来たとのこと。そこで現在ご好評に応えて「軽井沢貴婦人」の増産に向けてイチゴハウスの増改築計画を進め、農園増改築のため栽培ベッドの所有権を小口化販売することを企画したというのです。イチゴが売れれば配当が入るというシステムです。代表社員の福嶋徳彦さんは、永田農法で著名な永田照喜治さんとともに、永田農法の全国展開を目指してきた人です、という説明まで聞いて、「チョット待って」と話の腰を折りました。実は筆者が居た会社は植物工場や施設園芸ハウスの環境制御装置を製造販売しており、永田農法はもちろんのこと、福嶋徳彦さんのことも知っていました。そこでこれはヤバイと思ったのです。そこでこの営業マンには早く足を洗ったほうがいいよと、そのワケを教えました。そもそもそんなに儲かるのなら銀行に話を持ち込めば融資してくれるはずです。実は日本の金融機関は農業への融資には比較的寛容なのです。その理由は、農業は土地をはじめとする資本が必要で、それを担保にできるからです。それなのに個人に出資を持ちかける、これは怪しいとしか思えません。

軽井沢町発地の農産物等直売施設『軽井沢発地市庭(カルイザワホッチイチバ)』の外観
四季彩農園は写真左方向の外れた場所にあり

■ グランパの二の舞
 出資話を断った後、筆者は万座温泉の帰りにふと思い着いて、軽井沢町発地の四季彩農園のハウスに寄ってみました。実は軽井沢町発地には横浜から移住した知り合いも住んでいます。確かにパンフレットで見たハウスがありました。余り立派ではありません。日本全国、駆け巡って温室や植物工場を見てきましたから、施設を見て儲かっているかどうかはすぐ分かります。近くには別の農業者さんのトマトハウスもありました。こちらは間違いなく儲かっています。そもそもイチゴとトマトはまともに営農すれば絶対儲かるのです。すぐ近くには農産物等直売施設『軽井沢発地市庭(カルイザワホッチイチバ)』がありました。広大で、素敵な道の駅です。
 およそ1年後、軽井沢四季彩ファーム鰍フ営業マンが再びやってきました。「四季彩農園では、軽井沢町発地の他に、いろいろな場所で独自の特許技術(アヴェニール農法)で、通常より長期間の収穫を可能にするドーム型ハウスを展開しているので、投資しませんか?」と言うのです。このハウスをドンドン建設していくと言うのです。まだ足を洗っていないのか、と思いつつ、その説明資料を見て、「これはダメだよ、上手く行かないよ」と教えてあげました。例として、グランパのドーム型植物工場のことを挙げました。「四季彩農園はグランパの後追いをしているみたいだ、考え方は良いかもしれないが、現実には儲からない、お客様に迷惑をかける前に足を洗ったほうがいいよ」と言いました。あの営業マンはいま、どうなったのでしょうか。

グランパの「ドームファーム北杜」

■ 詐欺商法の定番は芸能人や政治家の利用
 軽井沢四季彩ファーム鰍フホームページやFacebookは今も健在ですが、ホームページの最後の更新は2018年6月、ブログは2019年1月が最後です。岡山県警が捜索に入り、逮捕者が出た時ですね。2020年1月に「お詫びと現状の報告」が出た時から実質営業休止状態でしょう。被害者は訴訟しかないでしょうが、返金は望み薄です。詐欺商法の定番は芸能人や政治家の利用です。東てる美さんもそうですが、2017年10月4日のブログで、「元総理大臣田中角栄氏の実子、一般社団法人田中角栄平和祈念財団理事長、田中京氏が軽井沢四季彩ファーム鰍フ代表取締役社長に就任する事が内定しました」・・・とあります。また2018年10月のブログでは、「10月25日、神戸市におきまして、弊社代表が理事長を務めます『田中角栄平和祈念財団』の式典が著名な方々をお招きして盛大かつ和やかな雰囲気で行われました。その際には田中代表は弊社に対しての責任と意気込みを語り、この度『田中角栄平和祈念財団』の理事を御勤め頂く事が決定しました旭日大綬章を受章されている、国土庁長官、自治大臣、国家公安委員会委員長、衆議院政治改革特別委員長等の重責を御歴任されている石井一先生より理事就任の御挨拶と、田中代表に対してのと弊社へのエールの御言葉を頂戴しました」・・・とあります。これも怪しい話で、『一般財団法人田中角栄平和祈念財団』が田中角栄生誕100年を機に2018年5月23日に設立され、その設立記念パーティーがホテル雅叙園東京で行われ、石井一さんが理事に就任したのは事実でしょうが、それと軽井沢四季彩ファーム鰍ヘ一義的につながるわけではないと思われます。田中京氏は軽井沢四季彩ファーム鰍フ代表取締役とホームページには載っていますが、名前を利用されたとしても、会社の実態が無い以上、今もそうか怪しいものです。田中京氏は中国との橋渡しを熱心にやられているみたいですね。

トマトハウス

■ 投資詐欺の舞台になりやすいジャンル
 昔から農畜産業や水産業は詐欺の舞台になり易いものです。海老の養殖話とかキノコなどが舞台になってきました。安愚楽牧場の牛のオーナー投資は2011年のことです。8月1日に営業停止となり、負債総額は2011年3月期末時点で619億8千7百万円という巨額でした。2005年6月には東京都新宿区のNPO法人「やまびこ会」)の霊芝栽培詐欺事件がありましたね。「やまびこ会」というのは全国に数ありますから、名前のせいで迷惑被った人も多かったようです。1999年9月、聴覚障害者への福祉や教育についての情報提供や、健常者との交流を図る目的で設立、経済企画庁(現内閣府)からNPO法人の認証を受けました。2000年5月からは架空の観光事業への出資者募集を始め、約340人から4億数千万円を集めました。2002年8月からは、架空の焼却炉販売事業への出資話で、約840人から総額約15億円を集めました。さらに2003年5月からは、霊芝=マンネンタケというキノコ栽培・販売事業への出資話で、約900人から約4億円を集めたのです。同会による被害は、3つの架空事業で延べ約2000人、総額約23億円に上ることが警視庁と広島県警の調べで分かりました。「やまびこ会」の初代理事長は「りんごの唄」で知られる歌手の故・並木路子さんで、名誉総裁に昭和天皇の皇后、故・良子(ながこ)様の従弟である、元皇族の梨本徳彦氏を担ぎ上げたのです。全国各地でパーティを開いては岸部四郎やせんだみつおといった芸能人を登場させて信用させる手口でした。

■ お隣からさくらんぼを頂きました
 甲府市の友人からサクランボが届いたことを先に紹介しました。奥様のお知り合いが南アルプス市で栽培されているのだそうです。そして今度は隣のお宅から山形県寒河江市の八果園大沼の佐藤錦を頂きました。赤い宝石、甘くて美味しいです。
 
頂いたさくらんぼ(佐藤錦);山形県寒河江市産(左)と日本第2位の高峰北岳のある山梨県南アルプス市産(右)
(2021年6月29日)


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