379  コロナ禍

 新型コロナウイルスが世界にもたらしたインパクトは大変なもので、今でも感染者は増え続けています。特に北米、南米が大変なことになっています。ブラジルは遂に感染者、死者ともに米国に次ぐ2位となりました。このペースで増え続けたら米国をも抜くのでは?と言われています。これまでずっと続けていた「毎度お馴染みのCOVID−19感染者及び死者の状況」を掲載するのはやめます。新しい日常とやら言われていますが、暗中模索、試行錯誤はずっと続いて行くでしょうから、もう区切りを付けるべきだと思ったのです。360『人気温泉ランキング』(2020年2月2日)以来、18回連続でコロナ、コロナ、コロナ・・・でした。

■ 独裁的な指導者の台頭
 近年、世界中で難民対策が問題化し、国境を閉じろと言った主張をする右派勢力が台頭しました。英国のEU離脱はまさにその結果でした。こういう時代には独裁的な指導者が現れます。そういう人を民衆が求めるからでしょう。過去に習えば、ヒットラーの台頭を許したために世界中で大変な数の犠牲者が出ました。その欧州では、イタリアのほか、フランス、ドイツ、オーストリア、オランダ、ベルギー、スウェーデン、デンマーク、ポーランド、ハンガリーなどでも極右政党が国政選挙で躍進しており、政治的なリスクの「火種」とみなされています。世界を見渡しても、トランプ米大統領、習近平中国国家主席、北朝鮮の金正恩委員長、ロシアのプーチン大統領、トルコのエルドアン大統領、そしてイランのハメネイ師など、独裁的な指導者がゾロゾロ、更にフィリピンのドゥテルテ大統領、ブラジルのボルソナロ大統領・・・、実にヤバイ感じがします。韓国などから見ると日本の安倍首相もそのように映っているかもしれませんね。

■ COVID−19が突きつけた刃、浴びせた冷水
 新型コロナウイルスによるパンデミックは、この世界の風潮に刃を突きつけたのではないかと思います。いやおう無しに国境を閉じなければならなくなりました。グローバル化の流れに一瞬にして冷や水が浴びせられました。COVID−19の影響をモロに浴びたのが発祥地の中国、イラン、イタリア、スペイン、英国、フランス、ドイツ、ベルギー、スウェーデン、そして米国、ロシア、ブラジル、トルコ、メキシコ、カナダ、もうお分かりでしょう。右派勢力が台頭している国と独裁的な指導者がいる国です。メキシコとカナダは米国の影響と思われますが、感染者ゼロと言っている北朝鮮など、推して知るべしです。


アジサイ

■ 米国から始まる独裁的な指導者排除の流れ
 更に米国での人種差別抗議デモは、新しい風潮と見るべきでしょう。デモ参加者は若者が多く、しかも白人が多いことがニュース映像で分かります。彼らは人種差別抗議デモを通じて、反トランプ、反マネー資本主義を主張していると想像します。共和党は以前、マネーの面で健全な政党とみられていましたが、「トランプの党」(大統領寄りになった現在の共和党)は決してそうではないことに共和党支持者も気付き、反トランプのうねりが起きつつあるように思います。この流れが世界中に伝播すると、独裁的な指導者が排除されてくるかもしれません。

■ 株価の乱高下
 前回はニューヨーク株式市場のダウ工業株30種平均が2万7千ドル越え、日経平均株価も2万3千円越え、COVID-19が収束する気配もないのに株価が上昇するのは、筆者が以前から書いている通りの展開で、日経平均株価もまだまだ上がります・・・と書きました。ところがその後COVID-19の二次感染が心配とやらで、ダウ工業株30種平均は急落して2万5千605ドル、日経平均株価も連れて2万2千305円で週末の取引を終えました。「二次感染が心配」なんて今更なんなの?という感じがしますね。そもそも恐慌さえも心配される状況なのに株価が上がる背景を考えれば、下がって当然なのに・・・こうした乱高下は投資家のマインドがみなぎっている証拠、これこそが「まだまだ上がる」ことの根拠です。

■ 米国が2022年末までゼロ金利維持
 米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長がゼロ金利政策を2022年末まで続けるとの方針を発表しました。これによって当然ながら米国の長期債権金利は下落(価格は上昇)しました。世界の基軸通貨としてのUSドルへの不安からドルが売られ、円高となりました。投資家はリスクをとって利益を狙うときは株に投資し、ヤバイとなると安全逃避で株を売って債権を買います。取りあえず債権ならばオカネはマイナスになることはありません。しかしゼロ金利だと増えません。そこでUSドルから別の国の通貨に乗り換えるのですが、ゼロ金利の日本円に何の意味があるの?それは「安全」です。

バラ

■ 二タイプの投資家
 投資家は常に株で儲けようと考えています。なにしろオカネはたっぷりあるからです。日銀は市場から株を買い、国債を買いますから、市場にジャブジャブとオカネが溢れます。したがって企業業績と素直にリンクせずに株価が上がってしまうのです。米国も同様、リーマンショックのときはサブプライムローンという、信用力の低い人にオカネを貸して住宅ローンを組ませたのですが、今FRBはジャンク債のような、信用力の低い企業の社債をバンバン買っています。非常に怖い状況ですが、投資家にとっては腕のなる状況なのです。投資家と言われる人たちは、変動が大きいときにジタバタする人と、じっと構えて様子見の人に分かれるようです。後者は概ね大物と言われる人たちですね。自分で決めた投資を淡々と実行して、目標利益に達するまで、基本的に資産を「ほったらかして」おく人です。しかし、大概の投資家はばくち打ちと同様、こういうときがチャンスとばかりに目をランランと輝かせるのです。下がったら買う、上がったら売る、と眼を血走らせてドタバタするのです。

■ 「リーマン・ショック級」なのか?
 昨年の消費税率引き上げ前によく聞いた「リーマン・ショック級の事態が起こらなければ消費税率引き上げを予定通り行う」という表現ですが、今回のコロナショックは果たしてどうなのか?日本銀行の黒田東彦総裁が「リーマンショックほど経済が落ち込むとは考えていない」と以前会見で話していましたが、甘かったですね。最近はこの方の薄ら笑いのような表情が悪魔的にすら見えます。西村康稔経済再生担当大臣は「リーマンショック並みか、それ以上」と会見で語りましたが、その後の状況を見ますと、もはや「リーマン・ショック級」は既に越えたと誰しも感じているでしょう。リーマン・ショックの時は、金融のトラブルが実物経済に及びました。カネが回らないと企業活動が回らないのです。このときは中国が力強く世界経済を牽引して乗り切りましたが、今回は震源が新型コロナウイルス感染症で、その発祥地が中国です。中国発の感染症不況が瞬く間に世界中に波及し、今や南米、アフリカで勢いを増しています。感染症は世界の人類の生活と経済に対する大きな脅威ですが、100年前のスペイン風邪や、最近のSARSやMERS、新型インフルエンザなどの経験からしても、この種の脅威は「いつかは終わる」はずです。人間の心理は、楽観と悲観の間を揺れ動くので、今のように先が見通せない時には、過度の悲観が覆います。今はリスクを取る投資をするときではありません。郵便貯金は何があっても安心と思い込んでいる人が多いでしょうが、必ずしもそうとは言えません。郵便貯金の30%は、為替変動リスクのある外国証券で運用されていますから、こちらも全世界不況で円高になると、目減りすることが考えられます。手数料の高い投資信託には手を出さないことです。

ショウブ

■ コロナ・パラリシスによるパラダイムシフト
 コロナ・パラリシスによるパラダイムシフトのひとつはテレワークの普及でしょう。これを経験した人は、もう満員電車はイヤになっているはずです。少なくとも、通勤時間の無駄とストレスの削減をもたらす点だけでも大きなメリットがあります。人と人が対面して展開するビジネスと違って、テレワークでは「成果主義」が求められる、すなわち成果評価に客観性が求められるようになります。そしてそれが報酬に反映されるわけです。また、働く人の時間が自由になるので、「副業」がいっそう普及すると思われます。額に汗して労働していたのが、頭脳労働になって行くので、これに対応できない人は?淘汰されていくかもしれません。また、多くの社員を統制するために必要だった中間管理職の存在意義も薄れていくように思います。将来的には、独立事業主的な個人が複数の会社と契約して働くような働き方になっていくのではないでしょうか。そうなると「協調性」などは大きなファクターではなくなるので、ウ〜ン、難しい時代になりますね。

■ 金融と財政を共に拡大した結果は?
 リーマン・ショックと今回のコロナ・パラリシスの影響の違いは、金融緩和だけではなく、大きな財政支出があることです。金融と財政両方の拡大を続けた場合の帰結は・・・経済理論的には「インフレ」です。スタグフレーションだけは勘弁して欲しいですね。今回のコロナショックが、金融危機から始まったリーマンショックと違うのは、国内消費の縮小によってダメージを受けるのがサービス業を支える中小企業だということです。資金繰りに困った中小企業の倒産が相次ぐ、街のお店の閉店、廃業が懸念されます。
 これまでのアベノミクスで株価が上がっても、儲けたのは資金のある富裕層です。リストラを繰り返した大企業が過去最高益を上げて内部留保をため込む一方で、社員の給料は上がらず非正規雇用が増えました。そこにコロナが襲った、困ったのは富裕層ではありません。大企業は内部留保のお蔭で何とかなっているという側面もあります。

キンギョソウ

■ 各業界に落とす翳・・・日本酒業界もピンチ
 旅行業界、航空業界、観光業と関連産業、飲食業にとっては、非常に苦しい状態になっています。ファミリーレストランも続々閉店、コンビニ営業も時短が進んでいます。人々の考え方が変わったので、もはや深夜営業、24時間営業は立ち行かなくなりつつあります。法改正で同一労働同一賃金への移行が求められることになりましたが、これとコロナが重なったので、非正規を含む従業員の選別が行われる可能性も考えられます。
 新型コロナウイルスの影響で日本酒の消費が落ち込んでいます。日本酒造組合中央会によると、出荷量は2月が前年同月比9%減、3月が同12%減、4月が同21%減と月を追うごとに落ち込みました。6月に入って少しは飲み会の客足が回復したようですが、2次会、3次会の客は少なく、家族持ちの年代は酒席を敬遠するようになり、コロナ前の需要に戻るのは難しそうです。当然ながら流通在庫が積み上がり、事態は深刻です。日本酒ブームで、活路を求めて始めた輸出もウイルスの影響で各国の需要も低迷し、3、4月の輸出は激減、結果的に大量の在庫を抱えることになった酒蔵も多いようです。
 酒造好適米「山田錦」の産地;JA全農兵庫では、今秋収穫される2020年産の契約数量を落としてくれとの問い合わせが相次ぎましたが、多くの農家が苗作りを始めていて変更できない農家が大半、もはや手遅れでした。主食用品種「コシヒカリ」に切り替えても「山田錦」に比べ10アール当たり収入は半減します。この秋が農家には恐ろしいようです。
(2020年6月14日)


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