12月4日に遅い紅葉の話を書きました。実はまさにその日、北日本では大雪に見舞われていました。そしてお隣富士見市の畑ではイノシシの大捕り物、師走ですね。 ■ 富士見市の畑でイノシシの大捕り物
■ 日本は本当に安全な国なのか? 今回のテーマ・・・日本は本当に安全な国なのか?災害が起きるたび、窃盗犯の横行のニュースが報じられると、日本人も地に堕ちたと思います。昔は鍵をかける家など無かったのに、今では厳重にロックするのが当たり前になりました。昔は芸能人紹介の記事に自宅住所が書いてあったりしたのに、今では小学生の意見を載せた地域新聞にもイニシャルのみで実名は伏せるのです。どうして?と聞くと、個人情報がなんたらかんたらとかいう理由だそうで・・・何か違ってませんか? ■ 日本の治安は悪化している? ちょっと古いデータで恐縮ですが、2012年に内閣府が行った「治安に関する世論調査」では、過去10年間で日本の治安が「悪くなった」と思う人が81.1%に上りました。その理由としては「地域社会の連帯意識が希薄になったから」が54.9%と最も多く、次いで「景気が悪くなったから」が47.4%でした。「日本の治安は悪化している」というイメージが広がったのは、1997年に神戸で連続児童殺傷事件(例の酒鬼薔薇聖斗・・・)が発生し、少年犯罪の低年齢化や凶悪化に注目が集まったあたりからのようです。 ■ 2002年をピークに犯罪が急増、その後急減しているように見える
■ 検挙率の低下 検挙率の低下にも同様のカラクリがあります。警察安全相談(困りごと相談)の件数が2000年以降に急上昇しているのは、警察の相談体制が強化されたために、それまで被害者が泣き寝入りしていたような犯罪が掘り起こされ、認知件数が引き上げられたようです。その一方で、認知した事案に対応しきれなくなって検挙率が下がったということなのです。さらに、一般刑法犯の80%以上を占める窃盗事件について、マンパワー不足から余罪調査が十分にできなくなったこと、また窃盗の20%を占める自転車泥棒のような軽微な犯罪で検挙実績を積み上げるより、より重大な犯罪の捜査に人的資源を振り向けるようになったことも、検挙率の低下につながっているようです。 ■ 治安悪化はイメージだけ? 刑法犯の認知件数は2002年に約285万件と戦後最多に達しましたが、2003年以降、減少に転じました。刑法犯の過半数を占める窃盗の認知件数が毎年減少したことが大きな要因です。前述の世論調査の結果に現れている「体感治安」の悪さとは逆に、2002年以降、一般刑法犯の認知件数は減少を続けているのです。殺人の認知件数にいたっては2013年に戦後初めて1000件を切りました。検挙率も、殺人93.5%、強姦88%と、凶悪犯罪では依然として高い数値を維持しています。これらデータを考え合わせますと、治安悪化というイメージ自体に根拠がないのでは?と思われるのです。龍谷大学法科大学院の浜井浩一教授の調査によりますと、「2年前と比較して、自分が住んでいる地域と日本全体で犯罪が増えていると思うか」と聞いたところ、「とても増えた」と回答した者のうち、自分の住んでいる地域では3.8%だったのに対し、日本全体では49.8%でした。つまり、多くの人が「自分の周りでは治安がそれほど悪化していないが、日本のどこかでは治安が悪化している」と感じているということです。 ■ 犯罪態様の変化 では何故、治安悪化というイメージが増えているのか?考えられるのは、殺人事件の報道が増えていることです。認知件数とは無関係に、マスメディアで殺人が報じられる件数が増えていること、さらにインターネットの普及により日本中で発生した犯罪情報が瞬時に広まるためと考えられます。
■ 厳罰化の流れ 日本では地下鉄サリン事件などのオウム真理教事件が厳罰化の転機になったと言われています。被害者感情の重視や犯罪報道による体感治安の悪化なども背景にあると思われます。2010年には刑法・刑事訴訟法の改正案が成立、殺人などの死刑にあたる罪の公訴時効を廃止。2013年には自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律が成立。2014年には児童ポルノ禁止法改正案が成立。2017年に共謀罪(テロ等準備罪)制定と、厳罰化の流れは加速しています。危険運転致死傷罪の制定や、さらに飲酒運転の処罰の厳罰化に伴い、飲酒運転に起因する死亡事故は激減し、2005年には10年前の半数にまで減少したように、厳罰化によって実際抑止に繋がった例もあります。一方で、交通事故を起こした運転者が危険運転致死傷罪による厳罰を恐れたためにひき逃げや「飲み直し」による飲酒運転の証拠隠滅が増加したという指摘や、銃刀法の改正による違法拳銃所持の厳罰化によって拳銃の隠し方が以前より巧妙になり、拳銃の摘発が難しくなっているとの指摘もあります。11月27日に兵庫県尼崎市神田南通の路上で、神戸山口組の幹部で傘下組織の三代目古川組・古川恵一総裁が機関銃で撃たれ殺害される発砲事件が起きました。いま全国各地で指定暴力団の抗争による発砲事件が起きていますが、ついに機関銃が登場したか、と暗澹たる思いです。 ■ あおり運転の判断基準はよく検討すべき 飲酒運転が減ったのは厳罰化のおかげかと言いますと、むしろ事例報道によって社会全体に飲酒運転への眼が厳しくなり、社会的制裁が怖くて減ったというほうが大きいのではないかと考えます。前記の「あおり運転の厳罰化」も、実際東名高速で車を停止させ、夫婦がはねられて亡くなった事件で、あおり運転の末、車を高速道路上で停車させた行為を危険運転致死傷罪で罰せられるのか?という議論がキッカケです。事故当時は運転していたわけではなく、はねたのもあおった本人ではなかったからです。しかし裁判所はこれは危険運転致死傷罪に該当すると判断しました。ただし今後あおり運転の判断基準が議論されると思いますが、これはよくよく検討されるべきです。実際高速道路の追い越し車線をトロトロ走っていて決して譲らない車はよくあります。こういう場合クラクションやパッシングライト已む無しと思いますが皆様どうでしょうか?筆者はあおりと思われたらいやだからやりませんが... ■ 死刑制度廃止圧力にさらされる日本 日本の死刑制度は、人権を重視する世界からの廃止圧力にさらされています。アムネスティの統計によれば、死刑廃止国142ヶ国(法律上は死刑があるが、執行されていない国を含む)に対し、死刑存置国は56ヶ国(2018年末時点)で、世界の趨勢は死刑廃止にあるのは明白です。 先進国の中で実際に死刑執行しているのは日本と米国のみ、途上国の中国のようにわずかの取調べで即裁判、死刑判決後すぐ執行というのは論外として、韓国など、死刑制度はあるものの実際には執行していない国もあります。被害者遺族の心情を慮って死刑已む無しというのが国民世論の多数ではありますが、世界の中で日本が異様な国であるというのは事実であり、しかもますます日本の孤立化が進んでいるというのはいかがなものでしょうか。 ■ 中曽根康弘元首相逝去
■ 中村哲氏を悼む
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