347  手のかからない子
 先週は草津に行って来ました。いつ行っても良い温泉です。帰りは癒し湯の四万に寄ろうかと思いましたが、やめてエコパにしました。バーデプールでインナーマッスルを鍛えなければならないからです。

■ 災害はいつでもやってくる
 車で行きましたが、途中埼玉〜群馬と走行する道すがら、車窓からこの前の台風による大水の惨禍〜災害の爪痕が垣間見えました。幸い道路の損傷による通行止めはありませんでしたが、川が氾濫したり、木々が倒れていたり、泥に浸かった跡がクッキリ見えました。いまだに泥の撤去が出来なかったり、家屋の損傷を修復できないところが全国でたくさんあります。東日本大震災から復興して全線開通を祝ったばかりの三陸鉄道が再び被災して、再開のメドが立っていません。「災害は忘れた頃にやってくる」というのは完全に死語と化しました。災害はいつでもやってくると思って対処しなければなりません。

■ 課題浮き彫りの自治体対応
 台風15号で千葉県の森田知事は批判の嵐に見舞われました。災害の程度の把握が遅れたのです。情報を取りに行けばよかったのに、待ちの姿勢でした。県警や千葉市消防局に情報収集のヘリコプター出動を要請したのがなんと!10日後です。同じく、自衛隊への災害出動の要請も大幅に遅れたばかりか、近隣自治体への支援要請も遅れました。もちろんそんな時期に内閣改造などやっている政府の脳天気ぶりも批判されましたが、首都圏自治体の災害対応の貧弱さが改めて浮き彫りになりました。そして、これで分かってきたのが自治体の非正規職員の多さです。災害対応は正規職員の任務なので、手遅れになる理由が分かってきたのです。人件費を抑えるために、今や多いところでは半数が非正規なのだそうです。

■ How dare you!
 さらに追い討ちをかけたのが台風19号でした。台風15号が風台風だったのに対し、台風19号は雨台風でした。そしてこの大雨は日本全土に被害をもたらしました。特に東海地方から東は大災害となりました。災害が少ない埼玉県でも、各地で河川の氾濫が発生しました。東日本大震災の津波で被災した地域がまたしてもやられました。まさしく、神も仏も無い有様です。「50年に一度」とか「命を守る行動を」と気象庁が呼び掛けるのをたびたび耳にすると、これはもはや異常気象が常態化し、その原因が地球温暖化によるものだということは疑うべくもありません。341『How dare you!』(2019年9月25日)でスウェーデンの少女、グレタ・トゥーンベリさんが国連の場で、気候変動への緊急対策をしようともしない各国首脳に対して涙ながらに発した怒りのメッセージを紹介しましたが、米国は信じられない対応をしています。

■ 連携と離脱の国際関係
 米国が地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」離脱を2019年11月4日国連に正式に通告しました。離脱が確定するのは1年後です。米国は中国に次ぐ世界第二位の温室効果ガス排出国です。米大統領選では、民主党の各候補が地球温暖化対策の推進を訴えており、選挙の争点の一つとなります。これだけ世界中で地球温暖化による災害が問題となっているのに、対策が自国の利益にならないから離脱する?いったい米国は地球全体のことを考えているのか?と言いたくなりますが、どうやら言うだけムダのようですね。アメリカ・ファーストですから・・・・
 日中韓や東南アジア諸国連合(ASEAN)など16ヶ国による自由貿易圏構想「東アジア地域包括的経済連携(RCEP(アールセップ))」の交渉から、インドが撤退する考えを表明しました。インドは中国との貿易赤字が6兆円前後、国内では中国製品の流入拡大を恐れ、「RCEPは要らない」と反発が強まっていました。そのインドに交渉参加を促した日本でしたが、中国の影響力を抑えた巨大な経済圏をつくるとの思惑は崩れかけています。TPPもそうですが、自由貿易圏構想は、米国の離脱によって崩れかけています。ただ、RCEPからのインドの離脱は果たしていけないことでしょうか。どの国も自国の利益を守る権利があります。自由貿易によって、自国の国民が不利益を被るなら、参加しないことは自由であって、非難される筋合いはありません。

■ 店舗の盛衰はなにゆえ?
 我が家の数軒隣の「ごはん処大戸屋」の赤字が続いています。定食屋にしては高価だからでしょう。すぐ近くの「とんかつとんQ」は高くても混んでいます。我が家と川越街道を挟んで向かい側の「コナズ珈琲」はいつでも大賑わい、ハワイアン風の店で決して安くないのに、このお客さんたちは仕事もしないで真昼間からペチャクチャ何話してるんだろう?と思います。「焼肉安楽亭」は空いているのに「焼肉キング」は混んでいる、「豚骨ラーメン一指禅」は行列が出来ている、この違いは何か?価格ではありません。コスパはあるでしょうがそれだけではないようです。時代がかもし出す風に乗っているかどうかでしょうね。

■ しまむらの失速
 しまむらは何故失速したのか・・・「ファッションセンターしまむら」を運営する「しまむら」が発表した2019年2月期連結決算を見ると、売上高が前期比3.4%減、営業利益が40.7%減、純利益が46.2%減と大幅に失速しました。これはファストファッションの終焉を象徴していると言われます。しまむらだけではなく、ユニクロの廉価ブランドである『GU』の業績も最近は冴えず、GAPの廉価ブランド『Old Navy』は日本撤退、ファストファッションブームの火付け役となった『H&M』銀座店も昨年閉店するなど、安さにこだわればこだわるほど、苦戦する状況が続いているようです。最近は「メルカリ」や「ラクマ」などのフリマアプリで古着でも上質な商品を安く手に入れられるようになり、安さによって質が落ちる新品を選ぶ若者が減ったのでは?とも言われます。以前のしまむらは、様々な衣料品を“売り切り”で販売していました。そのため、ある店舗に置いてある商品が別の店舗にはないという現象がたびたび起こり、掘り出し物を探す『#しまパト(しまむらパトロール)』がSNSでも話題を集めていたほどです。しかし最近では、ユニクロのようにベーシックな商品を常時取り揃えるようになり、これが魅力を半減させ他店へ客が流れてしまっているのでは?と言う人もいます。“安いのは当たり前”の苦しい状況は今後も続きそうです。

■ 手のかからない子
 道野正さんと言えば、フランス料理の有名なシェフです。これまでのフランス料理の概念を変える斬新な料理の数々で、「前衛」「異端児」と称せられ、一躍業界の寵児としてもてはやされた人ですね。同志社大学神学部卒業後、京都のフランス料理店「ボルドー」にて調理師の道へ入り、31歳で渡仏、「ラ・コートドール」(ミシュラン三ツ星)、「ル・ランパール」(一つ星)、「ジャン・バルデ」(二つ星)など数々のミシュランスターの名店で修行して帰国後は大阪の「シェ・ワダ」、北海道旭川「ハーヴェスト・ロードハウス」でキャリアを積み、1990年、大阪・豊中市に「ミチノ・ル・トゥールビヨン」を開業、2009年、更なる進歩を目指し、大阪市福島区に移転して現在にいたります。と書くと順風満帆みたいですが、挫折もあったようです。
 そんな硬骨のフランス料理店主・道野正さんが書いていた一文を目にしました。妻の留守中、家事を引き受けた娘が台所に洗い物を溜めているのに苛ついた道野正さんは「とことんきれいに」してしまいました。娘は「お利口さんだが、よくわからない子」と思ってきたのですが、娘は風呂上がりにそれを目にして号泣したのです。親に負担をかけまいとバイトに行き、翌朝片づけをと段取りをつけていたのでした。父には生涯の痛恨事でした。「手のかからない子供というのは、子供がそうしているんだ・・・」と気付いた道野さんは、これを思い出すと、今も心が疼くと言います。

道野 正さん

■ また「やすらぎの郷」の住人;山谷初男さん逝去

 前回、テレビ朝日系の昼ドラマ『やすらぎの刻〜道』の九条摂子(姫)役の八千草薫さんが、10月24日亡くなったことを載せましたが、ちょうど1週間後の10月31日、名脇役として数多くのドラマや映画に出演した俳優の山谷初男(やまや・はつお、本名・山谷八男)さんが、間質性肺炎のため秋田市内の病院で亡くなりました。85歳でした。山谷さんは、やすらぎの郷の住人としてこの前まで出演していました。そもそもこのドラマは「さいごは笑っていきましょう」というキャッチですから、出演者が亡くなるのも想定内でしょう。
 秋田県・角館町(現仙北市)出身の山谷さんは1953年に劇団東芸に入り、若松孝二監督の映画、寺山修司さんや蜷川幸雄さんが演出する舞台などでキャリアを積んだ後、NHK大河ドラマ「国盗り物語」で一躍脚光を浴びて、仕事の幅を広げました。筆者とは奥羽山脈を挟んで同じ東北生まれ、飾らない人柄で、実直な雰囲気を生かした演技で親しまれました。特に東北弁の役は地で行けるだけに輝いていました。役者仲間からは「はっぽん」の愛称で呼ばれていたそうです。近年は「リーガル・ハイ」(フジテレビ、2012年)、「やすらぎの郷」(テレビ朝日、2017年)、「やすらぎの刻〜道」(同、2019年)など人気ドラマに出演、1994年には角館に営業を終えた実家の旅館を改築した芝居小屋「はっぽん館」を開設して地元住民を楽しませていました。 ご冥福を祈ります 合掌


山谷初男さん、名脇役でした
(2019年11月6日)


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