452  九戸城

 439『南部馬』(2011年6月12日)で、岩手県北部から青森県東南部の、いわゆる南部地方に、一戸から始まり九戸までの「戸」がありその由来を説明した。岩手県一戸町から、二戸市、青森県に入って三戸町・五戸町・六戸町・七戸町と北上し、東に折れて南下し青森県八戸市、ふたたび岩手県に入って九戸村へとつながり、時計回りに順番に、きれいに配列されている。この地方の特産品は馬で、貢馬(くめ)といって年貢として納められていた。源頼朝は奥州藤原氏を滅ぼしたのち、牧場政策の必要性などから、多くの御家人を地頭に任命し、その一人である南部光行は、馬産地の甲斐(現在の山梨県)出身で、牧場経営に手腕を発揮した。南部氏は官営牧場を九つに区画して、九つの部(へ=戸)に分け、一戸ごとに七つの村と一つの牧場を置き、九戸を東・西・南・北の四つの門に分属させた。これを九戸四門の制と呼ぶ。すなわち南部氏はもともと八戸地方から発し、後に盛岡のほうに移ってきた(戦って領地を拡大した)のである。

■二戸市と九戸村

 さて二戸市にずいぶんしばらく振りに行って来た。岩手県最北部の二戸市は青森県と接する。馬淵川がクネクネと蛇行し、東北新幹線の二戸駅があり、そのやや南に馬仙峡という絶景の地がある。駅前には石切所という地名が有り、南部煎餅で有名だ。これでおわかりのように、馬にちなむ地名が多く、断崖絶壁に石が露出している。この石を切り出して、九戸城というお城を築いた。この城は二戸駅から近い。何故二戸に九戸城があるの?と疑問に思った。実は昔九戸氏という侍の一族が居て、その城だからである。二戸市の東側に岩手県九戸郡九戸村というところがあり、もともと九戸氏はここの出身である。
 戦国時代最後の武将九戸政実が九戸城のあるじであった。二戸には妻の祖父の墓がある。今は盛岡市だが、永井という地区の出身で、婿に行き、馬喰で財を成した。昔は長男以外は相続できず、婿に行く人も多かった。


九戸村のシンボルキャラ
 「まさざねくん」


■九戸の民話・オドデさま

 九戸の民話で面白いものがある。九戸村の折爪岳、またの名を江刺家岳と言う、あまり大きな山ではないが、どこからでもよく陽のあたる眺めのよいヌポーとした山がある。山の麓は、広い草原で、牛や馬の牧場になっていたらしい。ここにフクロウのような目玉の顔と、胴体は人間みたいな2本足の怪鳥がいた。口も聞ければ、人の心も読む、「ドデン、ドデン」と言うこの怪物、民話に良くある話だが、金持ちは意地悪くて欲張り者、正直者は貧しい、しかし頑張って働けば、いつかは報われる、だから人間と言うものは、うそをつかず、他人に思いやりを持って、一生懸命働けば、神様はきっと見ている、いつかは報われる、というパターンで、こういう昔話を通じて、子供達に教育したものだ。オドデさまは神様の化身である。詳細は九戸村の民話(PDF)参照


 「オドデさま」

■九戸城と不来方城

 九戸城を観光したが、ナント!前市長の小原豊明さんがボランティアガイドをされていた。太閤秀吉の奥州再仕置(九戸征伐)で騙し討ちの形で滅ぼされた九戸政実の居城、馬淵川、白鳥川、猫淵川に西、北、東を囲まれて、断崖で守られた天然の要害である。
  ♪春高楼の 花の宴
  ♪巡る盃 影さして
  ♪千代の松が枝 分け出でし
  ♪昔の光 今いづこ
りんご狩りに訪れた土井晩翠が、政実の悲劇を聞き、自ら筆を取って、この詩を書いた。それをそのまま碑にしている。ただし、この「荒城の月」の荒城のモデルは九戸城ではなく、仙台の青葉城だという。晩翠が九戸城の記念に残したのであろう。
 九戸城はたいへん規模の大きい城である。南部氏が八戸から盛岡に移転して築いた不来方(こずかた)城よりずっと広い。不来方城はきれいな石垣の残る城だが、九戸城は取り壊されて石垣も無い。
 つわものどもが夢の跡である。


盛岡市の不来方城の石垣、現在は「岩手公園」という名前である

■岩手県岩手郡岩手町・・・北緯40度のまち
 二戸駅からIGR いわて銀河鉄道でいわて沼宮内(ヌマクナイ)駅に向かおうとしたら、来た電車は青い森鉄道だった。盛岡より北の在来線はJRではなくいわて銀河鉄道であり、青森県のほうは青い森鉄道と名前が変わる。随分高速で走るのだが、途中駅が無人で、車掌が改札するので、停車時間が長く、途中一戸、奥中山高原などを経て30分以上かかった。
 県郡町が同じ名前なのは、以前は「群馬県群馬郡群馬町」があったが、市町村合併で、今や「岩手県岩手郡岩手町」だけとなった。岩手町はブランドキャベツ“いわて春みどり”(食べたら他のキャベツとの違いが明確にわかる)や、やまと豚など、地元の食材を使った「いわてまち焼きうどん」でまちおこしに取り組んでいる。この町は本来過疎の寂しい町であって然るべきなのだが、お隣の葛巻町などと共に、やたらに楽しい町である。人物が明るいのだ。

春みどり、甘くてやわらかくておいしい

■ARAGADA北緯40度 ご当地グルメ博 in いわてまち

 その岩手町で、あらがだ(方言でだいたいの意)北緯40度のご当地グルメを一堂に集め、食べ比べようというイベント、『ARAGADA北緯40度 ご当地グルメ博 in いわてまち』 が岩手町「山見の里大町商店街」を歩行者天国にして開催された。
【イベント内容】
 ・北緯40度周辺のご当地グルメ大集合、味くらべ、参加団体は・・・
  ▽八戸せんべい汁(八戸市)
  ▽男鹿しょっつる焼きそば(秋田・男鹿市)
  ▽いわてまち焼きうどん(岩手町)
  ▽紫波もちもち牛コロッケ(紫波町)
  ▽なみえ焼きそば(福島・浪江町)…特別参加
  ▽南部かしわ鉄板焼き(雫石町)
  ▽北上コロッケ(北上市)
  ▽八幡平あぶら汁(八幡平市)
  ▽横手やきそば(秋田・横手市)
  ▽久慈まめぶ汁(久慈市)
  ▽南部生パスタ(盛岡市)
  ▽くずまきかっけ(葛巻町)
大町商店街は、道路を広くし、電線を地中埋設した洒落た街である。歩行者天国の特設会場には熱気と、おいしそうな香りが充満、来場者が各グルメテント前に長い列を作っていた。ところがまだ12時台の昼食時なのに完売御礼が相次ぐ有様、おそらく、岩手町にこれほどの人が集まるとは予想外で、食材不足だったのだろう。ご当地グルメは1食200〜500円。あまりの行列にとまどった。福島県浪江町の「なみえ焼きそば」は、津波と原発で被災、それでも元気に特別参加。


■いろんな人と出会い
 ここでさまざまな知り合いに会った。「土を耕し心を耕す」がモットーの「いきいき農場」三浦青果の三浦正美さん、岩手町ご当地グルメ研究会事務局長で、岩手町物産協議会会長の「肉の府金」の府金さん、「やまと豚」を大規模に展開している農事組合法人「南山形養豚組合」の佐藤 守さん・・・、岩手町役場の佐々木光司さん、岩手県庁の佐藤義房さん、そして何やらタスキをかけてる人がいる、「千葉 伝」と書いてある、岩手県議会議員候補?「オイ、ツトウ、久し振り」と声を掛けたら、「ジャジャジャ、なじょしてこたなどごにいるんだ?」ということで名刺交換、実は高校の同級生、43年振りだった。5期目の挑戦ということ、「頑張れよ!」で別れた。結局八幡平選挙区で2位当選した。
 それにしても、岩手県岩手郡岩手町のまちおこしは大したもの。久々に活気のある笑顔、元気に出会った。みんな自分のまちが好きなんだなぁ、と感じた次第。今後も元気にイベントを企画してもらいたいものだ。
 ところでみなさん、ご存知ですか?肉の府金」の『いわて短角牛やわらか煮』弁当が、京王百貨店・新宿店で開催された「第46回元祖有名駅弁&全国うまいもの大会」で、「おいしかったうまいものアンケート」で連続の第1位に輝きました。昔は沼宮内駅の弁当売りの声を真似て「ヌマクナイベント〜」とちゃかして大笑いしたものだが、トンデモナイ、お客様の声は神の声、コチラをご覧になれば、この弁当の評判がわかる。ふがねさんは、7日間で約4600食を販売したそうだ。スゴイ!
 最後に・・・二戸の人に「九戸の次はあるんですか?」と聞いたら、「遠野だ」という。民話のふるさとで有名な遠野だが、ちょっと遠いの〜
(2011年9月11日)

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