188  ダイバーシティ

 前回紹介した「本格的ラーメン¥200」の丸鶴(川越市藤間)に、改めて行ってきました。「ラーメン大盛り」を注文しました。前回「チョットしょっぱい」と書いたので、きちんとスープの味を確認したかったのです。喜多方風の麺が良く、具材のワカメは乾燥ワカメ風ですが、他は皆まともです。シナチクはコリコリしておいしいし、チャーシューも薄いけれどおいしい。ナルトもネギも入っています。改めてスープを味わうと、やはりちょっと醤油が勝っています。出汁は鶏ガラと豚と野菜を煮出しているような気がします。スープ表面の油もきちんと出ています。野菜が勝っていればもっと甘いスープになるのですが・・・。
 東池袋大勝軒では、山岸さんご存命の頃、煮干の粉末みたいなのをスープの缶にドバッと入れてましたね。つまり最後に魚介系の味を付けていたわけです。
 上でシナチクと書きましたが、イコールメンマのことです。台湾や中国が原産の麻竹(マチク)というタケノコを茹でた後に乳酸発酵させ、それを更に乾燥して細かく裁断し日本に輸出されています。支那竹の「支那」を使うなというお達しにより、麺の上に乗せる麻竹だから、『メンマ』と呼ばれるようになりました。
 さて300円払って店を出たら、30代ぐらいの黒いスーツ姿の立派な30代とおぼしきサラリーマンが二人店に入って行きました。昭和風のレトロな店なので、老人ばかりかと思っていましたが、こんな人たちも来るんだ!と思いました。前回の『麺目躍如』を見たのかな

 ところで皆さんにヒミツのお話を...ラーメン好きの人たちからある雀荘のラーメンが美味しいと評判だ、という話を聞いたので、麻雀はしないけれどラーメンだけ食べに行きました。確かに美味しい、そしてこのスープの正体に気付きました。よく食べているからです。東洋水産、すなわちマルちゃんの生ラーメン醤油3人前(チルド)のコクのあるスープです。なんのことはない、身近にあったんですね。

丸鶴の200円ラーメン・・・スープ自体は行けるので、
ちょっと醤油を減らせば上品になるのになぁ〜


マルちゃんの生ラーメン醤油3人前、チルド麺のベストセラーです
シマダヤが外観ソックリの商品を出していますが、スープが...

■ ダイバーシティ
 「ダイバーシティ」という言葉を聞いた事がありますか?初めて聞いた方もいれば、聞き飽きたという方もいるでしょう。「また女性活用の話か」と敬遠する方もいるかもしれません。カタカナ言葉大好きな小池百合子東京都知事が特に好んで使用されますね。
 ダイバーシティ(Diversity)について解説しますと・・・ダイバーシティとは、日本語で言えば「多様性」のことです。多様な人材を積極的に活用しようという考え方です。もとは、社会的マイノリティの就業機会拡大を意図して使われることが多かったのですが、現在は性別や人種の違いに限らず、年齢、性格、学歴、価値観などの多様性を受け入れ、広く人材を活用することで生産性を高めようとするマネジメントのことを指す場合が多いようです。企業がダイバーシティを重視する背景には、有能な人材の発掘、斬新なアイデアの喚起、社会の多様なニーズへの対応といった狙いがあるようですね。日本では、人権等の本質的な観点だけでなく、将来的な少子高齢化による労働力人口の減少等に対応した人材確保の観点から“ダイバーシティ”に取り組む企業が増加しています。

■ カルビーの松本晃会長の話
 「いろいろな人がいる」という意味でのダイバーシティが特に経済社会の中で意識され始めたのは30年以上前のことです。グローバル企業では、そのころからダイバーシティの担当役員を任命し、様々なグループに配慮して来ました。特に熱心なカルビーの松本晃会長の話が新聞に載っていました。それをかいつまんで紹介しましょう。
 カルビーと言えば「かっぱえびせん」と思っている人は古いヒトです。2016年4〜6月期の連結決算は純利益が前年同期比10%増の38億円で過去最高、売上高は617億円(3%増)、営業利益は71億円(17%増)、7期連続増収増益と躍進を続けています。2009年に就任した松本晃会長は、1972年京都大学大学院農学修士課程修了後、伊藤忠商事入社、1993年ジョンソン・エンド・ジョンソンメディカルに移り、1999年にジョンソン・エンド・ジョンソン社長に就任、2009年6月よりカルビーの会長を務めています。強いリーダーシップで、女性執行役員数も26.7%と、ダイバーシティ先進企業のトップをひた走っています。筆者はHACCPという食品の安心安全品質管理に取り組んでいましたが、その実践研究会でカルビーの積極的な取り組みに目を瞠りました。宇都宮の工場見学もさせていただきましたが、自分たちの工場にお客様を呼んで、積極的に見せるところにその絶対的自信を感じて、大したものだと思いました。業績躍進の理由を見たと思いました。

■ 飛行機が片翼で飛びますか?
 松本晃会長は言います、「飛行機が片翼で飛びますか? 日本人、男性、シニア、有名大学出身・・・マネジメント層が偏っていて企業が成長するわけがありません」。働く女性の視点で販売の活性化に成功した「フルグラ」という商品は、狙いをシリアル市場から朝食市場へと発想を転換させ、米ケロッグの牙城だった国内シリアル市場を切り崩したものです。4年で年商は6倍、カルビーの業績好調の強い推進力となり、540億円といわれるシリアル市場でフルグラの売り上げは220億円を超えました。

■ 徹底した「成果主義」
 カルビーのCEOに就任した松本晃会長は、フリーアドレスなどを取り入れたオフィスや人事評価の見える化など、「働き方」改革も進めましたが、その根底にあるのは、徹底した「成果主義」だそうです。10・20(テン・トゥエンティ)と言って、毎年売り上げを10%伸ばせ、利益を20%伸ばせ、と言っています。これは経営者としての経験から言えばとんでもない数字です。しかし就任して7年間の数字の結果は、ほぼ伴っているのだそうです。
 松本晃会長はとにかくデジタル人間で、数字がないと体が動かないのだそうです。「ダイバーシティも同じ。J&Jの時は、35・25・25・・・社員の35%は女性、管理職の25%は女性、エグゼクティブ/ディレクター以上の25%は女性、これを退職までに達成すると宣言して、実際に達成しました。カルビーでは、2020年までに女性管理職比率30%一番乗りを目標に掲げています。今、22%で、30%になったら、次は50%と言うつもりです」とのこと。スゴイですね。

■ ダイバーシティの重要性を実感するきっかけ
 「ダイバーシティの重要性を実感するきっかけは?」と聞かれて松本さんは言いました。「J&Jの社長をしていた2001年のこと。直属の上司だったビル・ディアスタインから、『日本はなぜダイバーシティをしないんだ?』と聞かれました。『こんなに女性管理職が少ないのは日本とパキスタンくらいだぞ』と言われたんです。当時は私もダイバーシティについてよく分かっていなかったのですが、言われてみればその通りだなと思いました。世の中の半分は女性なのに、マネジメント層は男性ばかり、優秀な人は男女を問わず優秀なはずだから、これでは片翼しか使わずに飛行しているようなもの、企業が成長できるわけがないと思ったんです」・・・なるほど。

■ 問1
 「重要性は分かっていても、実現できない企業が多くあるのが現実では?」と問われて、「ポイントはあるんです。1つは、トップがはっきりコミットすること、さらに数字でコミットすること。登用は上からやる。下級の管理職から細々とやるのではなく、上級管理職を早く女性にすれば、あとは早いんです」・・・これがポイントなんですね。

■ 問2
 「候補者がいないという声もよく聞きますが?」という問いには、「それは嘘、探していないだけです。『来年からこのポジションは女性にしろ』、これで終わりです。あとは、誰が良いのかは分からないが、皆で決めろ、と・・・。そうすれば候補が挙がってきます。その中から1番、2番、3番の人と決めて、1番いい人からオファーするんです」・・・考え方の問題だということ、これこそリーダーシップですね。

■ 問3
 「女性が管理職になりたがらない、という声についてはどう思いますか?」・・・「それも言い訳です。これまで僕がオファーして断った人はー人もいません。見合った昇給を提示していますからね。しかし、男性と女性ではちょっとした違いがあります。女性はよりプラグマティックです。男性は昇進するけれど給料が下がる、という状況でも喜んでやりますが、女性はレスポンシビリティとコンペンセーションのバランスが合わなければやりません。現状では、家事・育児に関して女性がハンディを背負っているのは事実で、それに対処するのは、マネジメント側の責任だと思っています」・・・いやはやたいしたもんだ。

■ 問4
 「事業部長となった女性に『4時に帰れ』と指示したと聞きましたが?」・・・「会社にベンチマーキングを作れば、変わります。現在執行役員の女性がトップの中日本事業本部は、スナック事業でカルビーに次ぐ2番手・湖池屋の1.3倍の売り上げを誇ります。従業員が約900人、工場が3つ、売り上げは400億円以上。3年前、そのトップに当時小学4年生と1年生の子供がいる女性が就任しました。そこで、私は彼女に言いました。『私はあなたに命令します。この命令が聞けないなら、会社をやめるか、職を辞退するかどちらかです。何でもいいから4時に帰りなさい』。彼女は今、その命令を忠実に守っていますが、何の問題も起きていません」・・・結局働き方改革なのです。昔ならともかく、今はツールが揃っているので仕事は毎日オフィスに来る必要はないとさえ松本さんは言います。

■ 問5
 「なぜ他の企業ができていない改革が成功していると思いますか?」・・・「コミットメント・アンド・アカウンタビリティですね。ビジネスの世界は政治と違います。コミットしたら必ず結果を出さなければなりません。経営哲学でも何でもなく、基本的なことです。稼がないと設備投資はできません、新商品の開発もできないし、社員の給料も増やせない、税金も払えないし配当も払えない、成果を出すためのイニシアチブを一つずつやっているだけです。成果につながらないことは何もやりません。ダイバーシティもその一つです」・・・つまり、企業は儲からなければならない、そのためには社員のやる気を出させること、他の企業が出来なくても自分たちはできる、183『KEYENCE』(2016年9月10日)で紹介したように、普通のことをやっていたら驚異的な成長はできないんですね。

■ オートファジーでノーベル医学生理学賞
 東京工業大栄誉教授の大隅良典さんに、ノーベル医学生理学賞が贈られることになりました。物理学賞は昨年まで2年連続で日本の得意分野ですが、この賞は昨年の大村智・北里大特別栄誉教授に続く4人目の朗報です。生物は生きていくために欠かせないたんぱく質を作り続けますが、異常が生じたり要らなくなったりしたら、分解して新しいたんぱく質の材料にする、そんなリサイクルの仕組み=オートファジー(自食作用)を明らかにした業績です。大隅さんは酵母のオートファジーを電子顕微鏡で詳細に記録、関係する遺伝子も繊細な実験で次々に突き止めました。人を含め生物全般に共通する現象であることが分かりました。低栄養や感染症でどのように細胞内のリサイクルが損なわれるかとか、がんや糖尿病などとの関係も研究が進んでいます。

■ 大学や研究所のお金が乏しくなっている現状を訴え
 ただ、大隅さんは昨年、科学研究費助成事業をしている日本学術振興会への寄稿で「大学や研究所の経常的な活動のための資金が極端に乏しくなってしまった」と強い危機感を表明しました。今回の受賞会見に於いても、大隅さんのように自由な発想で研究する仕組みが崩壊しかかっていることへの対処を訴えました。今、大学などの研究現場から悲鳴が上がっているのです。研究の「選択と集中」の名の下に、研究費獲得を研究者に競わせる文科省の政策が行き過ぎた結果、日本発の論文は質、量とも一時の輝きを失っているのです。

大隅良典さん

■ 冒険できる研究環境を
 国立大学法人でも年々交付されるお金が減っています。それだけではなく、企業との共同研究や、特許による外貨獲得など、外部からのお金の獲得を奨励しています。研究費を付けてもらうためには、冒険を避けて、確実に成果が見込めそうな研究を提案する風潮が強まりました。政府が研究の実用化、「出口戦略」ばかり求めることに大隅さんは異議を唱えています。「すぐに企業化できることが役に立つと同義語のように扱われる風潮があるが、何が将来本当に人類の役に立つかは歴史によって検証されるものだ」と大隅さんは言います。研究室で、かつて大隅さんは若手に自由に研究をさせました。現在の文科省の政策が続けば、基礎研究分野は先細りです。ノーベル賞の対象となる研究は若い頃の研究による成果です。今日本で毎年ノーベル賞フィーバーが続いていますが、これらは1970〜80年代の高度成長期に、大学や研究所にふんだんにお金が投下されたことによるものです。今の科学技術政策では、将来ノーベル賞受賞はストップしかねません。再考が求められているゆえんです。

■ ハード・ブレグジット(EUからの強硬離脱)でポンド急落
 先日行われた英国与党・保守党の年次党大会でメイ首相が、自由貿易と自由市場という数年来のコンセンサスからの転換を示唆する発言をしました。メイ氏は「国際エリート」を攻撃しましたが、多くの国際エリートがロンドンを拠点に選び、金融取引をしていることを考えると、国際エリートはロンドンを捨てドイツなどに移るのではとの懸念がますます現実化しています。ポンドの動きはこれを反映しているのです。メイ首相は経済の保護より移民の制限を優先することを選んだわけですが、これは国民の半数の意見であることを考えますと、他国がワイワイ言ってもどうなるものでもありません。よくよく考えると、移民ノーと言うのは日本が最も強硬です。日本はしたがってあまりモノ言える立場ではありません。しかも国際エリートを攻撃して、一部の特権階級だけが富を占有する社会から、以前のような中流重視、富の偏在から拡散へと言うメイ首相の主張は至極当然ではありませんか?難民受け入れをうんぬんしていますが、そもそも難民が発生する原因を作ったのは英仏独のような大国にも責任があるのではありませんか?移民、難民が発生しない、穏やかな平和こそ求められるものであり、その一番のお手本が日本であると思います。自衛隊が戦いではなく災害救助に活躍するような社会、米国のような銃で武装しなくても良い社会、シリアだってそういう社会に戻れるはずです。英国は先頭に立って、昔帰りを進めているような気がします。

■ クリントン、トランプ両陣営の政策
 注目のアメリカ大統領選まで残り1ヶ月、第2回のテレビ討論会がありました。下品な言葉で女性をさげすむような発言が暴露されて、身内の共和党でも撤退を求める声が広がるトランプ氏、満身創痍で臨んだ討論会で、クリントン氏からも猛攻撃を受けました。トランプ氏は、クリントン氏の私用メール問題などを追及しました。今回の女性蔑視発言に関しては、トランプ氏は討論会のなかで謝罪しました。実はトランプ氏は、会場にビル・クリントン元大統領からセクハラを受けたと訴える女性たちを招いていました。クリントン氏側に話をすり変えようという戦略だったみたいですが、ヒラリーの夫より自分のほうが足元に火が着いているのですからこの手法は成功とは言えません。トランプ氏にとって厳しい局面が続いているようです。
 いずれにせよ下記のように両者の主張を見ますと、市民重視で国際問題には従来と同じ路線のヒラリー・クリントン対企業重視で国際問題からは手を引いて国内を重視するドナルド・トランプの姿勢が見えます。米国民がどちらを選ぶかですが、今回の選挙はどちらが良いかというよりも、どちらが悪いかを選ぶ選挙と言われています。どちらも悪魔だけど、より悪いのがトランプ、とか、人格高潔云々は関係ない、我々はローマ法王を選んでいるのではない、米国大統領を選ぶんだ、とか、かまびすしい状況です。世界経済にとっても日本外交にとっても、どちらが大統領になるかは大きな影響があります。ただ、いずれにせよ欧州を揺るがすシリア問題は、米国とロシアの介入で泥沼化しています。世界中でイスラムの台頭を招いたのもこれまでの米国大統領の政策によるものだとの話もあります。中東での紛争は結局、大国の利権競争によるものと思います。もともとは平和だった地域、みんな引き揚げて、昔のように地元の人たちに任せれば、再び平和が戻るでしょう。そう考えると、トランプの言うことも聞くべきだと思います。
政 策 ヒラリー・クリントン(民主党) ドナルド・トランプ(共和党)
雇用問題 最低賃金引き上げ、男女平等賃金 アウトソーシング問題、企業減税、貿易協定の交渉見直し
税金問題 富裕層への増税を主張する一方、法人税は変更しないことも強調 雇用創出のための大規模な企業減税案を改めて主張
移民対策 市民権を付与へ 不法移民の流入阻止
国内治安 警察官の再教育、地域住民と警察との関係改善が必要 法と秩序の確立、警察官に職務質問の権限を与える法律への支持を表明
安全保障 NATOや中東諸国との関係強化、核兵器の削減に向けた取り組み ISISはオバマ政権が作ったと主張、同盟国に軍事費を負担させる案も主張
核問題 イランとの核開発停止に関する合意はそれに直面し続けるよりも良い選択 核問題がある以上、テーブルの上から何一つ引くことはできない
(2016年10月16日)


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