159  健康と医療

 2016年3月23日が彼岸明けで、この日は「世界気象デー」でもありました。世界気象機関(WMO)は、1950年(昭和25年)3月23日に世界気象機関条約が発効したことを記念してこの日を世界気象デーとし、毎年キャンペーンテーマを設けて気象知識の普及や国際的な気象業務への理解の促進に努めています。今年のキャンペーンテーマは、「未来を動かす―天気・気候・水」です。気象庁のページ(PDF)をご覧下さい。

■ 人類喫緊の課題は地球温暖化対策
 原発の運転が今日本では問題になっていますが、人類の生存にとって最も重要なテーマは地球温暖化です。大気中の温室効果ガス濃度は、2015年にはこれまで観測されたことのない値に達しました。二酸化炭素濃度は、産業革命以前の濃度「280ppm」に対して昨年の春には北半球で「400ppm」という象徴的な濃度を超えました。地球全体の平均の濃度も、2016年には1年を通じて「400ppm」を超えるとみられます。
 筆者の子供の頃と比べて現在の気象は、真夏の暑さ一つとってもまるで違うし、災害の規模も桁違いです。竜巻なんて昔はそうそうありませんでした。人間の活動の結果がもたらすこの異常気象の進行を少しでも遅らせることこそ人類喫緊の課題です。32『CO2濃度増加』(2013年9月29日)を今一度ご覧下さい。半世紀以上の歴史を持つ米ハワイ・マウナロア観測所での大気中の二酸化炭素(CO2)濃度は、これを吸収する植物の光合成が活発になる夏に向けて下がり、冬に上昇するパターンを繰り返しながら増え続けています。一直線と言うより、うなぎのぼりのところが怖いですね。

ハワイ・マウナロアの二酸化炭素濃度(朝日新聞より)

■ 桜の開花の途端花冷えで、お花見は長く楽しめそう
 2016年3月21日(月)東京の桜が「開花」しました。東京都千代田区の靖国神社にある標本木の花の状況を、気象庁東京管区気象台の早川裕一さんが観察して開花宣言したものです。平年より5日、去年より2日早い開花となり、桜は開花から満開まで1週間程度ですが、今年は開花宣言直後から寒気の影響で花冷えとなり、4月はじめまで楽しめるそうです。31日が満開になる予想との事。
 花見の名所として知られる台東区の上野公園では、花見客らによってブルーシートが敷かれています。昨年も書きましたが、この時期の上野かいわいは外国人の花見客で溢れます。ブルーシートを引いて宴会に興じるうちの3、4割は外国人です。ワシントンのポトマックリバー公園など桜の名所は世界各地にありますが、公共の場で飲食が楽しめない国が多く、”お花見”はほとんど日本独自の文化となっています。外国人観光客の中には、桜だけでなく”お花見”を楽しんでいる日本人の姿を観光してるんですね。
 この時期のアメ横から上野公園、不忍池のあたりは、日本人より外国人のほうが多いですよ。「花見」は、日本の観光資源になっているのです。

今年の地蔵院(埼玉県ふじみ野市)のしだれ桜;2016年3月21日

■ お花見延期
 都内有数の桜の名所として知られる目黒川では、3月21日(金)から4月12日(土)までお花見クルーズ船が特別運行されるそうです。中でも人気なのが「目黒川夜桜探検クルーズ」(〜4月5日)で飲食は自由、早咲きの桜や遅咲きの桜、手を伸ばせば触れられそうなほど間近に垂れ下がった桜などさまざまな種類の桜を水上から楽しむことができるそうですよ。
 筆者は3月24日(木)、東京・飛鳥山公園で花見の予定でした。この集まりは何というか、ヘンなメンバーで、一言では言い表せませんが、「長屋の花見」と銘打っています。いろいろな長屋の住人が集まるのですが、近隣在住の大家(実は秘境探検家)から、「雨模様なので延期」と通告してきました。いろいろ準備されたそうで、田舎の言葉で言えばおもさげねがんす。一気に4月4日(月)となりました。
 桜の名所は沢山あります。この時期は花粉症の人にもつらい時期ですが、筆者は「花粉は無害、花粉は無害、・・・」と必死になって念仏を唱え、しまいには仏壇で線香を手向けながら「チーン」とやって、「花粉は無害、花粉は無害、・・・」、見事に花粉対策眼鏡もマスクも不要となりました。何事も信じる人は救われるのです、アーメン...

昨年の地蔵院の桜…上記写真の反対側から撮影;2015年3月27日

■ 国民健康・栄養調査
 高齢化の進展や疾病構造の変化、医療費の増大などを背景に、国民の健康の増進は国家的・社会的な課題となっています。2014年11月に実施された「国民健康・栄養調査」の結果が、2015年12月に厚生労働省から公表されました。この調査の内容を参考に国民の健康について考えてみましょう。
【調査結果のポイント】(厚生労働省HPより)
    所得と生活習慣等に関する状況   所得の低い世帯では、所得の高い世帯と比較して、穀類の摂取量が多く野菜類や肉類の摂取量が少ない。習慣的に喫煙している者の割合が高い。健診の未受診者の割合が高い
健診の受診に関する状況   健診を受診していない者では、健診を受診している者と比較して、男女ともに現在習慣的に喫煙している者の割合、運動習慣がない者の割合、血圧の平均値が高く、女性に関しては肥満者の割合も高かった
基本項目に関する状況   肥満者の割合、糖尿病が強く疑われる者の割合は、男女ともに増加せず推移し、収縮期血圧の平均値は経年的にみて男女ともに低下傾向にあるなど、生活習慣病の予防対策に一定の効果がみられる
一方で、喫煙している者の割合は2010年以降男女とも減少しておらず、このうち、たばこをやめたいと思う者の割合が男性26.5%、女性38.2%にとどまるなど、引き続き対策が必要である
【運動習慣】
 生活習慣病を予防し、健康を保つには、定期的な運動が欠かせません。「運動習慣のある者の割合」は、男性31.2%、女性25.1%となっています。「健康日本21(第2次)」では運動習慣者の割合の増加を目指しており、その目標値は以下の通りです。なお、「運動習慣のある者」とは、1回30分以上の運動を週2回以上実施し、1年以上継続している者をいいます。
 20〜64歳・・・男性:36% 女性:33%
 65歳以上・・・男性:58% 女性:48%
【喫煙・飲酒と睡眠時間】
 受動喫煙に対する意識の高まりなどにより、喫煙者を取り巻く状況は厳しくなっておりますが、「現在習慣的に喫煙している者の割合」は19.6%、男女別にみると、男性32.2%、女性8.5%となっています。「健康日本21(第2次)」では成人の喫煙率の減少を目指しており、その目標値を12%としています。
飲酒の状況をみてみると、「生活習慣病のリスクを高める量を飲酒している者の割合」(男性:毎日2合以上/女性:毎日1合以上など)は、男性15.8%、女性8.8%となっています。酒は百薬の長ともいわれますが、もちろん飲み過ぎはよくありません。「健康日本21(第2次)」の目標値は、男性13%、女性6.4%となっています。
 睡眠の状況をみてみると、1日の平均睡眠時間は、男女とも「6時間以上7時間未満」と回答した者の割合が最も高く、男性34.4%、女性33.9%となっています。一方で、「ここ1ヶ月間、睡眠で休養が充分にとれていない者の割合」は20.0%となっています。
 健康を維持し、その増進を図るには、「定期的な運動・禁煙・節酒・良質な睡眠」を心がけるなど、適切な生活習慣を身につける必要があります。生涯を通じてQOL(生活の質)を保ち、充実した生活を営むためにも、健康に対する意識を高く持ちたいものです。

■ 進むがん対策
 がんは国民病といわれています。生涯のうち約2人に1人ががんにかかると推計されています。筆者はAflacのがん保険にもう25年ぐらい加入しています。こんな高率で、がん保険は成り立つものでしょうか?実は実際にがんになったら、思ったほど給付が無かった、改めて保険の約款を見たら、いろいろな制約条項があって、だまされたと怒る人もいるそうです。筆者はがん家系ではないので、よほど高齢にならなければがんにはならないでしょうが、保険ですから、適用にならなくて良かったと思うことにします。
 2015年12月、厚生労働省から「がん対策加速化プラン」が公表されました。このプランの3つの柱は「がんの予防」、「がんの治療・研究」、「がんとの共生」です。
 「がんの予防」では、がん検診やたばこ対策などが挙げられています。がんの早期発見や適切な治療にはがん検診が欠かせませんが、我が国のがん検診の受診率は高いとはいえない状態です。2013年国民生活基礎調査によると、胃がん39.6%、肺がん42.3%、大腸がん37.9%などとなっており、受診率の向上を目指して様々な対策が行われています。たばこ対策では、喫煙率を下げる取り組みとともに、受動喫煙対策が進められており、2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催に向け、受動喫煙対策の強化が図られています。
 「がんとの共生」では、就労支援や緩和ケアなどが挙げられています。働く世代のがん患者にとっては、がんになっても安心して働き暮らせる社会が望ましく、がんになっても仕事を失わないよう、がん患者の仕事と治療の両立支援や、就職支援への取組が進められています。緩和ケアでは、入院患者のみならず、外来患者に対する緩和ケアを充実するための対策が挙げられており、がん患者が住み慣れた自宅や地域で安心して療養できる体制づくりなどが掲げられています。

■ 岩手県からの提言
 岩手県が「地域医療基本法」(仮称)で医師の地域偏在解消を−−−と訴えています。地域医療の再生に向けて、いま医師の不足と偏在の解消に向けた国民的な議論が必要な時期に来ているのではないでしょうか・・・岩手県保健福祉部医療政策室  対談  プレゼン動画(岩手県知事達増拓也)をご覧下さい。

■ 病院と医師
 川越駅前に赤心堂病院という大きな病院があります。いろいろな病院を見て来ましたが、この病院は素晴らしいと思いました。何が?というと雰囲気がほんわかと、お客様のためにという雰囲気が漂っているのです。自分ではなく、見舞いに行ったのですが、最近いろいろな病院、様々な医師に出会った中で、なかなかこのような温かみのある病院はありません。これが医療だな、これが従事者の態度なんだなと思いました。
達増拓也 TASSO 希望郷いわて
岩手県・達増拓也知事

■ きな臭くなってきた政治・経済情勢その2
 前回、消費税増税先延ばし論と衆参同時選挙が巷でささやかれていることについて触れました。筆者は増税実施〜財政改革推進論者だと思われた方がいらっしゃると思うので、少し詳しく解説します。誰しも増税を望まないはずで、それは筆者も同じです。財政改革は重要ですが、かといって引き締め緊縮ばかりだと縮小均衡し、借金を返す資源ができません。「失われた20年」は適切な経済対策にカネが使われなかったことが、日本ただ一人置いてけぼりになった原因です。デフレが続くと、人々のマインドが縮小し、個人消費が落ち込みます。結果が少子高齢化です。したがってアベノミクスは方向的には正しいのです。安部首相の経済対策は支持しますが、安保政策は支持しません。日本は経済で世界貢献する国でよいのです。前回「米国の大統領が誰になっても、日本よりは中国を大事にすると思われる」と書きましたが、これは世界の趨勢です。波に逆らって転覆するのは、船の舵取りが悪いからです。過去の歴史に習いましょう。

■ アサが来た最終章
 終わりますね。NHK朝ドラは近年大人気ですが、このドラマは本当に楽しかったと思います。当たり前のことですが、おじいちゃんが死に、おばあちゃんが死に、子供が生まれ、成長して親になり、活躍して、孫が生まれ、若かった人が年取って、老いて、また死を迎える、「いい人生だったな」と言って死んでいく、こうした輪廻が当たり前に繰り返されます。どんなときにも、どんなところでも朝が来るのです。いまこういうドラマが支持されるのは、こうした輪廻が当たり前でなくなったからです。当たり前が当たり前でなくなった社会・・・私たちがなすべきことはたくさんありますね。
(2016年3月29日)


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