146  TV報道

 毎月温泉を楽しみたい温泉オタクである筆者は、このESSAYでお分かりのように群馬県の四万温泉、伊香保温泉、草津温泉によく行きますが、このところは不幸もあって、東北の温泉巡りもしてきました。年が明けたら、このところご無沙汰の栃木県、まずは那須塩原温泉に行って来ます。風呂好きな人のために朝日新聞が紹介するサイトがあります、ご覧あれ→クリック

■ 報道番組キャスター等の降板騒ぎ
 ニュース番組のキャスターやコメンテーターの降板が話題となっています。この背景に、安部政権と与党のメディアコントロールがあるのでは?と疑う人もいるようです。昔から権力と対決する報道番組は一定の人気を集めてきました。権力に擦り寄る姿勢だと、ゴマスリに見えてちっとも面白くないからです。テレビを見て、強い権力者にあらがうほうに味方したくなる視聴者心理は、ドラマ『半沢直樹』や『下町ロケット』で顕著ですが、一方で娯楽番組では「水戸黄門」に見られるように、最後は庶民の味方が悪代官を裁いてくれる、それは権力があるからできること、というパターンです。日本人はお上に弱いというのは、長い江戸幕府の時代にすっかり浸透しました。だから最後はお上に従うのだけれど、テレビドラマに便乗して憂さ晴らし、だけど現実はそんなのムリと分かっているのが日本人なのです。権力には逆らえないという諦観が日本人には身に沁みているように思えます。ただ報道番組となると、ドラマとは違う側面があります。今回はアナウンサーもまじえてこれに触れてみます。

■ NHK『ニュースウォッチ9』
 筆者は、NHK『ニュースウォッチ9』の大越健介キャスターの姿勢が好きでした。野球好きという共通点もあるからです。シリア問題では、自ら現地に赴き、アサド政権に対する欧米の姿勢やISとの関係などを現地の人々の声を聞いて、「一方的にこちらが悪と決め付けるのは危険、どちらの勢力の影にも支援者が居て、犠牲になっているのは戦闘員ではない一般市民です、舞台がここになっているだけです」と訴えたときには目をみはりました。報道というのは、左右どちらかから見るのではなく、現実を伝えて視る人の判断に委ねるのがあるべき姿だと改めて教えられる思いでした。一方で、こういう姿勢がNHKトップに受け入れられるかな?という懸念も頭をよぎりました、なにせ国営放送だし、安倍首相のお友達として会長に就任した籾井勝人氏があの通りですから、公正であることが必ずしも良しとは限らないからです。そして大越健介キャスターが2015年3月末で降板すると突然発表された時には、当のNHKの局内もビックリと当時ネットや週刊誌で大騒ぎでした。

■ 大越健介キャスター更迭
 大越健介キャスターは最後の放送で、視聴者にこう別れの挨拶をしました。「いずれ、また別の機会に画面を通してみなさまにお目にかかれればと思います。それまでの間、しばしのお別れです。さようなら。長い間、ありがとうございました」と。
 大越健介キャスターは東大野球部のエースとして活躍した人ですが、NHKの籾井勝人会長が局内の内部告発でタクシー問題が出て国会に喚問されたとき、この問題を追及したのが民主党の階猛(シナ タケシ)衆議院議員(公式サイト)で、筆者と同じ岩手県雫石町出身、高校の後輩です。筆者の伯母さんは階家に嫁ぎ、その家とはすぐ近くで親戚だと言っていましたから、縁があります。Japanese Obama(日本のオバマ)と言われているのは顔が似ているからです。階猛さんも東大野球部で投手でした。奇縁ですね。このときの籾井勝人会長も大人気無かったけれど、負けるもんかという気迫にあふれた対決(>_<)でした。
 大越健介キャスターはニュースを伝えた後で、短くコメントするのが特徴でした。官邸で見ていた安部首相が「また始まったよ」と苦虫噛み潰していたそうです。このコメントは別段過激ではなく、穏やかな口振りでしたが、原発再稼動への懸念や、戦前の朝鮮人連行などの表現が気に入らなかったようです。「連行」というところが従軍慰安婦問題などと同様、お気に召さなかったようですが、歴史的事実は曲げられないので仕方ありません。2014年12月の総選挙圧勝後、「官邸の意向」がNHK上層部に伝えられたと週刊誌に書かれました。
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階猛衆議院議員

■ 道連れ井上あさひ
 NHK『ニュースウォッチ9』で大越健介キャスターとコンビを組んでいた井上あさひアナは4月から京都放送局に異動になりました。大越健介キャスターとNHK上層部との折り合いが悪く、大越降板の“道連れ”になったというのがもっぱらのうわさでしたが、当時は『あさひさん、もう見られないのか』、『受信料返せ』などの声がNHKに殺到し、“あさひロス”に陥ったファンがたくさんいたそうです。後任の鈴木菜穂子アナは井上あさひアナと同期入社で、3月までNHKの“朝の顔”として存在感を示してきました。フジテレビのめざましテレビほどの“ブリッ子キャラ”ではありませんが、既婚の30代にもかかわらずいじられるのがかわいい“さわやかキャラ”が好評でした。筆者も昔はめざましテレビを見ていましたが、鈴木菜穂子アナになってからNHKに”転向”しました。夜にはふさわしくないのでは?との声もありましたし、筆者は朝の鈴木菜穂子アナも、夜の井上あさひアナも好きだったのでがっかりしました。井上アナは、名前はあさひでも夜向き(^_^)で、口元きりりと引き締めて、大人のオンナの色気も妖しさもありますし、ニュースを読む声のトーンも低いですから“夜向き”です。カムバックコールが起こるのも当然です。

■ 『報道ステーション』の古舘伊知郎キャスター降板
 突然のニュースで、『報道ステーション』(テレビ朝日系)の古舘伊知郎キャスターが、2016年3月末で降板するそうです。「報道ステーション」の前身は「ニュースステーション」で、久米宏さんがキャスターで、過去日本で最も人気のあったニュースキャスターと言われています。しかし、この前身のつぶやきでも触れましたが、所沢のダイオキシン騒動で、筆者の近隣の農家が大被害を受け、裁判となってテレビ朝日が非を認めて謝罪し、賠償金を払うなど、たびたび誤報事件を起こしました。「報道ステーション」になってからも、古舘伊知郎キャスターの報道姿勢にはあるベクトルがあり、特に福島原発事故以降の報道姿勢には疑問を感じてあまり見なくなりました。
 そのコメンテーターだった元経済産業省官僚の古賀茂明さんが2015年3月27日、番組に出演した際、自らの番組降板を巡って古舘さんと激しく応酬しました。古賀さんが官邸(菅官房長官)から圧力を受けて番組からおろされることになったとか、それによって番組のプロデューサーが更迭されるとか、自ら作った「I am not ABE」というフリップをかざして自らの主張を述べたことに対し、古舘さんが、こういうやり方は承服できないと反論して言い合いになりました。この時のやりとりを巡って、自民党がテレビ朝日幹部を事情聴取し、政治の圧力が問題視されることになりました。電波を使ってこういう主張をする古賀さんはやはり非常識であり、古舘さんが反論するのは当然でした。
 古舘さんは降板にあたって記者団に対し、「不自由な12年間でした。言っていいこととダメなことの綱渡りでした」と述べました。ニュースを報じた後に自身の見解を述べると直後にCMが入ってしまうことがあったことを明かし、「報道には報道特有の放送の仕方がありました。バラエティー番組では“ラーメン屋”と言えても(番組では)“ラーメン店”と言わないといけません。スタッフともめることも多かった」と振り返りました。筆者は以前、古舘さんは長過ぎる、もう降りたほうが良い、と書きました。この人は本来非常に面白い人です。ニュースキャスターより、もっと自由に活躍したほうが良いでしょう。ただ、官邸の圧力が言われる中での降板だけに、本人が嫌気がさしたのなら、なんとなくイヤ〜な感じがします。今後の新しいニュースキャスター次第で、テレビ朝日の姿勢がわかるでしょうが、多分NHK『ニュースウォッチ9』同様、当たり障りの無い人を選ぶのでは?すると常に二桁の視聴率を誇ってきたこの番組も怪しくなるでしょう。他局にはチャンスです。

■ 『NEWS23』の岸井成格さんも降板
 TBS『NEWS23』の岸井成格さんも降板するそうです。『NEWS23』は、『報道ステーション』と並んで、政権に対しても“言うべきことは言う”姿勢を持った貴重な報道番組です。その姿勢は、故・筑紫哲也氏がキャスターを務めていた頃と比べて過激性は弱まっていますが、現在も岸井さんが孤軍奮闘で引き継いでいます。古舘さんもそうですが、ニュースキャスターはただ単に淡々とニュースを読み上げるのではなく、それに対する視聴者への投げかけ、問題提起をしなければ面白くありません。たとえば辺野古問題で政府に批判的、翁長知事に同情的なコメントをすれば面白くないという人は大勢いるでしょう。そういう人は別の局の報道番組を見れば良いのです。どれを見るかは視聴者の選択にゆだねられています。筆者も古舘さんや岸井さんの言うことには納得できずチャンネルを換えてしまうことは多々あります。
 2015年11月中旬、紙面全体を使った意見広告が読売新聞と産経新聞に掲載されました。題して「私たちは、違法な報道を見逃しません」。広告主は作曲家のすぎやまこういちさんが代表呼びかけ人を務める任意団体「放送法遵守を求める視聴者の会」で、『NEWS23』の、岸井成格さん(毎日新聞特別編集委員)を非難する内容でした。2つの全国紙に、全面広告を打つ費用はいったいどこから?ポケットマネーだと言うのでしょうが、個人に対する意見広告というのも異例です。この組織にとって、是が非でも訴えたい内容だったということでしょう。読売新聞と産経新聞というところですぐピンときますね。早速ネトウヨなどがピーンと反応しました。ただ、「違法」と言うには客観的に無理がありますね。だから裁判所ではなく新聞広告なのです。この広告が出る10日ほど前の11月6日に、BPO(放送倫理・番組向上機構)が、『クローズアップ現代』(NHK)のやらせ問題に関して「重大な放送倫理違反があった」とする意見書を公表し、この意見書の中で、放送に介入しようとする政府・与党を、「放送の自由と自律に対する圧力そのもの」だと強く批判したのです。意見広告は、BPOの意見書に対する政府と自民党の反感・反発を“代弁”したかのようなタイミングと内容でした。もう我慢できない、ということで、かねがね頭にきていた岸井成格さんに白羽の矢が立ったということでしょう。

■ 次は誰?岸井さんに対する寺島さんの現実性
 安部政権が敵対視してきた報道番組のキャスターが次々降板していきますと、次は誰だ?ということになりますが、岸井成格さんもレギュラーのTBS日曜朝の『サンデーモーニング』あたりでしょうか?ただ関口宏さんはソフトですし、スポーツの張本さんの「アッパレ!」と「喝!」というのはすごく人気がありますからどうでしょうね?岸井成格さんは毎日新聞の特別編集委員ですが、論説委員ではないので毎日新聞の社説を書く人ではありません。週替りのコメンテーターの中では寺島実郎さん(多摩大学学長、日本総合研究所理事長)が最も共感しますが、この人は地球温暖化の怖さは原発の危険性をはるかに上回って怖いという視点から、太陽光や風力など再生可能エネルギー発電が技術的にも製品的にもコスト的にも安定稼動に入るまでは火力を減らし原発を動かすべきだという考えで、原発絶対ノーの岸井成格さんとは対立します。寺島さんは核のゴミの廃棄場所を明確にすべきだとか、日本の原子力政策が秘密主義で、今後日本は原子力とどう向き合っていくか政府が一向に明らかにしないことを批判しますので、原発稼動に反対なのかなと一瞬聞こえがちですが、そうではなく「原子力は当面は必要なのだ、それを政府は国民に丁寧に説明し、海外に対しても日本の原子力政策を明確に示して、だから日本の技術を使ってくれと言うべきだ」という考えなのです。したがって朝日新聞や毎日新聞の社説とは相容れないのですが、筆者は現実的な寺島さんの主張に共感します。

■ 権力者たる者、自制的であれ
 そもそも政権の座にあるもの、すなわち権力者は、本来抑制的でなければ世の中上手く行きません。かのアドルフ・ヒトラーだって最初からあの通りだったらドイツ国民の支持は得られなかったでしょう。ヒトラーは格差が広がる現実に対し、より底辺の人たちに訴えて支持を広げ、やがて独裁者と言われるまでにのし上がったのです。ヒトラーが自らの命を絶つとき、これでナチスは死ぬのではなく、また百年後よみがえると言ったそうです。怖い話です。ロシアだってプーチン大統領の人気はますます高まっています。怖いのは経済格差が拡大して、人々の間に対立と憎悪が生まれたときです。

■ 格差社会は西欧から日本へも拡大
 西欧でもISへ向かう若者の背景にこうした現実があります。ロンドンのレストランに行ってみれば顕著です。トップは白人ですが、ウェイターやウェイトレス、厨房の料理人、皿洗い人、お掃除係、レジ係、大抵有色人種です。ただし、見事に国別、地域別階層社会になっています。英国圏のインド人は比較的高い位置に居ます。中国人は料理人が多いですね。下層はバングラデシュなどです。アジア人が多く黒人は居ません。中近東系の人たちは、こうした接客サービスの仕事ではなく、もっと汚い仕事や力仕事に従事しています。日本人は大事なお客様なので、レストランでも丁寧に扱われますが、やはり白人より一段低く見られている(ような)感じを受けます。アラブの富裕層などは、ハンパじゃないお金持ちなので、もちろん歓迎されます。同じ人種なのに働く人とお客様の間に、越え難き壁があるのです。こうしたハイアラーキな現実が最も少なかったのが先進国中では日本でした。それでも部落差別のような現実があり、士農工商というものの、実際は江戸時代以降士商工農で、それは平成の現代でも同じです。公務員が一番上の階級です。頭を使うほど上の階級、汗をかくほど下の階級になります。大阪維新の会(松井一郎代表)は、公務員優遇に反発し、給与を下げろと主張していますが、それは大阪が商人の町、東京が武士の町のトップだからです。そういう日本でも、今やロンドン同様、地域別階層社会になっていることは皆さんお気づきでしょう?東京の食べ物屋に行って、働いている人を見ると分かります。

■ 楯突く者に寛容な権力者であれ
 中国における権力者と言えば始皇帝ですね。紀元前に秦という国の王で、瞬く間に中国の他の国々を平定して、中国を統一し、各国の王の上に立つ皇帝と名乗って、その始祖であることから始皇帝と名乗りました。その巨大な墳墓を生きている間に建設しました。死してなお自らの権力が世界を照らし君臨し続けることを願って作ったのに、崩御後わずか3年で王朝は滅びました。次回は、この始皇帝と兵馬俑を年明け第1弾としようと考えています。
 日本での権力者の最たる者は織田信長でした。妻と世継ぎの長男に疑いを掛けられて、殺せと言われた徳川家康の心中を想像するだけで身の毛がよだちます。結果、泣く泣く従わざるを得なかった家康の怨念が、やがて明智光秀によって晴らされたのです。冒頭書いたように日本人はお上に弱い、最後は従います。だから楯突く者に寛容な余裕を見せていれば、「あの人は偉い」と言われます。国会で気に入らない質問に野次を飛ばすような姿勢では尊敬されないどころか、小者だと卑下されます。

■ 好きな女子アナ
 女子アナで人気ナンバー1は日テレの水卜 麻美(みうら あさみ)さんだそうです。第2位はフジテレビのカトパンこと加藤綾子さん、第3位はNHKの有働由美子さんだそうです。筆者はテレビ東京の大江麻理子さんも好きですね。マネックス証券の松本大社長が再婚相手に選んだだけあって知性が際立っています。ジジ殺しの小谷真生子さんが2014年3月までメインキャスターを務めたテレビ東京ワールドビジネスサテライト(WBS)の後任は見つからないだろうと言われた中で、立派にカバーしています。
 NHKの女子アナは人事異動が結構あります。筆者が好きなのは前出の井上あさひさん、鈴木菜穂子さんもそうですが、東京在籍では「首都圏ネットワーク」や「もうすぐ9時プレマップ」の橋本菜穂子さんですね。ちょっとキツイので一般人にはあまり人気が無いみたいですが、あの度胸はステキですよ。あまりNHK的でない美しさの上條倫子(ノリコ)さんは結婚したそうですね。スポーツキャスターの杉浦友紀さんもいいですね。「NHKニュース おはよう日本」を鈴木菜穂子さんから引き継いだ和久田麻由子さんも清楚でよろしい。

■ 不動の人気は有働さん
 不動の人気を誇るのが有働さん(^_^)、『あさイチ』でおなじみのNHKアナウンサー有働由美子さんです。日頃、自虐ネタや下ネタを明け透けにぶっちゃけ、人気を集めている有働アナですが、この人の特長は、男より女に人気があることと、「嫌い」というランキングに登場しないことです。「好き」と言う人が居れば、「嫌い」という人も居るというのが他の上位ランクの女子アナですが、この人は別格なのです。これまで数々のスキャンダルにさらされながら、その折々のNHKトップに寵愛されて乗り切ってきました。同じようなことがあって人気アナが次々去って行くなかで、異色なのです。以前紹介したようにオリンピックの実況放送で篠原の誤審敗退を「誤審です」と絶叫したアナウンスは日本国民の共感を呼び、五輪キャスターを4度、紅白歌合戦の司会を過去3度も務め、今年の紅白総合司会も黒柳徹子さんと共に務めます。「黒子に徹する」そうです、「柳が抜けてるよ」、との声もありますが(^_^)。『NHKニュース10』のメインキャスターに抜擢されたときは、テレ朝の古舘にも"有働なら対抗できる"と当時の海老沢会長の信頼が厚かったからだと言われています。2007年にはNHKとしては異例のアナウンサー職のままニューヨークへ異動、さらにニューヨーク赴任中の2008年には先輩を差し置いて管理職であるチーフアナウンサーに抜擢されました。そして2010年に帰国して以降、『あさイチ』や紅白総合司会も4年連続で大活躍を見せています。今や部長クラスですからすごい出世です。

■ 有働由美子的処世術
 有働由美子さんが人気があって出世するのは何故か?という点で、出世願望のあるサラリーマンはよく考える必要があります。言うまでもなく出世するには会社に役に立つ必要があります。その上で上司に好かれる必要もあります。単なるゴマスリではダメで、頼りになって、時には気概を示す必要もあります。特に日本では大概そうですが、トップがおじいちゃんだった場合、女性では可愛がられる必要があります。まかり間違えばセクハラと思われるので慎重になりますが、年寄りに好かれるには?というのは重要なテーマなんですよ。有働さんは、楽しい話題では良くしゃべりますが、権力と報道、戦争や安保など微妙なテーマになると、言葉少なにスルーするのが敵を作らない理由です。2014年の朝ドラ『花子とアン』で主人公の花子が出演するラジオ局が大本営に支配されてゆくという回がありました。『あさイチ』冒頭の"朝ドラ受け"コメントでNHK解説委員の柳澤秀夫さんが、メディアと権力との関係に言及したのに対し、有働アナは別の話題でごまかしてスルーしようとしているのが見てとれました。こういうところがNHK上層部の安心感につながるのです。2015年2月イスラム国人質事件でジャーナリストの後藤健二さん殺害が明らかになった翌朝の番組冒頭で、同じく柳澤さんが"朝ドラ受け"を遮って、自分の友人でもある後藤健二さん追悼の意でしょうが、次のように語りました。「いま、強く思っていることは、ニュースではテロ対策とか過激派対策とか、あるいは日本人をどうやって守ればいいか、が声高に議論され始めているんだけど、ここで一番、僕らが考えなきゃいけないことは、後藤健二さんが一体何を伝えようとしたのかということ。戦争になったり、紛争が起きると弱い立場の人がそれに巻き込まれてしまう。彼は一生懸命にそれを伝えようとしたんじゃないか」・・・メディア(もちろんその代表格はNHK)への批判にも踏み込んだこの柳澤さんの発言は大きな反響を呼びましたが、このとき傍らの有働アナは、まるで困ったような微妙な表情を浮かべていたのです。柳澤さんは大越さんと同じような視点で自分の考えを述べたのですが、ときの首相がテロリストとは断固戦う、と言っている最中でしたから、「もの言えば・・・・」であって、有働アナは賢い選択をしたのです。大衆が見つめている中で、対立が起きそうなテーマからは避ける、これが賢い世渡りなのです。

■ 原発再稼動容認
 朝日新聞の報道から・・・・関西電力高浜原発3、4号機(福井県高浜町、定期検査中)の再稼働をめぐり、福井地裁の林潤裁判長は2015年12月24日、「安全性に欠けるとはいえない」と判断し、再稼働を即時差し止めた4月の仮処分決定を取り消した。差し止めを求めた住民側は名古屋高裁金沢支部に抗告する方針だが、関電の異議が認められ、差し止めの効力が失われたことで再稼働は現実的になった。高浜3、4号機は2月に原子力規制委員会から新規制基準を満たすと認められ、福井県の西川一誠知事も今月22日に再稼働への同意を表明。今後の抗告審は長引くとみられ、関電は3号機を2016年1月下旬、4号機は2月下旬にそれぞれ再稼働させる見通しだ。また林裁判長は、関電大飯原発3、4号機(福井県おおい町)の再稼働差し止めを求めた住民らの仮処分申請も却下。大飯は規制委が審査中で、再稼働が差し迫った状況にはないと判断した。大飯は昨年5月、樋口裁判長が運転差し止めの判決を出したが関電側が控訴して確定せず、再稼働を進められる状態にある。
関西電力高浜原発3、4号機
 111『火山』(2015年4月19日)の中で筆者は、「高浜原発3、4号機の再稼働差し止めを命じた福井地裁決定文の誤り」について書きました。福井地裁の決定文の中で、原発で想定する地震の揺れに関する発言を引用された識者自身が「曲解されたものが引用されている」と間違いを指摘したのです。「裁判官が結論を先に持って、科学的に間違いの根拠を元に判決を出すのでは、何をかいわんやです。情けない。福井地裁は直ちに誤りを訂正して判決し直すべきです」と書きました。今回の判決は単に誤りを正しただけで、これ以外に道は無かったでしょう。
(2015年12月26日)


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