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 暖かい日が続きましたが、週末寒くなるとのことで、それなら温まろうと草津に行ってきました。最近の天気予報は良く当たりますが、12月11日は亡き母の四十九日で、翌土曜日は少年野球の今シーズン最後の大会でした。2日前ぐらいまで曇り時々雨の予報でしたが、前日一転して晴れの予報に変わり、当日はとても12月とは思えないポカポカ陽気になりました。前回の末尾に、少年野球の粋な審判のことを書きました。今回はこの「粋」がテーマです。

■ 粋は形声文字
 「粋」という漢字は形声文字です。形声文字は漢字の8割を占め、偏(へん)が意味を、旁(つくり)が音をあらわすと一般には説明されています。ところがここで言う音とは、漢字を作った中国での音です。中国では「音」によって意味をあらわしていました。だから、日本人からすると「音」と言われても(@,@)ということが良くあります。言語学者は、漢字を「表語文字」と呼ぶことを提唱していますが、それは漢字が音すなわち意味をあらわすもの、つまりことばを表現するものだからです。すると、「扁(へん)」の役割は何でしょうか。それは、その字の意味する物事の種別(その字が何に関係するか)ということを説明する補助的な役割なのです。形声文字の説明が日本人からすると(@,@)となることがあるのは、漢字が日本に、文字として輸入されたからです。もちろん、最初に漢字を持ち帰った人は現地の音で読みこなせたのでしょうが、訓読が発達するにつれて、漢字がことばを表現したものであることを忘れてしまったのです。だから、偏(へん)が意味を、旁(つくり)が音をあらわすと説明されても日本人にはピンと来ないのです。むしろ旁(つくり)は意味を、偏(へん)は種別・属性をあらわすと言ったほうが正しいでしょう。

■ 粋は「米」と「卒」の組み合わせ
 さて「粋」という漢字に話を戻しましょう。この字の偏(へん)は「米」で、旁(つくり)は「卒」です。
 「米」は「稲の実の象形と稲の穂の枝の象形」です。「卒」は「衣服のえりもとの象形の下部に一を付した文字」で、「死ぬ・おわる・完全」の意味です。死のときに用いる衣服を意味し、それが転じて、「おわる」を意味する「卒」という漢字が成り立ちました。また、このしるしのある衣服は、しもべ・兵士にも用いられたので、「しもべ・兵士」の意味も表します。稲をあらわす漢字は「禾」ですが、これは稲が稲穂を垂れている姿を現します。その実である「米」という漢字は、稲穂が実っている姿をそのまま漢字にしたものと言われています。もともとは横棒に上下3粒ずつ、計6粒の実が付いている姿を表していました。その後、真中の粒の上下が繋がり今のような漢字になったのです。文書で注釈を付けるときに使う※は、漢字の「米」を斜めにした形なので「こめじるし」と呼ばれます。
漢字辞典−OK辞典」より引用
 「粋」は「粹」の俗字です。この漢字は、完全に精米した米(玄米から外皮を取り除いた米)を意味し、そこから、「まじりけがない」を意味する「粋」という漢字が成り立ちました。音読みは「スイ」、訓読みは「イキ」です。

■ 日本独特の粋
 ただし日本では粋という漢字に、日本独特の意味を付け加えました。粋とは気質・態度・身形などがさっぱりと垢抜けていて、しかも色気があること、またはその様とか、人情の機微、特に男女関係についてよく理解していることなどと言われます。”粋”は、日本の歴史、文化に深く根ざしていて、粋(いき)という概念は、上方(関西)の言葉である”粋(すい)”と江戸のことばである”いき”があわさって出来た言葉だそうです。京都をはじめ、長らく日本の中心として栄えていた上方の、貴族文化としての粋(すい)と、徳川の治世になってから飛躍的に発言力を向上させてきた町人たちの文化としてのいき。上方から見れば江戸町人は不粋(ぶすい)でした。粋でないんですよ。しかしながら太平の江戸時代において、「宵越しのカネは持たねぇ」とか、火消し、江戸前寿司と言った江戸文化は、次第に「いき」な有様としてカッコ良く見られるようになって行きました。

■ いなせ
 ところで、江戸時代、「いなせな若者」というのが居ましたね。いなせといきは通じるものがあります。「鯔背(いなせ)」は江戸の魚河岸にいるような、威勢がよくて、腕っ節も強い、その上金払いも良いというお兄さんのことでした。一心太助のような魚河岸の若者が「鯔背銀杏」という髪型を結っていたのが由来です。鯔(イナ)という魚(=ボラ)の背に髪型が似ていたのです。ちなみに、鯔の幼魚を「オボコ」と言い、「生娘(処女)」のことを指しました。いなせは若い男特有の様ですが、いきは老若男女問わず、そういう様の人に対する賛辞です。一般にあまり若いうちはいきな人は居ません。若さとは情熱です。不器用でありながらも世間の荒波に膝を屈せず、抗い、立ち向かおうとする姿勢は若者に特有のものです。しかしながらその熱量の過剰さは、粋(いき)とは相反するものです。斜に構えて格好をつけるというのではなく、自然な洒脱さが、粋(いき)を特徴づけているものです。大人の恋、決して情熱的になり過ぎることのない、軽やかな瀟洒たる心持ち・・・、「野暮は揉まれて粋となる」の典型です。上方の”粋(すい)”と江戸の”いき”は、次第に融合して今日に至ったのです。

■ 原油の先物価格は一時、およそ6年9ヶ月ぶりの安値水準まで下落
 原油の先物価格は、日本では6年9ヶ月ぶり、国際的には6年10ヶ月ぶりの安値水準まで下落しました。これは、IEA=国際エネルギー機関が少なくとも来年後半まで原油の供給が過剰な状態が続くという見通しを示したことによるものです。12月4日にOPEC=石油輸出国機構が開いた総会で減産を見送ったことがきっかけです。特にサウジアラビアなどが米国のシェール開発企業に打撃を与え、原油掘削を諦めさせようとの戦略なので、原油価格はしばらく低迷するでしょう。

■ 原油価格上昇が日本にもたらしたもの
 そもそも米国テキサス州産出の超軽質原油であるWTI原油の価格は20世紀中はバレル30ドル台以下でした。世界経済のネタ帳をご覧ください。日本が金融バブルだった頃は10ドル台、1998年には15ドルを下回りました。それが21世紀に入ってからグングンうなぎ上り、産油国は景気が良くなり、日本は負担が重くなって支払いのために景気は低迷します。遠出が少なくなり、特に北国の冬の灯油代は家計に重い負担となりました。人々は節約し、デフレ社会となりました。この時期の円高は輸出企業には不利、輸入企業や庶民の生活には有利、ブランド志向の人には有利でした。日本製造業は韓国企業に負け、製造コストの安い中国など海外にこぞって工場を移しました。第二次産業の製造業は衰退し、地方では工場が無くなって雇用機会が減り、若者は都会へ民族大移動、しかし雇用はハケン主体、安定した基盤が無いので結婚もできません。しかも仕事はあっても第三次産業、すなわち流通、小売、サービス業です。賃金単価が低い、しかもブラック企業の巣窟です。

■ 東日本大震災以降の原発停止で円安へ
 円高デフレは庶民の生活にはエネルギー価格、食料価格の面で好都合でした。お金のある人は海外旅行に出かけ、無い人は牛丼屋に行きました。原油価格が高くなっても日本は代替エネルギーの開発に注力し、自動車はハイブリッド車(HBV)が普及し、燃料電池車(FCV)の開発も急ピッチに進み、ガソリンエンジン車も低燃費化が進みました。発電は原子力に傾斜し、高い石油の発電はほとんど無くなりました。このように対応能力の高い日本ですから円高は一向に収まりません。ところが日本は東日本大震災以降の原発停止で貿易赤字国に転落し、経常黒字もおぼつかなくなりました。すると原油代金の支払いのためにそれまでは十分ドルがあったのに、ドル買いせざるを得ない、ドル高円安にならざるを得なかったのです。これによってアベノミクスには追い風となり、今度は海外から観光客が押し寄せるようになりました。そして今度は原油安です。

■ 米国のシェール開発への影響は?
 原油価格の下落によるマイナス要因のひとつは、産油国の景気悪化や通貨下落です。なかでもロシアは鉱物性燃料の純輸出がGDPの15%程度と、エネルギー輸出依存度が他の新興国と比べても突出しており、原油価格の下落に合わせてルーブルも対米ドル・対円で大きく下落しました。中東のドバイなどで石油成金の優雅な生活が話題となりましたが、今後はやや勢いが翳るでしょう。
 米国のシェール開発企業がマイナスの影響を受けることは避けられません。原油価格の下落で利益を出すのが難しい状況にあるシェール開発企業が増えているとみられ、設備投資の減少やエネルギー関連企業のデフォルトなどが懸念されています。しかし、米国の生産量は年々増加傾向にあり、鉱区によっては2007年から現在までで10倍以上の生産量に拡大するなど、技術革新によって採掘コストは大きく低下しています。原油価格の下落で直接的な影響を受ける事業体の数は限定的なものに止まると想定されます。
【原油先物相場の推移】

【この10年の価格変動】




【2014年以降の価格変動】




【この半年の価格変動】

■ 米国利上げでドル高へ
 原油価格下落のもうひとつのマイナス要因は、先進国のインフレ率鈍化です。原油価格下落が期待インフレを引き下げてしまうことにより、インフレ率が思うように上昇しなければ、デフレ脱却を目指す日本経済やデフレ突入を阻止したいユーロ圏経済に原油価格下落が悪影響を与えるのではないかとの見方もあります。日本は貿易赤字国に転落し、やがて経常赤字にもなりましたが、原油価格下落によって貿易赤字は縮小し、経常黒字に復帰してきました。そうするとドル買いの必要が無くなりますから、再び円高局面も考えられるか?と思いました。
 ところがここにきて米国が原油輸出を40年ぶりに解禁するというニュースが流れました。さらに米国の中央銀行にあたる米連邦準備制度理事会(FRB)が、金融危機のあと7年にわたり続けてきた実質的なゼロ金利政策を解除し、政策金利を9年半ぶりに引き上げることを決めました。短期金利の指標であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を年0〜0.25%から0.25〜0.50%に引き上げるという内容です。筆者は年内利上げは無いだろうと以前書きましたが、米国経済はそれだけ好調ということ、中国とは対照的です。日本は原油安の影響もあって物価上昇目標には程遠い現状なので、黒田日銀総裁は金融緩和姿勢を緩めることは無いでしょう。米国が利上げ、日本はゼロ金利、しかも金融緩和ですからお金は米国に向かって流れます。したがってドル高円安の流れは変わりません。むしろ米国の利上げが進めば130円/USドルすら見えてきます。新興国の通貨は既に米国利上げの雰囲気を感じて大きく下がっています。これは日本経済にとっては輸出面で好ましいことではありません。もし新興国経済が悪化するようだと、その影響で日本経済も低迷する可能性があります。

■ 原油価格下落は世界経済にとってもトータルでプラス
 原油価格の下落は日米経済にとっては朗報です。それは中国にとっても同じ、世界経済にとってもトータルでプラスの影響の方が大きいと考えられます。短期的にはインフレ率が下がったとしても、中長期的には実質所得が増加し、消費の拡大を通じてインフレ率は再び高まることが予想されます。また中国経済の減速と言っても、これまでが急成長過ぎただけのことで、中国政府は次々とてこ入れ策を打っていますし、「爆買い」が象徴するように、中国は生産設備投資による成長から、消費拡大による成長へ面舵いっぱいという状況ですから、日本は中国と仲良くすることで経済成長できる局面になってきました。

■ サラリーマンの平均年収
 転職サービス「DODA(デューダ)」を運営するインテリジェンスは2015年12月7日、「サラリーマンの平均年収ランキング2015」を発表しました。2015年の平均年収は440万円で、前年比−2万円でした。2009年からマイナス傾向にあった平均年収は、2013年には一度プラスへと転じましたが、2014年には再度マイナスへと戻り、さらに今回も前年を割る結果になりました。89職種の平均年収ランキングは、1位が「投資銀行業務」(779万円)で、前回2位だった「運用(ファンドマネジャー/ディーラー/アナリスト)」(687万円)は−22万円で4位へと順位を下げました。
 いずれにせよ平均年収が高い職種は企画/管理系に分類される職種です。この背景には、企業のグローバル化への取り組みが加速したことや、事業拡大のための投資に向けた資金調達を積極的に行う企業が増えたことで、その中核を担う管理部門のニーズが高まったことが挙げられます。67業種の平均年収ランキングは1位が「医薬品メーカー」(694万円)、2位が「投信/投資顧問」(675万円)、3位が「医療機器メーカー」(570万円)となりました。
 前回から最も年収が上がった業種は44位の「ホテル・旅館・宿泊施設」(396万円)で+68万円でした。訪日外国人客の増加や、円安による国内旅行の人気の高まりを受けて、「サービス」の中でも特にこの分野の業績が堅調に推移しました。次いで、15位の「バイオ関連」(489万円)が+47万円と続きます。「メディカル」では予防医療や再生医療の実用化に向けた研究・開発が進み、バイオ関連の経験者の需要が高まりました。

■ 日本航空宇宙は快挙続き、NECアッパレ!
 12月は航空宇宙のビッグイベントが続きました。小惑星探査機「はやぶさ2」の地球スイングバイと、金星探査機「あかつき」の金星周回軌道投入で、いずれも成功しました。バンザイです。特に「あかつき」は5年前に一度失敗しており、今回がラストチャンスでした。はやぶさが満身創痍で地球帰還を果たしたときは、日本中が感動し、世界が日本のあきらめない技術に驚きました。あのはやぶさの例があるだけに、あかつきもよみがえってくれるのではないかと期待しました。報道では宇宙航空研究開発機構(JAXA)ばかりが注目されますが、宇宙開発を陰で支えているのはメーカーです。この両探査機の製造を担当したメーカーはNECです。日本電気という名前が示すように、日本を代表する電気機器メーカーのひとつですが、他の部門がリストラされても宇宙システム事業部だけは花形であり続けています。頑張ってますねぇ、アッパレ!

■ 最高裁…夫婦同姓規定は合憲、女性再婚禁止100日超は違憲
 夫婦別姓を認めず、女性だけに離婚後6ヶ月間の再婚禁止期間を定めた民法の規定が違憲かどうかが争われた2件の訴訟の上告審判決で、最高裁大法廷(裁判長・寺田逸郎長官)は「100日を超えて再婚を禁じるのは過剰な制約で違憲」とし、「夫婦同姓規定には合理性があり合憲」とする初判断を示しました。両規定は「家」制度を定めた明治民法に盛り込まれ、戦後も引き継がれたものです。
 大法廷は夫婦同姓規定について、「制度の在り方は国会で判断されるべきだ」と言及し、家族制度全体の見直し論議を求めました。選択的夫婦別姓制度については「合理性がないと断ずるものではない」と付言し、国会での議論を促しました。夫婦同姓は10人が合憲とし、女性全3裁判官を含む5人が違憲としました。判決は、「選択的夫婦別姓」を含めた議論を国会に促しましたが、この問題に向き合うべき政治の腰は重いのが現状です。政治家には保守的な人が多いからです。
 もともと日本では夫婦別姓でした。源頼朝の妻は北条政子でした。辞世のうた「散りぬべき 時知りてこそ 世の中の 花も花なれ 人も人なれ」の細川ガラシャは明智光秀の三女で、細川忠興の正室でした。前近代の日本は夫婦別姓であり、北条政子・赤橋登子・日野富子などの例に照らせば「細川」姓で呼ぶのは明らかな間違いで、「明智 珠」と呼ぶのが正しいのです。なおガラシャはキリスト教の洗礼名です。
 明治になって「家」というものをより強固にすべく夫婦同姓の法律を制定しました。したがって合憲か違憲かというのではなく、民法をどう変えるべきかの議論をすべきです。いまや企業の中でも女性が結婚前の姓のままで通すなどというのは当たり前です。墓を継承しないなど、家族制度そのものが変わっています。

■ 澤穂希引退
 サッカーの2011年女子ワールドカップ(W杯)で主将として日本女子代表を初優勝に導いたMF澤穂希(ほまれ)選手(37)が、今季限りで現役を引退するそうです。2015年8月に、J1ベガルタ仙台の運営広報部長の2歳年上の辻上裕章さんと結婚しました。したがって法的には辻上穂希なんだそうですが、やはり澤穂希じゃなくてはいけませんよね?もうトシですから、子供ができて欲しいものです。神戸と仙台では遠過ぎる、やはり夫婦は一緒に住まなくてはいけません。引退、当然でしょう。
(2015年12月19日)


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