106  かわいい

 東北ツアーの後半は青森県の浅虫温泉でした。湯量豊富でした。源泉掛け流しの量がハンパじゃありません。飲泉所が随所にあり、温泉卵を作る槽にネットや籠に入れた卵が入っていました。温泉卵が出来る間、家族は足湯につかっています。青森駅に途中下車して、ねぶた展示館ワ・ラッセを見たり、観光物産館アスパムを見学しましたが、青函連絡船メモリアルシップ八甲田丸は改修中で、残念ながら遠目に見るに留まりました。青森駅からは八甲田山がきれいに見えました。駅前地下の新鮮市場は、鮮魚、精肉、青果など新鮮、豊富、安さが自慢の名物市場で、たくさんの店がありました。

■ クールジャパンの代表は「かわいい」文化


ふじみ野市のふじみん
 今やいろいろなところで「かわいい」という声を聞きます。100『日本の経済展望@』(2015年2月1日)で紹介した鴨川シーワールドのイルカ、アシカ、ベルーガがかわいかったのですが、獰猛と言われるシャチまでかわいいと思いました。フナッシーやクマモン、ぐんまちゃん、各地のゆるきゃら、みなかわいいです。
 大正ロマンの竹久夢二の絵がかわいい文化の起点だとの話もあります。筆者がよく行く伊香保温泉に記念館がありますね。
 現在では特に少女漫画がかわいい文化として世界中にファンを増やし、クールジャパンの代表となっています。秋葉原のコスプレ少女、原宿の竹下通りに行けば、きゃりーぱみゅぱみゅみたいな少女たちが、まるで漫画から飛び出してきたみたいに歩いています。ただ呼び込みの男たちが何故黒人男性なのでしょう?
 ディズニーが人気があるのもかわいいからですね。

岩手県雫石町のしずくちゃん

■ 青柳絵梨子さんの著書:『ルポ・かわいい! 竹久夢二からキティちゃんまで』
 サンリオのキティちゃんもかわいいの代表です。キティは口がありません。おしゃべりせずに、つまり感情を押し付けずに女の子たちの気持ちに寄り添うのです。だからかわいい。
 「かわいい」という文化が排斥された時代、それは戦時中です。殺し合いの中で「かわいい」なんて有り得ませんでした。しかしどんな時代にも少女たちはかわいいものを渇望していたでしょう。
 戦争が終わっても、女の子が女性に変貌していく過程で社会は「女らしさ」を強いて行きます。それに反発して少女たちが「かわいい」で抵抗するのだそうです。難しい表現をすれば、「かわいい」は権力の無効化だ、と共同通信記者の青柳絵梨子さんは言います。その著書:『ルポ・かわいい! 竹久夢二からキティちゃんまで』が発売されています。世界に輸出されるkawaii―それはトキメキを求める少女たちの魔法のコトバ、抵抗と解放の合い言葉!女の子自身も気づかなかった戦前から続く“少女文化”の奥深さを若き女性記者が“目”と“耳”と“足”で探る―地方紙各紙に掲載されて反響を呼んだ共同通信の人気連載企画の単行本化です。
ハローキティコイン2 ーあつめたコインでかわいい庭づくりー
サンリオのHello Kittyのページから
■ 「かわいい!」で、戦争は無くなって行く
 内容を目次から想像して下さい。序章 かわいいにはとげがある / 第1章 私らしく輝く / 第2章 個が目覚める / 第3章 つながる、社会を動かす / 第4章 “淳一先生”が守ったかわいい文化 / 第5章 弾圧から戦略へ / 第6章 権力を無化する / 終章 釧路でも「かわいい!」
 著者の青柳絵梨子さんは1984年東京都生まれ、中央大学文学部卒です。在学中、日中関係をテーマに中国・北京で取材したドキュメンタリー映画を制作、発表、2007年、共同通信社に入社し、大阪支社社会部、さいたま支局などをへて、2012〜2013年、編集局東京エンタメ取材チームに所属し、子ども紙面用連載企画「かわいい☆ラボ☆☆」の取材を担当しました。2014年10月刊行時は、共同通信社釧路支局に勤務していました。
 この本のハチマキにある言葉・・・・「かわいい!」があれば闘える・・・・「かわいい」が発動すれば、戦わずして戦いそのものを消し飛ばすことができると言います。なるほど、「IS」や「タリバン支配地域」では、女は黒いヴェールで顔を覆い隠しています。「かわいい」が発動できない状態に置かれているのです。宗教の問題なので、コメントできませんが、日本発の「かわいい」が世界に浸透すれば、この世から戦争は無くなって行くでしょう。

■ 円安・株高の進行
 2月は4回シリーズで日本の経済展望について書きました。いまニューヨーク外国為替市場ではユーロが対ドルで11年ぶり安値近辺で推移しています。アベノミクスの根幹は、2%のインフレ目標に向かい、デフレ脱却、円安誘導、株式投資を促進して景気を上向かせ、増税や社会保険料アップをカバーする賃上げを政治主導して行く点にあります。「失われた20年」の間、日本の国力を相対的に低下させてきた諸悪の根源はデフレにあるという認識で、これは正しいと考えます。株式のようなリスク資産にお金が向かうことは、世界でもダントツの政府債務を増やし続けている日本にとっては必須です。なぜならこれによって国債の金利を低く抑えられるからです。水や電流が上から下に流れるように、マネーも金利の付くほうへ流れます。株価が上がるならお金は株式に向かうのです。日経平均もついに1万9千円を突破しました。筆者が「日本の経済展望」で書いてきたことが着々とクリアされて行きます。
 さて国と国とのトレードでは為替が焦点になります。日本はもっと円安になるべき、と筆者が書いているのは、日本の実力がまだ過大評価されていると考えるからです。ただ、貿易立国日本が影を潜めたため、円安になっても輸出は増えず、逆に輸入物価上昇に伴う円安デメリットが言われています。それなら第1次産業を振興して内需を国産品でカバーするとか、第3次産業を振興し、日本のおもてなしをアピールして外国人観光客を呼び込もうというのが日本政府の方向です。円高の方が日本のお金の価値が高いのだから日本経済には良いと主張されている方もいます。ここでは為替の話をもう一度おさらいしましょう。

■ 通貨は金利に左右される→中央銀行の役割に注目
 実は国の通貨は、その国の金利に左右されます。金利の高い国の通貨が買われるのは先述の如く「自然な流れ」です。すると為替は金利に左右されますから、政策金利を管轄する各国の中央銀行の役割が近年にわかに注目されるようになり、その理由は、国家間のお金の移動がこれによって変わるからです。アベノミクスでも財務省の麻生大臣より、日銀の黒田総裁のほうが目立つのはそういうわけです。主要国の中央銀行は日銀(BOJ)、米国連邦準備制度理事会(FRB)、ユーロ圏欧州中央銀行(ECB)、英国イングランド銀行(BOE)、スイス国民銀行(SNB)、カナダ銀行(BOC)、オーストラリア準備銀行(RBA)などです。

■ 円安になるべき日本がリーマンショックで超円高へ
 金融緩和してジャブジャブ市場にお金を供給するから円安になるかというとそう単純ではありません。日本円をバンバン印刷して、みなさんお金を使うようになると、物価は上がります(インフレ)。しかし上がり過ぎると金利を上げて抑制する、これが日銀の役割です。為替は国内だけの話ではなく、国家間のお金の移動で決まりますから、金利の高い国の通貨が買われるわけで、2001年から実質ゼロ金利を続ける日本の通貨は買われないので円安で然るべきです。金利を下げて円高を防ぐという操作は日銀には出来ませんから、残る手段は金融緩和しか無かったわけです。実際2007年までは米国が高金利だったのでドル高円安が進みました。ところが2008年後半のリーマンショックでFRBが金利を段階的に下げ、各国が追随したことにより、各国の通貨は売られ、安全な日本円が買われた結果、超円高へとなだれ現象が起きました。すなわちこの円高はFRBによって引き起こされ、日銀はお手上げだったのです。ただし、1点指摘しておきますと、マネーゲームは「予想で買われ、事実で売られる」と言われるように、金利が上がったから通貨が高くなるというわけではなく、「金利が上がるだろう」と思われる通貨が買われるのです。

■ アベノミクスで円安になったのは何故?
 では世界の中でただ1国、実質ゼロ金利を続けてきた日本で、しかもずっと金融緩和しっ放しだった日本で、もはや日銀の打つ手は無いと思われていたのに、アベノミクスで黒田総裁が登場し「異次元の金融緩和」と言ったら円安になったのは何故でしょう?それは、安倍総理と黒田総裁の並々ならぬ決意をマーケットが感じたからです。変な話ですが、「景気は気から」と言われるように、市場に参加する投資家は様々な経済要素をもとに投資をするわけですが、もう一方で政策の本気度も参考にします。経済指標だけでは予測が当たるかどうか分かりませんが、何が何でもインフレにする、何が何でも株価を高くする、何が何でも円安にする、そのためには手段を選ばない、と言われれば、ひとつこれに乗るのが市場参加者の心理というものです。ただ、だからと言って国民が素直に従うわけではないので、効果がなかなか出て来ないとマーケットはまた冷え込んで行きます。ところがアベノミクスが足踏みしているときに、FRBはQE1、QE2、QE3という金融緩和を手締まって、金利を上げる時期を探るようになりました。こうなると「予想で買われ」、米ドルが買われます。こうしてアベノミクスは頓挫せずに続いています。ラッキーなんです(^_^)

■ 実質実効為替レート
 日銀が管理基準としている「実質実効為替レート」はBIS(国際決済銀行)ベースを採用しています。為替レートを貿易取引額で加重平均して指数化した為替レートを実効為替レートと言います。そして、それをインフレ率で調整(物価調整)したものを実質実効為替レートと言います。右図で赤、青共に上に行くほど円高です。
 例えば名目で100円/ドルのときに米国でLEDランプが7ドルだったとしますと日本円では700円です。インフレの米国では5年後そのLEDランプが10ドルに値上がりし、名目為替レートは100円/ドルのままだったとしますと、デフレ続きの日本では1000円必要になります。つまり為替レートに変動が無くても、相手国の物価が上がれば日本円の通貨価値は実質的に下がります。

日銀のホームページから…1980年から2015年に至るBISベース実質実効為替レート
赤線は円/ドル(名目)レートで左軸の目盛(円/ドル)青線は実質実効為替レートで右軸の目盛(指数)
同じLEDランプが7ドルから10ドルに値上げされるということは、米ドルの通貨としての価値はインフレによって下がっていますが、日本円がそのとき名目円高になって70円/ドルになっていれば同じ700円で買えますから、円の通貨としての価値は維持されていることになります。もし、為替レートが同じ100円/ドルなら日本円の通貨価値は実質的に下がったことになります。理論的には「インフレ率が高い国の通貨は、インフレ率が低い国の通貨よりも安くなるべき」であり、ちょうど名目GDPと物価を修正した実質GDP(購買力平価ベース)のように考えますと、デフレが長い日本の円と緩やかなインフレ期間が長い米ドルでは、理論的には名目円高になるべきで、同じ為替レートのままなら“実質的には円安”となります。

■ 日本円は高度成長期以降ずっとダントツで円高
 米ドルに対して円が安過ぎるから日本の貿易黒字が続くとして、円高に調整しようというプラザ合意(1985年)以前は米ドルが圧倒的に強く、実質実効為替レートと米ドル/円レートが殆ど同じ動きをしていたのですが、プラザ合意以降はその動きが大きく乖離を始め、オウム事件や阪神淡路大震災のあった1995年あたりで円高のピークを迎え、その後は大きな変動がありつつも基本的には円安トレンドという傾向が見られます。現在の日本の実質実効為替レートは円安が問題視されていた1985年当時より若干円安である事が分かります。日本経済を広く多国関係から見ると、全く違った様相になります。右図を見ると、日本円が高度成長期以降ずっとダントツで円高ということが良くわかります。米ドルは長期的に相対的な通貨価値が落ちていますが、スイスフランやユーロはジリジリ強くなっていると言えます。韓国ウォン(水色線)は、1964年に急落し、以降大幅に安い水準に据え置かれている事が分かります。豪ドルは長期間低迷していましたが、近年資源価格上昇で盛り返し、通貨価値も上がってきたようです。日本企業との競合が多い国の通貨である韓国ウォン、ユーロ、英ポンドが日本円に比べて安いままなので、円安米ドル高になっても、日本からの輸出が伸びにくい理由の一つとなっていることが分かります。

■ 今後の日本円レートは?
 「日本円はすでに過度に割安である。だから、これ以上の円安は日本経済にメリットはないし、近いうちに大幅に円高に戻るはずだ」という主張をする人がいます。しかし、グラフをジッと見ると、2009年から2012年半ばまでの日本円は強過ぎた事が見て取れます。このグラフに無い国を含めて、実質実効為替レートが上昇しているのは成長著しいBRICsを始めとする新興国と資源国です。端的に言えば、実質実効為替レートは国力の隆盛を示しているとも言えます。とすれば、少子高齢化に悩む日本の通貨の価値が1995年以降相対的に落ちているとは言えても、「今後日本円は諸通貨に対して戻るはず」や「ドル円レートは行き過ぎ」とは言えません。日本の実質実効為替レートがプラザ合意の頃より円安になったと言っても、大きな違いは、貿易黒字が赤字になり、やがて経常赤字になるだろうと言われていますから、国力が明確に落ちていることです。

■ 今後のユーロは?
 100『日本の経済展望@』(2015年2月1日)で、欧州中央銀行(ECB)が量的金融緩和(QE)導入を決定したことを紹介しました。EU全体がデフレに陥りつつあるので、日本のアベノミクスにならい、EU加盟各国の国債を買い、市場にジャブジャブお金を流すのです。ECBは政策金利を過去最低に引き下げ、総額1兆1000億ユーロ(約145兆円)のQEの下でソブリン債購入を開始しました。ユーロは2003年9月以来の安値を付けています。ユーロは過去6ヶ月、ほぼ途切れなく下げてきました。さらに下げるでしょう。リーマンショック前の2008年4月1.6ドル/ユーロだったのが今や1.05ドル/ユーロ、ドル高ユーロ安です。対円では1ユーロ=129円で、リーマンショック前の2008年7月に168円/ユーロ、2012年7月に100円/ユーロを一時切り、2014年12月に148円/ユーロまで戻したのに、また円高ユーロ安の傾向です。乱高下です。ユーロはドルに対して弱気で推移するでしょう。
 ECBの債券購入に先立ち、日銀は前例のない債券購入に踏み切っており、スウェーデンやトルコ、中国も利下げを実施しています。一方、米連邦公開市場委員会(FOMC)は利上げ時期について模索しています。金利先物の動向によると、米国の政策金利が9月までに少なくとも0.5%に引き上げられる確率は56%だそうです。過去ECBは量的金融緩和に慎重でした。それはユーロの鍵を握るのがドイツだからです。インフレを抑制するのが唯一無二のテーマで、それはインフレが世界大戦を引き起こした反省に立つからです。しかしついに禁断の一歩を踏み出したのは、ギリシャ問題ほかがあって、このままではEU経済がかつての日本のように落ち込む兆しが出てきたからです。背に腹は換えられないということです。

■ JR3.14ダイヤ改正…北陸新幹線開業ほか
 2015年3月14日のJRダイヤ改正で、様々なイベント目白押しです。JR東日本に限っても、近年稀に見る大規模な改正です。鉄道ファンは「てっちゃん」と言って、オタクのなかでも最も人口が多いのではないでしょうか。結構若いのに、電車の中で時刻表首っ引きの人を見かけます。
@JR西日本〜東日本〜北海道:大阪駅と札幌駅を結ぶ豪華寝台特急「トワイライトエクスプレス」の運転終了は各メディアで大きな話題になり、2015年3月12日(木)の最終「トワイライト」発車にあたって、大阪駅にはおよそ3500人が、札幌駅にはおよそ1000人が集結。その勇姿を見送りました。「トワイライト」の走行距離は下り札幌行きが1495.7km、上り大阪行きが1508.5kmと、走行距離が日本一の旅客列車でした。「トワイライト」は、日本の鉄道では希少になった食堂車(レストランカー)を連結、フランス料理をコースで楽しむことができました。JR西日本の看板列車である以上に、「日本の看板列車」のひとつでしたから、その引退がてっちゃんの涙を誘うのは致し方ありません。TWILIGHT EXPRESS 瑞風に名前は受け継がれることになりました。
AJR東日本〜西日本:北陸新幹線が金沢まで開業します。東京から富山まで2時間8分、金沢まで2時間28分、運行系統としては、近郊型になる現行のあさまが16往復、速達型のかがやきが10往復、緩行型のはくたかが15往復、富山〜金沢間シャトルのつるぎが18往復、という形になります。車両はE7系/W7系が新規投入され、グランクラスももちろんあります。
BJR東日本:長らく上野発となっていた東北本線が、本来の姿である東京発着に戻るとともに、東海道線との相互乗り入れを開始します。常磐線も品川まで乗り入れます。湘南新宿ラインとあわせて、東京を縦断する系統が強化されるわけで、常磐線・宇都宮線・高崎線方面から東京駅へのアクセスが大幅に改善されることで、東海道新幹線等への乗り継ぎも改善されますし、品川まで直通になることで、羽田方面へのアクセス改善も見込めます。
 震災で普通になっていた石巻線、最後に残っていた浦宿〜女川間が運転再開します。女川駅は少し内陸に移動した形での開業です。これで石巻線は全線復旧となります。

E7系
 3月13日の上野駅には約3千人のてっちゃんが集まり、北斗星にサヨナラを告げて別れを惜しみました。北斗星の定期運行終了によりブルートレインの定期運行は全て終了となります。今後も臨時での運行はあるみたいです。
CJR東海:東海道新幹線の最高速度が現在の270km/hから285km/hへ、23年ぶりにアップします。これにより、東京-新大阪間は最大で3分短縮されます。

■ 所沢市のエアコン設置住民投票
 埼玉県所沢市で2015年2月15日、小中学校の教室にエアコンを設置することの賛否を問う全国的にも異例の住民投票が実施され、即日開票の結果、エアコン設置に賛成が5万6921票で、反対の3万47票を上回りました。しかし、投票率は31.54%にとどまり、市条例で結果を重視することを定めた「多数票が投票資格者の3分の1以上」という条件には届きませんでした。この住民投票は、航空自衛隊入間基地(名前は入間基地ですが、入間市ではなくほとんど狭山市にあります。この一帯は、我が住むふじみ野市や所沢市、川越市を含め、入間地区と呼ばれてきました)の自衛隊機の騒音のために窓を閉めきる学校の暑さ対策として、基地周辺の小中学校にエアコンを設置するかどうかの是非を問うものでした。もともと所沢市は、騒音対策を施した「防音校舎」29校へのエアコン整備計画を2006年に決めていました。2009年には宮前小学校での冷房工事が終了しましたが、2011年就任の藤本正人市長が「東日本大震災を経験し、私たちは便利さや快適さから転換すべきだ」などとして方針を撤回したのです。東日本大震災当時、埼玉県議会議員だった藤本氏は、石巻市にボランティアに駆け付けて、被災者の苦難を目の当たりにしました。市長就任後、このような方針を示した心情に共感します。

■ 市長の既定方針撤回に反発した住民
 ところが住民側が反発して、2014年11月に、約8,400人の署名を添えて住民投票条例制定を市に直接請求した結果、住民投票が実施されることになりました。住民側は「ぜいたくを求めるのではなく、夏場に航空機騒音で勉強に集中できない子供たちの学習環境を守ることだ」と指摘、窓を閉めたまま授業を受ける特殊性を考慮し、エアコン設置に理解を求めました。これに対し、藤本市長は冷暖房設備に伴う市負担を約30億円と試算し、財政負担への懸念を表明、「クーラーの設置よりやるべきことがある。防音校舎以外の18小中学校に不公平だ」と設置反対を訴えました。住民投票の結果に法的な拘束力はありませんが、市の住民投票条例では賛成、反対のいずれかが過半数となり、有権者の3分の1に達した場合は、「結果の重みをしん酌しなければならない」となっています。
 さあ、結果を受けて、翌日、記者会見で藤本市長は次のように述べました。 「住民投票に足を運び、市政に参加くださいました市民の皆様に感謝申し上げます。これまで国内の自治体で実施された住民投票と比べてみますと、決して高くはない投票率であったのは残念です。投票結果につきましては、これからその内容の分析などを行い、検討して参ります。結果は重く受け止めます。子どもたちにはエアコン設置だけでなく、それ以上のトイレ改修、人的支援充実などステキな教育環境を考えていること、また、自然との共生へ向けてシフトしていくべきこと、今でも正しいと思っています。住民投票の結果をよく考え、財政配分なども考慮しながら、慎重に対応していく所存です

■ 市長のリーダーシップに敬意
 市の住民投票条例によれば、賛成票が過半数となったものの、投票した人そのものが有権者の3分の1に未達ですから、この住民投票結果は言わばしん酌しなくて良いということになります。藤本市長からしてみれば、一部の小中学校へのエアコン設置より先に、すべての小中学校に対しトイレの改修などやるべきことがある、という考えでしょう。エアコンを設置すれば、毎年の維持費が膨大となるだけでなく、電気を使用することで地球温暖化に繋がります。快適さを求める住民の意思が示されれば、それに従おうと思っていたでしょうが、投票所に足を運んだ市民の65%弱が賛成とは言え、3分の1強が市長の考えを支持したことの重みを考えなければならないので、「慎重に対応」というコメントになったと思われます。地方自治体が、膨大な累積債務を抱える中で、住民は自治体に要求する前に、どうやってこれを解消して行くかを考えるべきです。ハコモノ設置批判が高まるのも、作った以上、人件費・経費の維持費がかかるからです。藤本市長のリーダーシップに敬意を表します。

■ ふじみ野市、保育所存続の改正案提出 市長は反対意見
 ふじみ野市は2015年3月12日、耐震強度不足を理由に今月末で廃止が決まった市立西保育所と亀居保育所の存続を求める保護者らの直接請求に基づき、開会中の3月議会に両園の設置を定める市条例改正案を提出しました。高畑博市長は民間保育所の誘致を計画中などとして改正案に反対する意見を付しました。
 保護者らは、大阪府枚方市が行う耐震補強工法を採用すれば安価で存続が可能となり、両園は待機児童対策に充てるなどと主張、これに対し高畑市長は意見書で@枚方市の工法は県内市町村が判定を受ける埼玉建築設計監理協会の第三者機関の評価を得られないA待機児童対策として平成27年度に民間保育所4園の建設を進める・・・などと指摘。その上で、両園の対象園児はすべてほぼ希望通りの保育所に移ることになり、耐震性に劣り、抜本的対策が難しい両園の継続使用は容認できない・・・などと訴えました。同改正案は17日に請求代表者の意見陳述、質疑などの後、採決される予定です。

■ 施設運営の民間委託を進めるふじみ野市
 さて、この保育所に関する市民と市長の対立は、上の所沢市の事例と比べてどうでしょう?市立をやめて、民間に委ねようというのが高畑博市長の考えです。これだけではなく、ふじみ野市はどんどん公共施設運営の民間委託を進めており、図書館など市の施設も民間に委託する方針です。自治体の財政問題を考える時、これは一見正しいように見えます。しかしながら、自治体と民間のあるべき姿を考えて見ましょう。自治体は税金で予算を組み、住民のために使います。民間企業は利益が出なければ存続できませんから、儲けるためにはどうするか?というのを第一義に考えます。だから儲からないことはなるべくやらないようにします。それが正しい運営なのです。住民福祉のようなものは儲からない典型です。だから過去自治体が担ってきました。市の職員は市民に感謝されて、それを働き甲斐にしてきました。「この人にサービスすればいくら儲かるだろう?」なんて考えません。儲けなくても、感謝されて給与がもらえるのです。言わば公務員の評価は住民への奉仕度です。ところが会社員となれば違います。「この人にサービスすればいくら儲かるだろう?」ということを考えない社員は役立たずです。必要以上のことはやらないで、効率を高めて、利益を確保する社員が上司から褒められるのです。これが公務員と会社員の180度違う点なのです。資本主義社会に生きている以上分かりますよね?

■ 自治体は誰のためにあるか
 小泉内閣時代「郵政民営化」で大騒ぎでしたね。国民は、「郵政民営化」をテーマにした解散総選挙で刺客を送るなどの小泉劇場に酔って、誤った選択をしました。自民党の野田聖子さんなどが冷や水を浴びました。その結果、貧困層が増えて、格差が拡大しました。やっと我に返って現実を直視した国民の怒りが民主党政権を誕生させました。その後はリーマンショックやら東日本大震災で、もうメチャクチャでしたね。「民営化」というのは、厳しい財政の自治体からすると一見正しい選択のように見えますが、そもそも自治体は誰のためにあるかというと住民のためです。民間企業では割に合わないことを「住民のために」するのが自治体の仕事です。主人公は住民なのです。ホールなどの文化施設や立派なスポーツ施設をバンバン作って、地域で一番立派な建物は市庁舎などという自治体がかつて日本全国に横行しました。グラウンドのような施設なら維持費はあまりかからず、利用者が整備してくれますが、ハコモノを作れば人件費・経費がドンと上乗せされます。

■ 余熱利用施設エコパは老人に大人気
 ふじみ野市の合併前の前身である上福岡市の武藤市長や、大井町の島田町長(ふじみ野市の前市長)は、ハコモノより住民福祉に注力しました。ところが今や、ふじみ野市役所や大井総合支所を立派に作り、エコパという余熱利用施設を建設して運営を民間委託しました。バーデプールがあって入浴施設があって、カラオケや卓球が出来て、多目的室や和室、大広間のお休み処にレストランもある、しかもナント!住民の老人は無料なのです。現役世代は利用したくても働かなければいけないので行けません。せいぜい休みの日に行けますが、有料ですから、それならもっと楽しい民間施設に行きます。老人には有難い施設ですが、若い政治家などは、「せめて100円とか200円とか頂いて有料化しないと、あまりにも世代間不公平」と主張しています。
エコパを利用するような老人には貧しそうな人は居ません。100円とか200円頂いても利用者は大して減らないでしょう。利用者の会話を聞いていると、「美食で太るのでこういうところで運動して調節しなくちゃ」と話しています。70代以上の人が多く、露天風呂での会話を聞いていると、高齢者ほど年金が多いこともあり、豊かな人ばかりですよ。こうした施設は、選挙対策のためと、うがった見方をされる危険性もありますが、老人の健康的な生活のためと考えると、素晴らしい施設とも言えます。これこそ自治体でなければ出来ないことです。

■ 住民エゴや働くママへの首長のリーダーシップやいかに?
 所沢市の藤本正人市長の識見と、ふじみ野市の高畑博市長の考え方、皆様はどう思われますか?上で「自治体は誰のためにあるか」と書きました。よくある話ですが、ごみ焼却施設や処分場を建設しようとすると反対運動が起きます。しかし、住民にとって絶対に必要な施設です。首長はこういうときリーダーシップを発揮して、決断して住民を説得しなければなりません。住民にとってすべての人が納得するというのは所詮無理です。そういう時は誰かに頭を下げることも必要ですし、住民エゴを許してばかりはいられません。ごみ焼却施設の余熱を利用して健康福祉施設化するというのは、喜ばれなかった施設が喜ばれる施設に変わるという意味でグッドアイデアと言えます。
 小中学校の教室にエアコンを設置するというのはふじみ野市では着々と実施されています。別に騒音対策のためではありません。災害対策のために学校に井戸も設置されました。子供たちのためにドンドンお金を使おうということです。
 一方、市営の保育所問題は、民間の施設ができるからいいじゃないか、と言いますが、ではなぜ住民が反対するのか?利用者にとって不利益になるからでしょう。そもそも建物の耐震補強を理由としていますが、この地域は関東ローム層の強固な地盤で、東大地震研究所の発表では関東で最も地震に強い地域です。千年に一度と言われるM9.0の東日本大震災でも大丈夫だった平屋建て、実績が示しています。市営保育所を廃止する理由が耐震補強?素直じゃありませんね。働くお母さんのために、市営の保育所をもっと増やします、という横浜市の市長を見習ったらいかがでしょうか?

■ メール不達
 「Gmail から送信したメールがニフティに届かない」ということがありました。一緒に送った他の人には届いているのに・・・。ぐぐったところ、最近よくあることだそうです。Gmailに限らず、YahooメールやHotmailのようなフリーメールでも、しかも送信側、受信側ともNifty、Sonet、Biglobe、どんなプロバイダでもあることだそうです。相手方のアドレスに届かない、相手側の迷惑メールフォルダにもない、不達エラーも帰らない、メールが届いたものと思っているとある日突然、「先日の件ですが、まだ回答がないのですが、いつ返事いただけますか?」という質問メールが舞い込んでくることがあるとのこと。
「特定電子メール法改定」以降、迷惑メールと誤判定されることがあり、米国での研究では、送信メールの0.71%〜1.02%のメールが送信途上で「静かに消える」のだそうですよ。届かないというのでもう一度送るとたいてい届くということになります。
重要なメールは、送った後例えば携帯へ「送ったよ」とメールを入れるとか、「必ず到着したらその旨一報下さい」と返信を催促したほうが良いそうです。
勉強になりました。

■ 豆腐革命・・・成熟産業にも商機あり!業界の常識を打ち破る型破り経営術
 2015年3月12日のテレビ東京「カンブリア宮殿」で豆腐業界に革命を起こした企業を紹介していました。我が家は豆腐が好きで、常に冷蔵庫に豆腐を欠かしません。一方、豆腐業界は、6000億円規模の市場を8500社の中小メーカーが競い合う、小競り合いの状態が続いてきた業界で、その業界に革命を起こし、人気モデルからも愛される豆腐をつくったのが「相模屋食料」だそうです。相模屋という名前ながら神奈川県ではなく、群馬県の前橋に本社がある会社で、いまや青森県から山口県まで本州全域に豆腐を出荷しています。
 相模屋食料は、ほんの数年前までは、地方の中小メーカーに過ぎませんでした。他に大手企業もありません。実は、豆腐の業界には、これまで巨大トップメーカーは存在して来ませんでした。理由は単純で、賞味期限が短いため、売り切るのが難しく、安さゆえに、配送コストもかけられない、つまり、大手メーカーが参入しにくい業界で、多くの経営者も諦め、何も策を講じてこなかったようです。

■ つぶれる町の豆腐屋さん
 町の豆腐屋さんも次々姿を消しています。我が家の近くの豆腐屋さんもいつの間にか無くなりました。また近くに、「コモディイイダ」というスーパーがあって、巨大スーパーが近隣に続々出来ては潰れてまた新しい店が出来るという繰り返しの中で、長年がんばって営業している中小スーパーです。地域に根ざした魅力があるのでしょう。その目の前に「越後屋豆腐店」という小さな豆腐屋さんがあります。これまたおじいちゃんおばあちゃんが頑張っています。新潟出身なのかな?豆腐だけでなく、おからドーナッツや野菜も売っていて、これがまた安いのです。豆腐は好き好きがあって、高くてもおいしければ買う、という商品なので、つぶれないのでしょうか?それにしても今や目玉商品で1丁300g30円で売っているスーパーがあるくらいで、この圧倒的価格差を乗り越える消費者の購買とは???

■ 豆腐の賞味期限3倍、食感が良い
 相模屋の三代目社長に就任した鳥越淳司さんは、豆腐業界の常識をぶち破りました。およそ5日間と言われてきた豆腐の賞味期限を引き延ばす方法を思いつき、巨額の資金を投じて最新工場を作りました。豆腐のパック詰めの全自動化、ロボットの導入です。人が触れることなく、豆腐を作る国内初の工場を独自のアイデアで生み出したのです。なぜ鳥越社長は業界の常識にとらわれずに改革を断行できたのか?その秘密が紹介されました。
 「社内改革の断行で売り上げ4倍!」そんな驚異の成長を実現させて、あっという間に国内販売シェアでNo.1となったその凄さは・・・賞味期限が普通の豆腐の3倍!食感が違う!遺伝子組み換えでない大豆だけ!ついに餃子の王将が惚れ込んで、採用されました。

■ 豆腐とガンダムとのコラボ
 シェアNo.1を勝ち取った相模屋食料の秘密・・・キーワードは「ザクとうふ」・・・ザク、ご存知ですか?あのガンダムのザクです。実はこの相模屋食料、シェアNo.1を勝ち取った秘密はあの「ガンダムとのコラボ」だったのです!豆腐業界というおよそ老舗が多く、新しい発想が生まれにくい業界の中で、この3代目鳥越社長の頭の柔らかい発想こそが、「ガンダムファン」という豆腐市場外のお客様層を取り込むことができ、一気に業界シェアNo.1に躍り出ることに成功した秘密だったのです。

■ 豆腐業界にブルーオーシャンを感じた鳥越淳司社長
 鳥越淳司さんは、京都出身。早稲田大学商学部卒業後、雪印乳業(のちの雪印メグミルク)に入社。その後、妻の実家である相模屋食料に入社し、社長になりました。同社を大きく成長させ、木綿豆腐、絹ごし豆腐で生産量日本一を達成しました。「大企業出身者が地道な仕事をどこまでやれるか」という周囲の疑いの目を解くため、まず自分で豆腐を作れるように、深夜まで職人さんと修業したそうです。雪印乳業(のちの雪印メグミルク)の営業時代から、乳製品以外のスーパーの店頭もなめるように見てきました。豆腐売り場に来るたび、「この業界の人は、あまり自分の商品が好きじゃないのかな」と思ったそうです。誰が考えても、売り場の主役は白くて四角い木綿と絹。にもかかわらず、「これで市場を取る」という勢いを感じる商品が見当たらなかったのです。パックのフィルムを見てそれが分かるのだそうです。外装を変えたからどうした、という話ではありますが、デザインを変えるという一番簡単なこともせず、十年一日のままでした。その割に、形や材料を変えてニッチ市場を狙った商品は次々と出てきます。「だったら、ベーシックな木綿と絹で勝てたらすごいぞ」と考えたのだそうです。ある意味、分野調整法に守られて、30年以上放置されてきたブルーオーシャンだ、と。
 鳥越淳司社長の名言・・・「やる」と決めたら、ゴールまでたどり着く道筋を模索し、走り抜けるだけです。私はまずはゴールを定めてから、アプローチを考えます。「今、これができる」、だから、「あれを実行しよう」。そんな階段を積み上げるような動きでは、スピードが出ません。伝統的業界で大胆な挑戦ができたのは、私が強力に社員を引っ張るタイプだからだと思っています。差異化とは、説明せずとも「見て分かる」こと。だから圧倒的な違いを出そう。「どうせやるのだったら、周りが驚くくらいのことを」と、天を突くくらいの目標を立てて死に物狂いでやれば、妄想が実体に変わる。そして、死に物狂いの姿勢が周囲の目を集め、支援してくれる人が現れる。すごいですね。特にすごいな、と思ったのは、「リスクをとって物事を進めるときに、人々がリスクだと考える以上のスピードで実行すると、リスクを感じることなく進められる」・・・なるほど!ホント、そのとおりですね(^-^)
(2015年3月14日)


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