104 統一地方選挙
3月になりました。前回、バブルが崩壊して、その教訓から「羹に懲りて膾を吹く」人もいるでしょうが・・・と書きましたが、この言葉の意味が分からない方もおられたと思うので解説します。羹(あつもの)に懲(こ)りて膾(なます)を吹く、というのは、熱い吸い物を飲んでやけどをしたのに懲りて、冷たいなますも吹いてさます・・・、前の失敗に懲りた余り、必要以上の用心をすることのたとえです。出典は中国の『楚辞』です。 ■ 西川農相の辞任 安倍首相の念願は「戦後レジームからの脱却」です。中でも安保法制の改定やTPP妥結、農協改革が悲願です。いま、西川農相の辞任は何故でしょう?マスコミの報道をマトモに受け止めてはいけません。国会審議に余分な波乱を来たさないためと西川大臣は辞任の弁を述べましたが、直前まで辞任しないと突っ張っていたのに一転辞任でマスコミはビックリしたとのこと、茶番です。西川大臣は農水族、TPP交渉が大詰めで、もう用無しです。後は甘利大臣に任せれば良いし、後任は林氏の方が余程安心です。TVで農協バンクのCMを急に見るようになりましたね?農協が危機感を抱いているからCMを打っているのです。そもそも全中は自民党の過去もっとも頼りになる盟友でした。それを切る、農水族にとっては耐えられないことでした。4月の統一地方選挙でどういう反動が出てくるか、西川大臣を切って、また別の農水関連の役職を与えておけば良いのです。首相官邸の素早い動きは、他の閣僚や自民党内、公明党にとっても寝耳に水の素早さです。 この問題で来年度予算案の年度内成立は困難となってきました。野党がこれまで巨大与党に押され、かつ世論調査でも安倍人気に圧倒されて攻め手を失っていたときに、西川問題は降って湧いた数少ないチャンスです。しかしこんな問題で安倍総理の言う「改革断行国会」が空転して良いのでしょうか?野党からしてみれば、憲法改定は統一地方選挙後の国会案件ですが、今はまず、このゴタゴタを利用して態勢立て直ししたほうが良いという戦略でしょう。 ■ 公明党の立党の精神は? もうひとつの懸案:安保法制の改定には公明党がネックです。不安要素である与那国島への陸自配備の住民投票は、配備賛成側が多数となり、官邸にとって久しぶりに胸を撫で下ろす結果だったでしょう。ただこれは辺野古問題と違い、与那国島の住民とすれば、中国の脅威は現実の問題で、自衛隊が来てくれれば安心という面があります。それ以上に自衛隊員が落とす金がありますし、過疎化が進む地方では住民が増えることは歓迎されることです。基地建設工事が今後進むに連れて、防衛省職員の移住が増えて行きます。これに伴って、今後の与那国町長選挙は従来のような拮抗した情勢に変化が出るでしょう。 安倍総理の進める安保法制の改定に対しては、過去自民党の重鎮だった野中、古賀、山崎といった方たちが、まるで野党のように反対しています。戦争を知る世代として、再び暗黒の時代へ日本国民を引き摺り入れてはならないという使命感からでしょう。ところが公明党は戦争を知らない世代の山口、北側、井上といった幹部が安倍総理の意向を丸呑みする方向であり、若手の議員達が反発する場面が見られます。そもそも公明党は平和を守ることが立党の精神だったはずで、それを主張して当選してきた議員達からすれば、話が違うよ、ということでしょう。官邸の本音は、公明党が抵抗するなら、場合によっては切っても良いということです。世論調査の結果を踏まえつつ、公明党にダメージが行くように仕向けながら、統一地方選挙への情勢づくりをして行く狙いと見えます。ただし自民党の高村副総裁や谷垣幹事長の考えは公明党とあくまでタッグを組んで行きたい意向であり、「自民党公明派?」の大島理森氏に頼んで公明党の漆原氏と接触し、自公幹部会談(高村・谷垣 − 北側・井上)をセットして、首相官邸の思惑通りに行かせないようにガードしながら、安倍総理の進める安保法制の改定にソフト路線で協力を求めているわけです。 ■ 知事選挙おおむね無風、与野党対決連敗脱出成るか?自民党 統一地方選で行われる10知事選(3月26日告示、4月12日投開票)、自民、民主両党の対決の構図となるのは北海道と大分県の2道県にとどまる一方、6県で両党が現職に「相乗り」する方向となっています。政党の存在感が薄れているのです。北海道と大分県は、いずれも、自民党が現職を支援し、民主党が新人を推す構図となっています。神奈川、福井、奈良、鳥取、徳島、福岡の6県では、自民、民主両党の党本部や、地元組織が現職を支援する「相乗り」の構図となっています。民主党は、岡田代表の地元の三重県と、島根県で独自候補擁立を断念しました。 自・民対決の知事選では、自民党は滋賀、沖縄、佐賀と3連敗です。沖縄はそもそも自民党だった翁長那覇市長を、「辺野古埋め立て反対」の1点で大同団結した陣営が、オール沖縄のような構図で担ぎ出して自民に対抗し、自民が負けました。国政では小選挙区制ですから少ない得票率でも勝てますが、データ上、自公対オール野党になれば自公が負けるというのが世論調査の結果です。佐賀県では農協が自公支持の対立候補支持に回ったため、与党支持候補が予想を覆して負けました。 ■ 大分県知事選
■ 北海道知事選 北海道知事選は、民主党道連が独自候補の擁立を断念、既に出馬を表明しているフリーキャスターの佐藤のりゆき氏(65)を支持する方向となりました。四選を狙う現職の高橋はるみ知事(61)との事実上の一騎打ちになるでしょう。すでに「新党大地」は佐藤支援を決めていて、これに民主だけでなく共産や社民も乗っかって、自公の推薦する高橋知事との与野党激突の構図になりそうです。佐藤氏の出馬表明は昨年11月で、与野党一騎打ちの構図になるのが遅れたのは、民主党の横路孝弘・道連会長が独自候補にこだわったからで、擁立断念の責任を取って2月15日付けで会長を辞任しました。佐藤陣営は、昨年の沖縄県知事選挙のオール沖縄における翁長陣営と似たように見えますが、実は微妙なバランスの上に成り立っているように見えます。鈴木宗男氏が共産党批判をしたりしています。沖縄では辺野古問題1点で野党が団結しましたが、そこまでの争点が無いからです。 これまでの報道では、現職の高橋知事が頭一つ抜けているとのことでした。佐藤氏は元北海道放送のアナウンサーで『北海道のみのもんた』と呼ばれるほどの地元の有名人で、主婦層に人気があり、与野党対決の構図になれば、知名度があるだけに侮れないと見られます。勝ち目が出てくれば、安倍首相が進める農協改革を苦々しく見ているJA北海道も佐藤支持に回る可能性が出てきます。JA北海道は全国のJA組合数の約16%を占める日本一の大所帯で、組合員数は約35万人に上ります。JA北海道中央会の会長で、全中の副会長も務める飛田稔章氏は、「今回の改革が、農業所得の増大にどのように結びつくのか、明確な説明はない」と、安倍内閣の農協改革に批判的な声明を出しました。高橋陣営の関係者は「大詰めを迎えているTPP交渉や、地方が恩恵を受けていないアベノミクスへの不満も根強い。応援してくれるはずの農家が反乱すれば、致命傷になりかねない」と不安げに語っているそうです。過去3回の知事選で全面支援してくれたJA北海道が陣営から「離反」したら、命取りになりかねないからです。安倍自民の連敗が続くかもしれない、と官邸も焦り始めた模様です。 ■ 埼玉県吉川市長選挙 埼玉県の吉川市長選挙の結果が波紋を拡げています。吉川市長選は2月22日投開票され、無所属新人で元県議の中原恵人(しげと)氏(44)が、五選を目指した無所属現職の戸張胤茂(たねしげ)氏(67)=自民、公明推薦=を破り、初当選を果たしました。当日有権者数は53,721人で、投票率は48.98%(前回39.46%)でした。 最近の地方選挙は無投票が増加しています。今回の選挙でも投票率が50%以下です。ただ、多選批判や、箱物で借金を増やす行財政を改革するなどという争点になると、ある程度関心を集めます。今回の選挙戦では、4期16年間続いた戸張市政への評価が争点になりました。4期勤めるというのはフツウ名市長です。これに対し中原氏は、市庁舎の建て替えやJR吉川美南駅の周辺開発、第四中学校の建設など市事業の再検討とともに、市長報酬の20%削減を公約に掲げました。情報公開の徹底やまちづくりに対する市民参加の重要性も強調し、「しがらみや利益ではなく、市民の熱い気持ちで吉川をつくりたい」と訴えて幅広く支持を伸ばし、激戦を制しました。過去実績や国、県と築いたパイプをアピールし、市庁舎建て替えなど主要事業の継続を主張、自民、公明の市議らの支援も受けましたが、及びませんでした。 このように地方選挙では、国政とは違った争点になります。しらけている多数の有権者を投票に向かわせる争点作りも、候補者にとっては大事です。戸張氏は4期勤めた名市長ですし、まだ高齢批判を受けなくて良い年齢です。何故負けたか?借金を増やしたくないとかいうのなら分かりますが、まさか「飽きた」?ジョウダンじゃなく、それもあるでしょう。3期を越えたら、当人がそのつもりが無くても、権力に擦り寄るヤカラが周辺に集まって来ます。スパッと後継者にバトンタッチするのが理想です。今回は、「自公推薦」というのが、地方選挙では仇になることがあって、このケースではないでしょうか。地方選挙では、政党色を出さないほうが無難です。 中原氏の、「市長報酬の20%削減」公約も気になります。こういう公約を掲げて選挙を戦う地方首長選を最近良く目にしますが、これは間違っているのではないでしょうか?首長から議員、公務員まで皆削減というのなら分かりますが、たかが首長ひとりの報酬をカットしたところで、それこそたかが知れています。事業収入や政治献金がタップリあるから削減して良い?と疑われるのがオチじゃないですか?首長報酬しか収入が無いのなら、削減しないで一生懸命がんばってください、と言いたいものです。 ■ 韓国朴大統領就任2年、足許危うし
朴槿恵大統領は、与党セヌリ党内での求心力も弱まっています。金武星(キムムソン)・党代表が国会演説で朴大統領の公約「増税なき福祉」を批判、「増税なき福祉」について「不可能だ」と言い切り、「政治家がそういう言葉で国民をだますことは望ましくない」と言いました。昨年は税収が予想より11兆1千億ウォン(約1兆2,057億円)下回るなど、税収不足が続いていると指摘し、財政の健全性を保つには「福祉予算を全面的に点検しなければならない」と訴え、朴政権の重要政策の変更を迫りました。 党院内代表選では、朴大統領のもとを離れた議員が大統領に近い「親朴系」議員に勝利、金代表とともに与党のツートップを「非朴系」が手中にしました。朴大統領の支持率も就任以降の最低を更新し続けており、来年に総選挙を控えて厳しい政権運営を迫られそうです。 ■ 間違いのヤジを飛ばした恥かしい首相 「日教組!」「日教組どうするの!」・・・先日の国会の予算委員会で、西川公也前農相の政治資金問題を追及していた民主党議員に対して、安倍晋三首相がヤジを飛ばした問題、大島理森委員長にたしなめられてもヤジりつづけるのが、ナント!首相だったのです。いやはやなんという品の無い首相か・・・とガッカリしました。翌日にはヤジのことを追求されて、「いわば日教組は補助金をもらっていて、そして、教育会館というものがあるが、その教育会館から献金をもらっている議員が民主党にはおられる」と答弁しました。ところが、この発言は事実無根であることがわかり、安倍首相は「文科省で調べた結果、2012年度までの10年間の決算書を確認した限り、議員献金という記載はなかったということだった」「私の記憶違いにより、正確性を欠く発言を行ったことは遺憾で訂正申し上げる。申し訳ない」と、しぶしぶ謝りました。 そもそも、政治資金問題を追及する民主党議員に対して、話を逸らすヤジを飛ばすことは、一議員の行動としても恥ずべきもので、しかも首相がそれを行うなんてことは品格が疑われます。そして、さっさと謝ればいいものを、答弁で嘘の情報まで堂々と述べ、追い詰められてようやく謝罪しましたが、ヤジを飛ばしたことについては、一切謝っていません。往生際の悪さや、都合がよくないと開き直るという姿を、NHKの国会中継で堂々と披露しました。何をかいわんや、という感じで、恥かしい・・・ ■ 「戦後70年」談話
■ ホンダの社長交代
■ JR東日本は不公平?
大人の休日倶楽部割引切符は各種あります。このサービス内容が報じられると、シニアに対するあまりの好遇ぶりに、若年層を中心にインターネット上では落胆の声が飛び交いました。期間限定とはいえ、1万5000円で乗り放題というのは、確かに破格の条件と言ってよいでしょう。 ■ 空気を運ぶより、安くても客寄せしたい 若者にとっては不愉快かもしれませんが、利用者動向からすると、このような商品が出てきても何ら不思議ではありません。日本は高齢化が急速に進んでいますから、新幹線をはじめとする幹線鉄道の利用者は年々、高齢者にシフトしています。若い人はなかなか時間も無いし、ほかの事にお金がかかって遠距離旅行するゆとりがありません。特に、新幹線をはじめとする幹線移動の交通機関は運賃が高いですから、稼ぎの少ない若年層はおいそれと乗れるものではありません。ビジネス客は雇用側がお金を払ってくれますから、高くても安くても必要経費なので、特段の配慮は不要です。近年、中高年の旅客数は極めて大きな伸びを示しているのに対し、若者の旅客数が減少しているのは、遊びで乗れないからです。利用者の半数が50歳以上という状況ですから、鉄道会社にしてみれば、中高年が最大の顧客ということになります。また今の中高年は元気であり、以前にくらべて旅行への支出が大きいという面もあると考えられます。 年金生活者などは、仕事の旅ではないので、安ければ出かけようと考えるのです。鉄道というビジネスは典型的な設備産業ですから、事業の運営コストのうち、設備投資の割合が高いという特徴があります。これらはすべて固定費ですから、どんなに割引をしたとしても、空気を運ぶより、数多くの顧客を乗せた方が鉄道会社にとっては得なのです。最近では、あらゆるビジネスが高齢者をターゲットにしているわけですが、鉄道の場合には、コスト構造などの関係からこうした傾向が顕著になっているわけです。 ■ サウナ通いに寿命延長効果
■ 日本国債「将来的なリスク」・・・黒田総裁”オフレコ発言 先々週の経済財政諮問会議で日銀・黒田総裁が日本国債の将来的なリスクについて言及したにもかかわらず、議事要旨から削除されていたことが報道されました。財政健全化がテーマのこの諮問会議の出席者によると、日銀・黒田総裁は、「日本国債が格下げされた状況の中、ヨーロッパでは国債のリスクがないというのはおかしいという議論になっています。今後、安全資産とされている日本国債を持っていることがリスクになり得ます」と発言し、財政健全化に取り組むように主張したそうです。こうした発言はマーケットに影響を与える可能性があるので「オフレコにして下さい」と前置きされたため、議事要旨から削除され、緘口令も敷かれました。黒田総裁は金融機関の国際ルールでは自国通貨の国債はリスクをゼロと規定していますが、海外では国債もリスク資産とみなし、規制を強化すべきだという議論が始まりつつあり、議論が本格化した場合、大量の国債を持つ日本の金融機関が、格付け次第では国債を手放し始める可能性もあり、その結果として国債が暴落し、金利が急上昇する危険が出て来る、そうならないように財政健全化を進めるべきだと発言したわけで、これは正論中の正論です。国会がこれを最大課題として取り組むべき時に、先のように政治資金問題をガチャガチャやって、首相がヤジ飛ばしたりしているのですから、何ヤッテマンネンと言いたいところです。 ■ 第38回日本アカデミー賞は「永遠の0」が8冠
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