103 日本の経済展望C
今回で日本の経済展望は終わりにします。これまで書いたこと・・・やがて起こるハイパーインフレに備えて日本円保有は危険、不動産やGold、株、ドル預金や米国株買いへの転換が必要ということです。ただし人間の欲が時として人々の目をくらませて、バブルを引き起こすので、多方面に分散させないと危険です。年金もあまり当てにはできません。生命保険や医療保険も???です。今回は特に株について重点的に考えます。 ■ グロソブに未来はあるか? 投資信託初心者がグローバルソブリン債を金融機関に勧められて買い、次のようにネットで「教えて」と質問していました・・・毎月分配金が送られてくるのは魅力ですが、評価損益が送られてくると暗い気持ちになります。純資産残高が、購入時の三分の一まで減り、ネットで見ても、グロソブは買ってはいけないという意見がほとんどのようですし、ギリシャ問題もあって今は売り時でしょうか?また下がる可能性は高いですか?今、売るとなると、損が確定するので、売り時を決めるのも悩ましいです。グロソブが現状維持できるなら、このままでいいかとも思います。それで、教えて頂きたいのですが、グロソブに未来はありますか? さあ、答えはいっぱいありました。たとえば、 @グロソブは利益から分配金を出しているのではありません。「利益」or「利益+資産」or「資産」のどれでも好きなように分配できます。銀行預金を毎月引き出しているのと理屈は同じです。投信と銀行預金で決定的に違うのは「信託報酬」というコストがかかるということです。グロソブの手数料(信託報酬)は実質年1.32%で、高くも無いですが安くもありません。金利よりはるかに影響が大きいのは分配金にかかる税金です。それこそ「預金を下ろしたら所得とみなされた」ようなものです。不幸中の幸いで平成25年までは税率が20%から10%に据え置かれていました。 Aグロソブは、投資対象が基本的に先進国の国債であり、そうした債券の利回りは既に低下し過ぎていると思われます。米国債にしても7年債でも1.4%程度しかありません。通貨にしても、もちろん、どうなるかはわかりませんが、ユーロの先行きは不安が大きいと思います。債券投資の中で一番割に合わない商品だと思います。 B「高金利通貨は低金利通貨に対して長期的に下落していく」、「世の中には美味しい話は存在しない」ということを理解しましょう。毎月分配型、通貨選択型投信は無理に分配をしているので、グロソブに限らず、すべての毎月分配型、通貨選択型投信では、長期的に基準価額は下落していきます。本当に良い商品は誰も教えてくれませんし、誰も勧めようとしませんよ。金融機関が儲かるから勧めるんです。 Cグロソブは、円高で買って、円安で売るものです。あなたがいつ買ったかが問題ですが、2007年の好景気のとき、円安で株も上がっていた頃に金融機関は客にグロソブを勧めろと社員、行員に言っていましたから、もしそのときなら最悪ですね。元本が減ってますからもはや取り戻せないでしょう。逆にリーマンショック後の超円高で株安の時に買ったのなら持ち続けたほうが良いですよ。でもその頃は客からグロソブへのクレームが殺到して、金融庁も問題視してましたから、金融機関は勧めなかったのでは? ■ 売る側と買う側の駆け引きが・・・ どうですか、すごいですね。グローバルソブリン債を銀行や証券会社、信金などで勧められて買ってから、後悔している人が9割以上だそうです。金融機関はお客様が儲かっていようが損していようが手数料が入ってきます。商品先物もそうです。マネーの世界ではほとんどの人が損していて、儲けているのは膨大な資金力のあるごくわずかの人、というのが常識です。素人が手を出してはいけないんですね。ただし投資信託と違って、株は別ですよ。これは企業の価値を反映しますから、将来性のある企業の株は長期的には値上がりします。しかも配当があります。自らの判断で、少し長い目で株主となることは利益につながる確率が高いでしょう。 家電量販店で「人気第1位」とかの掲示がある商品がありますね?第3位ぐらいまであります。価格が高いものが下位だったりすると、このお店は良心的なんじゃないか?と思ったりします。消費者の心理をつかんだ巧みな商法ですが、実は店員だった人に聞いた話、この順番は「儲かる順位」すなわち店またはメーカーが売りたい順番なんだそうですよ(^_^) 実は安い商品のほうが利益が大きい場合もあるし、プリンターなどストックビジネス対応商品では、後々のインクなどで儲けるというやり方もあるのです。金融商品も家電商品も、売る側と買う側の駆け引きがありますので、よくよく考えないといけないという例です。 ■ 安倍政権は投資やカジノの規制緩和方針 ただ安倍政権の基本方針はこうした投資の規制を緩和して、一般人をどんどん市場に誘おうということですので、なんかヤバソウという感じがします。オレオレ詐欺ではないけれど、悲劇が起きそうな予感が・・・。カジノの解禁も同じ路線ですが、こちらは外国人客にどんどん日本に来てもらってカネを落としてもらおうという戦略です。政府は、カジノを中核とした統合型リゾート(IR)について、2020年の東京五輪・パラリンピックまでに横浜市と大阪市の2ヶ所で開業を目指す方針を固めたようです。全国で20ヶ所以上が名乗りを上げましたが、2020年に間に合うのはこの2ヶ所だけのようです。横浜市は、再開発計画が進む山下ふ頭(約50ヘクタール)、大阪市は、大阪湾の人工島・夢洲(ゆめしま)が本命視されています。橋下徹大阪市長が誘致に熱心で、関西国際空港にも近く、広大な未利用地(約150ヘクタール)を抱えているからでしょう。 ■ 日経平均株価1万8300円を突破 2015年2月16日の東京株式市場で日経平均株価が2007年7月24日以来、7年7ヶ月ぶりに終値で1万8000円台を回復しました。次に目指すのは第1次安倍政権時につけた1万8261円の高値ですが、わずか3日後、1万8300円を突破しました。この日は新月、高値を更新することが多いのですがヤッパリでした。ITバブルの頃、2000年5月の1万8586円以来、14年9ヶ月ぶりの高値水準です。この勢いはスゴイです。
■ 日本の株価はどこまで行くか 市場では「日経平均2万円」の声が勢いづいてきていますが、一段の押し上げには新たな需要を取り込んださらなる企業価値の向上が不可欠と言えるでしょう。 日本の株価の適正水準をPER(株価収益率)で測るとどうでしょう?この指標は、株価を1株あたりの利益(EPS)で割って求められます。2月16日時点での、日経平均採用銘柄のEPSは約1105円、株価は1万8004円なので、PERは16.3倍と計算されます。つまり現在の日本の株価は今後16.3年分の利益を先取りしているという意味になります。 株価というのは、将来の利益を期待して形成されます。2015年3月期の決算では増益を見込む企業が多くなっていますし、2016年3月期もさらに増益となる可能性が高くなっています。経済環境が大きく変わらなければ、株価はまだまだ上昇して、2万円を越えることは十分考えられます。ただしPERが20倍、すなわち2万2千円を越えてドンドン上がるようなら、企業収益と乖離したバブルと考えれば良いでしょうし、企業収益が更に上がればもっと高くなることも有り得ます。 ■ 安倍内閣の支持率50%超え 国民の中には、このところ生活が苦しくなっていると感じる人が多いと言われており、国会論戦でも格差が問題になっています。ところが安倍内閣の支持率は回復して50%を超えました。岡田民主党は何を間違っているのでしょう?社会福祉に重点を置いて形成されてきた日本の社会構造に国民が疑惑を持ち出したと考えられます。安保問題は別にして、経済問題では高齢者が優遇され過ぎです。格差で言えば貧しいのは若者です。日曜日の朝刊の折り込み広告が増えました。求人情報が激増です。非正規だろうが、職があるほうが良い、失業率が減った今の方がまだマシという感覚でしょう。すなわち、格差が拡大しようが、皆が苦しかったデフレ時代よりマシ、というのが国民の多数意見と考えると、あまり格差のことを言うのは得策ではありません。苦しかったデフレ時代は、安倍総理の祖父が創設し、父も領袖だった現町村派(清和政策研究会)の政権運営によるものが大半です。つぶやき518『総選挙』(2012年12月16日)をご覧下さい。歴代首相が載っています。日本が高度成長した時代は、池田勇人氏が創設した宏池会、現岸田派、谷垣派が大半でした。しかし海部俊樹首相時代に平成バブルが崩壊し、経済に強い宏池会の宮沢喜一首相がなんとか回復させようと努力しましたが、平成複合不況に陥って、怒った国民が細川護煕政権を誕生させ、自民党は下野しました。下野3年、細川、村山政権から再び自民党の橋本龍太郎首相になりました。2000年の森善朗首相時代はITバブルで一時期好景気でした。2006年の第1次安倍内閣時代は景気が一段と拡大していざなぎ景気を超えました。福田康夫首相の時、米国で住宅バブル崩壊、原油高となってピークを迎えた景気は再び下降局面に入りました。ここで経済に強い元宏池会の麻生太郎首相が登場しましたが、リーマンショックで大不況に陥り、民主党が政権を獲って、自民党は下野しました。3年続いた民主党政権時代はデフレを克服できないどころか東日本大震災が発生し、首相は最悪の菅直人でした。デフレを克服できなかった理由は、あまりに巨額の国家債務の前に途方に暮れたのでしょう。しかし、民主党政権時代に安倍晋三はデフレ克服のために何が必要か気付いたのでしょう。デフレの反対のインフレにすれば良いのです。そのためには日銀に禁じ手をお願いしなければなりません。財務省ではダメなのです。日銀の人事に強引に手を付けました。 ■ 国内経済と企業業績が一致しないのは当たり前
■ デフレ社会で成長した企業の転換 デフレ社会で成長した企業と言えば、これまでさんざん紹介して来たユニクロのファーストリテイリング、マクドナルド、ワタミ、牛角、牛丼御三家(吉野家、すき家、松屋)、低価格ラーメン(幸楽苑、日高屋)、回転寿司(スシロー、かっぱ寿司、くら寿司)などですが、ご存知の通り、これらは今業態大転換を図っています。「ブラック」と言われて袋叩きにあったり、消費者の変化について行けなかったり、理由は様々ですが、高くても品質という層と、外食をやめて中食や内食にしたりする層・・・2極化しているのです。ワタミは安い居酒屋路線で失敗しました。むしろ立ち飲みとか、幸楽苑や日高屋で一杯とか、昔ながらのおばちゃんの居酒屋が人気復活するとか、お客様が変わっているのです。ディスカウントスーパーや業務スーパーが絶好調というのもそうです、消費者が変わっているのです。これは第2次産業から第3次産業へという産業構造の転換でお客様の層が変わったことや、少子高齢化も理由です。赤提灯で愚痴ったりするのもオシャレでなくなりました。アフターファイブにも会社の連中と酒飲みに?それが少なくなったから居酒屋が繁盛しないのです。酒を飲まない若者が増え、タバコを吸わないのが当たり前になりました。コンビニの脇で、車座でつまみながら地べたに座って酒を飲む人たち、確かにすべて買えますが、こんな行儀が悪いこと、やらなかったよね。アルコール好きの人は帰宅して一杯やる、高齢者はスーパー銭湯で一杯、社員旅行で温泉なんて行かないけれど女子会なら行く、家に帰る前に30分だけ一杯引っ掛ける、屋台村やビニールカーテンの赤提灯に若い女が一人座って・・・昔なら考えられません。 ■ バブルを見極めよう 日本の経済展望の最終回に当り、総括しましょう。絞ると、ハイパーインフレに備えよう!バブルを見極めよう!ということです。 「なぜバブルは繰り返されるか?」:塚崎公義著(祥伝社 2013年11月10日第1刷)の中味をピックアップします。 オランダのチューリップ・バブル、イギリスの南海泡沫事件、日本の平成バブル、アメリカのITバブル、住宅バブル・・・・。人類の歴史の中でバブルは何度も繰り返されてきました。景気は良くなって欲しいけど、バブルのリスクが常にあるということは覚えておかなければなりません。 著者は、バブルには二種類あり、一つは「他力本願型バブル」と言うもので、人々が「この株は割高だが、当分の間は他人が買うから、さらに値上がりするだろう、自分も買おう」と考えて起こるバブルであり、もう一つは、「惚れ込み型バブル」というもので、投資家が投資対象に惚れてしまい、バブルであることに気づかないというものだそうです。例えば人々が「日本経済はすばらしいから、株価がこれくらい高いのは当然だ。むしろ、さらに上がるべきだ」などと考える場合に惚れ込み型バブルが起こるそうです。 バブルが崩壊して、その教訓から「羹に懲りて膾を吹く」人もいるでしょうが、バブルとは全体の熱狂なので、中にいるとなかなか気付かないようです。平成のバブルなんて今から見たら馬鹿みたいですが、実際に自分がその中にいると、多くの人と同じようにバブルに踊らされていた、という人が多いようです。平成バブルの教訓を活かして、これはバブルなのでは? という疑いを常に持ち続けることが肝腎です。ただし、バブルだと薄々わかっていてもそれに加担せずにはいられない、加担せざるを得ない、というのがバブルの怖いところだとこの本では解説されています。 ■ 今のバブルは東京駅開業100周年記念スイカと男気:黒田博樹でしょう
(2015年2月22日) |