87  21世紀の資本

 天使と悪魔に、血だらけの警察官、白鳥のコスチュームに身を包んだ男たち・・・米国で人気のある秋祭りで日本でも定着した「ハロウィーン」の2014年10月31日、東京・渋谷駅前のスクランブル交差点に、カボチャのお化けやアニメの登場人物に扮した大勢の若者が繰り出し、互いに写真を撮り合うなど、深夜まで賑わいました。NHKはじめ各テレビ局がこれを夕方のニュースで流しましたが、じゃあ行って見ようという人が増えたのかもしれません。警視庁渋谷署員らが約2百人態勢で警備にあたりましたが、あまりの人出に警視庁も急遽機動隊を派遣するほどでした。
 日銀は2014年10月31日の金融政策決定会合において、追加の量的緩和策を実施することを決定しました。予想外の追加緩和で、市場はサプライズ!エッ、ウソ、冗談でしょう?ビックリして、日経平均株価は一時800円以上も上昇、ドル円は大幅安で、6年10ヶ月振りに112円/USドルを突破しました。

■ インフレターゲットに漂うあやしさ?
 ニュースによりますと、この決定は5対4の多数決との事、すなわちキワドイ話です。今何故量的緩和?日銀は、2013年4月から量的緩和策を実施してきました。日銀が国債などの資産を積極的に買い取り、市場(金融機関)にマネーをジャブジャブ供給してきたのです。マネーが大量供給されると、インフレ期待で物価が上昇するのではないかと市場は考えるようになります。これによって実質金利を低下させ、設備投資などを促そうというのが量的緩和策の主な狙いです。
 量的緩和を実施して以降、インフレ期待で為替市場でも円安が進んできました。円安進行→輸入物価上昇→国内物価も上昇、しかし、物価の上昇に賃金が追い付かず、国内の工場が閉鎖して海外移転して製造設備投資が回復しないことから、日銀の2年で2%という物価上昇目標は実現が難しくなってきていました。

東北の紅葉の盛りは過ぎました

■ ますます進む円安がもたらすものは?
 同じ日の午前、9月の消費者物価指数が発表となりましたが、代表的な指数である「生鮮食料品を除く総合(コア指数)」は前年同月比3.0%の上昇にとどまりました。7月が3.3%、8月が3.1%ですから、伸び率が着実に低下していることがわかります。日銀では消費税による物価上昇を2%程度と見ているので、消費税の影響を除いた物価上昇率は 1.0%ということになります。このままでは1%を切る可能性も高く、物価目標の達成はかなり難しい情勢です。
 今回の追加緩和はこうした状況に対する日銀の焦りの結果です。これまで、1年あたり60兆〜70兆円のペースで増やすとしていたマネタリーベースを約80兆円まで拡大し、上場投資信託(ETF)と不動産投資信託(REIT)の保有残高も3倍に増やします。市場にさらに大量の資金を供給するわけです。
 日銀とは正反対に、米国の中央銀行にあたるFRB(連邦準備制度理事会)は10月29日、量的緩和策を終了することを正式に決定しました。米国は緩和終了で日本は真逆の追加緩和ですから、米国でお金を運用すれば金利が付くのでお金は増える、日本では市場にお金がだぶついて金利が付かないわけですから、お金は日本から米国に移動します、円を売って米ドルを買いますから円安はドンドン進みます。円安が進めば輸入物価は上昇しますから、日銀の目論見通り、物価上昇に弾みがつくかも?ただそう単純には行きません。商売は売手と買手ですから、買手がいなければ値が付かないからです。今までの物を買わず、より安いものを探す消費者性向に変わって行くでしょう。

■ マネーの恐さ・・・安全資産への逃避
 一方、日銀は最終カードを切ったのでもはや打つ手はありません。この「異次元の金融緩和」で儲けるのは金融業界です。マネーを操作してプロが儲けますが、一口乗ろうと素人が乗り出してきた時が危ない!いくら市場にお金が溢れようと、ソレを設備に投資して、ものづくりで利益を出そうとするならマトモですが、金がカネを産むような状況に日銀が誘導するのは正気の沙汰ではありません。むしろ素人はお金を不動産などの「モノ」に換えておいたほうが安全な局面に入ってきました。マネーは一瞬にして紙くずになる可能性があるからです。株などのリスク資産がもてはやされると、金や油などの商品:コモディティから投資先が移動します。だから金やオイルなどの現物価格が下がっています。ダイヤモンドなどの宝石は価値があるので、モノとして買われます。ただこれらは産出量に限りがあります。中国人が大好きな珊瑚の指輪などの飾り物が売れに売れているのは、不動産価格が下落して行き場を失った巨額のマネーが安全資産に向かっているのです。台湾近辺では取り尽くしたので、中国漁船は小笠原周辺に移動して来ているわけです。
京都の紅葉
 日銀の黒田総裁は記者会見でニコニコしていましたが、眼は笑っていませんでした。筆者は、なにやら断末魔の顔に見えました。背筋が寒くなってきました。

■ 女性非正社員の貧しさ、拡がる格差
 2014年10月30日の朝日新聞朝刊経済面に「女性の非正社員、過半数が家計赤字 男性の割合を上回る」という記事が載っていました。10月29日に発表されたシンクタンク「連合総研」の調査結果です。女性の非正社員がおもな稼ぎ手の世帯は、過半数が年間の収支が赤字なのだそうです。男性の非正社員の赤字割合を上回り、男女間の格差が浮き彫りになりました。
 企業で働く20〜64歳の2千人を対象にインター ネットを通じて10月1〜6日に調査したそうです。 過去1年間の世帯収支が赤字か黒字か、同程度かをたずねた結果を、おもな稼ぎ手が正社員(男女)と非正社員(同)である場合にわけて分析しました。すると男性正社員で赤字だったのは28.7%でしたが、男性非正社員では36.2%に上昇。女性の正社員がほぼ同じ36.5%で、女性の非正社員は51.6%でした。男女で格差がある実態を示す内容で、非正社員の方が正社員より男女の差が開きました。貧しい女性の増加は社会問題です。頼りになる男と結婚して、主婦になるのが理想ですが、そんなオトコが少な過ぎる!独身のまま非正社員で年を取った女性の行く末を考えると心が痛みます。連合総研の担当者は「男性は中高年の非正社員に技術で稼ぐ専門職がいるが、女性はそういう層が薄いためでは」と言っています。自衛のためには女性も手に技を付ける必要がありそうです。

■ 労働者派遣法改正案は「派遣社員増加を招く」と猛反発する野党
 毎日新聞から・・・企業が同じ職場で派遣労働者を使える期間の上限規制(最長3年)を事実上撤廃する労働者派遣法改正案が、2014年10月28日の衆院本会議で審議入りしました。来年4月の施行に向け、今国会での成立を目指す政府に対し、民主、共産、社民などの野党は「派遣社員の増加を招く」と猛反発。閣僚の「政治とカネ」の問題も絡めて廃案に追い込む構えで、あと1ヶ月の会期内成立は微妙な情勢です。
 現行の労働者派遣法は、「派遣は臨時的」との原則に沿い、企業が同じ職場で派遣労働者を受け入れることができる期間を原則1年、最長3年(通訳など専門26業務は無期限)と定めています。これに対し、改正案は全業務で派遣期間の上限を3年とする一方、3年たった時点でそれまで雇っていた人とは別の派遣労働者に代えるなら、引き続き派遣で要員を賄えます。派遣労働者の固定化が可能になります。
 衆院本会議での質疑で、民主党が「『生涯派遣』の労働者が増えるのではないか」とただしたのに対し、安倍晋三首相は改正案が正社員になるための教育訓練を派遣元企業に義務付けていることなどを挙げ「派遣就労への固定化を防ぐ措置を強化している」と反論しました。

盛岡市中央公民館の紅葉
 時代は動いていますから、今更何を言っても流れをせき止めることは難しそうですが、労働者の立場が不安定になって行く方向へ向かっていることは間違いありません。労働者の一部は恵まれていて、大多数は不安定、格差の固定化です。

■ 『21世紀の資本』(Capital in the Twenty-First Century)
 フランスの経済学者でパリ経済学院教授、トマ・ピケティ氏の新刊書『21世紀の資本』(Capital in the Twenty-First Century)が欧米で話題を呼んでいます。700ページにわたるこの本では格差の拡大が避けられないと結論づけられているそうです。特に米国では書店から蒸発するように売れ、出版社が増刷を急いでいます。
 日本は長年にわたって比較的平等な社会で、ピケティ教授の母国フランス同様、米国と比べて貧富の格差が小さかったのですが、ピケティ教授は向こう数十年にわたり、日本でも格差が広がると言っています。法人税率の引き下げや消費増税など、安倍首相の推進する成長戦略は格差拡大を後押しするであろうことから、この本が注目されているワケです。
 ピケティ教授の主張の核心は、「21世紀には小さな経済エリート集団に富が集中するため貧富の格差が拡大する」というものです。これについて、米国や欧州では経済学者やジャーナリストらの間で議論が沸騰しています。

■ 格差は新しい問題ではない
 日本では20世紀初頭に欧州と同じくらい高い水準の格差が存在していたそうです。ここでは一握りの富裕層が国民所得の大部分を独占していました。教授は著作の中で「所得構造と所得格差の両面で、日本が欧州とまったく同じ“古い世界”だったことを、あらゆる証拠が示している」と指摘。二つの世界大戦を経て格差は急速に縮小しましたが、これは「戦争がエリートの富の大部分を破壊してしまったからだ」と言っています。
 日本では過去20年間にわたってじわりと富の集中が進んできましたが、米国とは比べ物になりません。現在、日本の高所得層の上位1%が占める国民所得シェアは約9%ですが、フランスやドイツ、スウェーデンは日本とほぼ同じペースでシェアが拡大したのに対し、米国ではこれが10〜15%上昇しました。

岩手大学工学部の銀杏

■ 中間層が消滅する未来
 『21世紀の資本』では「資本主義は格差を拡大するメカニズムを内包している。富裕層に対する資産課税で不平等を解消しなければならない。さもなければ中間層は消滅する」と主張しています。この主張が米国では、「ウォール街を占拠せよ」運動に代表されるような格差の議論に結び付き、一般市民を巻きこんだピケティブームが巻き起こっているのです。米国の保守派は「ソフトマルキシズムだ」と反発していますが、米国のノーベル賞受賞経済学者たちはピケティの実証的な研究を高く評価しています。
 この本は日本でも2014年内をメドに、みすず書房から出版される見通しです。書店に並べば、国内でも話題の一冊となるでしょう。なぜなら、中間層が消滅する未来は、私たち日本人のあいだでもさまざまな現象として現実味を帯びつつあるからです。アベノミクスで景気が回復したといわれていますが、好景気を実感できている日本の中間層はどれぐらいいるでしょう?かつては1億総中流と呼ばれ、誰もが成長を実感し、ささやかながらも豊かさを享受できた社会、それがすでに過去のものというのは、現代に生きる日本人の実感ではないでしょうか。好景気を実感するよりも、人生という長いレースで貧困側に転落しないか、その不安におののいている人のほうが多いと思います。

■ IT(情報技術)の発達で、「労働」の価値が減退
 現代は、経済全体のパイの拡大速度が鈍るなかで、IT(情報技術)の発達で労働者の「生産財」としての相対的価値が低下しています。一方で、資本収益率が守られる優遇措置により、現代資本主義が宿命的に格差を生み出す構図をピケティ教授は明らかにしました。その極端な例として米国を挙げています。格差の度合いが先進国最高レベルに達し、「第一次世界大戦前の欧州並み」に富の固定化が急ピッチで進んでいると言うのです。これは米国特有の能力主義だけでは説明できません。
 米国では、ロビイングにより税制の抜け穴や経営者の高額報酬が正当化され、権力者が所得配分の仕組みを独善的に決めています。教育がどんどん高額になり、世代を超えた身分の固定化も進んでいます。事実上の世襲制復活です。
 ピケティ教授は自由な交易を支える市場機能を評価していますが、資本主義の「宿命」を克服する手段として、資産額に応じた国際的な累進課税や国際金融機関のデータ共有を唱えています。格差論議から感情論を排したのが、ピケティ教授の最大の功績だろうと言われています。

北海道大学の銀杏並木

■ 政治では格差解消せず、課税システムだけが有効
 格差拡大に対する、政治的に可能な対処策はあるのでしょうか。ピケティ教授は、万人のための教育という標準レシピでは、相続される富をますます拡大させている強力なパワーにとても太刀打ちできないとしています。これを抑える上でもっとも実行可能な手段は税金だと言います。経済成長率と釣り合いがとれるよう、累進課税によって税引き後のリターンが資本に還流するのを抑制するわけです。しかし、政治的に「収入をバランスよく平等に分配するための財務上の諸制度に対する抑え込み」が働きます。富の所有者は弱者集団ではありませんから、そうした政治的対処の動きには断固抵抗するわけです。
 ピケティ教授は、20世紀初頭のフランスを例に挙げて、次のように言います。

フランスは民主主義であったにもかかわらず、そのシステムは信じられないような富の集中と格差に対応しなかった。エリートたちは無視を決め込んでいたのだ。そして、何もかも自由市場が解決してくれると主張し続けた

もちろん、そうはならなかったのです。

黄葉

■ 小売や外食業界の様変わり
 アベノミクス、円安米ドル高、消費税上げ・・・、世の中の様変わりが、小売業界や外食業界に秋風を吹かせています。コンビニではセブンイレブン絶好調、ローソンが追い、ファミリーマートに怪しい雲行きが・・・。食品スーパーでは「値下げしました」の札が目に付きます。デフレ志向に突き進む人が増える消費性向を見て対処しているのでしょう。一方で先般紹介したように成城石井が絶好調、すなわち、消費者が二極化してきたということです。
 先日成増のダイエーに寄ったら、「終活フェア」をやってました。「そうかダイエーも、もう終わりだもんなぁ」と思ったらそうではなく、「イオンのお葬式」とか、いわゆる「人生の終活」に向けて、お寺や墓地や葬儀場など、なんでも相談に乗りまっせ、というわけです。今全国にセレモニーホールが出来て、葬儀屋さんは花形ですが、今後は墓地や寺院は先細りでしょう。やがて和尚さんは食って行けない人が増えて、今の神主さんと同様に、別の職業を持って、葬祭時だけ「ヘンシン」するウルトラマンみたいなひとが多くなって行くでしょう。

秋風が吹く業界も・・・
 注目は「業務スーパー」の神戸物産【3038】です。株価はこの1年で、2,282円から4,985円に跳ね上がり、今若干戻していますが、それでも4,800円前後です。株価が倍以上になるということは、いかにデフレ志向の消費者の心をつかんでいるかを、如実に示しています。

■ 回転すし業界に波乱発生
 58『回転寿司』(2014年4月12日)で、回転寿司業界に触れました。それから半年チョット、波乱が起きてきています。居酒屋「甘太郎」や焼き肉店「牛角」などを経営するコロワイドは、「かっぱ寿司」のカッパ・クリエイトホールディングスを買収すると発表しました。子会社を通じ、1株1,048円で株式を公開買い付け(TOB)するとともに、第三者割当増資にも応じ、カッパ株の50.5%の取得を目指します。買収総額は約300億円とのこと。コロワイドの2014年3月期の連結売上高は1、484億円強。カッパ・クリエイトHDの買収によってグループ全体の売上高は単純合算で2400億円を超え、「すき家」などを運営するゼンショーホールディングス、「ガスト」などを運営するすかいらーくに次いで外食業界第3位に躍り出ます。先般通期の連結売上高を2210億円に下方修正した日本マクドナルドホールディングスを追い抜きます。
 カッパ株の28.3%を持つ筆頭株主のコメ卸「神明」はTOBに応じると発表しました。カッパ寿司は2013年2月期に22億円、2014年2月期に71億円の当期損失を計上、神明は傘下の元気寿司との統合を視野に立て直しを図ってきました。今回のコロワイド側からの申し入れに応じ、統合は解消するようです。
 回転寿司業界は、郊外店から都市部への進出が合言葉となってきています。業界トップの「スシロー」は、40店舗の出店を予定しているほか、新業態となるカジュアルすしダイニング「ツマミグイ」を2015年1月中旬に東京中目黒にオープンさせ、都内進出をはかります。すしとビュッフェを組み合わせ、回転レーンを置かず、客が自由に取る形式で、一貫100円から350円と幅をもたせるようです。女性客も狙っているようです。
 かっぱ寿司【7421】の株価は、この1年日経平均株価の上昇に伴って900円から徐々に上がり、一時期1,188円まで上がりました。今はTOB価格前後に下落しています。くら寿司のくらコーポレーション【2695】の株価はおよそ3,000円、この1年で倍になりました。すき家やはま寿司のゼンショーホールディングス【7550】は、1,222円まで上がった株価が1,000円を切りました。

回転しない寿司

■ ワールドシリーズはロイヤルズ惜敗
 3勝3敗で迎えたワールドシリーズ第7戦は、ロイヤルズの本拠地カンザスシティで行われ、ロイヤルズは2-3でジャイアンツに惜敗しました。前日と同様に青木宣親は2番右翼に入りました。ジャイアンツは2回表、連続犠飛で手堅く2点を先取、その裏、ロイヤルズはヒットと二塁打を連ね1点を返すと、連続犠飛ですぐに同点へ追い着きました。さらに1死1、2塁で青木宣親が一本打てば、試合の流れは大きくロイヤルズに傾く場面。青木の当たりはハーフライナー、テキサスヒットかと思われたましたが、二塁手クロフォードがワンバウンドで取って2塁送球、封殺となりました。ジャイアンツは4回表にタイムリーで3-2と勝ち越し。青木は一打席目四球、二打席目は前述のとおり二ゴロ、三打席目は左直、四打席目は遊ゴロ。今シリーズの青木は、安打が1本出ていれば流れが変わるという場面で、再三打席が回ってきたものの、結局安打は第6戦のタイムリー1本だけ、6試合14打数1安打1打点2四球の.071に終わりました。シーズン終盤から好調を維持してきましたが、ワールドシリーズで急ブレーキがかかった感じでした。サンフランシスコ・ジャイアンツはこの5年で3度目のチャンピオン、スゴイ。
以前スワローズ時代、青木宣親が指導に来てくれました 前の選手は大井ウエストの6年生(当時)

■ 日本シリーズはソフトバンク4勝1敗阪神
 「SMBC日本シリーズ2014」は、セ・リーグ2位から勝ち上がった阪神がソフトバンクに敗れ、対戦成績1勝4敗で1985年以来29年ぶり2度目の日本一を逃しました。王手をかけられた阪神は、セ最多今季13勝のメッセンジャーが7回まで無失点に抑えていましたが、8回2死一、三塁から松田に中前適時打を許して降板しました。6番DHに入った西岡は2安打を放つなどひとり気を吐きましたが、得点につながらず、9回はソフトバンク守護神・サファテが乱調で四球連発、1死満塁と逆転のチャンスを迎え、打席には西岡、一塁手へのゴロ、3→2→3のホームゲッツーを狙った捕手細川からの送球がファウルゾーンへこぼれ、同点の走者が生還したかと思いましたが、西岡がファウルラインの内側を走って送球を邪魔したとみなされ、守備妨害で試合終了。珍しい形での幕切れとなりました。
 ソフトバンクのナインが歓喜する中、阪神の和田監督が抗議しましたが、判定は覆りません。白井球審は「両足とも内側を走っていた。明らかに守備を邪魔しようとしていた」と説明したそうです。
 1塁へ向かう打者走者は、「スリーフットレーン」を走ることと定められています。右の図を参照下さい。

一ゴロを放ち一塁に駆け込む西岡、一塁手明石(中央)、二塁手本多

スリーフットレーンとスリーフットライン、詳しくは→コチラ
 西岡は自身のフェイスブックで釈明しました。上の写真で送球が左手に当たったことが分かります。マトモなら併殺だ、ボールが体に当たってくれ、プロですから覚悟のギリギリのプレーでしょう。しかし白井球審は許さなかった、そういうことです。ベース直前ではフェアゾーンにまるまる足が入っていなかったとしても、スリーフットレーンを走らなければ、守備妨害の意思があったとみなされるのは致し方ないでしょう。
 なおスリーフットレーン、スリーフットラインの他に、野球ではスリーフィートラインというものがあります。塁間にはラインの両側3フィート、およそ90cmの見えないラインがあります。走者はこの間を走らないとアウトになります。
(2014年11月1日)


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