22  国家とグローバル企業の関係

 日本の夏を彩る祭りと言えば、なんと言っても「東北夏祭り」ですね。昼は暑いが、夜になると涼しくなる東北は、浴衣を着流して帯に団扇を刺し、生ビールを飲みながら楽しむには最高です。皆さん、出かけてみませんか?短い東北の夏を惜しんで、さあ出かけましょう。
 ちなみに東北の主な夏祭りの日程は下記の通り、この夏、東北へ! 注:筆者は東北のまわしものです(^_^)

盛岡さんさ踊り   8月1日(木)〜4日(日)
青森ねぶた     8月2日(金)〜7日(水)
秋田竿灯まつり   8月3日(土)〜6日(火)
仙台七夕まつり   8月6日(火)〜8日(木)
山形花笠まつり   8月5日(月)〜7日(水)
郡山うねめまつり  8月1日(木)〜3日(土)
相馬野馬追   7月27日(土)〜28日(日)

■原子力規制委員会
 福島のみならず宮城、岩手と影を落とした福島第一原発事故、原子力関係者にとっては足を向けては寝られない青森県も、いろいろな意味で今回の事故の大きな影響を被っています。原発の再稼動に向けての安全審査が始まりました。原発はこれからどうなるのでしょう。
 スリーマイル島、チェルノブイリという2大事故を起こした米露は、ますます原発を推進する構えです。ドイツやスペインは脱原発です。日本を取り巻く韓国、台湾、中国、ASEAN諸国、インドはこれから原発を増やして行きます。20年後の東アジアでは100基以上の原発が稼動します。すなわち、世界のほとんどの人間は、今後原発なしには豊かな暮らしができないと考えています。

■アイは短いほど強い
 日本は今風力や太陽光発電で躍起ですが、実は米中はそれ以上です。原発事故で目が覚めた日本、それ以前から取り組む欧米中、国民性ですね。日本人は刹那的過ぎます。制御工学で言えばPID制御のP、すなわち比例帯の幅が狭過ぎて、ドタバタしてしまうのです。比例帯の幅が狭いということは「近視眼的」ということです。PID制御のI=積分制御は経験を生かすこと、過去の経験に鑑み、長い眼で見て打ち手を考える、D=微分制御は事故などの突発的な変化に対応して先読みしてブレーキをかけたりアクセルを踏むことです。このPとIとDの値が適切にチューニングされれば安定した制御が出来るのです。国家運営はまさにこのPとIとDの値のチューニングです。ここで重要な情報を与えるのがマスコミですが、日本がドタバタするのはマスコミが逆に外乱になっているのでは?と思えることです。もっとも近年の日本の選挙を見ると、余りにもIとDが無さ過ぎます。制御屋の合言葉「アイは短いほど強い」、アイを効かせるには、経験豊富な年寄りがもっともっと発言していくことです。

■寺島実郎氏の主張
 筆者はこの人といつも大方共鳴します。エネルギー問題や食糧問題を、右だ左だと政治問題にしてはなりません。その意味でこの方は実にリアリストです。日本総合研究所理事長ですから当然とも言えます。海外から「卑しいエコノミックアニマル」との批判もある日本の原発輸出政策に対し、政府はエネルギー戦略における原子力の位置付けを明確にすべきだと仰います。21世紀は人口爆発でエネルギーと食糧の奪い合いになります。日本は原発停止で、働いても働いても海外にエネルギー原料費を払わなければならず、考えられなかった貿易赤字国に転落しました。このままで行けば資産を食い潰して破産します。日米は「原子力共同体」です。米国の核の傘の下で脱原発と言うことは「甘えの構造」だと寺島さんは言います。日本が脱原発ムードなので米国は中国とトリウム燃料の次世代原発の共同研究を始めました。このままでは日本は孤立します。

盛岡さんさ踊り

■経済にブレーキ
 米国と欧州経済は縮小し、インドや中国のような新興国は成長を続け、世界経済の4分の3を担う可能性が現実味を帯びてきました。日本も縮小してますね。中国はこれまでの成長がややバブル気味だったので、李克強首相がややブレーキをかけています。これを懸念する声が出ていますが、かつての日本の例を見れば、賢明な策と思います。米国のバーナンキFRB議長も金融緩和を先行き縮小したいと言っています。お金がジャブジャブ回っていれば、マネーゲーマーには良いかもしれませんが、危険な状態なので、これら米中の姿勢は当然です。その逆を行っているのがアベノミクスですが、日本は過去20年米中がグングン伸びたときにひとり低迷してましたので、それを取り戻そうとしているだけです。

■アップルの税逃れ
 5月末にアップルのCEOが米国議会の公聴会で行った証言は、様々な面で法人税制の改革の必要性を裏付けた模様です。「支払うべき税金は1ドル残らずきちんと支払っている」と、アップルCEOのティム・クック氏は米上院の調査小委員会で証言しました。アップルは、タックスヘイブンやペーパーカンパニーを巧みに利用し、2009〜12年に上げた440億ドルの利益に掛かる税金を米国政府に支払っていないという報告書が発表されたことを受けての喚問でした。
 アイルランドのコークに子会社のアップル・オペレーションズ・インターナショナル(AOI)を設立し、AOIは、ほかの子会社が上げた巨額の利益を吸い上げ、2009〜12年に300億ドルの利益を計上しました。しかし、過去5年間、どこにも税金の申告を行っていません。アイルランドの法人ですが、取締役会は米国で開かれますから、実質的には米国の法人です。アイルランドと米国のルールの違いのおかげで、税務上はどの国にも属さないと主張できるのです。

■日米で儲けて税金は払わない
 確かに2年ほど前、アップルの日本法人は解散し、日本における権利義務のすべては、アイルランドのAOIに移管されました。すなわち、日本でアップル製品が得た利益は、アイルランドへと運ばれているのです。世界で法人税が高い2大国家は米国と日本、共に40%強です。2年前の日本法人解散は、アップルが米国や日本と言う国家と距離を置く姿勢表明でした。しかし製品を売って儲けた相手は米国民や日本国民です。それなのに税金を払わない、そんなこと許されて良いものでしょうか?

■グローバル企業と国家の戦い
 このようなTAXトレンドは、数年前にはキプロスなどであり、いまはアイルランドで、また数年後にはもっと巧みな場所に移ると言われています。なぜなら、国家としてこのようなTAXトレンドを産業として受け入れている国が存在しているからです。シンガポールなど、公然とそれを売りにして国おこしをしています。アップルだけがズルイわけではありません。マイクロソフトもグーグルもスターバックスも同じようなことをやっています。このようなタックスヘイブンを国家単位で行う小国がある以上、世界的企業が国家に帰属しないほうが得策だと真剣に考えるならば、このようなグローバル企業に対する課税逃れの厳しい取り締まりか、もしくはグローバル企業が「引っ越し」するかのどちらかとなります。

■日本では
 日本企業はどうでしょうか。トヨタは2兆円も利益を上げているので、羨望の的ですが、だからといってアップルのような真似はしません。日本国政府にとっては高額納税で、大変有難い企業です。ただし日本の大企業でも本社機構の一部を海外に移転するような会社もあります。かつて西武鉄道、国土計画、百貨店を擁した巨大グループがありました。ところが全国に次々プリンスホテルを建てるなどして事業を拡大したのに、税金はサッパリ払いません。別に悪いことをしたわけではなく、儲けを次々事業拡大に投資したので、利益が残らなかったのです。しかしこのやり方は日本国政府にとっては許し難いことでした。企業の使命は利益を上げることで、その相応分を税金として払うのもまた企業の法人としての使命でもあります。利益を出さずに拡大だけ続ける住民は許せません。結局日本のスポーツ界のトップまで勤めたオーナーも・・・・となったわけです。

■軽井沢
 6月は東北紀行を紹介しましたが、7月半ばの3連休は炎天下の少年野球と、妻の高校時代の友人が定年退職して軽井沢に家を建てて移住したので訪問、その後戸倉上山田温泉の夏祭りを楽しみ、相変わらずのモーレツスケジュールをこなしました。
 軽井沢と言っても、旧軽井沢などより寒くて、半袖だと寒いよと言われましたが、「まさか」と思ってました。ところが本当でした。巨大な木々に覆われた鬱蒼とした森林空間だからです。この家は、茶室や音楽ホールがあるのです。こんな広い家に女ひとり住まい・・・・、いろいろな生き方があるものです。
 ひとつ問題なのは、その友人が、定年後の住まいとして一旦盛岡に家を建てたものの、それを売って軽井沢を物色したことです。この方は画家でもあるので、横浜から鎌倉の友人たちと年に何度か会うために、時間と交通費が問題でした。軽井沢から横浜は片道6千円で2時間弱、盛岡は1万8千円で3時間強、その差往復で2万4千円と3時間。今東京とその周辺から、暑さが厭で夏場避暑地で過ごす人が増えています。海派は九十九里から南房総、湘南から伊豆、山派は茨城県大子町、栃木県那須、群馬県桐生・足利、長野県佐久・御代田・軽井沢、山梨県北杜市などです。東京とその周辺にしがらみを持ち続けたい人には、盛岡は遠い、のですね。

軽井沢の友人の家

■戸倉上山田温泉
 信州戸倉上山田温泉の夏祭りと煙火大会は、毎年海の日直前の土日開催、この夏祭りは、その名の通りクネクネと曲がる千曲川の水害に悩まされた温泉街として、水天宮を祀り、その怒りを鎮めるものです。
 つぶやき134『夏祭り』(2005年8月8日)と、341『祭り』(2009年7月26日)でこの祭りを紹介しましたが、毎年この時期になると戸倉上山田温泉に行きたくなります。今年は花火を見ようと日曜宿泊、宿の温泉は源泉掛け流しの良い湯でした。例年この祭りの主役冠着太鼓が楽しみです。冠着山別名姥捨山の麓に広がる美しい地更級(さらしな=更科)の里、月の名所です。



煙火大会
(2013年7月20日)


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