589  景観問題

 毎回梅雨入りはいつになるのかという話題が続いていました。過去、もう完全に梅雨だ、という時期がありましたが、その後晴れて、梅雨前線がずっと南にあるのでこれは梅雨の雨ではないということになり、降っては晴れて、また降って、今に至りました。関東甲信の梅雨入りは、平年は6月7日ごろ、昨年は6月8日でした。1951年の統計開始以来、関東甲信の最も遅い梅雨入りは1967年と2007年の6月22日ごろでした。夏至である6月21日(金)は日中強い雨が降り、以降ずっと雨マークなので関東地方が梅雨入りしたと見られるということになりました。関東甲信もいよいよ長雨の季節がやって来ると言われていますが、畑のタチアオイはもうテッペンまで花が咲いていますから、アオイ的にはもう梅雨明けでも良いくらい、いっぱい雨が降ったのです。我が家の隣のビルの燕もそろそろ巣立ちそう、燕と言えば温泉街の宿が好きなんですよ。

■ 岩手山が岩木山?
 盛岡市紺屋町で建設中の高層マンションのチラシに、岩手県の盛岡市周辺の象徴である岩手山ではなく、青森県の岩木山と思われる画像が使われたこと、これはもう「事件」としか言いようがありません。問題のチラシは6月上旬、盛岡市などで配布されたそうです。景観問題を所管する盛岡市景観政策課の課長は青森市出身なので、チラシに使われている画像を見て、「ひと目で岩木山だと分かった」そうです。「古くから盛岡は岩手山の眺望を大切にしてきた。その山を間違えるとは盛岡市民をばかにしている」と怒り心頭、チラシを制作した「タカラレーベン」(本社・東京都)に連絡したら、その広報担当は平謝りだそうです。
 「盛岡市民をばかにしている」と言うよりも、合成写真を作った下請けは、地域に対する理解が無かったということでしょう。盛岡市の内舘市長は広い心で「笑って許して」いるみたいですが、おさまらないのは盛岡市をふるさととする在京のふるさと会員、「とんでもない業者だ、直ちに建設をやめて計画を白紙に戻せ!」と怒り狂っています。「清流の、畔に。」というキャッチは素晴らしいけれど...


チラシの写真

 問題のマンションは「レーベン盛岡紺屋町」、地上14階建ての高層マンション(52戸)で、盛岡市民に愛される中津川を挟んで盛岡市役所の斜め向かいにあった岩手県最古の酒造会社「菊の司」の酒蔵が雫石町に移転した跡地に建設中です。中津川に架かる上の橋と与の字橋の間、川を挟んで向かい側には「岩手県民会館」があります。近くには深沢紅子野の花美術館や葛v慈設計、コーヒーショップ「クラムボン」、印刷「巴染工」の工芸品店、インテリア用品「巴倫堂」、焼肉レストラン米内、ニューヨークタイムズで紹介されたBOOKNERD書店、盛岡市総合福祉センター、盛岡市若園町分庁舎などがあり、盛岡市の街歩きとして風情がある地域です。


中津川を挟んだ周辺地域は盛岡市の人気スポット、歩いて愉しむところです
 中津川は県庁所在地のド真ん中を流れる川にもかかわらず、日本百名水、鮭が遡上し、冬には白鳥が飛来する盛岡市民の憩いの川です。川沿いやや下流に「赤レンガ館」の愛称で知られる国の重要文化財「岩手銀行(旧盛岡銀行)旧本店本館」があり、その近くでは15階建て高層マンション(56戸)の建設が進むなど、古くからの街の景観を大きく変える開発が続いています。盛岡市では、岩手山が見えるか見えないかは大問題なのです。

盛岡駅前「開運橋」の上から見る岩手山と北上川と柳、対岸にはツツジなどの花壇

■ 岩木山
 この「事件」から考えさせられることが多々ありました。地元の人がチラシを作れば絶対アリエナイことが起こったのは、東京の人から見れば岩手山も岩木山も良く知らない山、しかし「おいわきやま」は歌にも歌われて有名な山、一方「いわてさん」は知る人ぞ知るという山ですから、山の画像をポンと張り付けて合成したら取り違えた、ということでしょう。青森県黒石市に住む我が友人は、折に触れ岩木山の写真を送ってくれます。ふるさとの山として愛されていることが良く分かります。

岩木山は独立峰で、標高1,625m、頂上部は三つの峰で形成され、「山」という字をそのまま描いたような形の「津軽富士」と称される山です


りんご畑に花咲く頃、名峰岩木山の美しい姿を眺めながら、人々は「今年もいっぺ実ればえな」とつぶやきます
鳥海山や会津磐梯山、岩手山などと並んで、地元住民からこよなく愛されるふるさとの山です


■ 岩手山
 盛岡市や滝沢市、紫波町、矢巾町、雫石町から見える岩手山は「南部片富士」と呼ばれ、奥羽山脈の一部ですが、南北に連なる奥羽山脈からT字形に突き出し、右側(東側)が富士山ソックリの美しい弧を描いて、広河原から北岳、上高地から穂高連峰へ登るときに匹敵する標高差を持つ2千m越えの日本百名山です。広河原も上高地も標高1500mぐらいですから、山頂までの標高差はおよそ1700mです。岩手山は柳沢からの登山だと標高差はおよそ1500mです。その美しい稜線は、この地域の人々の心の拠り所です。石川啄木の産まれた盛岡市玉山地区方面からは両側が綺麗な斜線のズングリムックリ富士山のように見え、北側の八幡平市や岩手町からは溶岩流の流れ落ちた荒々しい山容で、南側から見た心を癒される美しさとは真逆の雄々しい山なのです。浅間山の麓・軽井沢の鬼押し出しに似た光景です。


盛岡市の町並みと岩手山 南南東から見た光景です


2007年2月24日北上川と岩手山


盛岡市の岩手大学近く高松の池の白鳥と岩手山


盛岡駅隣のマリオス展望台からの岩手山(2024年3月19日)


岩手山の手前にあるナメクジみたいな山は鞍掛山、手前は滝沢市から盛岡市の町並み


盛岡市、滝沢市の田植えが終わった6月の風物詩「チャグチャグ馬コ」の背景には鞍掛山と岩手山


滝沢市鵜飼の新鬼越池(小岩井溜池)手前から見る新鬼越池と岩手山そして逆さ岩手山
小岩井農場の近く、ちょっと波立っているのが残念ですね


小岩井農場の一本桜と岩手山 桜の花が少ないのは「ウソ」に啄まれたからです
この地域は雫石町で、真南からの光景なので奥羽山脈につながる連峰が良く見えます

小岩井農場の一本桜と言えば2007年のNHK朝ドラ『どんど晴れ』の舞台

ヒロイン夏美の花嫁姿が美しかったですね(比嘉愛未さん)
この作品を機に盛岡市と沖縄県うるま市が友好都市となり、比嘉愛未さんが友好大使となりました
比嘉愛未(まなみ)さんは今でも盛岡に行くと「ただいま」と挨拶するそうです
小岩井牧場の景色は本当に一枚の絵のようで、嘘みたいに綺麗でした」とおっしゃっていました


岩手山と小岩井農場(観光パンフレットより) 宮澤賢治の愛した景色は小岩井農場と七ツ森です


桜咲く小岩井農場


小岩井農場には牛や羊が放牧されています

小岩井農場の南には御所湖畔に「盛岡つなぎ温泉」があります

初夏の御所湖、七ツ森、岩手山


冬・凍結した御所湖から見える雄大な岩手山


盛岡つなぎ温泉ホテル大観からの眺望、左はつなぎ大橋 その向こうに七ツ森、そして岩手山


御所湖畔にある舟越保武作「シオンの像」 舟越保武作品としては田沢湖の金色に輝くたつこ像も有名です
ちなみに十和田湖畔の乙女の像は高村光太郎の作品です


雫石町の田圃と七ツ森と岩手山


雫石町観光大使、盛岡ふるさと大使の福田こうへいのバックには盛岡市玉山地区からの岩手山


石川啄木のふるさと渋民(盛岡市玉山)から見る岩手山は、真東からなので両側の稜線がなだらかです


渋民の啄木歌碑の奥には岩手山


いわて銀河鉄道とJR花輪線が分かれる好摩駅から見た岩手山


八幡平市「焼走り溶岩流」から望む岩手山は北東方向からの光景
焼走り溶岩流は長さ3km、幅1.5km、真っ黒の岩にはいまだに植物が生えません

雪が残る「焼走り溶岩流」から望む岩手山はキリリと雄々しいですね


好摩駅の隣;JR花輪線東大更駅(八幡平市)と岩手山 JR東日本青春18きっぷのポスターです


JR花輪線東大更駅を過ぎ、大館方面へ平舘〜北森と走ると
車窓から岩手山と手前の山が色違いで重なるシルエット


平舘〜北森間の水田とJR花輪線車両 ここでの岩手山は会津磐梯山と似た豪快な山に見えます


松尾八幡平方面から見る岩手山 小岩井農場から見る岩手山とは左右逆に見えます
盛岡からグルーっと鉄道で南→北→北西と走ると、岩手山は次々と姿かたちを変えます


■ 全国のふるさと富士
 静岡県のホームページに「全国のふるさと富士」というコーナーがあり、日本全国には〇〇富士と名付けられたふるさとの山が340もあるとか...日本の象徴富士山にあやかって、おらほの富士として愛されている山が数多いのです。例えば東北でも、秋田県と山形県の県境にそびえる東北一の高山;鳥海山は「出羽富士」と呼ばれ標高2,236mです。「岩手富士/南部富士/南部片富士」など色々な名前で呼ばれる岩手山は標高2,038mです。福島県の会津磐梯山は「会津富士」と呼ばれ、猪苗代湖という大きな湖を下に控えさせる標高1,816mの雄大な山ですが、周囲に噴火活動によって誕生した大小300余りの湖沼群を持ち、特に五色沼などは綺麗ですね。活発な噴火活動で出現した岩手山と同じく、優しくなだらかな山かと思いきや、ぐるっと回ってみると時に荒々しい山容が垣間見えるのが特長のとても魅力的な山です。青森県の標高1,625m岩木山は「津軽富士」と呼ばれ、鳥海山同様日本海からそのままスックと立ち上がっています。海辺の山と内陸部の火山という対照的な山が、いずれもふるさとの山として愛されているんですね。東京から見える富士山は丹沢山地があるので上の方しか見えません。それどころか高層ビルがニョキニョキ建って、空も狭くなりました。遠くの山を眺められる地方の人と違って、東京人の視力が低いのはこのためでしょう。


2017年1月29日JR磐越西線の車窓から写した会津磐梯山(これはカラー写真です)


■ ふじみ野から見た富士山
 埼玉県ふじみ野市は文字通り富士山が見えることからつけられた名前です。お隣富士見市はまさにピッタリ、富士山が見える市です。


ふじみ野市駒林から見た2020年12月31日の光景


国道254号バイパスの陸橋上から撮影した2018年1月1日の光景 裾野まで見えますね


新河岸川方面から望遠レンズで撮るとこんな感じです
ここは林があるので裾野が見えませんが、所沢・三芳との境の畑では裾野までしっかり見えます


■ 富士山が見えなくなる?建設中マンション取り壊し
 そう言えば国立市で建設中マンションを取り壊すことがニュースになりました。建設が完了したマンションが急きょ取り壊しに・・・そんな耳を疑うようなニュースが世間をにぎわせたのは、積水ハウス(大阪市)が建設したマンション「グランドメゾン国立富士見通り」で、最寄りはJR国立駅(東京・国立市)です。富士見通りの商店街は富士山が見られる眺望で知られていましたが、今回のマンション建設によって景観が損なわれるとする懸念から反対運動も起きていました。当初計画の11階建てを10階建てに変更して建築許可を受け、18戸が入居予定でした。しかし1階低くしたぐらいで富士山が見えるなんて考えられません。もう出来上がる寸前で積水ハウスは計画を撤回し、折角できたビルを壊すのだそうです。その損害たるや莫大になるそうです。一度完成した建物を解体するのは積水ハウスでも初めてとのこと。
 今回の騒動を受け、積水ハウスは6月11日付で文書を発表・・・「本事業につきましては、計画当初より日本を代表する山である富士山の富士見通りからの眺望に対しても多くの声をいただき、地域住民の皆様及び国立市とも十分な協議を重ねてまいりました」とした上で、「現況は景観に著しい影響があると言わざるを得ず、富士見通りからの眺望を優先するという判断に至り、本事業の中止を自主的に決定いたしました」と経緯を説明した上で「本事業は適法に手続きを進め、法令上の不備はございませんが、富士見通り、特に遠景からの富士山の眺望に関する検討が不足していたことが引き起こした事態であり、ご契約者様及び地域の皆様にさらにご迷惑をおかけすることを避けるべく、建物竣工直前ではありましたが、中止を判断いたしたものです」と法的な問題はなかったことを強調、「建物竣工直前の本事業中止により、本マンションのご契約者様には多大なるご迷惑をおかけいたしましたことを改めて心よりお詫び申し上げます」と謝罪しました。考えてみますと、積水ハウスの企業姿勢がこれで一段と高く評価されるのではないでしょうか。莫大な損失ではあっても、PR効果は絶大だと思います。

■ 藤井聡太八冠転落、「254日天下」
 藤井聡太八冠が2024年6月20日(木)、将棋の第9期叡王戦5番勝負第5局で、同学年の伊藤匠七段(21)に敗れ、七冠に後退しました。速報を見ていて、これはまた防衛するな、と思っていたら終盤逆転されました。タイトル連続獲得が「22」で止まり、八冠保持は「254日天下」で終わりました。将棋界には有名な言葉があるそうです。元日本将棋連盟会長の故米長邦雄九段の言葉「大切なのは負けた後」ということです。藤井聡太さんにとっては逆に良いことではないでしょうか。勝ち続ける苦しさから開放されるや、ますますバネが強靭になる気がします。そもそも何歳ですか?まだまだ負けて良いのです、その上でますます強くなる気がします。


伊藤匠叡王
(2024年6月23日)


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