513  再改革

 2023年開幕はまず群馬でニューイヤー実業団駅伝、そして箱根の大学駅伝、毎年恒例ですが、選手たちの必死にタスキをつなぐ姿に日本中の多くの人が感動しました。「多くの」と書いたのは、どんな社会にもわずかに反発する人、へそ曲がりの人が居るからです。だからといってそういう人たちを排除してはいけません。世の中は多様だからこそ均衡して行ける、ほとんどの人が同じ方向を向くときほど怖いことはありません。

■ 駅伝の結果
 ニューイヤー実業団駅伝は元日定番です。埼玉県に練習拠点のあるチームをどうしても応援したくなります。昨年優勝の狭山市のHondaは4:48:06で連覇、大迫傑が走る東松山市のGMOインターネットグループは4:50:16で5位、戸田市のヤクルトは4:58:41で28位、毛呂山町の埼玉医科大学グループは4:59:34で30位、朝霞市・和光市の選手全員が走るスーパー店員;コモディイイダは5:01:44で32位でした。
 お正月の定番…関東の大学対抗で競う第99回箱根駅伝は、去年の出雲全日本大学選抜駅伝と全日本大学駅伝を制した本命駒沢大が、往路に続き、復路も優勝して、2年ぶり8回目の総合優勝を果たしました。1990年の大東文化大、2000年の順天堂大、2010年の早稲田大、2016年の青山学院大に続く史上5校目の大学駅伝三冠を達成しました。2区を走ったエースの田澤選手がコロナに罹患して練習不足で出場が危ぶまれる状態だったのに意地で頑張り、他にも二人のレギュラーが胃腸炎で出れなくても優勝する層の厚さ、5区、6区のヤマに1年生を起用しての優勝です。全員区間5位以上という安定度が優勝の要因でした。準優勝の中央大は「王者復活」です。エースの吉居大3年生のラストスパート、凄かったですね。瀬古さんや青学の原監督が目を瞠っていました。所沢市の早稲田大学は出遅れて心配でしたが、猛然と追い上げて6位、坂戸市の城西大学は頑張って9位、川越市のシード常連東洋大学がまさかのシード落ちかと心配しましたが、最後は何とか10位に滑り込みました。坂戸市の東京国際大学は4区区間新記録のヴィンセントの激走にもかかわらず惜しくもシード権獲得ならず11位でした。東松山市のこども動物自然公園の隣にある大東文化大学は16位でした。坂道で練習しているので伝統的に山登りに強い大学です。55年ぶりの箱根路;新座市の立教大学は18位でしたが、55年ぶりってアッパレですね。ところで中継見てて気付きました 


箱根駅伝のテレビ中継を見ていた人たちがSNSに「新型プリウスが走ってる!」 「豊田ナンバーだ!」
「カッコいいこれは売れそう」などと投稿・・・まだ発売前ですから世界初の公道走行(クルマのニュースから)

■ ソニー・ホンダの新EV「AFEELA(アフィーラ)」
 米国ネバダ州ラスベガスで1月5日から開催されている「CES 2023」で、ソニー・ホンダ モビリティは新ブランド「AFEELA(アフィーラ)」を発表しました。「FEEL(感じる)」を表した造語で、人が、モビリティを「知性を持つ存在」として「感じる」こと、また、モビリティがセンシングとネットワークに代表されるIT技術を用いて、人と社会を「感じる」こと、というインタラクティブな関係性を表現している・・・そうです。何のこっちゃと思いますが、そのデザインを見て、テスラみたいだな、と思いました。2025年末には発売したいそうですから、およそ3年後のデザインならアッと驚くようなものかな?と思っていましたが、アコードとどう違うの?よくワカリマセン。




■ 新聞が無くなる?
 年末は大掃除しなければと思いながら、屋外の倉庫の中にあるものを整理したら不用品をいっぱい貯め込んでいることを痛感しました。それ以上に問題なのが屋内に山積みされている紙類・・・カタログ、書類、広報誌・・・旅行社から送られてくる分厚いパンフレットはほぼ読まずに捨てます。というのは行先はネットで調べ、ネットで予約するからです。問題は公的機関の委員やふるさと関係の役員をしている関係で、関連資料がドッサリ送られてくること、捨てるのが大変なのです。そしてまた世の変化を痛感するニュースが流れました。今の新聞購読数の減少スピードを見ると、下図のようになるのでは?ということで、およそ10年後には、紙の新聞は無くなるみたいです。なおこの図は直近5年の減少率をそのまま延長・グラフ化したので赤褐色のように直線的に下落していますが、人の心理がかかわると制御工学的には徐々にカーブが寝て、恐竜の尻尾みたいになります。ただ新聞社はネット配信で生き残れても、販売店関係は経営的限界点がありますから、もはや風前の灯火ですね。同じようなことは、畳屋さんでもガソリンスタンドでも起きていて、パチンコ屋さんもそうですね。社会が変われば、業態も変わります。

■ 全国旅行支援の電子クーポンは「region PAY」で
 2023年1月10日から新たな全国旅行支援が始まります。予算が無くなり次第、順次終了です。割引額は最大40% → 20%と引き下げられ、1泊あたり最大3,000円の割引が適用されます。1泊あたり15,000円以下の場合は20%割引となり、15,001円以上は一律で3,000円の割引が適用されることになります。また地域クーポンの金額についても平日2,000円分となります。休日は変わらず1,000円分のクーポンが付与されます。クーポンの配布方法は、基本的に電子クーポンでの配布に統一されます。デジタル通貨プラットフォームアプリ「region PAY」をスマホにインストールした上で、チェックイン時に受け取った用紙に記載のQRコードまたは「チャージコード」を利用すると、付与されたクーポン金額がチャージされます。店舗での支払時に「全国旅行支援のクーポンを使いたい」と申し出て、カメラでQRコードを読み取り、購入するものの支払額を入力した数字を店舗側に見せて、「決済する」をタップすると決済が完了して、画面下の残高が減っていることが分かります。紙クーポンと違って千円単位ではないので、少額決済も可能です。

筆者は楽天モバイル、月額税込¥1,080、通話・SMS無料

■ この30年の経済停滞の責任は?
 年明けのニュースと言えば、「値上げ、「賃上げ」、「増税」、「実質賃金の記録的減少」、「金利上昇で住宅ローン利率アップ」、「インバウンド増加」など、カネにからむ話題だらけでした。前回、新進気鋭のエコノミスト・永濱利廣氏の「日本病」についての見解を紹介しました。「低所得・低物価・低金利・低成長」──バブル崩壊以降、日本に定着したこの「日本病」を克服しなければ日本は沈没してしまいます。しかしその前に立ちはだかるのが定着した少子化です。成長するためには物価上昇以上に所得が増えて、国民が消費することで経済が活性化する正のスパイラルを作り上げなければなりません。増税論議は当然これに水を差します。いま議論すべきは減税です。それによって景気が好転すれば自然に税収が増えるのです。金融緩和は当面必要です。ここで金融引き締めをやれば経済は混乱し倒産続出、自殺増加につながります。金利は結果として上がるもの、今米国FRBがやっていることはコロナ禍でジャブジャブ溢れ出たお金によって生まれたバブルを縮小させるために金利を上げて引き締めているのであり、ドンドン賃金が上がりドンドン物価が上がる高インフレの火消しなのです。まだ高インフレは続いていますが、資産バブルの抑え込みには成功しています。ここが日本との違いです。日本は物価は上がるけれど実質賃金は下がっていますから、ここで金融引き締めをやってはいけないのです。「景気」というのは文字通り「気持ち」ですから、これが昂揚すれば経済は成長し、所得は増え、消費が増えて結果的に物価が上がり、金利も上がるのです。しかし今の政治の議論は目的と手段を取り違えています。日本ではこの30年賃金が上がらずOECDの中で一人負け、一方少子高齢化で社会保障費はうなぎ上り、結局社会保険料が上がりますから名目賃金が上がっても実質賃金が下がり国民はドンドン貧しくなって行きました。気がついてみればお隣韓国の倍以上だったサラリーマンの平均給与は抜かれてしまいました。貧困率世界2位の国になるなんて30年前誰が想像したでしょうか。しかしその責任は日本国民にあるのです。そのような政治を許容してきたからです。コロナ禍とその後の円安、物価高騰でやっと日本人も30年の眠りから覚めたでしょうか。

■ 構造改革、規制改革で進んだ少子化
 30年もデフレが続いて貧しくなった日本人がどうして今更それに気づいたのか?岸田首相のお蔭かもしれません。国民に圧倒的人気があった小泉・安倍路線の「規制緩和・構造改革」の政治がこうした日本の姿を定着させたとして、「新しい資本主義」を打ち出したからです。ただこれは投資家や株式業界からは警戒されてブーイングされています。小泉・安倍路線によって株価は上がり、企業の利益は増え、株主への高配当が続いたので、これを転換されては困るのです。ところが急激な円安が起きて、物価が上がって、実質賃金低下が明らかになると、岸田首相の言ってることも改めて確認してみようかということになったようです。もちろん規制緩和・構造改革を遡れば中曽根内閣が端緒となったのですが、バブル経済の崩壊後、円高が急速に進行し、政府や財界は日本経済の「高コスト構造の解消」をめざしたのです。具体的には@雇用の弾力化 (人員削減、新規採用抑制、非正規・不安定雇用の拡大など)や賃金抑制の強化、A規制緩和による農産物をはじめ安価な商品の輸入の増加、大規模小売店舗法の規制緩和による大型店の立地容認、流通コストの引き下げなどによる新たな価格体系への転換、B海外現地調達比率を高め、製品コストの切り下げを重視した生産拠点の再編円高に影響されない体制の構築、などです。主な標的は、小規模経営が主体で生産性が低いと批判された非貿易財部門 (農業、流通業、運輸業など)でした。
 その後、グローパル経済の加速、アジア諸国の追い上げによる国際競争の激化に加えて、消費税の引き上げ (1997年 4月)を機に景気が再び悪化しました。すると「産業競争力再生」のために三つの過剰(過剰設備・過剰雇用・過剰債務)を同時解消しなければならないという主張が提起されました。2001年4月に発足した小泉政権の構造改革は竹中平蔵氏が主導しました。日本企業の競争力の強化をはかるために、建設業、不動産業、流通産業さらに銀行業の淘汰、再編を強行しました。過剰債務を抱えて競争力を失った企業や産業を淘汰することをも目的としていました。郵政改革など、日本を外資に売ることだったのです。
 小泉改革のもう一つの特徴は、不良債権処理とともに 「労働市場の構造改革」、「労働分野の規制緩和」を重視し、従来の長期雇用システムに対する批判や雇用の弾力化・流動化を強く打ち出したことです。派遣労働者などの非正規雇用の拡大有期契約期間の上限延長裁量労働制の適用範囲の拡大解雇を容易にするルールの制定など、雇用と労働のあり方を根本から転換することで「高コスト構造」を改め、日本の競争力の強化をめざすという構想でした。結果、今や日本の労働者で労組に加入している人は2割を切りました。
 日本企業は「グローパル化」の掛け声のもとに中国やアジア諸国への進出を急ピッチで進め、そこで作られた低価格商品の逆輸入によって国内製品の低価格化への圧力が強まり、国内製造業の空洞化と共に日本の労働者の賃金を抑える作用が働きました。こうなると経営者は非正規雇用を増やさざるを得ない、これは一種の麻薬でした。一度味を覚えたらやめられません。所得が低い人は結婚を渋る傾向があります。結婚しなければ少子化も進みます。非正規雇用労働者がドンドン増えて、「日本の失業率は低い」と政治家が胸を張りました。今バリバリの若者が時給九百何十円で働いてる姿をよく見ます。賞与もありません。でも親と同居しているので衣食住のうち「衣」と娯楽の費用を稼げれば良いのです。車も買わず、結婚も考えない、そうしていつの間にか40代になっているのです。もし子どもを産んでもかかる費用は膨大です。教育にはものすごくお金がかかるようになりました。子どもは1人でいいという夫婦も増えています。産むのを諦めた夫婦も居ます。そもそも結婚を諦めた人が増えているのです。

エゾフクロウだって子ども産まないと絶滅しちゃう

■ 岸田首相異次元の少子化対策
 岸田首相は今度は「異次元の少子化対策」を言い出しています。いったい何をやろうというのでしょう。今の日本にとって最も喫緊の課題が少子化対策だととらえていることには大拍手です。異次元でもなんでも、強力な政策を期待します。小池東京都知事は子ども1人当たり月5千円配ると言っています。今既に居る人にお金を配って少子化対策になるのでしょうか?アフリカで起きている人口爆発、何故子どもを産むのでしょう?彼らは豊かなのでしょうか?ユニセフに「つなぐよこに」なんて言われても、寄付する気持ちになりません。日本の母子家庭だって大変なんです。日本だってかつてみんな貧しかった時代に子どもがドンドン生まれました。ということは豊かならば子どもを産むということではないわけです。結局子どもにものすごくお金がかかる社会になったから、産めないのです。一人っ子政策を止めた中国でも同じです。さあ産んでもいいよと言われたって、経済的に無理なのです。ではフランスや北欧では何故子沢山なのか?子どもは社会の宝という考え方で、国民みんなで子どもを育てようというシステムになっているのです。もちろん出産費用もかかりません。するとすぐ消費税上げようと言い出す政治家も居て、あまりじゃありませんか。

赤ちゃんはカワイイ

■ 賃上げするゾ〜
 経営者たちの賀詞交換会では「賃上げするゾ〜」のオンパレードでした。岸田首相がお願いしているからでしょうか。コロナに罹患した自工会の豊田章夫会長は、「我々はこれまでもずっと賃上げしてきたのに有難うと言われない」とリモートの挨拶で恨み節を言っていました。その通りです。日本は自動車産業が競争力が強かったので、他の業界が賃上げしなくても上げてきました。だから給料が高いのです。商社も儲かってるから高いのです。一方で家電などは衰退、サービス産業はデフレにはまっています。「サイゼリアは神」なんて言われています。かつて世界のトップを走っていた半導体産業は米国の圧力で衰退、台湾のTSMCに工場を作ってくださいとお願いする始末、一度技術者が居なくなるとどうなるかの典型です。韓国のサムソンなんて日本の技術者を呼んで世界トップにのし上がりました。中国も日本の技術者が行って中国人に技術移転して品質も向上し、世界の工場になりました。日本でいまだに強いのは部品産業、装置産業です。生産財で強いのです。消費財でもダイキンのようにいち早く海外から日本に工場を戻し、圧倒的技術力で消費者の心をつかんだ企業は世界一を名乗れるのです。
 大企業は内部留保を持っていますから、賃上げはできます。これまではデフレに隠れてやらなくて済んだ企業も、今後はやらないと社員に逃げられます。問題は中小企業とサービス産業です。しかもこれらの雇用者が圧倒的に多いのです。でも「新しい資本主義」はかつてのような豊かな中産階級のリバイバルみたいですから、非正規雇用も含めてこれまでの構造を「改革」してきたことを「再改革」することになるのでしょうか。これは力づくですから、余程の剛腕が求められます。もしこれの実現可能性が見えたら、日本の株価は上がり、円高方向に向かい、金利も上がるでしょう。

神頼み

■ 2023年迎春の酒
 今年も箱根駅伝見ながら飲んだ日本酒、5人で三升、その前にビール(モルツ)。横はお嫁さんからいただいた花。ブランドは日本酒好きなら垂涎モノのはずです。実はこれらの日本酒は手に入りにくいとは言え、定価は3千円台です。よくイオンとかその他のお店で見ると高いお酒を売っていますが、これはプレミア付きなのです。ブローカーを通すので高くなります。日本の蔵元は商売下手と言うか良心的と言うべきか、外国人なら何万円出しても買いたいというお酒でも定価3千円台なのです。あの超人気の「獺祭(ダッサイ)」だって、正規販売店では定価で売ってます。いま日本酒は海外のワイン好きの人たちからモテモテで輸出が増えてますが、生産能力が小さいので売りたくても売れません。「獺祭」のように高度に自動化された機械を精密に温湿度制御されたクリーンルームの中に設置して作り、海外にも工場を展開するメーカーは珍しいのです。同じ醸造でもキッコーマンなどはもはや世界のブランドで、和食ブームに乗って海外にも工場を展開しています。ソイソースと言うよりも今や「ショウユ」と言うほうがオシャレですね。国によっては「キッコーマン」がジャパニーズ調味料だと思っているところもあります。これまた高度に自動化された機械を精密に温湿度制御されたクリーンルームの中に設置して作っているんですよ。醸造というのは原料と水、温度、湿度、菌のコントロールが重要なのです。発酵というのは熱を伴います。杜氏というのはノウハウを持った職人で、AIが代行できれば杜氏レスオートメーションシステムになるのです。ただし必ず人手が必要な工程がありますよ。
 日本酒業界の商売下手は海外のワインの値段を見れば一目瞭然です。700mlのワインが数万円なんてのはザラで、何十万円のものもあります。だから海外のワイン好きの人たちから見たら、こんなに美味しいSAKEが、どうしてこんなに安いの?となるわけで、人気沸騰するのは当然なのです。乙類焼酎業界のほうが余程商売上手です。ウイスキーはもっとすごいですね。サントリーの「山崎」始め、日本のウイスキーが今や世界中から注文殺到で、中国などカネに糸目をつけずに買いあさります。720ml1本が数十万円も、ものによっては百万円以上になります。なにしろスコッチの本場で人気があるのですから本物です。酒は日本の成長産業なのです。

左:天美 純米吟醸生原酒 アルコール度15度 精米歩合60% 長州酒造梶i山口県下関市)
中:十四代 無濾過 角新純米生酒 アルコール度15度 精米歩合55% 高木酒造梶i山形県村山市)
右:田酒(でんしゅ) 特別純米酒 アルコール度16度 精米歩合55% 叶シ田酒造店(青森県青森市)
 日本酒好きな人なら「十四代」どうやって手に入れたの?と言うでしょうね。それはヒミツです。なにしろネットオークションなどでしか手に入れにくい酒ですから、プレミアがついて高価ですが、そもそも出て来ません。

■ 「舞いあがれ!」の衝撃展開
 NHK連続テレビ小説「舞いあがれ!」の1月6日に放送された第66話では、東大阪の株式会社「IWAKURA」の社長・岩倉浩太(高橋克典)が工場で倒れているところを娘・舞(福原遥)と妻・めぐみ(永作博美)に発見され、病院に運び込まれましたが心臓発作(心筋梗塞)によりそのまま死去するという衝撃の展開でした。時はリーマンショックに襲われた2008年、筆者も当時同じように苦しんだ経営者だったので、社長・岩倉浩太の気持ちは良く分かりました。設備は売却しても社員はリストラしたくないという気持ち、それでも経理部門から言われて泣く泣く出荷検査・梱包の3人の女工を解雇、しかし頼りにしていた優秀な職人は他社からの誘いを受けて辞表を出す、胃潰瘍にもなろうというものです。会社を去る女工の言葉「自分たちがやっていた仕事は一番大事なものや」という言葉は素晴らしかったですね。ただ梱包しているわけではなく、出荷検査で不良品を見逃さない、お客様のところに渡さないという信念、こういう品質管理の心を持った社員が居るところに株式会社「IWAKURA」の発展の基本があり、その3人が会社を去って行く時にいつまでも最敬礼で頭を上げられない社長の胸の痛み、シンドイ場面でした。岩倉家の長男・悠人(関ジャニ∞横山裕)は東大を卒業して大手電機メーカーに就職したもののヘッジファンドに転身して投資家の客から預かった金を運用して利益を上げてバックする仕事をしています。実業の父から見るとマネーゲームの息子は虚業に見えます。しかし息子は、傷が深くならないうちに機械を売れ、会社を売れと言います。パイロットを目指しながら入社延期で父の仕事を手伝っている妹には「居なくなることが分かっているのに会社を手伝っているのは無責任やぞ」と言います。兄の言うことのほうが正論ですね。しかし企業経営は正論だけで良いというものでもありません。父は泥船に乗ってみんなで沈むか、リストラしてスリムになって生き延びるかの選択・決断を迫られます。日本の一部大企業やアメリカ企業なら問答無用のリストラですね。現実に今アメリカのGAFAやイーロン・マスクなどは凄いリストラをやっています。しかし日本の中小企業はヒトが命、ヒトが財産です。筆者の企業グループには、「リストラは経営者の責任放棄である」という経営哲学がありました。機械や不動産は売っても良いが、社員は整理しない、部署を替えても雇用は守るという考えです。ただ、業績が悪くなれば賞与も減る、コストカットしてみんなで我慢、我慢、そういう時に業績の良い会社から誘われた社員が居たら、「去る者は追わず」しかありません。利益を出さない会社は存続できないので、内部留保を取り崩す、いよいよの場合は経営者の私有財産にも手を付ける必要があります。雇われている社員は、より高い報酬を求めて転職する、これは当然です。しかし中小企業の経営者(オヤジ)は、浪花節で企業を存続させなければならない、そういうものです。


■ 身近な方の死亡続々
 一昨日近くのアパートの2階に住む独り暮らしのおじいさんが倒れたらしく消防車と救急車が来ました。火事でもないのに何故?と思っていたら救急隊員が心臓マッサージして救命処置をしています。やがて救急車に運び込んでAEDでもしたか、やがてサイレンを鳴らして去って行きました。実はその前日に介護の会社の人が来てアパートの部屋のドアをノックして、おじいさんがドアを開けたら「電話しても出ないので心配になって来ました」と言い、腕を取って支えながらゆっくり二人で階段を降りてワゴン車に乗せて行きました。その日は部屋に帰って、翌日午後に体調が悪化したのでしょう。今は我が町会でも独り暮らし老人が増えています。まだ周囲にケアされて、助けられているうちは良いですが、アパートに帰ってこられるでしょうか。筆者の同期生の中にも孤独死した人が2人います。
 昨年末に身近な方が相次いで亡くなりました。高校の同級生の夫で日本に速読を広めた方…うっ血性心不全72歳、朝は家族みんなで朝食をとり、昼頃に自宅で亡くなりました。高校の同級生で日経新聞で活躍した人は大腸ガン、朝日新聞をベースにフリーライターとして活躍した人は喉頭ガンで闘病の末死去、かつて勤務した会社の2代後の社長…くも膜下出血58歳、そしたら今度は少年野球連盟の副会長が虚血性心疾患で昨年末に逝去されていたことが分かりました。53歳は若過ぎます。日本人の死因順位は@ガンが日本人の死因の4分の1強を占め、A心疾患、B老衰、C脳血管疾患、D肺炎と続きます。厚生労働省の発表している統計数値によると2021年の死亡数は143万9809人で、前年の137万2755人より6万7054人増加し、死亡率は人口千人に対し11.7で、前年の11.1より上昇しています。高齢化によって死亡数が増加するのは致し方ありませんが、昨今のコロナ禍で、直接肺炎で死亡する人が増えているかというと、上のグラフで明らかなように減っています。肺炎よりも、持病が悪化して死亡したり、コロナ罹患を恐れて外出しないことで足腰が弱って死期を早めているようです。すなわち老人はコロナを恐れて外出しないことが裏目に出ているので、withコロナと割り切るべきということです。老衰はともかくとして、壮年期の死亡はやるせないですね。
(2023年1月8日)


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