479  日銀

 ゴールデンウィークが終わり「走り梅雨」の時節、気分が鬱陶しいという人が多いのではないでしょうか。新たに社会人になった人や、こどもたちに「五月病」が現れるということもあります。そこまで行かなくとも、楽しかった長い休暇の後は、放心状態になる人が多いと思われます。筆者も沖縄旅行から帰って、なんとなく同じような気分でしたが、雨がドサッと降って一新されました。実は雨が好きなのです。雨後の植物は生き生きとして、それを眺めるのが楽しく、また水やり用の雨水を貯める作業で俄然忙しくなるからです。


ブラシの木がきれいです

■ 沖縄返還50年
 前回は2022年5月3日に羽田発、沖縄・那覇空港着後、トヨタレンタカーで北へ向かい、西海岸・読谷村のロイヤルホテル沖縄残波岬に着いて、沖縄料理花笠で夕食したところまで紹介しました。この続きは次回とします。5月15日は1972年に沖縄が日本に返還されて50年になります。筆者はこの年の3月に大学を卒業して、埼玉に出て来て、ゴールデンウィークを過ごした後、沖縄返還だったのでハッキリ覚えています。そうか、あれから50年か...NHK朝ドラの『ちむどんどん』は沖縄本土復帰50周年を記念して制作されたドラマで、アメリカ統治下の沖縄本島北部・やんばる地域を舞台に、物語が始まりました。5月16日からはいよいよ東京・横浜編に移行するようですが、大阪制作の前作『カムカムエブリバディ』に比べて東京制作の本編は視聴率が低迷しています。糸満市の出身である主人公比嘉暢子(ひが のぶこ)役の黒島結菜、姉の川口春奈、妹の上白石萌歌という主演級の女優を並べ、そのお母さん役が浦添市出身の仲間由紀恵という豪華配役なのに何故?と思いますよね。その原因は、どうもオカシイとされるこの一家の金銭感覚と、竜星 涼演じるニーニーのハチャメチャなところです。見てて腹立って見るのやめたという人がいるそうです。ただ、沖縄の若者のために弁明すれば、やはり気候温暖なので食うに困るという点では北国のような厳しさがありません。そして家族のきずなが強い、オジイ、オバアを大切にするという人間愛にあふれた人たちで、助け合い精神も旺盛です。綺麗な海がどこでもすぐ近くにある、若者が本土へ行ってもやがて戻ってくるのはこういう背景があるからです。一方で基地の多いことに圧倒されます。また先の戦争の爪痕が随所に残っています。苦しみと悲しみの記憶と共存しながらたくましく生きる明るい人たちの姿が、沖縄の魅力なのです。ハチャメチャであっても愛がある、それがオキナワなのです。

■ 景気が悪い?
 日銀の黒田総裁は、景気が良くなって2%のインフレ目標が達成されるまでは超金融緩和を続け、長期金利0.25%以下を死守するためには「連続指値オペ」を続けると表明しているため、急激な円安となって、今は130円/USドル前後でウロウロしています。この「景気」発言にはかねがね首を傾げていました。というのは世の中そんなに景気が悪いのだろうか?という疑問です。確かに子ども食堂とか、生活に苦しむ貧困世帯の増加という現実は有りますが、我が家の周辺にズラリと並ぶ食の店はいずれも繁盛していて、行列も出来ています。過去に景気が悪いと言われた時の光景ではありません。格差社会が昂進しているというなら事実ですが景気が悪くなっているとは思えません。一方で給与所得が減っていることは事実であり、特に教育に関連する費用の家計負担は大変重くなっています。日本が急激に少子化が進んで、国力がどんどん低下しているのは事実で、今や海外旅行に行くのはしんどくなりました。何故少子化が進むのか?若者が生きづらくなっているからです。そして教育が危機に瀕しているのは、過去の日本の繁栄を築いた人材の減少につながるのです。

アヤメ

■ 好調に見える企業の状況
 「景気」発言に疑問を感じたのは、大企業の業績は好調に見えるし、マンション価格が高騰して、都内では8千万円以上になった・・・買える人が居るのです。街中では以前に比べて外車がすごく増えました。「アッ、カッコイイな」と思うと欧州車です。3ナンバーのクルマが増えて、筆者のようなコンパクトカーと両極を成しています。家計貯蓄が史上最高を更新し続けているそうです。これも貯蓄出来ない人が居る一方で、ドル資産を持っている人が円安で額面が殖えているからでしょう。「景気」とは人々の気分ですから、どのような視点で見るかによってまるで違うのだと思われます。筆者が首を傾げたのは株価をいつも見ているからです。投資のためではなく、昔から企業人だった時の癖で、株価を見ていると、どんな業界が良いか悪いか分かるからです。その見方からすると、昨今の企業の状況は好調のところが多いと見えます。

クレマチス

■ 明暗分かれるものの全体では大幅増
 2022年3月期連結決算の発表が5月13日の金曜日、ピークを迎えました。旧東証1部上場企業891社(全体の61・4%)の最終(当期)利益の合計は前年同期比31・8%増となったそうです。スゴイ大幅増です。円安や資源高で輸出企業を中心に最高益を更新する企業が相次ぎました。投資先の株価急落で1兆7080億円の最終赤字を計上したソフトバンクグループを除くと81・6%増と、大幅な伸び、ソフトバンクグループがいかに足を引っ張ったかがわかりますね。地道に稼ぐ企業と、リスクオンの投資企業の差です。本業のもうけを示す営業利益の合計は47・9%増です。最終利益を業種別にみると、製造業は61・8%増、非製造業は約2・57倍(ソフトバンクグループを除く)で、資源高や円安が追い風となった業種がある一方で、新型コロナウイルス感染拡大の影響で利益が圧迫された企業も多いという、明暗分かれる決算でした。電力会社などは大幅な減益となったほか、鉄道・航空会社、旅行業界、観光業などの業績も低迷しました。ロシアのウクライナ侵攻に伴う世界的な景気減速への懸念が高まっていますので、先行きは減速するでしょう。

なでしこ

■ 日銀は政府の子会社?
 安倍晋三元首相が大分市内で開かれた会合で「日銀は政府の子会社だ」と話したことが騒ぎになっています。2012年暮れに政権を奪還して首相に返り咲いて以降、安倍氏は日銀に「物価目標2%」の導入をのませ、総裁、副総裁、審議委員などの人事で任命権者の特権をフルに使い、事実上日銀を「子会社」のように扱ってきました。安倍氏やその支持者から見たら、「何かおかしいこと言いましたか?」という感じなのでしょう。これに対して鈴木財務大臣や黒田日銀総裁は直ちに「日銀は政府の子会社ではありません」と言いました。日銀の独立性は法律で明記されているからです。一方で維新の松井代表などは安倍氏の発言に理解を示しました。実は安倍氏の関心は今や金融政策ではなく、財政政策にあるのです。自民党でも最近は「財政再建を棚上げしてでも歳出を増やすべきだ」というマクロ経済政策的な主張が強まって来ています。岸田首相はこの流れに抵抗していますが、コロナ対策で出費した膨大なお金は、ついに日本の国債1千兆円越え達成を実現させました。今年3月末の借入金と国債、政府短期証券を合わせた政府債務は1241兆3074億円でした。財政を拡大していくとき、その財源となる国債の金利が上昇しては困ります。財政拡大派から見れば、長期金利をほぼ0%に抑制している日銀の金融緩和政策はぜひとも続けてもらう必要があります。「日銀子会社論」は、政府が財政拡大の財源として国債を増発する場合、「日銀は引き続きこれを引き受けてくれよ」という政治的なメッセージなのです。中央銀行が事実上、政府の財布となる「財政ファイナンス」は固く禁じられていますが、現状はその通りで推移しています。過去の歴史に鑑みれば、太平洋戦争の戦費調達に迫られた大日本帝国政府が日銀に膨大な額の国債を直接引き受けさせて、それが戦後のハイパーインフレに繋がりました。また、1980年代のバブル形成期などは明らかに大蔵省(財務省の前身)などによる日銀への圧力で、低金利が過度に続いて街中にオカネが溢れ、不動産投資が過熱して、金融バブル崩壊に至ったのが原因とされています。それ以来日本は「失われた30年」を過ごし、国力はグングン低下し、今に至りました。1997年に成立した新日銀法で、独立性(法律の文言は「自主性」。法第3条1項「日本銀行の通貨及び金融の調節における自主性は、尊重されなければならない」)が確保された背景には、こうした政策的過ちの反省があるのです。だから「日銀は政府の子会社」論は、法律的に有り得ないことで、これが堂々と語られることは、モラルどころか違法なことを主張していることになります。過去の歴史で、ツケは常に国民が払わされてきたことは誰しもご存知でしょう。とりわけ若い世代や子どもたちに対して、今何が良くて何が悪いか、明確に伝えて行かなければなりません。

ぼたん

■ 訃報続々・・・中山俊宏さん、早乙女勝元さん、上島竜兵さん、佐々木新一さん...
 このところ訃報がやたらと多い気がします。寒くなって来る季節にはよくあることですが、今の時季に何故?と不思議です。数多い中からピックアップしました。訃報が多いひとつの要因として、やはりコロナ禍が有ることは間違いありません。みんなが自粛してマスクして、そのストレスが心を抑うつするんですね。 皆様の安らかな眠りを祈ります
 国際政治学者で慶応大教授の中山俊宏さんが2022年5月1日くも膜下出血で急逝されました 国際政治・外交が専門で テレビ番組にも数多く出演し 特に米国情報に詳しい方でした ロシアのウクライナ侵攻を巡る米国の軍事支援については「防衛主体の装備支援であり 本気で踏み込めていない」と指摘していました
 東京大空襲・戦災資料センター名誉館長であり作家の早乙女勝元さんが2022年5月10日、老衰のため死去されました 90歳でした
 「ダチョウ倶楽部」の上島竜兵さんが11日死去され その突然の訃報に 各界に衝撃が走りました 61歳の早過ぎる死でした 先の渡辺裕之さんの死去も衝撃的でしたが 予期せぬ訃報は様々な憶測や ありもしないデマが流れます 現場からの中継とか言って 自宅の前に報道陣が集まってレポートすることに「いい加減にしろ」とマスコミ批判が噴出しています 上島竜兵さんに悲しい顔は似合わない 「みんな笑って送ってやろうぜ」というビートたけしさんの言葉が印象的でした
 演歌歌手の佐々木新一さんが2022年5月12日 胃がんのため都内の自宅で死去されました 75歳 青森県出身で 1966年に「あの娘たずねて」がヒットしました

中山俊宏さん

上島竜兵さん

佐々木新一さん
(2022年5月15日)


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