470  プロパガンダ

 南房総に頼朝桜と菜の花を観に行ってきました。大河ドラマ『鎌倉殿の13人』で源頼朝が石橋山の戦いに敗れ、船で湾を横断して上総に上陸したのを見て思い立ちました。行きはアクアラインから海ほたる経由で、”The Fish”で海鮮料理を頂き、野島崎灯台を見下ろす南海荘8Fに泊まり、帰りは道の駅で花を買い込んで、鋸南町から君津へと北上、途中市原の海釣り公園に寄り、テレビで有名になった千葉ろうさい病院を見て、千葉市〜船橋市〜東京都心ど真ん中を通って春日通りから川越街道を北上して、連れ合いの友達たちへ花を届けて、延々7時間半のドライブでした。帰宅すると沈丁花の香りが辺り一面に漂って、春だなぁ〜と思いました。

■ ひまわり
 それなのに毎日テレビに映る戦争の悲惨な光景、皆さん心のケアは大丈夫ですか?先頃NHK総合テレビ朝の番組「おはよう日本」で、反戦歌として再び注目されているSMAPの「Triangle(トライアングル)」を紹介する際、桑子真帆アナウンサーが、共感の思いがあふれたのか、思わず涙をぐっとこらえてうつむき、珍しく震え声となる場面がありました。これがこの人の人気のもとですね。誰しも見たくない、伝えたくないニュースを伝えなければならないのですから...

 映画「ひまわり」(1970年)は第二次大戦でロシア戦線に出征したまま戻らない夫(マルチェロ・マストロヤンニ)を、イタリア人の妻(ソフィア・ローレン)が捜す物語です。戦後、たどりついたウクライナで妻が見つけたのは、新しい妻と子どもと暮らす夫でした。ソフィア・ローレンが一面のヒマワリ畑をさまようシーンは、ウクライナの首都、キエフの南にあるヘルソン州で撮影されたそうです。この場面では、地元の女性が「畑の下には兵隊や捕虜、無数の農民や老人、子どもの死体が埋まっているのよ」と話し、ヒマワリの美しさと戦争の残虐さとのギャップを象徴するシーンとなりました。もう二度と繰り返してはならない戦争が、どうして...これは何としても止めなければなりません。

■ 戦時下に入った日本
 ロシアとベラルーシに対する経済制裁に日本も参加し、これにロシアが激しく反発しています。欧米と日本の企業も続々とロシアから手を引き、焦ったプーチンはますますカリカリしているみたいです。プーチン大統領はロシアから撤退するなどした外国企業の資産を事実上没収できるようにする法整備を指示しました。また、北方領土に進出する企業に対し、法人税などを免除する「特区」とする法案に署名しました。さらに北方領土でミサイル演習を始めました。自衛隊は備えてはいますが、ことさら気色ばんではいないようです。というのも、ロシアはいまウクライナに手いっぱいで、戦死者も増えているようで、シリアからの外国兵を募っている状況だからです。ウクライナ軍は欧米から供与された小型兵器や、トルコからのドローンでロシア軍にそこそこ打撃を与えているようです。従って極東はロシア軍スカスカで、ミサイルはこけおどしです。ただし艦隊は十分配備しています。日本も戦時下に入ったと言えるでしょう。そこそこ緊張していざという場合に備えなくてはなりません。東日本大震災から11年経ちましたが、今度は自然災害ではなく、人的災害への備えです。「有事のドル」ということで円安が進んでいます。株安、債券安のトリプル安に加えて物価上昇、これはヤバイことになってきました。

本来ロシアが言うクリル諸島は日本の領土

■ ウクライナ危機で連帯する米欧日
 ウクライナ危機を受け、各国は国防戦略やエネルギー政策の大きな見直しを迫られています。EU各国は大幅な軍事予算増加を決め、2027年までにロシアへのエネルギー依存を止めるように対策すると決めました。ドイツ国民が本気で怒り始めました。軍事産業が最も盛んなのは米国です。実はアメリカが最もビジネスチャンスでしょう。アメリカのトランプ前大統領は、2024年大統領選を狙っていると言われてきましたが、プーチン露大統領と緊密な関係を築いたと豪語してきた経緯があり、対露姿勢が外交上の大きな弱点になる可能性があります。これは日本の安倍元総理も同様で、プーチンと親密にして北方領土に弱腰だったことが改めて批判されています。米国で、ウクライナ危機や北大西洋条約機構(NATO)への支持、ロシアへの制裁で前向きな姿勢を示しているのは民主党の支持者の方で、共和党の支持者には「外国のトラブルには関わらなくていい」という「内向き思考」が強い傾向が出ています。バイデン大統領はNATOが軍事作戦に踏み切れば第三次世界大戦になり、核が使われる恐れもあるため及び腰です。ウクライナ情勢がさらに緊迫化して、これはもう見ていられないと共和党支持者が腰を上げたら、トランプ再起はもう終わりですね。

海ほたるからスカイツリー方向を望む

■ ロシア外交官の苦衷
 トルコが仲介したロシアとウクライナの外相会談は、進展がないなか、予想通り物別れに終わりました。ラブロフ外相の口からは、信じられない主張が飛び出しました。ラブロフ外相は「我々は、ウクライナを攻撃していない。ロシアの安全が脅威にさらされているのだ。これは、ウクライナという実験室で行われている、アメリカ国防総省の実験だ。ロシアが戦争を望んだことは、一度もない。ウクライナ市民は、“人間の盾”にされている。“人間の盾”として、人質になっている民間人を解放したい」と話しました。そして、プーチン大統領が何度も口にしている“脅し文句”・・・「核戦争が始まるとは、信じたくない」は、ラブロフ外相の口からも出ました。ロシアのミハイル・ユリエビッチ・ガルージン駐日大使が以前BSの番組に出て話していたことも信じられませんでした。ラブロフ外相はともかくとして、駐日大使は本来親日的な人です。しかし外交官は職業として嘘だと分かっていてもそれをウソとは言いません。戦争という局面になるともはや外交官は無力です。力による侵攻ではなく、外交による解決がはかられなければ、外交官の苦衷は深まるばかりです。

海ほたるから風の塔(川崎浮島沖合いの換気施設)を望む

■ プロパガンダ
 ロシアのウクライナ軍事侵攻で、両国のプロパガンダ合戦が先鋭化しています。プロパガンダ(propaganda)と言う言葉は一般的ではありませんね。これは、意図をもって、特定の主義や思想に誘導する宣伝戦略を指すそうです。大きな括りでは国家においての思想統制や政治活動、小さな括りでは宣伝広告や広報活動もプロパガンダに含まれます。語源はラテン語で、「繁殖する」「種をまく」「挿し木」「接ぎ木」などの意味があるそうです。ロシアが国営メディアやテレビを重視する旧来型の宣伝工作を行っているのに対し、ウクライナはインターネット交流サイト(SNS)を使って情報を拡散しています。虚実入り交じった情報で憎悪をかき立てる双方の手法はいかがなものでしょうか。とは言え、これは戦争ですから、良いの悪いのとは言ってられないのでしょう。プーチン大統領はウクライナのゼレンスキー政権をナチス・ドイツの流れをくむ「ネオナチ」と決め付け、ウクライナの「非ナチ化」を侵攻の目的に掲げています。ウクライナ東部では「ジェノサイド」が行われており、その住民を助けるのだという名目もありました。ウクライナの悪を印象付けるために、「ウクライナは密かに核開発している」とか、「ウクライナは核物質のゴミをまき散らそうとしている」などとロシア国民を煽り、果ては「ウクライナの研究施設で生物兵器が開発されていたことが確認された」(国防省)といった主張も繰り返されています。実はロシアの過去に照らせば、こういうことを言うときは、ロシア自身がそれをやろうとしているようです。

海ほたるから神奈川方面を望む

■ 国際女性デー
 3月8日は国連が定めた「国際女性デー」です。女性の権利と政治的、経済的分野への参加を盛り立てていくために、1975年に制定されました。前回紹介しましたが、世界銀行が発表した世界190ヶ国・地域の経済的な権利を巡る最新の男女格差調査では、日本は2020年は74位タイ、昨年は80位タイでしたが今回は78.8点で103位タイに急降下しました。ベルギーやカナダ、デンマークなど12ヶ国がすべての項目で100点満点で1位、アジアでは香港が91.9点、33位タイでトップ、台湾が91.3点で米国と同じ35位タイで、韓国は85.0点で61位タイでした。
 どうして日本の女性の地位はこうまで低いのか?それは女性を男と同じように扱わないからです。例えば中国に行って見て下さい。企業や公共機関の幹部には女性がたくさんいます。日本ならば男しか就かないような職業にも女性がいます。ただどうしても男には筋力で劣るので、力仕事は男に命じてやらせます。日本では初めからそれは女では無理と言ってやらせません。その代わりお茶の接待などというと女性が出てきます。女性のほうが「優しい」というイメージがあるからでしょう。ただし警察や自衛隊はちょっと違いますね。例えば桜田門の警視庁に行って見て下さい。女性警察官も居ますが、ヤクザも真っ青みたいな筋骨隆々の男性警察官がお茶とお菓子を持って「ドウゾ」と差し出してくれます。ここでは男と女に明確な差別をしていないのです。中国でも女性がバリバリ働いてはいますが、子どもを産めるのは女だけなので、どうしても家庭では女の仕事のほうが多くなります。その代わり夫は家事を分担します。ここが日本との大きな違いです。日本は家事の女性分担比率が多く、そのために女性は企業の幹部でバリバリ働く人は少なく非正規の割合が高いのです。場合によってはバリバリ働きたいから独身で良いとか、子どもを作らないという人も居ます。日本が中国からドンドン引き離されるのは、男女差無く働くトータルバイタリティの差です。日本は女性に本来持つ力を十分発揮させない環境を自ら作っているのです。日本の女性は良く働きますよ。しかし家事分担が多い、男に「ボーっとしてないでもっと働け」と言って家事を分担させるべきなのです。

千葉県内房の鋸南町・保田川沿いの頼朝桜と菜の花

■ 韓国大統領選挙
 相手のスキャンダルをめぐる罵倒合戦、政策論争そっちのけのパフォーマンス、「過去最悪」の選挙戦などと散々揶揄された韓国大統領選挙が、ようやく決着しました。なんか、見ていると恥ずかしくなりましたね。結果は事前予想通り、僅差で最大野党「国民の力」の尹錫悦(ユン・ソクヨル)候補が勝利しました。保守系野党の尹錫悦候補の得票率は48.56%、進歩系与党の李在明(イ・ジェミョン)候補は47.83%、わずか0.73%、24万7千票です。無効票が30万7千票ですから、いかに僅差か分かります。こうなると勝ったからと言って大胆な政策転換は難しいかもしれません。対日政策はやや軟化するでしょう。ただ米中に対する政策は難しいでしょう。今日本はロシアのウクライナ侵攻によって円安、株安、債券安の三重苦の上に物価高の四重苦ですが、韓国は日本以上に急激なウォン安にあえいでいます。もしかすると三度目の通貨危機になるかもしれません。新大統領、大変です。

野島埼灯台前の「かっとびくん」 向こうに見えるはホテル南海荘

■ 韓国の新型コロナウイルス感染者急増
 韓国の新型コロナウイルス感染者急増は凄まじいですね。3月12日午前0時現在の国内の新型コロナウイルス新規感染者数は383,665人、累計6,206,277人になり、過去最多を更新しました。13日の感染者数は350,190人、累計6,556,453人になりました。重篤・重症患者は1,074人。日本の新規感染者数は55,328人、前週同曜日比 -8,341人、累計5,730,325人です。重症者数は1,204人です。韓国の人口は日本の4割ですから、いかにすごいかわかりますね。日本に当てはめれば1日100万人の新規感染者が出ていることになります。

房総半島最南端・野島埼灯台

■ 藤井聡太五冠がA級へ
 将棋の藤井聡太竜王(19)=王位・叡王・王将・棋聖と合わせ五冠=が3月9日、第80期将棋名人戦・B級1組順位戦(朝日新聞社、毎日新聞社主催)の最終13回戦で佐々木勇気七段(27)に勝ち、成績を10勝2敗として初のA級昇級を決めました。これで名人戦への挑戦のステップに立ちました。2017年、藤井聡太棋士のデビュー戦からの連勝を29で止めて名を上げた佐々木勇気棋士は得意の戦型である「角換わり」に誘導し、事前に研究していた仕掛けに持ち込みました。藤井五冠は1時間34分の長考を強いられ、苦戦を意識したまま中盤戦に突入、夕方になって藤井五冠が反撃を見せるも、佐々木七段はひるまずグイグイ攻め続けます。終盤に入った段階でも、持ち時間を1時間ほど多く残している佐々木七段がペースをつかんでいて、テンポよく指し進める佐々木七段に、一時は2時間半以上の時間差をつけられた局面もありました。ところが粘りが真骨頂の藤井五冠がじりじりと差を詰め、夜戦に入るころには形勢は再び互角になりました。長時間の順位戦らしく、夜遅くなってから互いの棋力をぶつける力戦となりました。形勢が藤井五冠に振れたのは、佐々木七段の攻めをうまく捌いて、流れの中で逃げ回りながら、打った手に佐々木七段が長考するようになった頃からです。長考の後は藤井五冠にAIは優位点を与えます。これが二度ほど有って、持ち時間が同じぐらいになった後はもう藤井五冠に流れが傾きました。佐々木七段にとってみれば、攻め続けていたはずなのに、いつの間に?と納得いかなかったのではないでしょうか。これが藤井将棋ですね。

南房総の菜の花畑は春爛漫

■ 高梨沙羅、見事な復活
 涙の北京冬季五輪から約1ヶ月、スキージャンプの高梨沙羅は見事に復活を遂げ、自身が持つワールドカップの男女通じて歴代最多優勝記録を63勝まで更新しました。一時は引退するのではないかと心配されていただけに、欧州メディアも一様にサラ・タカナシの復活を喜びました。

4年前の高梨沙羅

■ 国内鶏卵大手、イセ食品が会社更生法を申し立てられる
 2018年1月期の年売上高約470億6000万円の国内鶏卵最大手・イセ食品(株)は、1971年(昭和46年)6月に設立、グループで養鶏場を運営し、育種から飼育、採卵、加工、配送まで鶏卵関連事業を行い、グループ全体の飼育羽数はおよそ1300万羽(国内飼育羽数の約10%)で、自社ブランド卵「森のたまご」、「伊勢の卵」などで知られます。グループ会社と共に負債は約453億円(うち金融債務は約260億円)、新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けて卵価が下落、資金繰りが悪化し、ここにきて、国際情勢などを背景に飼料価格が高騰するなど資金繰りが一段と悪化、一部の株主及び金融債権者から会社更生法の申し立てを受けました。新たなスポンサーを探して事業は継続されるようです。確かにインフレなのに卵は他の食品に比べて安過ぎます。


■ 十津川警部俳優bPは誰?
 鉄道ミステリーの第一人者で、「十津川警部」シリーズなどで知られた作家の西村京太郎さんが3月3日肝臓がんのため91歳で死去されたことを前回訃報掲載しましたが、最も愛された「十津川警部シリーズ」は、すべての在京民放キー局がドラマ化し、計16人の俳優が十津川警部を演じたそうです。先日もテレビをつけたら、高橋英樹、愛川欽也、森本レオ、山村紅葉、篠田三郎さんなどが出ていて、あ〜懐かしいと思いました。
 十津川警部は頭脳明晰である一方、勇ましいのですが情に厚いのが人気のもとでした。ベスト・オブ・十津川警部は誰でしょう?渡瀬恒彦さんですね。TBS系で54本に出演、最終作は「サンライズ出雲の女」(2015年4月)でした。勇敢で、ヤクザも外国人マフィアも恐れない上、上司にも平気で逆らうのは、なかなかそれができない企業人には痛快だったのです。悪党以外にはやさしく、ほとんどの人間に敬語を使いました。渡瀬恒彦さんは死してなおテレビ画面から消えません。名優ですね。カメさん役は伊東四朗さん(84)で、事件解決後は2人で屋台のラーメンを食うのが定番でした。作者の西村さんも渡瀬さんの十津川警部がお気に入りだったようですよ。

西村京太郎さん

渡瀬恒彦さん
(2022年3月13日)


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