448  研究

 朝顔の葉が黄色くなってきました。朝晩の気温が下がってきたためと思われ、桜の葉もどんどん黄色くなってきました。いよいよ紅葉の季節だと感じます。しかしながら2021年10月10日(日)、11日(月)と連続して昼は暑くなりました。この10月は真夏日が多かったのですが、恐らく10月11日(月)が最後の真夏日でしょう。これからの天気予報は雨マークが並んでいます。次の土日は緊急事態宣言が解除されて、少年野球の大会がやっと再開されるので、雨が降らないことを願います。今後の天気予報によれば、天高く馬肥ゆる秋は短く、10月17日(日)からぐっと寒くなって、11月は低温で短い秋、早い冬の訪れになりそうです。

■ 首都圏では東日本大震災以来の震度5強の地震
 2021年10月7日(木)22時41分に千葉県北西部を震源として発生した地震は、埼玉県川口市、宮代町や東京都足立区などで最大震度5強を記録するなど、埼玉県、東京都、千葉県を中心に強い揺れをもたらしました。グラグラッと来て、その後スマホが唸りました。都営の日暮里・舎人ライナーが車両の一部が脱線した他、市原市では水管橋が外れ、一部で停電も発生しました。電車がストップして帰宅難民が発生しました。我が家は震度3でしたが、さいたま市では思わず食器棚を押えるような揺れだったとのこと。テレビ放送は地震一色となり、岸田総理大臣がすぐに首相官邸に駆けつけてぶら下がり記者会見に応じました。

■ 大丈夫か?首都直下地震への備え
 今回の騒ぎで、改めて30年以内に必ず起きると言われる首都直下地震が起きたら大変なことになるだろうというのが認識出来ました。最近全国各地でまたもや地震が頻発しています。四つのプレートが沈み込む交点の真上にあるのが日本列島ですから、地震はいわば当たり前、起きるものと思って備えるしかありません。


日本百名山の岩手山を北側;八幡平市から見ると、軽井沢の鬼押し出しのように溶岩流が荒々しく拡がります

■ 地震翌日盛岡へ、大宮までが一苦労
 大学の経営協議会出席のため10月8日(金)は盛岡へ行くことになっていました。東北新幹線はやぶさ13号をeチケットで予約していましたが、朝早く起きて運行情報を検索したら私鉄は平常通り、ところが武蔵野線運休、埼京線と川越線は大幅遅れで一部運休、他の路線も千葉県や東海道線中心に大幅乱れとなっています。首都圏の電車は都心に向かって放射状になっていますが、横断する路線はJRです。そのJRがことごとくトラブっているので、大宮まで車で行こうかと思いましたが、とりあえず最寄りの南古谷駅まで車で行ったら、駅は人だかりで電車が停まっています。動いているようなので、スマホで手数料払ってeチケットをキャンセルしてとりあえず乗車券のみ購入、ところが電車がなかなか来ません。結局本来なら15分で大宮に着くはずなのに1時間かかりました。しかもギューギュー詰めの満員電車、ここで後悔しました。本来よりずっと早く家を出たので、大宮駅に着いてみたら、本来eチケットで予約していた電車に乗れたのですが、乗車券を買ってしまったのでeチケットは取れず、指定席券の新幹線窓口は自動券売機含めて長蛇の列、それでも何とか本来乗るべき電車に乗れました。窓口は長蛇の列なのに、電車内はガラガラでした。eチケットもこういう場合問題ですね。

2021年10月1日惜しまれて引退したJR二階建て車両E4系Max 東北新幹線で導入され、最後は上越新幹線でした

■ 研究費が細る国立大学法人
 大学の経営協議会で示されたデータを見て最も危機感を抱いたのは、研究費が年々細ってきていることでした。平成16(2004)年の国立大学法人化以降、6年ごとに中期経営計画を策定しながら、今年度が第三期の最終年度です。この間何が起きたかというと、前々回指摘した通り授業料と入学金はこれ以上上げられないところまで高騰して高止まりです。一方国民は賃金が上がらず、家庭の平均所得も下がっているので、大学へ行けない人や中途退学する学生が目立ってきています。聞いて驚くなかれ、学生の4割が授業料の減免を受けているのです。文科省からは授業料の減免枠の交付金が出ます。つまり文科省も学生さんが苦しくて払えないだろうということが分かっているのです。そのうえで大学の運営費交付金は毎年1%ずつ減らし、足りない分は「自分で稼げ」という方針です。更に各大学の競争を煽り、改革の進んだ大学にはより多くのお金を与えるというムチとアメ、パン食い競争のようなことをさせています。大学は共同研究で企業からお金をもらったり、自治体と組んでお金を頂くという産学官連携に走ったり、卒業生への寄付を募るということで収入を確保しようとしますが、企業も右肩上がりの時代が終わり、毎年補助金が減らされる以上、まずは建物や設備への投資を減らし、それでもダメなら給料は人事院勧告に従って上げ下げしなければいけないので、教職員の数を計画的に減らさざるを得ないのが実態です。老朽化した建物が目立ってきて、設備も古い、DXが進まないのが実状です。大学には教育と研究という2要素が求められますが、教育にかけるお金は減らせないので仕方なく研究費が減らされます。企業と共同研究してお金を頂けるためには「すぐに役に立つ研究テーマ」でなければなりません。勢い基礎研究のようなものは減らざるを得ません。こうしていま日本の大学の論文数は海外と比べて相対的に減り、世界各国のなかでその評価がドンドン落ちて来ています。こうした事態を招いたのは財務省が文科省への予算付けを締め付けたからです。一方で国家予算は拡大し、財政赤字が問題化していますから、財務省は当然のことをしているとの認識です。元々文部科学省というのは、教育をつかさどる文部省と、科学技術研究をつかさどる科学技術庁を一体化させたものです。これまで日本の基礎研究の大半は国立大学から生み出されてきました。大学の先生は学生への教育もしながら自分の研究テーマで成果を出すことが求められます。お金が減らされたらどうなるか?自明の理です。

国立大学法人岩手大学正門 宮沢賢治を生んだ学び舎は左に見える農学部です

■ 教育は国の礎、先人に学ぶ
 そこで第四期中期計画スタートの2022年を前に経営協議会としては、これまでの国の姿勢を転換せよとの声明を出すこととしました。「国立大学法人の機能強化に向けた国による支援の充実を求める声明」です。日本という国家がこのままの政策を続けていたら、お金が無くて大学教育を受けられない人が増え、大学での研究も衰退して、結果的に日本の企業力も落ちる、国民も貧しくなるという悪循環から脱却できないという危機感からです。教育は国の基本であり、研究は産業繁栄の礎で、ヒトを作り、モノを作って繁栄してきた過去の日本にもう一度戻ろうということです。渋沢栄一の精神は「倫理と利益の両立」で、よりよい社会や国家を作るためには家中や社内の人にも思いやりをもって接し、その能力を発揮できるようにすることが第一だというものでした。道徳と企業利益は通ずるものだというその精神がいま見直されているのは、実態がそうなっていないからに他なりません。資本主義の見直しはいま世界的潮流です。現実が逆ですから、過去に戻ることは容易ではありません。渋沢栄一の精神を創り出したのは若い頃学んだ論語でした。しかも渋沢栄一は日本の社会福祉の先駆けでもありました。やがて渋沢栄一は一万円札の顔になりますが、現在は福沢諭吉です。言うまでもなく慶應義塾の創始者ですね。その3歳下の大隈重信は早稲田大学を創りました。教育が国造りの礎なのです。日大の問題は論外ですね。いまNHK大河ドラマ「青天を衝け」で渋沢栄一と丁々発止の舌戦を繰り広げた大隈重信、「であ〜る!」が最高でした。大隈重信を演じた大倉孝二の顔を見るたび、「あっ、今は亡き伯父さんだ」と思います。顔がよく似ているのです。宮沢賢治は「世界がぜんたい幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ない」と言いました。賢治は更に大きな世界を見ていたんですね。争いがあるうちは幸せは来ないのです。先人に学ぶことは大切です。

今は福沢諭吉ですが...

■ 財務次官の「バラマキ批判」論文で喧々諤々
 財務省の矢野康治事務次官が月刊誌「文芸春秋」に「財務次官、モノ申す」「このままでは国家財政は破綻する」というタイトルで、総裁選や衆院選などに絡む政策論争を「ばらまき合戦のようだ」と批判して「財政再建は喫緊の課題だ」と訴えたことが問題化しています。矢野康治氏は「省内屈指の財政規律論者」として知られ、戦後初めて一橋大出身の事務次官です。麻生太郎前財務大臣に了解を得て寄稿したようで、鈴木俊一財務相は10月8日の記者会見で、「個人的な思いをつづったと書いてある。中身はこれまでの政府の方針に逸脱しておらず、問題だと思わない」と表明しました。内容は日本財政について「先進国でずばぬけて大きな借金を抱えている」と指摘。財政再建が後回しになっている状況を「タイタニック号が氷山に向かって突進しているようなもの」と例え、財政破綻への危機感を表明したのです。自民党の高市早苗政調会長は10月10日のNHK番組で「大変失礼な言い方だと思います。基礎的な財政収支にこだわって、今本当に困っている方々を助けない、未来を担う子供たちに投資しない、こんなバカげた話はないと思います」「(日本の国債は)自国通貨建てだからデフォルト(債務不履行)は起こらない」「名目成長率が名目金利を上回ったら財政は改善していく。何としても、事業主体を維持していく。分配するなかで消費マインドを高めていく。総合的に考えてほしい」と述べました。岸田首相も同日のフジテレビ番組で、「いろんな議論はあっていいが、いったん方向が決まったら関係者はしっかりと協力してもらわなければならない」と指摘しました。一方でネット上では「衆院選直前のタイミングで、本来、首相や大臣の命令で動く公務員が、自身の政治的主張をした。いわば『財務省のクーデター』だ。内容がどうあれ、法治国家では許されない。岸田首相は矢野氏を更迭すべきだ。これができれば、岸田首相のどこか弱々しいイメージは一新され、国民の期待は一気に高まるだろう」という論も出ています。
 お役人が自身の信念を吐露するのは有って良い話で、鈴木俊一財務相の対応が正解です。こんなことで更迭していたら、お役人が居なくなってしまいます。さはありながら、今は緊急事態なので我慢してくれ、と政治が言えば良いだけの話です。ところで岸田首相ですが、我が同齢のいとこと顔がよく似ています。他人とは思えません。

岸田文雄首相

鈴木俊一財務相

麻生太郎前財務相

■ ガッカリ
 前回「新しい資本主義」を標榜する岸田首相の政策に期待と書きました。ところが就任早々の国会質疑を見ていたら、ガッカリ...答弁は事務方原稿の棒読み、総裁選で公約していた政策については「当面は実施しない」との答弁、エッ、何故?ビックリしました。どこからか、何か、言われてるのでしょうか?お蔭で安心した株式市場は再び騰勢となりました。マスコミで言われる3Aの影は確かにありそうです。結局短命政権か、となりそうな気がします。

■ 青天を衝け
 一橋大学と言えば経済評論で有名な野口悠紀雄さんが名誉教授です。早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター顧問ですね。東洋経済オンラインに「日本人は国際的に低い給料の本質をわかってない−−−アベノミクスにより世界5位から30位に転落した」という論を寄稿しています→クリック。この中でビックマックの価格と賃金の連動性を採り上げています。これは分かり易い例で、購買力平価(PPP)で国際比較するのと同じ論です。ところが日本の中では野口悠紀雄さんのような主張は主流ではありません。日本がドンドン世界から取り残されてズルズル後退していることを認めたくないのでしょう。しかし現実にコロナ前には海外からドンドン観光客が来ました。日本の物価が安いからです。日本のマクドナルドでハンバーガー食べて「安いなぁ」と思ったはずです。逆にアメリカに渡って就職した日本人は、給料がドーンと上がったのに生活はその割に豊かにならないと感じたはずです。物価が高いからです。日中など外国から借金して、それを基に豊かな生活を送る米国ではインフレが進んで、賃金が上がるとともに物価も上がりました。一方日本は長期のデフレ下、賃金も物価も上がりません。諸外国がインフレなので輸入品は値上がりしますから日本の物価もその分は上がります。生活を維持するには安いものを追い求めるのでデフレが続くという悪循環です。給料が高くて物価も高いニッポンという幻想を抱いている人は過去の遺物です。野口悠紀雄さんが日本人の賃金を上げて企業も豊かになる唯一の方法は、教育・研究に投資することだ、と言っています。明治維新の頃のことを思えばその通りですね。まさに青天を衝く必要があるのです。

野口悠紀雄さん

■ ノーベル物理学賞の真鍋叔郎さんがおっしゃるには
 ノーベル物理学賞受賞発表直後の記者会見で真鍋叔郎さんのおっしゃったことはスゴイと思いました。近年の受賞者は皆さん日本の研究の将来に懸念を表明されますが、真鍋さんはそれだけでなく、現状と未来にユーモアを交えて話をされて、そのセンスの素晴らしさに感銘を受けました。たくさんのQ&Aの中から一部ピックアップします。
Q1:政治と気候変動や気候変動否定論との接点からお話しいただけませんか・・・A1:非常にいい質問です。気候変動を理解することは簡単ではないですが、今の政治の世界や社会で起きていることを理解すること以上に難しいことは何もありません(中略)気候変動は今や環境だけでなく、エネルギー、農業、水など想像しうるありとあらゆるものと関係しています(中略)私たちはとても困難な問題に直面していて、率直に言えば、私たちが取るべき最善の行動は何か、ということです。
Q2:あなたは授賞に対して「サプライズだ」とおっしゃいましたが、この研究を数十年にわたって続けてこられました。なぜ授賞が今だったのでしょうか・・・A2:際だった貢献をしている過去の受賞者たちと自分の研究を比較するとビッグサプライズなわけです。気候変動や、新型コロナウイルスのワクチンといった世界的な危機を考えたとき、それらはどれも人類にとって主たる危機であります。私の貢献は、少なくとも何が問題なのかをよりよく理解するのに役立つと言うことですね。でも、それでいいと思います。
Q3:日本では「頭脳流出問題」が大きな問題になっています。アメリカ政府から大きな支援があったとおっしゃっていましたが、日本の大学や研究機関の研究環境の改善策についてご意見をお聞かせ下さい・・・A3:それは深い質問ですね。私は教育には詳しくありませんが、最近の日本における研究は、以前にくらべて好奇心に駆られた研究が少なくなってきているように思いました。最も興味深い研究とは、社会にとって重要だからといって行う研究ではなく、好奇心に突き動かされて行う研究だと思います。日本では、科学者が意思決定者に助言する方法、科学者と政策決定者の間のチャンネルというものについては、双方がコミュニケーションを取っていないと思います。アメリカは逆で、非常にうまく行っています。
Q4:アメリカ国籍を取得し、日本を離れた理由は何ですか・・・A4:面白い質問です。日本では人々はいつも他人を邪魔しないようお互いに気遣っています。ほかの人のことを考え、邪魔になることをしないようにします。日本で「はい」「いいえ」と答える形の質問があるとき、「はい」は必ずしも「はい」を意味しません。「いいえ」の可能性もあります。彼らは他人の気持ちを傷つけたくないからです。だから他人を邪魔するようなことをしたくないのです。アメリカでは自分のしたいようにできます。他人がどう感じるかも気にする必要がありません。アメリカでは自分の研究のために好きなことをすることができます。自分の使いたいコンピュータを上司が手配してくれて、やりたいことを何でもできました。それが日本に帰りたくない一つの理由です。なぜなら、私は他の人と調和的に生活することができないからです。

ーベル物理学賞受賞発表直後の記者会見での真鍋叔郎さん(時事通信社)

■ 台湾をめぐる中国の動き
 2021年10月7日、中国の習近平国家主席が北京で開かれた辛亥革命110年記念大会で演説しました。孫文の写真を大きく掲げ、台湾に関し「祖国の完全統一という歴史的任務を必ず実現しなければならないし、必ず実現できる」と述べ、統一攻勢の強化を強調しました。これに対し台湾の蔡英文総統は10月10日、台北の総統府前で行われた建国記念日に当たる「双十節」の式典で演説し、中国による軍事的脅威の増大を踏まえ、自己防衛能力を強化し、自由と民主主義を守る決意を改めて表明しました。習近平がこのところ立て続けに国内での締め付けを強めている背景には、ロシアのプーチン大統領と同様に、自身の権力をゆるぎないものにする狙いからです。台湾周辺にガンガン飛行機を飛ばして威嚇しています。対する台湾には親中派が相当な割合で存在しており、それは自分たちのルーツが中国にあるからだという考えからでしょう。しかし国民党を結党した孫文は基本的に反共主義でした。抗日では共に戦った中共と蒋介石国民党ですが、第二次大戦後の国共内戦に敗れた蒋介石国民党が台湾に逃れ現在に至っています。香港の一国二制度が崩壊し、香港の人たちの政治的自由が奪われていく様を目の当たりにした台湾では今のところ反中共が優勢ですが、台湾には米軍基地がありません。台湾で有事になるとすぐさま沖縄米軍出動となりますから、日本もオットリとはしておられません。

習近平国家主席

■ 藤井聡太竜王挑戦第一局勝利
 将棋の竜王戦七番勝負の第1局が10月8、9日東京都渋谷区・セルリアンタワー能楽堂で行われました。振り駒の結果挑戦者の藤井聡太三冠(王位、叡王、棋聖、19)が先手番となり、3連覇を目指す豊島将之竜王(31)に123手で勝利しました。これで両者の対戦成績は9勝9敗のタイとなり、藤井聡太挑戦者の今年度成績は32勝6敗(勝率0.842)となり、先手番だけに限ればなんと18勝1敗(勝率0.947)です。序盤から付け入る隙を与えないまま押し切る藤井将棋を後手でも破ることが出来るとすれば豊島竜王を置いて他に居ないと言われます。実際今期先手番敗戦のただ1局の相手は豊島竜王でした。戦型は相掛かりで始まりました。中盤まではほぼ互角、終盤に差し掛かったところで豊島竜王がリード、将棋AIは豊島60%、藤井40%の勝率を表示します。ただ解説の棋士は、「やや豊島指し良いと見えますがこれはまだ互角、一手まちがえればとんでもないことになりますよ」とおっしゃいます。70手目、豊島竜王は金取りに桂を打ちます。相手より80分も持ち時間を残していた藤井挑戦者はここで長考、1時間19分も考えた末に金を逃げました。あれ?な〜んだと解説の棋士たちも拍子抜け、それしかないのに何故あんなに考えたんだろう?解説のしようがないので一生懸命話のタネを引っ張り出して時間つなぎしたのに...という感じアリアリでした。ここからポンポンと早指し将棋のように手が進みます。そして豊島竜王は藤井陣に飛車を打ち込み、王手をかけました。藤井挑戦者が玉を右辺に逃げたのに対して、豊島竜王は打ったばかりの飛車を切り、角と刺し違えます。途端に、コンピュータ将棋ソフトが示す勝率予想値は逆転、形勢は藤井良しになったと表示されました。藤井挑戦者が考えていたのは次の一手ではなく、豊島竜王がこう来たらああしよう、という想定されるものすごく多いパターンだったのでしょう。一手たりとも間違えないゾという藤井将棋の凄さです。終盤力で相手棋士を圧倒する藤井聡太三冠の強さはこういうところにあるようです。藤井三冠が辛抱を重ねて相手に追いすがり、相手のミスを咎めてそこから一気に攻め込んで逆転した一局に、解説を務めた棋士からは「これは名局賞候補」など絶賛の声が上がりました。

■ 日本郵便の経費で買ったカレンダーを政治活動に利用
 日本郵便の複数の郵便局長が昨年、一般の利用者に配るため経費で買ったカレンダーを、「全国郵便局長会」の政治活動に流用していた疑いがあると報道されています。参院選に向け、自民党参院議員の後援会の会員らに配っていたとのこと。経費を不正に政治活動に使った疑いがあり、政治資金規正法が禁じる「企業献金」に当たる可能性があるのだそうです。日本郵便は調査を始めるとともに、来年のカレンダーについては支出の見直しを検討するそうです。複数の局長によると、昨年はカレンダーを1局あたり100部前後買ったケースが多いそうで、日本郵便の内部資料では1部あたり税抜き160円なので、約2万局が100部ずつ買うと、費用は年3億円を超えることとなります。複数の局長が地域の局長会の幹部から、「カレンダーは支援者らに配るように」と昨秋に口頭などで指示されたそうで、局長が配って回るなどし、「支援者拡大を目指す」のが目的だったようです。

岩手県雫石町のヤマボウシの赤い実

6月に咲いたヤマボウシの白い花

■ 柳家小三治さん死去
 人間国宝の落語家・柳家小三治さんが2021年10月7日心不全のため都内の自宅で亡くなられました 81歳でした お元気でしたが普段通り夕食と入浴を済ませた後に倒れたものと推定されます 小三治さんは都立青山高校在学中から頭角を現し 教員だった父親がせめて大学を卒業してからと 柳家小さん師匠のもとに説得してもらおうと連れて行ったそうです 小さん師匠は父親の気持ちを慮って「大学を卒業してからにしな」と言ってくれたそうですが 父親の反対を押し切って高校卒業後の1959年柳家小さん師匠のもとに入門 17人抜きで真打ちに昇進し 師匠も名乗った「小三治」を襲名しました 春風亭柳朝さん 古今亭志ん朝さん 立川談志さん 5代目・三遊亭円楽さんの「四天王」より少し下の世代ですが 正統派の滑稽噺で 落語通だけでなく 初心者からも人気を集めました 「どんな賞をいただくよりも 初めて落語を聞いた人が面しれえって言ってくれるのが一番うれしい そんな落語を語りたい」と言って テレビでのタレント活動はせず 独演会や寄席を中心に活動を続け 最もチケットのとりにくい落語家のひとりとして高い人気を誇ってきました とぼけた味わいと登場人物を巧みに演じ分ける卓越した人物描写で知られ ダジャレやウケ狙いは一切せず フツウの噺なのになんだか面白いというのが特徴でした 本編に入る前の「まくら」はとぼけた味わいで評判となり 「まくらの小三治」と言われ それをまとめた著書が出版されるまでになりました 2010年から落語協会の会長を2期4年務め 年功序列となっていた真打ち昇進の基準を変更して落語界の発展に一石を投じました 師匠の柳家小さん 上方の桂米朝に続く落語界三人目の人間国宝に選ばれたのはその人気から当然でした 文字通り生涯現役として高座に上がり続け 最後まで名人芸を貫いたアッパレな人生でした
(2021年10月12日)


次回へ    前回へ    最新ページへ    つぶやき最終回