391  日本の凋落

 車の故障はセルモーター交換で直りました。しかしEPSエラーランプやアイドリングストップエラーランプが点灯したりするので、何らかの異常がまだあるようです。5日間の車無し生活はやはり不便でしたが、自転車があるから、マッいいかと思ったわけです。9月になり、さすがに朝の気温は下がりましたが日中の暑さはまだまだ...それに台風シーズンとなり、心配です。

■ 菅首相誕生となりそう
 次期首相は菅義偉官房長官で決まりみたいですね。驚いたのは安倍首相辞任のニュース後、内閣支持率が20%以上跳ね上がったことです。普通なら考えられません。しかも、朝日新聞社が9月2、3日に実施した世論調査(電話)で、第2次安倍政権の7年8ヶ月の実績評価を聞くと、「大いに」17%、「ある程度」54%を合わせて、71%が「評価する」と答えたのです。「評価しない」は、「あまり」19%、「全く」9%を合わせて28%でした。これは安倍晋三という人の尋常ならぬ政治能力、すなわち国民が何を考え、何をすれば受けるかを慮る能力の高さを改めて認識させる出来事でした。別に不祥事で辞めるわけではない、「カワイソウ」という同情を集めつつ、後任に番頭さんを指名すれば、後々まで影響力を残せます。いやはやたいしたものです。

■ 際立った安倍首相の外交手腕
 前回は安倍政権の評価や長期政権となった理由、功罪について書きました。安倍首相の評価に付いては国民の7割が評価しているわけですから、良い首相だったことは間違いありません。前半と後半での評価の違いはありますが、最も評価すべきは第一次安倍政権の「戦後レジームからの脱却」を封印して第二次安倍政権では全方位外交を目指し、現実に北朝鮮を除くあらゆる国の首脳と握手したことです。これはなかなか成し得ないことで、日本の経済的地位が坂道を転げ落ちる如く低下している中で、日本がなんとか国際的地位を保てたのは、安倍首相の外交手腕によるものでした。日本は敗戦国なので、その戦後レジームからは脱却したかったのが首相の本音なわけですが、改めて敗戦国として正規の軍隊を持てないという現状に鑑みれば、国際的にはどことも喧嘩せず、八方美人でいることが求められる国ですから、本音は抑えて、猛獣使いの如く各国首脳と通じる姿勢に徹したのです。憲法改正が悲願だと言いながらも、いざとなるとそれを全面には押し出さなかったのは、国民の意思を掴み、それに応えようとする能力に秀でていたと言えるでしょう。ただしその陰で米国の求めに応じた装備の充実や法整備を進めました。トランプともプーチンともパククネともヤアヤアと握手できました。ずっと顔が引き攣っていた習近平さえもが最後はニコニコするようになったというのは、本来の安倍晋三支持者から見ると裏切りとさえ思えたのではないでしょうか。しかし、これが本来の「外交」というものです。

■ 首相後継者の選択
 次期首相は前述のように菅義偉官房長官になりそうですが、ハッキリ言って岸田文雄政調会長でも石破茂元幹事長でも、大きな方向の違いはありません。同じ自民党ですからガラリと変わることは無いのです。しかも今回三氏共通なのは、「地方振興」です。東京一極集中を避けることは、もはやこの国のコンセンサスとなりました。安倍首相は岸田文雄政調会長に禅譲するのでは?と、かねて言われてきましたが、今回の辞任劇でハッキリしたのは、安倍首相のストーリーは菅後継だったということです。岸田文雄政調会長は昨年7月の参院選で安倍首相や菅義偉官房長官の推す河井案里氏の立候補を何としても阻止すべきでした。自分の懐刀の溝手顕正氏が現職として居るわけですから、ノーを貫き通すのが政治家としての矜持でした。河井案里氏が逮捕されて繰り返し流れるテレビ映像で、選挙カーの上の案里氏の後ろに菅義偉官房長官と並んで岸田文雄政調会長がニコニコしている、権謀術数の政治の世界で、菅義偉氏ならば自分の参謀の対立候補の選挙応援など考えられないでしょう。秋田の田舎から勘当同然で上京した勝負師と、東京育ちの世襲議員との差ですね。東京育ちの世襲首相が、誰を後継にするかと考えたら、勝負が出来る人だったということです。


■ すげかえる首
 しかし、過去事例で、このように突然の辞任で急遽決まった後継者は長続きしていません。今のままなら菅首相は来年9月で終わりでしょう。その後は世代交代するでしょうが、河野太郎氏とか小泉進次郎氏とかが居ます。いずれも菅義偉氏と同じ神奈川県を地盤とし、仲が良いことで知られます。菅首相が短命で終わらないためには・・・そう、選挙に勝つことです。いま野党は立憲民主党が大きくなろうとしていますが、国民民主党の分裂劇で、ますます支持率が落ちています。新首相誕生で盛り上がって直ぐ解散〜総選挙となれば、自民党の圧勝となる可能性があります。安倍辞任は実に謀られたタイミングでした。コロナ禍で、五輪延期で...安倍首相の後半が、「責任はすべて私にある」と言って、その責任の取り方はもっと頑張って国民のために働くことだとおっしゃる、ン?ナニかチガウんじゃないのと言われていましたから、ここで首(相)をすげ替えることはオールオアナッシングではなく、オールライトなわけです。スガ替わるのではなく、スゲ替えるのですヨ。

■ アベノミクスの継承?
 菅義偉官房長官が「アベノミクスの継承」を唱えていることに???と思いました。もし本気でアベノミクスが成功したと思っているなら、その政治感覚を疑います。またそれに疑念を挟まない日本国民のおめでたさに開いた口が塞がりません。「GDPなんて別にどうでもいいんだ、戦争の無い平和な社会が維持できてれば」と言うのであれば、まあそれも良いでしょう。確かにかつての日本のようにGDP世界2位で、海外の貧しい国にどんどん援助して・・・ということは必要無くて、小さな幸せが有れば良いと言うのも国民の意識としては決しておかしくありません。ただし日本の将来を担う世代にツケをドンドン回すのは明らかに間違っています。また国民の平和な生活を守るにはある程度の国力が必要で、そのためには経済力がドンドン低下してはダメなのです。世界中の国々と仲良くするにはやはりオカネも必要なのです。したがって、アベノミクスとは何だったのか、これは継承すべきなのかについては白黒ハッキリさせておかなければなりません。

■ 失われた30年・・・ガラパゴス化した日本
 野口悠紀雄氏が書かれていました・・・アベノミクスの期間に日本経済は停滞したため、日本の国際的地位が顕著に低下した。企業の利益は増加し、株価が上昇したが、非正規就業者を増やして人件費の伸びを抑制したため、実質賃金は下落した。その結果、「放置された低生産性と、不安定化した労働市場」という負の遺産がもたらされた・・・
 これは日本の経済評論家の大半が言っていることです。ただアベノミクスが悪いというよりも、この30年、すなわち金融バブル崩壊以降、日本経済は停滞し、どんどん他国に追い抜かれて行ったということです。1989年末の日経平均株価は3万8915円87銭でした。今いくらですか?2万3205円43銭です。40%ダウンです。その間、アメリカの代表的な株価指数である「S&P 500」は約800%上昇、ざっと9.14倍です。この違いをどれほどの日本人が認識しているでしょうか。自民党政権がやってきたことを簡単に総括すると、景気が落ち込んだときには財政出動によって意図的に景気を引き上げてリスクを回避し、その反面で膨らむ一方の財政赤字を埋めるために消費税率を引き上げ、再び景気を悪化させる・・・。そんな政治の繰り返しでした。残念なことに、日本のメディアはこうした現状を批判するどころか、日本の技術がすばらしいとか治安が優れているなど、数少ない日本の長所をクローズアップして、日本が世界をリードしているかのような錯覚をこれでもかと国民に与え続けました。そしてこの30年の間に、国民の間に「諦め」の境地が育ってしまいました。最も残念なのは、若者が精気を失ってしまったことです。コロナ禍で明らかになったのが、デジタル革命、 IT革命といった「イノベーション」の世界の趨勢にいかに日本が遅れているかということでした。日本は「ガラパゴス化」していると言われています。その背景には、政府の歪んだ補助行政や通達、 規制といったものが存在しています。国会議員の数を減らす、公務員を減らすなど、目に見える形で身を切る改革をしなければ、これからは「崩壊する10年」になる可能性があります。

■ アベノミクスの検証
 さて失われた30年の最後のアベノミクスはどうだったのか?アベノミクスが始まった2012年と2019年を比較してみると、世界経済における日本の地位が顕著に低下したことが分かります。中国のGDPは日本の2倍以上に拡大しました。米国は1.5倍以上、同様の傾向は、世界のさまざまな国との間で生じています。世界競争力ランキングでは27位から34位となり、もはや日本は先進国とは言えません。63の国・地域を対象とした調査でデジタル技術では日本は62位、ナント!最後から2番目でした。
 実質賃金は7年間で4.4%下落しました。大卒サラリーマン所得でお隣韓国に抜かれたのは有名な話ですが、韓国は格差が大きいので初任給で比較すれば分かります。韓国の大卒初任給が2万7677ドルで、日本が2万6630ドル、大企業だけを見ると韓国が3万6228ドルで、日本は2万7647ドルで、31%も違います。アベノミクスで雇用が増えたと言われますが、それは非正規雇用で、その3分の1がコロナ禍で失職しました。その割に失業率が増えないのは、失職した人のうち求職しない人が多いから、女性や老人、なんとも悲しい話です。円安はアベノミクスでもたらされたといわれることが多いのですが、30年前は143円/USドルでしたから、超円高を引き戻したものの、円安とは言えないのです。一方人件費を抑えたので企業利益は増大し、利益剰余金は、2012年の250兆円から2018年には450兆円を超え、使い道がないので、企業は現金・預金の保有を増やし、顕著な「金余り」現象が起きて、いくら日銀が金融緩和しても貸し出しは増えません。異次元金融緩和政策は日銀当座預金を増やしただけで、空回りし、量的緩和政策は、すでにひっそりと終了しているのです。そんな中、これまで買い上げた膨大な額の国債は残っており、新型コロナウイルス対策の財政支出激増で破綻した財政を将来どう処理すればよいのでしょうか?アベノミクスは@放置された低生産性と不安定化した労働市場A国債の増大B財政破綻という負の遺産をたんまり残してしまいました。

サルスベリ(百日紅)

■ COVID-19の影響で閉店続出
 1920年創業の大阪の老舗ふぐ料理店「づぼらや」(大阪市浪速区)は9月15日閉店、100年続いた看板を下ろします。大阪を代表する観光スポット・新世界の名物として親しまれてきた立体看板のふぐちょうちんが9月3日未明に撤去されました。巨大看板が取り外された店舗の入口には、「長らくご愛顧いただきありがとうございました 皆様お元気で ほな!さいなら」のメッセージが書かれた垂れ幕がかけられました。
 外食チェーンのキッチンジローは、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の影響により4月から臨時休業、営業時間の変更が続いていましたが、全15店舗中、秋葉原駅に近い外神田店を含む13店舗を9月30日をもって閉店すると発表しました。引き続き営業される店舗は九段下店、中之島フェスティバルプラザ店だけだそうです。キッチンジローはジョイフルグループです。

キッチンジローのホームページより
 外食業界では焼き肉や寿司などの食べ放題を展開するバイキングチェーン「すたみな太郎」が、3月中に17店を閉店しましたが、この流れは大きく広がっています。ファミリーレストランや居酒屋などの業態です。「ジョイフル」では200店舗の閉店、「てんや」や「ロイヤルホスト」を経営するロイヤルホールディングスで系列70店舗、「和民」や「ミライザカ」のワタミグループも65店舗を閉店、「いきなり!ステーキ」はペッパーランチを含め114店舗を閉店、コロワイドは196店舗を閉店、東海地方で愛されるラーメンチェーン「スガキヤ」は30店舗を閉店、タコのキャラクターの看板で知られている南欧料理レストランチェーン「タパス&タパス」は東京・神奈川・千葉の1都2県の20店舗中9店を閉店。COVID-19とは無関係ですが、「ペコちゃん」でお馴染みの不二家はこの5年で100店舗が閉店しました。これは時代の流れに乗っていないからでしょう。吉野家は国内外3300店舗のうち最大150店舗の閉店、吉野家国内約40店舗、はなまるうどん、京樽など最大100店舗などを閉店しますが、これは「攻めの閉店」と言えます。
 大量閉店はアパレルでも顕著です。米Jクルーや米ブルックスブラザーズなどのグローバルブランド、レナウンといった国内の名門が経営破綻しました。中間価格帯を得意とする総合アパレルが次々に苦境に立たされており、オンワードホールディングスは前期に続き今期も国内外700店規模の閉鎖を計画しています。三陽商会も今期、最大150店舗の閉鎖を予定しているようです
 緑色の看板で親しまれ、全国に店舗を構える老舗パソコンショップ「ツクモ」(九十九電機)は首都圏にあるツクモ6店舗を閉店。家電量販店兼免税店の「ラオックス」は、インバウンド事業におけるメインターゲットである訪日中国人が新型コロナウイルス感染拡大の影響で入国できないため、国内24店舗の半数にあたる12店舗を閉店すると発表しました。

■ ロシアのノビチョク
 ドイツ政府は2020年9月2日、こん睡状態に陥り同国で治療中のロシアの野党指導者アレクセイ・ナワリヌイ氏(44)について、神経剤ノビチョクによる毒殺が図られた「明確な証拠」があると発表しました。メルケル独首相は記者会見で、ナワリヌイ氏は殺人未遂の被害者だとして、ロシアに国際社会への説明を求めました。ロシアにおける汚職やウラジミール・プーチン大統領を激しく批判してきたことから、ナワリヌイ氏の支持者らはプーチン氏の命令で毒が盛られたと主張しており、ロシア政府はこの訴えをはねつけています。ソ連で50年ほど前に開発された神経剤ノビチョクは、直近では、元ロシア情報員セルゲイ・スクリパリ氏とその娘が、2018年にイギリス・ソールズベリーで襲われた事件で使われました。スクリパリ親子は助かりましたが、巻き添えのイギリス人女性が後に病院で死亡しました。英政府が、ロシア軍情報当局が襲撃したと非難したのは記憶に新しいところです。旧ソ連時代からこの国はしばしば暗殺が横行しており、実に恐ろしい国です。こんな国が北方四島を占拠しているのです。
(2020年9月6日)


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