315  幸福度
 イチローが引退を発表しましたね。これについてはまたいずれ触れることになるでしょう。記者会見で、メジャーに行って外国人になったら、見る目が変わったと言っていました。この言葉が「グローバル化」を端的に表しています。メジャーでの19年間、その前に既に日本では大スターでしたから、野球に携わって30年以上、野球を愛する者にとって、この人は筆舌に尽くし難いスゴイ人です。国民栄誉賞がナンタラと言われていますが、故西澤潤一先生がノーベル賞を超える存在だったのと同様に、賞で讃える存在を超える人です。お疲れ様でした。

■ 春のセンバツ開幕
 第91回選抜高校野球大会は2019年3月23日(土)から12日間(休養日を含む)の日程で、兵庫県西宮市の阪神甲子園球場で開幕しました。出場32校の主将が「優勝候補」を投票した結果、星稜が17票獲得してダントツの一位となりました。「高校野球ニュース」が予測したところでは、【Aクラス】星稜・横浜・智弁和歌山・筑陽学園・札幌大谷・明石商業、【Bクラス】広陵・龍谷大平安・東邦・履正社・高松商業・八戸学院光星だそうです。

■ 監督の体罰が尾をひいた春日部共栄
 初日第二試合での春日部共栄(埼玉)は高松商(香川)と対戦、高松商の小柄なエース・香川卓摩(3年)が7回まで毎回三振を奪う13K、4安打完封の快投を見せ、関東大会準優勝の春日部共栄を8−0で破りました。香川は打っても3番打者として5回に貴重な2点適時打、捕手の新居は4安打、スゴイバッテリーです。近年埼玉県は浦和学院や花咲徳栄が優勝して強豪として鳴らしてきただけに、信じられない無惨な敗戦でした。大ヒット「翔んで埼玉」の主題歌である「はなわ」の「埼玉県のうた」も使っての必死の応援も、「ダメ埼玉」に終わってしまいました。夏に向けて春日部共栄は立ち直れるでしょうか。ただし部員たちのことを思えば、埼玉県の名物監督で甲子園にも名が轟いていた本多利治監督(61)が、2018年4月1日と3日、練習試合で見逃し三振をした当時の2年生と3年生計3人に平手打ちをしたり、蹴ったりしたという体罰が発覚して、センバツ出場が決まった後にベンチ入りができないことになったのです。これまで26年間、野球部長として本多監督を支えてきた植竹幸一氏が監督として指揮を執りました。やはり選手には相当こたえていたのではないでしょうか。
ムラサキオモト

■ 奥川恭伸投手に脱帽
 次の第三試合では大会ナンバーワン右腕奥川恭伸投手擁する星稜が強豪・履正社と対戦、一回戦屈指の好カードとなりました。「高校野球ニュース」予測の優勝候補・AとBの対決です。春のセンバツはこれから高校3年生になる選手たちの大会で、冬が終わっていよいよ野球シーズン開幕という時期の大会ですから、投手力の高いチームが有利です。従って星稜が有利と見るのは当然ですが、大阪は少年野球から高校野球まで、全国で断トツのレベルの高い地区です。いまや大阪出身の選手が全国に散らばって、やがて甲子園に集まってくるとさえ言えます。大阪桐蔭と履正社は日本屈指の強豪校です。筆者はもしかすると履正社が食うのでは?と予想しました。ところが結果は、奥川恭伸投手が3安打完封、毎回の17奪三振の快投。プロ12球団のスカウトたちが「マー君と遜色ない」とうなるピッチングで、体が大きいのにフィールディングも良く、筆者脱帽!

■ 選手宣誓に思う
 選手宣誓は広陵・秋山功太郎主将(3年)でした。「平成を締めくくる大会。高校生らしいはつらつとしたプレーで日本中に笑顔の花を咲かせます」。平成最後の選手宣誓は、観衆から大きな拍手を受けました。平成最初の選手宣誓は第61回大会(89年)の別府羽室台(大分)の笠置伸一主将、現在47歳で宇佐(大分)監督です。「平成元年にふさわしい、さわやか、のびのび、はつらつとしたプレーを展開し、栄光へ向かってダッシュすることを誓います」という宣誓でした。平成の最初と最後に共通する文言は「はつらつ」、それ自体はいいでしょう。

■ 何故手を上げないの?
 ただ最近の高校野球の選手宣誓にはちょっと違和感を覚えます。手を上げないで宣誓するのです。我が少年野球では今も右手を上げて宣誓します。左利きなら左手でも良いでしょう。このポーズをしなくなったのはいつからでしょうか?ナチスのポーズに似ているからどうの?と言う声もあるようですが、スポーツですからそんなの関係ないでしょう。違和感の原因は宣誓の中味です。
 1984年夏の福井商・坪井久晃主将の「若人の夢を炎と燃やし」という宣誓が評判になって以降は独自性のある宣誓が定着しました。手話や短歌を盛り込んで表現を工夫したり、平和や災害復興などメッセージ性のある文言を盛り込んだりするようになったのです。もちろん高野連が認めたからでしょう。「今年の選手宣誓はどんな言葉かな」と楽しみにしているファンが多くなったようにも感じます。

■ 選手宣誓の本質は
 しかし、選手宣誓の本質は何でしょうか。「良心に従って真実を述べ、何事も隠さず、偽りを述べないことを誓います」というのは法廷で使われる宣誓文ですが、「宣誓」というものは本来こういうものです。スポーツにおける選手宣誓は、戦いを前にして、「卑怯な手を使わずに正々堂々と戦う」ことを、観衆の前で誓うものです。いまの高校野球では、選手宣誓は完全に「決意表明」になってしまい、本来の目的から外れています。「スポーツマンシップに則って正々堂々と戦うことを誓います」という紋切り型フレーズを言えとは言いません。「最後まであきらめずに白球を追い続けることを誓います」、「チームのみんなを信じて全力を尽くすことを誓います」、「支えてくれる皆さんに感謝の気持ちを忘れずにプレーすることを誓います」といった文言が少年野球でも使われるようになりましたが、これはまあ良いでしょう。しかし、「感動を与えます」や「日本中を熱くします」などというのはオカシイ。誰のために戦うのか?高野連が喜ぶためか?違うでしょう。

■ 長過ぎる開会式
 それともうひとつ、開会式の挨拶が長過ぎます。少年野球でも、今年のような選挙の年は、国会議員、県議会議員、市議会議員、いっぱい出てきてナンチャラカンチャラ、選手を座らせて開会式、何考えてるの?と言いたいですね。

アブチロン

■ 世界幸福度ランキング
 国連が2019年3月20日、2019年版の「世界幸福度ランキング」を発表しました。日本は58位で、去年の54位から後退、このところずっと下落傾向です。この調査は、156の国と地域で各3千人を対象に行われ、「一人当たりの国内総生産(GDP)」「健康寿命」「社会的支援の充実」「自由度」「腐敗度」「寛容さ」の6項目について分析されている調査です。トップは今年もフィンランドで、デンマーク、ノルウェー、アイスランドと北欧諸国が続きます。日本の58位は過去最低で、健康寿命は2位、GDPは24位と上位でしたが、自由度は64位、寛容さは92位と足を引っ張りました。主要7か国(G7)では最も低く、米国は19位、台湾は25位、韓国は54位、中国は93位で、最下位は内戦状態の続く南スーダンでした。

■ いいじゃないの、幸せならば...
 この結果を受けての街頭インタビューで、どうやら日本人の多くは「どうして?」と疑問に思ったようです。自分たちは結構幸せなのに...と思ったのでしょう。「グローバル化」がこの30年で言われてきたことです。しかし日本人の多くがグローバル化していないことがこの意識で分かります。30年前のバブル崩壊以降、日本経済は低迷しました。「失われた20年」が言われ、デフレが続いて、生活レベルは諸外国に比べればドンドン下がりました。しかしグローバル化していない国民は、自分たちの生活レベルが落ちたなんて考えてもいません。相変わらず日本は大国で、平和で、いいじゃないか、ビルも建つし、新幹線も高速道路も出来て、オリンピックから万博まで再び日本にやってくる、カジノもできるだろう、いいじゃないの、幸せならば...佐良直美です。エッ、知らない?大坂ナオミなら知っている?いいじゃないの、幸せならば...

■ グローバル化
 日本人の多くがグローバル化していないのに対し企業はグローバル化しました。だから貿易赤字になっても経常収支が黒字になる、米国みたいになったのです。トランプ米大統領は貿易赤字を槍玉に挙げて、鉄鋼やアルミ製品への関税強化、中国との貿易戦争、次の標的は日本です。しかし米国は貿易赤字になっても全然困らない国だということにトランプさんは気付いていません。情報化社会になって、モノの貿易で損しているように見えても、しっかりマネーは確保するのがUSAです。世界各国がGAFAを規制しようという動きになり、日本でも公取や自民党が乗り出してきましたが、GAFAは何処の国の企業ですか?あれだけ巨額の貿易赤字をあげていても、USドルはシッカリしています。国内景気は世界で断トツ絶好調です。景気低迷する日本と比べたらもっとドル高円安になってよいのに、トランプ政権は日本が巨額の対米貿易黒字をあげているのにドル安円高にならないのは日本国政府が為替操作しているからだと問題視し、4月からの日米協議でこれをテーマにするつもりのようです。貿易戦争のあおりを受けて米国農業が各国からの報復で困っているため、まずは日本に農業市場開放を迫ろうとしています。本末転倒です。

■ 世界各国が揺れる中、安倍政権は安定
 この30年で世界中の多くの国民の所得が向上したのに、日本は下がりました。世界でも少数の珍しい低迷国です。イタリアなども低迷しているので、政権は揺れて、今やアンチEUの政権です。中国の掲げる「一帯一路」に活路を見出そうとしています。
 日本は安倍政権で安定しています。英国のメイ政権はブレグジット寸前の窮地、フランスのマクロン政権はデモで追い詰められ、あれほど安定していたドイツも今や真っ青です。韓国の文政権も怪しくなってきました。どうして日本だけ?少子高齢化で戦うヒトの活力が落ちてきたのでしょうか?そういえばデモは無くなったし、と思うのですが、災害だけは増えましたね。毎年どこかで避難生活になって苦しむ光景が出て、ボランティアの皆さんが活躍します。あの人たちに比べれば自分たちは幸せだと多くの日本人は思います。戦争が無いだけでも幸せなのは確かですが...
ブルボンのバタークッキーが大好きです

■ 寒いのに幸せなのは何故?
 「世界幸福度ランキング」トップがフィンランドで、デンマーク、ノルウェー、アイスランドと北欧諸国が続くのは何故でしょう?寒いし、日が短くて夜が長いし、何が幸せなんだろう?と思いませんか。では日本ではどうか?日本で裕福なのは福井、石川、富山などの北陸です。雪が多いし、日照は少ないし、何故だろう?と思いませんか。それなのに人々は東京、仙台、名古屋、大阪、福岡などの大都市に集まってくる。中でも東京への一極集中はすさまじく、溢れて神奈川、埼玉、千葉などに巨大都市圏が形成されています。実は大都市集中でスラム化するのは世界共通です。筆者のように「雪国」生まれの人間は、日照が多くて温暖な地域は有難いのですが、実は食べ物の美味しさなど、旅に出て初めて忘れていた美味を思い出したりするのです。北陸三県の冬の魚、絶品です。そもそも沖縄で食べるものどうですか?北海道で食べるものどうですか?美味しさは寒冷地にあり、それは厳しい寒さで、食材が美味しくなるからです。私たちが食べているものは動物であれ、植物であれ、生き物です。寒さに耐えるため、身を守るために自ら美味しくなってしまうのです。

■ 目に余るマスコミのバッシング
 日本が自由度は64位、寛容さは92位、分かりますね。ダイバーシティが叫ばれていますが、日本はいまだにオトコ社会です。オンナにとって大変な社会です。副総理を始めとする発言、懲りません。前回触れたようにピエール瀧さんに対するバッシングもそうです。秋篠宮ご夫妻の次女・佳子さまがICU(国際基督教大学)を卒業されましたが、卒業にあたり記者の質問に文書で回答を寄せ、姉の眞子さまの結婚延期について、「結婚においては当人の気持ちが重要であると考えています」、「姉の一個人としての希望がかなう形になって欲しいと思っています」とのお気持ちを明らかにされました。素晴らしい、と思いました。小室圭さんに対する一部マスコミのバッシングは目に余ります。平成天皇のご退位が近付いてきましたが、象徴天皇としての天皇ご夫妻の活動は素晴らしいものがありました。天皇の活動やお言葉の中に、象徴ではありますが、安倍政権とのひとすじの乖離がうかがえます。女系を排するが故にどんどん皇族は減っています。国民の大多数は良いと思っているのに、安倍政権は頑なに女系を排する、日本相撲協会と同じ、寛容さの欠如ですね。
白木蓮(ハクモクレン) こぶしとの違い分かりますか?

■ 障害者差別

 日本ではダウン症や知的障害などへの強い抵抗のようなものがあります。ライ病の人を隔離した施設もそうでしたね。世界的にみても1,000人に1人の割合で産まれるダウン症は、決して珍しい障害ではありません。近年、その数は増加傾向にあります。イギリスでは障害者の差別を禁じる法律が1995年には出来ていて、産まれてくる子どもに障害があったとしても、妊婦が安心して出産に臨める体制になっているそうです。これが日本との違いです。日本で2012年に始まった新型出生前診断の結果、ダウン症の胎児と分かった妊婦の95%が中絶を選んだそうです。社会的なフォロー体制が整っていない日本の現実を示しているのでしょうか。

■ 寛容さの欠如
 南米からの移民が言っていました。日本人は弱者に対する寛容さが足りない、その方が生まれた国では、弱者に対し、自分たちも決して豊かではないのにみんなで助けるのだそうです。そういえば米国などでは社会保障が十分でない分、金持ちが寄付して貧しい人を助けます。日本では枠に入っている人はいいですが、例えば生活保護受給者は白い目で見て、年金より生活保護のほうが云々と言ったりします。母子家庭では子ども食堂に頼ったりする悲惨さなのに、手を差し伸べる人が少ないですね。宗教と無縁な人が多いからかもしれません。少子化なのに親の虐待が増えているとかもニュースになっていますが、顕在化するようになっただけかもしれません。イジメは学校でも職場でも、当たり前に存在します。日本が海外から見たら、決して幸せな国ではないというゆえんかもしれませんね。

■ 堺屋太一氏の近未来小説
 2月に逝去した堺屋太一氏の『平成三十年』が再び注目を集めているそうです。約20年前の近未来小説で、作中では平成30年を生きる“未来人”の世界が仔細に描写されています。以下内容をかいつまんで紹介します。
日本ではこれから三つのことが確実に進むだろう。
@少子高齢化・・・平成30年には「団塊の世代」は60代後半から70代前半の高齢者となり、その子供たちの「団塊ジュニア」も40歳代に入る。本編主人公の木下和夫とその父昭夫は「団塊とその子」である。
A地方の過疎化・・・もしその時までに日本が首都機能の移転をしていなければ、中山間地は凄まじい衰退に陥っているはず、東京で営まれる官僚機構は、現在も将来も、東京一極集中の仕組みを保とうとするからだ。
B知価社会化・・・様々な新産業と新製品が出現し、創業と閉業が増加しているに違いない。それに伴って日本でも、改革は行われるけれど、それが「盲腸の手術」に終わる可能性が高い。「何もしなかった日本」への道だ。
 日本では次々総理大臣が誕生するが、そのすべてが「改革」を叫ぶ。これは、本当の改革が行われていない証拠だ。こうした情勢が、これからも――平成30年まで――続く可能性は高い。真の改革に必要なのは考え方の転換、つまり倫理と美意識の変更であることが、まだ知れ渡っていないからだ。

故堺屋太一氏
さて、これから、内には人口の高齢化、外には中国などアジアの工業化に直面しながら、日本が「遅進国」であり続けるなら、その後にはどんな改革があり得るだろう。いくつものシナリオが考えられる。いくつものシミュレーションの中で最もありそうなのは織田信長型、つまり体制内の異端者が、周囲の分裂と抗争を利用して実力を蓄え、温和な仕組みの変革者から次第に過激な思想の改革者へと変貌する経路だ。
この過程では、当初の改革賛同者も次々と脱落する。織田信長の史実がそうであったように。特に、この国の社会の実権を握る政府官僚と伝統ある大企業の中枢管理者は、政権政界の変化などは「上辺のさざなみ」とたかをくくっている。だから、政治(選挙)にはそれほど深入りしない。改革者は、その間隙を突き抜け、形式と思われていた政治を現実に変える道を辿るだろう。織田信長が、誰もが形式と信じていた足利幕府を手中にして、その号令を現実のものにしたのと同じ手法だ。
これは、外国の力によらない非暴力改革だが、改革者にとっても、それを受ける側にとっても、緊張を胎んだ過程になるに違いない。この物語の後が、どのように続くか、読者自身の創作に委ねたい。
 堺屋太一氏の近未来予測は誰よりも信頼できるだけに、この内容は怖い!もっと生きていて提言して欲しかったですね。

■ ハズキルーペ
 最近CMで目に付くのがハズキルーペです。豪華メンバーが出演しています。たかが拡大鏡、虫眼鏡です。どうして売れるのでしょうか?たぶん広告寿命はそんなに長くないでしょう。

■ 川治温泉
 明日から川治温泉に行ってきます。鬼怒川温泉の奥です。温泉自体はアルカリ単純泉ですから別に何と言うこともないはず、おなで石でも見てくるか。
(2019年3月24日)


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