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 前回、東日本大震災で壊滅的な打撃を受けた宮城県名取市の閖上(ゆりあげ)について書きました。そのときに、関東は6月29日(金)梅雨明けして真夏並みの暑さですが、関東の水がめのためにも、もう少し降雨が欲しい、西日本から北海道にかけてはまだ梅雨前線が残った上に、台風の影響で大荒れです・・・と書きました。申し訳ありません。それどころではありません。太平洋高気圧と大陸からの寒気に挟まれて、日本列島に沿うように湿った空気が南方から高速気流として次々に送り込まれ、関東を除く日本全体が線状降水帯に襲われて、これでもかこれでもかと降り続く雨...「50年に一度の・・・」などという言葉が空しいほどの大水害が各地で起きました。死者、行方不明者も多数、物的損害も計り知れません。心よりお見舞い申し上げます。

■ 被災地を励ますスポーツ関係者
 こんな大災害の折にスポーツの話で恐縮です。被災地はそれどころでは無いでしょう。東日本大震災のときも、プロ野球の楽天イーグルスや花巻東高校が被災地に駆け付けて被災住民を励ましました。他にも沢山の関係者が現地を訪れて瓦礫の撤去ほかに汗を流し、歌手は歌い、落語家は噺し、それぞれに自分の特技で激励しました。岩手県宮古市のアリーナに避難していたいとこは、テレビでしか見たことの無かった芸能人やスポーツ関係者に沢山会えたと言っていました。来てくれると、そのお礼のために出て行って拍手しなければならないけれど、正直余りにも沢山いらっしゃるので疲れる、でもそんなこと言うわけには行かないし、と本音を漏らしていました。

■ 広島東洋カープの阪神三連戦(マツダスタジアム)中止
 プロ野球の広島東洋カープは、西日本豪雨の災害の影響を考慮し、7月9日からの阪神三連戦(マツダスタジアム)の中止を発表しました。鈴木清明球団本部長は「被災した方々の心情や、救助が進む中で試合ができる状況にない。こうした災害のときは、試合をして盛り上げようという時期ではない」と自粛の旨を説明しました。球団は7月8日午前中に、日本野球機構(NPB)に阪神戦の中止を申し入れました。西日本を襲った記録的豪雨は、広島県にも深刻な被害をもたらしました。浸水、土砂崩れで死者多数・・・選手、首脳陣らの家族は無事だったものの、避難していた球団職員の家屋が流されるなどの被害があるそうです。黄金期も暗黒時代も県民とともに歩んできた赤ヘルだけに、この措置は当然かと思いました。

■ 熊本地震と秀岳館高校
 熊本地震のときに、八代市の秀岳館高校も被災しました。それでも被災地ボランティアに出掛けた野球部員たちの姿が報道されました。鍛治舎巧監督(当時)は右写真のようなTシャツを作って頑張りましたが、結局甲子園優勝の夢は果たせませんでした。秀岳館高校は熊本の私立高校ですが、ベンチ入りメンバーに熊本出身者はゼロ。鍛治舎監督はパナソニック野球部監督時代、大阪のボーイズリーグの名門『オール枚方ボーイズ』監督を兼任して、2013年にはチームを史上初の中学硬式野球5冠に導きました。その5冠メンバーを根こそぎ引き連れて秀岳館高校に“移籍”するという前代未聞の手法に批判が巻き起こりました。しかし学校サイドは「鍛治舎監督の下に選手が集まり、レギュラーとなったのが、たまたま大阪出身の生徒たちで、刺激を受けて熊本の子たちもレギュラーを目指しますし、それが熊本のレベルアップにもつながると思います」としました。日本人はこうしたことですぐ批判しますが、甲子園常連校ではこんなこと当たり前です。昨夏全国優勝の埼玉・花咲徳栄高校は、今夏レギュラーに埼玉県出身選手は皆無です。
熊本・秀岳館高校のTシャツ
がんばろう九州! 負けんばい熊本!

■ 夏の高校野球始まる
 埼玉県でも夏の高校野球大会が始まりました。今年は100回記念大会なので、花咲徳栄をAシードとする北埼玉と、浦和学院をAシードとする南埼玉に分かれて甲子園出場を目指します。我がふるさと岩手県では菊池雄星や大谷翔平の花巻東高校が有名ですが、この高校は岩手県出身選手が主力というのが珍しいところです。青森県は八戸学院光星(旧・青森光星学院)か青森山田のどちらかが甲子園ですが、どちらも主力は大阪はじめ関西出身の選手たちです。したがって大阪構成学院とか大阪山田などと揶揄されてきました。駒大苫小牧全盛時代の田中将大と青森光星学院の坂本勇人は、伊丹市立昆陽里小学校で活動する少年野球チームの「昆陽里タイガース」という少年野球チームでバッテリーを組んでいました。坂本がピッチャーで田中がキャッチャーでした。もともと少年野球や中学野球では大阪府がダントツに強いことは以前も紹介しました。高校野球でも大阪が強いのは当然ですが、歴代の夏の甲子園出場回数ではPL学園、大体大浪商、市岡、大阪桐蔭、明星、関西大学北陽、八尾という順です。PL学園は今や硬式野球クラブはありません。最近では大阪桐蔭、履正社、大体大浪商の順に強いと言われています。

■ なぜ大阪の野球チームが強いのか?その1
 先の秀岳館高校・鍛治舎巧監督(当時)は甲子園で相手のサイン盗みで高野連から注意されました。これは高校野球ならではです。社会人野球ではサイン盗みは当たり前、プロ野球だってそうです。盗まれるほうが悪いのです。そもそも野球というのは物騒なスポーツです。「盗塁」というのは塁を盗むことだし、盗塁を謀って捕手の送球で「刺殺」されたりします。現実の社会に戻ったらやってはならないことだらけです。そこでルールに則りながらいかにして相手の裏を掻くかに腐心するのです。ところが高校野球は「教育の一環」とやらで、ズルイことはダメとされます。『オール枚方ボーイズ』が『秀岳館高校硬式野球部』に「変身」することもまた苦々しく受け止められたでしょう。
 東京人と大阪人を比較するときに良く言われること・・・東京人はどこか格好をつけ、きれい事を追求します。車の運転を見れば一目瞭然です。大阪ではバンバン割り込みます。割り込んだほうが要領が良いと考えますから、割り込みに寛容です。ところが東京では割り込まれると頭に来てクラクションを鳴らしてトラブルになることがしばしばです。大阪人から見ると、争っている運転者たちを見て「アホとちゃうか」と思うでしょう。野球でも東京人は「勝ちゃいいってもんじゃない」などと言います。しかし大阪人は「勝ってナンボやろ」と割り切ります。かつては二塁走者が打者に身ぶり手ぶりで捕手のサインを教えるのは常識でした。しかしそれがフェアプレー精神に反し、試合時間の遅れにもつながるとして禁止されました。東京の球児は素直に受け取りました。しかし大阪の球児は「これからは、うまくやらな、あきまへんね」と考えました。ここが違うのです。例えば投手がセットポジションに入ろうとすると、二塁走者はベースに足をつけた状態から、ススッと素早く離塁したり、ゆったりとリードを取り始めたりします。ススッと出たらストレート、ゆっくり出たら変化球といったサインですが、余計な動作ではないので審判は反則行為と警告できません。また相手打者が右中間に長打を打って、三塁打コース、打者走者は勢いよく一塁を回ろうとして、アッとスピードを落とす、一塁手がぼうぜんと打球を見やり、走路に立っていたのです。一瞬、衝突を避けたため、その打者は二塁止まりでした。一塁手が走者に背を向け、ボーッと打球を見ているのをまさか故意の走塁妨害とは考えない?違います、そのように指導されているのです。審判がオブストラクションと言うんだったら仕方無い、それでも三塁打で同じこと、二塁打だったら儲けものなのです。

■ なぜ大阪の野球チームが強いのか?その2
 中学生はどうか?東京のシニアチームの練習の雰囲気は、限りなく高校野球に近いものです。しかし大阪のシニアチームはプロ野球に近い風情があると言われます。プロ野球チームにオーナーがいるように大阪のシニアチームにもオーナーがいて、地元のお金持ちがタニマチとして運営したり、地域皆で応援しているチームなどがあるのです。特待生問題が物議を醸したとき、東京をはじめ大方の地方の人たちは中学生選手を売り買いするブローカーのようなスカウトがいることに眉をひそめ、問題視しましたが、大阪のシニアはそもそも「プロ野球志向」ですから、スカウトがいて、裏金があって当たり前なのです。それに目くじら立てる方が、彼らには「信じられない」のです。
中学生のときからプロ意識を持って野球をしていますからスゴイ選手が育ちます。そして甲子園に出ることもプロへの近道ですから、大阪桐蔭や履正社へ進んでレギュラーになるよりも、確実に甲子園に行ける地方の高校を物色する、親も将来への投資ですから応援する、今や優秀な選手が地方へ分散するのは当たり前なのです。
 2006年夏、早稲田実業(西東京)と駒大苫小牧(南北海道)の甲子園決勝戦、早実・斎藤佑樹、駒大苫小牧・田中将大の壮絶な投げ合いは延長15回を戦い抜いても決着がつかず、翌日の再試合までもつれこみました。再試合は4対3で早実が制し、24イニングを投げ抜いた斎藤は「ハンカチ王子」と呼ばれ、大フィーバーとなりました。早実対駒大苫小牧の伝説の延長再試合で最後の打者となった関西人の田中将大投手が、斉藤佑樹投手に三振に打ち取られ笑っていたのは何故でしょう?「今回は負けたけど、プロ野球では負けないぞ」と思っていたはずです。今どうなっているでしょうか?誰でもご存知の通りです。

昆陽里タイガースのバッテリー

■ 高校ハンドボールでラフプレー、浪商高校と大阪高体連の対応まずさ
 日大アメフト部の監督・コーチが関わったとされる悪質タックル問題が発覚してから約1ヶ月後の6月10日、インターハイ(全国高等学校総合体育大会)大阪府予選のハンドボール男子決勝戦で、特定の選手にひじ打ちしたり、首を抱え込んだりするなどのラフプレーがあったことが今更問題化しています。大阪体育大学浪商高校の選手が対戦相手の桃山学院高校の2年生エースにひじ打ちする映像が2018年7月4日放送のテレビ朝日系「モーニングショー」で流れ、故意ではないかと物議を醸したのです。それどころか、浪商高校のハンドボール部員が決勝戦の前日、インスタグラムに動画をアップし、部員らが「ぶっ殺す」「やっちまいましょう」と桃山学院エースの名前を挙げていたというのです。
 桃山学院側は試合終了後、当日のうちにひじ打ちシーンの動画を提供し、調査するように高体連に訴えました。高体連は翌日、ひじ打ちした浪商選手と桃山学院エース、そして両校の監督を呼んで、事情聴取し、浪商選手はその場で謝罪し、エースもこれを受け入れたそうです。高体連も、浪商側に厳重注意しました。しかし、他校の顧問から別角度の動画の提供があり、桃山学院側は、しかるべき場で議論してほしいと高体連に再度要請、高体連は、6月13日に常任委員会を開き、動画を検証した結果、ひじ打ちの前に桃山学院エースが浪商選手のユニホームを引っ張っていることを確認し、エースもこれを認めたといい、常任委では、ひじ打ちは故意とは断定できないと結論を下しました。浪商高校側は、「故意ではない」と番組のインタビューで言い切りました。ハンドボール部の徳永昌亮監督は、「ユニホームをつかんでいるのを振りほどくために、体をひねったときに(ひじが)当たっているというように私は見てますし、子供からもそういう話を聞いています」と説明しました。教頭も問題ないと言い切りました。
 しかし桃山学院側は、SNSでの犯行予告は、現実に起きてしまった以上、これは冗談とは言えないと反論し、他のテレビ局でも当日の画像が流れ、どう見てもこれは故意だと大騒ぎとなったため、高体連は7月4日、桃山学院側が常任委の調査結果に納得していないとして、再調査を検討をしているようです。
 この問題では第一に浪商高校側の、「故意ではない」と言い切った対応のまずさ、続いて大阪高体連のずさんな調査が問題でした。どうみても映像を見たら日大アメフトの故意プレーに似ています。フェアプレー云々の問題ではなく、ラフプレーだけはスポーツとは言えないので厳重処罰が必要です。

■ NPBおよび審判団、阪神に謝罪…誤審認め「走路アウトと判断すべき事案だった」
 日本野球機構(NPB)は2018年7月4日、神宮球場で6月29日に行われたヤクルト−阪神7回戦の走塁を巡る判定を誤審と認め、意見書を出していた阪神に回答しました。問題となったのは8-8同点の7回1死二塁の場面で、ヤクルト荒木の三ゴロを処理した阪神・北條が二塁走者のヤクルト・藤井をタッチするために追い掛けるも、かいくぐられてセーフと判定された場面です。三塁審の飯塚審判は「タグ行為がなかった」と判断しましたが、阪神は走者の3フィートラインオーバーでアウトだと主張しました。しかし審判団の協議も無く、試合は続行され、その後、決勝点を許して阪神は負けました。阪神は翌日に日本野球機構(NPB)に意見書を提出しました。筆者は当日のスポーツニュースで問題の場面を見ましたが、「タッグ(=タッチ)行為はなかった」とはどうしても見えず、明らかに3フィートオーバーのランナーアウトだなと思いました。よくぞ阪神が潔く引き下がったなと思いました。昔阪急の上田監督が判定にどうしても納得せず、長々と試合が中断したとき、上田監督ってカッコイイなぁと思ったことを思い出しました。
 NPB見解として、杵渕和秀セ・リーグ統括は「検証した結果、走者のラインアウトを取るべきだった。他の審判員とも協議するべきだった」と説明し阪神に詫びました。今回のプレーは現状ではリプレー検証の対象ではありません。審判団からも“誤審”について謝罪があったそうです。阪神・谷本副社長は「われわれには北條がタッチしにいっているようにみえたのですが、当該審判にはバランスを立て直すために手を出したとみえた」と見解の違いがあったと説明しつつ、「おわびとともに返ってきたので、今回の件は終わりにします」と“終結宣言”しました。

■ オリックスがプロ野球の斉藤惇コミッショナーに試合続行裁定求め提訴
 NPBは6月22日のオリックス−ソフトバンク10回戦でも本塁打判定の誤審を認めたばかりです。誤審は3-3の延長10回2死一塁でソフトバンクの中村晃選手が放った右翼ポール際への打球がファウルと判定されましたが、ソフトバンクのリクエストによるリプレー検証で本塁打に変更されたものです。ソフトバンクが5-3で勝った試合後、オリックスの福良淳一監督らが立ち会って映像を見直し、審判団がファウルだったと認めました。当日夜のNHKニュースのスポーツコーナーで画像を見て、明らかにポールの前をボールがよぎっていましたから、どうしてリプレー検証で“誤審”が起きたのかが不思議でした。オリックスは2018年7月6日、プロ野球の斉藤惇コミッショナーに、誤審があった場面から試合を続行する裁定を求める提訴を行ったと発表しました。京セラドームで会見した湊通夫球団社長は「審判員自らが試合終了直後に誤審と認めている以上、やり直すのが社会通念上、公平だ。(誤審の)救済が謝罪だけしかないというのはフェアではない」と話しました。NPBによると、1971年に明記された野球協約第20章第188条に基づく提訴は、2008年に起きたオリックスとソフトバンクのパウエル二重契約問題以来、三例目とのこと。コミッショナーが受理して裁定に至れば、1978年の“江川事件”以来、二例目となるそうです。オリックスは誤審と認めるしかないような映像で判定をファウルから本塁打に覆したことを問題視し、「審判員の判断そのものへの異議ではなく、リプレー検証制度の適用についての異議」だと主張しています。

■ オウム真理教死刑囚7名同日執行
 オウム真理教による一連の事件で死刑が執行された教団元代表の松本智津夫(麻原彰晃)元死刑囚(63)の遺体が2018年7月9日朝、東京都内で火葬されたそうです。地下鉄サリン事件の1995年から23年、筆者にはのっぴきならない思い出がありますが、それは語るもおぞましいことでした。麻原以外の6人はいずれも教団幹部で、早川紀代秀(68)は施設の建設などを担当する「建設省」、井上嘉浩(48)は非合法活動を行う「諜報省」、新実智光(54)は警備を担当する「自治省」、土谷正実(53)は「第二厚生省」、中川智正(55)は教祖や家族の身の回りの世話をする「法皇内庁」、遠藤誠一(58)は「第一厚生省」の大臣でした。

■ 加藤剛さん死去、80歳

 映画「砂の器」やTBSの時代劇ドラマ「大岡越前」などで知られた俳優の加藤剛(かとう・ごう、本名たけし)さんが2018年6月18日胆のうガンのため死去していたことが死後20日を経て分かりました。80歳でした。既に葬儀・告別式は家族葬で執り行われ、9月22日お別れの会が港区六本木4-9-2の俳優座劇場で行われるようです。最近はこうした事例が多くなりました。家族にしてみれば、ショックが大きくて...ということでしょうが、ある程度のときを経て、落ち着いてから故人を偲ぶというのは有名人だからこそ、とも言えるでしょう。昭和の名優の一人でした。静岡県出身、早稲田大学文学部卒。俳優座を拠点に、映画やドラマで活躍しました。柔道二段で俳句をたしなみ、文武に秀でた上に、タバコも吸わず、酒も飲まず、知性あふれる二枚目でした。無類の猫好きでも知られていました。
 通常故人の写真は直近のものを載せますが、この人はバリバリの頃にしておきましょう。最近もテレビで見て、その激ヤセ振りに長くないなと感じていました  ご冥福を祈ります    合掌


往時の加藤剛さん
(2018年7月9日)


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