251  新テスト
 いよいよ2017年も終わりです。トランプ大統領誕生で世界が揺らいだ1年でした。北朝鮮が核・ミサイル開発を加速させ、中国では習近平磐石体制確立、韓国では朴槿恵大統領が罷免されて文在寅政権発足、日本でもいろいろありましたが安倍1強体制は揺るがず、一方「ものづくり」に対する信頼は大きく揺らぎました。日本企業とはこういうものだったの?と疑われています。振り込め詐欺のような卑劣な犯罪が横行していることが心配です。災害では九州北部豪雨が大変でした。明るいニュースは中学3年生の最年少将棋棋士、藤井聡太四段ですかね。

■ 大学入試共通テスト
 2018年の大学入試センター試験は1月13日(土)、14日(日)に行われます(独法大学入試センターのホームページ参照)。いま受験生を抱える家庭では最後の追い込み、ゆったりとお正月を楽しんでる場面ではないでしょう。志願者数は582,669人(前年度比6,702人増)でした。
 ところで2020年度から、センター試験に代わり、「大学入試共通テスト」が導入されます。それに向けて2017年11月に1回目の試行調査(プレテスト)が行われました。全国の高校の4割に当たる約1900校で、延べ18万人が参加したそうです。
 現在の大学入試センター試験と異なり、思考力や判断力を重視した出題内容にするのが目的でしたが、高校の生徒や教諭からは戸惑いの声が漏れたそうです。新テスト導入による大学入試改革の狙いは「知識偏重」と言われてきた教育からの脱却にあり、学校現場は大きな変革を迫られています。しかしながら、肝心の高校サイドの対応が遅れており、ハッキリ言えば緊迫感に乏しいのでは?と言われています。それだけに今回のプレテストは衝撃だったのではないでしょうか?

■ 情報を処理する力と総合的な読解力が必要
 センター試験と大きく異なるのは、国語と数学1・Aに記述式が取り入れられ、試験時間も国語が20分延びて100分、数学1・Aは10分延びて70分になったことです。マークシート式の問題も、知識の有無ではなく、知識の活用法や思考力、判断力、表現力を問うことを重視して作られたようです。センター試験は評論や小説などのように単独の課題文を読んで答えさせる形式ですが、今回の共通テストは、生徒らの会話文のほか、生徒会の部活動規約など四つの資料を読ませて、文章全体の意味を捉えた上でないと答えられない問題も出ました。従来の手法は通用せず、「情報を処理する力と総合的な読解力が必要になる」ようです。

■ 正答率3%???
 数学1・Aでも図やグラフが多用され、高校の文化祭でTシャツを売って利益をボランティア団体に寄付するという設定で、「Tシャツの価格がいくらまでであれば購入してもよいと思うか」という生徒へのアンケート結果などを基に、価格と購入する人数を二次関数の式にして利益が最大になる価格を求めよ、という問題が出ました。これは難しいですね 正答率は3%だったそうです。

■ 設問を読み解く力が問われる
 すべてがマーク式の数学2・Bは、問題数が過去3年のセンター試験で最も多かった年とほぼ同数だったのに、問題冊子のページ数は1.5倍になったそうです。つまり深く読み込まないと解けないわけです。センター試験では、公式を覚え、出題パターンを知ればある程度解けたのに、設問を迅速に理解する読解力が問われたようです。数列などを使って、薬を飲んだ時、血中に残る有効成分の濃度の推移を計算し、服用量や間隔、副作用を考えさせる設問もあり、国公立大の2次試験がそうであるように、小手先では通用しない内容でした。袋詰め菓子の内容量を題材に、確率を考えさせたりする問題も出されたそうです。

■ 高校の姿勢を変えるのが大学入試改革の狙い
 国による大学入試の一斉テストは1979年から国公立大志願者対象の共通1次試験、1990年からは私立大も活用するセンター試験が行われてきました。いずれも選択肢の中から正答を選ぶ問題が中心のマークシート式で、知識だけで解けたり、消去法で正解にたどり着けたりする内容が多く、高校の授業も知識を付けたり、解答のテクニックを磨いたりする形が定着しました。しかし、主体的に問題に取り組み、自ら答えを見つける総合力が問われるべきだという主張が次第に高まり、新学習指導要領では「主体的・対話的で深い学び」を求めています。学んだ知識を生かし、考えたり議論したりして、本質に迫る学習方式です。「大学入試共通テスト」の狙いもそこにあるのですが、小中学校の授業は変わりつつあるものの、受験を意識する高校は旧態依然というところが多いのが現状です。高校での授業の見直しは急務です。

■ プレテストの結果で今後の設問に入念な検証が必要
 2020年度を皮切りに小中高では新学習指導要領に基づく「主体的、対話的で深い学び」教育が順次始まります。小学校は2020年4月から、中学校は2021年4月から、高校は2022年4月入学生から新学習指導要領が適用されます。試行調査(プレテスト)の問題は「新学習指導要領を意識し、粘り強く考えて解く『探究型』の問題を重視した」そうですが、学校現場からは「国語の授業でも生徒同士にディスカッションさせる工夫が必要」とか、「授業の見直しの必要性を痛感した」という感想が出ました。しかし、数学の授業で読解力を身に着けさせるにはどうすればよいか、具体的な方法はこれから考えるというのが本音でしょう。今回の設問が、的確に表現力や思考力、活用力を測れたかどうかの入念な検証が必要です。正答率1%未満の難問もあり、これはいくらなんでもダメでしょう。文部科学省は「知識も大事。その上での思考力、表現力」と説明しているそうですが、それでは受験生に過大な負担を強いる懸念もあります。

■ 予備校にはビッグチャンス
 成績が二極分化する難易度では入試の機能は果たせません。本番まであと3年しかありません。受験生の負担が増えることで「共通テストの受験が必須の国公立大離れが加速し、都市部で私立大に受験生が集まることも考えられる」と塾や予備校などの受験業界では推測しているそうです。高校が対応に悩んでいるうちに、駿台予備校などのプロフェッショナルが、その情報力を駆使して、高校生を集めて「大学入試共通テスト対策講座」を開催するのではないでしょうか。受験生が、高校の授業より予備校に殺到する風景が浮かびます。高校の先生が悩むのは当たり前、むしろ予備校はビッグチャンスを迎えたと言えるでしょう。

■ 大学入試は知識を問うのが本筋
 ところで最後に、ため口たたいて良いですか?少子化で大学に入りやすくなりました。すると受験生のレベルが下がっていくのは当然です。何故なら優秀な子の分布確率は同じですから、高校生の絶対数が減って大学の絶対数がほとんど変わらず、受験生の絶対数が減らなければ、大学生の平均レベルは年々下がっていくのは当たり前です。同様に大学の偏差値も年々下がって行きます。すると「大学入試共通テスト」の狙いは何でしょう?国公立大を避けて、都市部の私立大に受験生が集まるのでは本末転倒です。ましてや予備校に新たなビジネスチャンスを与えるのでは何やってまんねんという感じがします。本来「思考力、表現力」を養うのは、頭が柔軟な小学生のときが最も適しています。高校では遅いのです。さらにディベート能力などは大学で徹底的にやればよい、大学の門戸は拡げて、進級、卒業が難しいという米国的なやり方で良いのでは?むしろ大学入試は知識を問うのが本筋だと考えます。知識をいっぱい詰め込める柔軟な脳こそが、大学生に求められるのだと思います。「思考力、表現力」が無ければ大学を卒業できないようにすれば良いのです。

■ 私立大学授業料過去最高
 文部科学省によりますと、2016年度に入学した私立大学生が初年度に支払った授業料の平均額は前年度比1.1%増の87万7735円となり、5年連続で増加して、過去最高を更新したそうです。文系は70万円台、理系は100万円を越えています。入学料は1.0%減の25万3461円、施設設備費は0.6%増の18万5620円で、授業料を合わせた初年度学生納付金は0.6%増の131万6816円。実験実習料なども含む納付総額は0.4%増の144万3967円。学部別で授業料が最も高かったのは歯学部の316万7038円で、医学部が273万6813円、薬学部が143万7492円とのこと。

■ 親の有難さ
 地方の大学定員では入学者数をまかないきれないことから、首都圏の大学に学生が集まっているのが現状ですが、授業料がこの金額で、他に生活費と考えると、裕福な家庭でなければ子どもを大学へやれないことが分かります。筆者は国立大学でしたから授業料が月千円でした!だから大学へ行けたのです。うなぎのぼりに上がって今では年間535,800円です。45倍です!連れ合いは兄弟含め3人私立大学で、しかも親元離れての暮らし、公務員の親がよくぞと感心します。母親も仕事して頑張ったみたいですが、親というのは本当に有難いものだと思います。もちろん奨学金やら、アルバイトもやったでしょうが、親は本当に血の滲むような努力をしたのではないでしょうか。

■ 頑張れば報われる社会
 ただし、当時の私立大学の授業料は国立の6.6倍ぐらいではありましたが、当時の物価水準、給与水準と比較しますと今より格段に安かったのです。今では国立大学法人に対し私立大学の授業料が1.6倍、国立でさえも授業料が払えなくて退学する学生が居るのです。筆者の頃は大学生が珍しかったので、社会が大学生に優しくて、アルバイトも優先的に学生さんに振り分けられました。大きな声では言えませんが、筆者は大学時代に140万円も貯金しました。当時の憧れであったスカイライン2000GTを買ってもまだ余る金額でした。居酒屋バイトなどではなく、家庭教師や運転代行、車の陸送など、頭脳と技術を生かす仕事で、実入りの良い仕事でした。学問も必死にやりました。寸暇を惜しんで、睡眠時間を削って頑張りました。頑張れば報われる社会だったのです。

■ 優秀な学生は国費で面倒見よ
 果たして現代ではどうでしょうか?自宅から大学へ通えれば良いですが、地方からの一人暮らしの学生に必要なお金は膨大です。3人私立大学に行かせるのはものすごいお金が必要です。だから子どもは2人しか産まない、40代男性の3人に1人は独身、結婚しない人が増えていますから、少子化、そして急激な人口減少が進んでいます。首相が国難だとおっしゃるこの現象はまさしく教育にお金がかかる構造的要因から来ているのです。高校までの教育無償化などという政策が現実化してきています。日本の将来のために、優秀な学生は国費で面倒見まっせ、というシステムなら、優秀であればという条件は付きますが大学まで子どもを行かせることが出来ます。本来大学とはそういうものです。言葉が悪いのを承知で書きますが、裕福ならバカ息子、バカ娘でも大学へ行けるという社会システムはおかしいのです。貧しくても優秀なら大学へ行けるような社会にしなければなりません。

■ アントレプレナーシップ
 アントレプレナーシップってご存知ですか?起業家精神のことです。いま日本政府もアントレプレナー=起業家を育成することに注力して、大学にもそれを求めています。「アントレプレナーシップ教育部門」の全米一に23年連続輝いているバブソン大学は、アメリカ東部ボストン郊外にあり、大学院を合わせても学生数約3100人という小規模な大学です。トヨタ自動車社長の豊田章男、イオン社長の岡田元也、佐藤製薬社長の佐藤誠一、村田機械会長の村田純一、スパークス・グループ社長の阿部修平・・・・、日本を代表する経営者らを輩出した大学です。そもそもボストンという地は米国で最も知的な地域だと思います。企業もインテリジェンスを必要とする会社が集まっています。
 かつては、アントレプレナーシップとは生まれ持ったもので、誰かに教えられるものではないと考えられていました。そうした概念に挑戦し、体系的にアントレプレナーシップ教育を実施してきたのがバブソン大学です。単に「教える」だけでなく、実践的な教育を行っています。例えば、1年次に学生はみな、グループで実際に会社を起業し、運営します。そうした経験が2年生以降の授業でも生きてくる仕組みなのだそうです。

■ バブソン大学の3つの「P」
 バブソン大学のケリー・ヒーリー学長は言います・・・・バブソンでは、3つの「P」で表される「トリプル・ボトムライン」(3つの要点)を重視しています。「人」(People)、「環境」(Planet)、「利益」(Profit)です。「起業家」といえば、かつては「金もうけ」が目的というイメージでした。しかし現代の起業家は、むしろ「世界を変えること」に関心が強く、起業は世界を変えるための手段だと考えるべきなのです。起業によって「利益」のみを追求するのではなく、社員を含めた「人」、地球の「環境」にも配慮して行くことが大事だ、と教えています。「人」や「環境」と「利益」は相反する概念のようにも思えますが、そうではありません。

■ 失敗を学ぶ
 いま、注目を集めているのはスモール・ビジネスです。規模は小さくても成長力を秘めた企業はたくさんあり、そうした企業にわずかな情報や知識、資金さえ提供すれば大きな見返りがあると、米国社会そして米国政府は気づいたのです。学生に対してまず、「あなたは何者なのか?」「あなたは何ができるのか?」「誰があなたを助けてくれるのか?」という3つの質問を投げかけるのです。その答えを見つけることが、起業への第一歩につながって行きます。起業家として成功するためには、まず第一歩を踏み出さなくてはなりませんからね。第一歩を踏み出すときの自信をもつことが重要です。さらに言えば、私たちは失敗することを前提に置き、学生に接しています。失敗を通じて学ぶことの大切さを教えているのです。バブソンには、失敗についてオープンに語れる雰囲気があります。失敗を認め、それについてみなで話し合う。1年次に体験する起業でも、会社が利益を上げたかどうかで評価は決まりません。起業体験を通じ、何を学んだかが問われます。つまり、成功か失敗かよりも、学生が「何を学んだのか」ということを重視しているのです。アメリカでも、高校までは「正しい回答」をしたかどうかで学生の成績が決まります。しかしバブソンでは、きちんと学んでいるかどうかで評価します。バブソンの創設者であるロジャー・バブソンは「成功も失敗も永遠のものではない」という言葉を残しています。
ケリー・ヒーリー学長
元マサチューセッツ州副知事
 どうですか、「失敗は成功のもと」という言葉がありますが、失敗しなければ成功は無い、チャレンジしなければ何も生まれない、素晴らしい教育です。そして中小企業が衰退している日本に比べて、米国のこのダイナミックさ、我々はアメリカに学ばなければなりません。バブソン大学の卒業生は世界に散らばり、ネットワークを形成しています。そのつながりが、お互いに助け合うビジネス・ネットワークになっているのです。

■ ジャパンライフ破綻
 磁気ネックレスの預託商法などを展開し、消費者庁から1年間に4回の一部業務停止命令を受けたジャパンライフが、銀行取引停止処分になり、事実上倒産した模様です。東京商工リサーチが発表しました。負債総額は今年3月末時点で2,405億円。2011年に破綻し、戦後最大の消費者被害事件とされた安愚楽牧場の約4.300億円に次ぐ規模とみられます。
 ジャパンライフは、昨年12月以降、消費者庁から特定商取引法違反や預託法違反で、一部業務停止命令などの処分を計4回も受けていました。金融機関の根抵当権が付いた宿泊施設を、顧客に「所有権付きリゾート権」として1口1000万円で販売すると提案していたことも分かりました。契約者の弁護団は「非常に悪質」と指摘、同社の商法について詐欺容疑などでの告発に向けて警察と協議しており、巨額の消費者被害事件として捜査に発展する可能性があります。
 ジャパンライフは1975年設立、消費者庁から行政指導を受けながら、42年もの間、なぜ営業を続けてこられたのか不思議ですね。実は、ジャパンライフは官僚の天下り天国になっていたのだそうです。同社に関しては、損害賠償を求めての提訴が相次ぐ模様です。契約者はお金を持っている高齢者が多いと推定され、中には1億円以上という人もいるそうです。「解約したいが連絡が取れない」といった人たちは1万人を越えるのでは?と言われています。

■ 津軽せんべい
 津軽の家庭で昔から親しまれてきたお菓子「津軽せんべい」。小麦粉と塩で作られたシンプルな味のごませんべいが基本で、しっかりした歯ごたえが特徴です。津軽飴をぬったり、色々な食べ方をされています。家族が集まる団欒にはなくてはならない、懐かしいふるさとの味と言われます。実はここで採り上げたのは、筆者が大好きな「南部せんべい」の他に「津軽せんべい」というものがあることを知らなかったのです。青森県黒石市の渋川製菓の「津軽せんべい」をある人から頂いて、食べてみたら、美味しい!ビックリしました。

■ 南部せんべいとの違い
 津軽地方では「津軽せんべい」、南部地方では「南部せんべい」と名称は変わりますが、基本的な作り方は同じです。製造元により味や厚さ、焼き方などそれぞれ特徴があります。
 青森県は西の津軽、東の南部で構成されます。弘前藩、黒石藩の津軽地方と、南部藩、八戸藩の南部地方が戊辰戦争後一緒になって青森県となったわけですが、言葉も違えば文化も違うということで、どことなく、両者の間では今も違和感があるみたいです。青森市はもとは津軽の一漁村でしたが、青森県の県庁所在地となって大きい街になりました。いま国立大学法人弘前大学があることでも分かるように、津軽地方の中心は弘前だったわけですが、津軽と南部が合体したときに当初は弘前県としたものの、会津藩が斗南藩という小藩として下北へ移封され、中央政府から赴任した熊本藩出身の役人が、北海道を含めた地理的中間の漁村を県庁所在地に仕立て上げたようです。これは電光石火の早業で、豊かだった弘前から見れば不満があったでしょうが、当時の明治新政府というのはスゴイですね。今や弘前、青森、八戸は同規模の三大都市になっています。八戸は南部ですから、名物「せんべい汁」はもともと「南部せんべい」です。


■ 大納会終値は26年ぶりの高値
 2017年東京株式市場最後の取引となる大納会の12月29日、日経平均株価の終値は2万2,764円94銭と、年末の終値としては1991年以来26年ぶりの高値水準となりました。前年末の終値(1万9,114円37銭)を約2割も上回る6年連続の上昇です。4月14日には政治的リスクで年間最安値となる1万8,335円63銭まで下落しましたが、6月2日には約1年6ヶ月ぶりに2万円台を回復、秋以降に投資家の積極姿勢が強まって世界的に株価が上昇する中、平均株価は10月2〜24日に16営業日続伸して歴代最長の連騰記録を更新しました。11月9日の取引時間中には一時、約25年10ヶ月ぶりに2万3千円台に乗せる場面もありました。2018年はまだ騰勢が続くと予想されています。みんなが安心して、買って買ってうなぎのぼりになったときが危ないときです。
(2017年12月31日)


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